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番外編③
閑話休題・アレ
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二人のマンションを後にした四人は駅の方へと向かっていた。
「結構勢いでアレって言っちまったけど、大丈夫だよな?」
「ええ、記憶は無くとも八手は八手なので、大丈夫だと思います」
「そうですよ。竹葉さんとは頻繁にしてたはずですし」
「那月さん、お二人の関係にお詳しいんですね」
花蓮の何気ない一言にギクっと反応する美琴に、昌幸が確かにと首を傾げる。
霊能を百歩譲って信じてもらえたとしても、元地縛霊と言う経歴は、どう考えても精神状態を疑われる。
そして、昌幸をノイローゼまで追い込んだ張本人である美琴は、尚更事実を告げる事が出来なかった。
「ぃ、いや~惚気話よく聞いてたんで! 天道寺さんも、いろいろ突っ込んだ話題だったけど、大丈夫でした?」
「……はい……その、私もそういった事には、関心があるので」
花蓮の言葉に正義は片眉を上げて、訝しげに会話を進める二人を見つめる。
「恋人同士と言えば……はい……」
「あー……お嬢様の理想だと夜景が見えるとこでとか?」
「お嬢様っぽい」
「ば、場所は何処でも……」
「(ん? 何処でも?)」
赤面してゴニョゴニョと“アレ”について語り合う三人と違和感に気付き始めた倫。
「けど、家でサラッとするのもいいですね」
「ああ、そうですね。家でする事もあると聞いてます」
「まぁ、野外はちょっとな……」
「あっ……そうですよね。お二人は同性ですし……気にされますよね」
「ああ~、そっか」
今度は昌幸が違和感を覚えたようだった。
青姦なんて一部を除き同性異性関係なく憚られる行為だというのに、美琴と花蓮は異性なら野外で普通に出来るといったニュアンスの会話をしている。
「(まさか、俺の知らない間に異性間のSEXは大公開時代に突入していたのか!? そんな馬鹿な!!)」
一人、心の中で葛藤している昌幸を尻目に、二人は更に会話を続ける。
「那月さんは、どういったシチュエーションが理想ですか?」
「私は……夜の遊園地で、ひっそりと」
「はぁ~素敵です!」
「(遊園地で!? 素敵なのか!?)」
大胆過ぎるシチュエーションに昌幸が驚きの声を上げそうになった時、正義が眉間を押さえながら口を開いた。
「すみません……お二人の“アレ”って……なんの事を指して言ってますか?」
「え? キスですよ?」
「デートですが?」
二人の“アレ”を知って、SEX派だった昌幸と正義が衝撃を受けたのは言うまでもない。
「そ、そうでした……か」
「あらぁ! 那月さんはき、きき、キスを想定していらしたの!?」
「天道寺さんこそ! デートって……まぁ、天道寺さんのイメージにはピッタリですけど」
「「……………」」
「す、すごいすれ違いが起きてしまいましたね。お二人はなんだったんですか?」
赤くなりながら花蓮が無邪気な笑顔を浮かべて二人に問い掛ける。
昌幸は目線を泳がせまくり、ダラダラと冷や汗を流す。SEXなどと言ってはセクハラになりかねないと思い、必死に脳内辞書から代用単語を探していた。
「……いえ、俺は……えっと」
「性行為です」
「「せい……ッ!?」」
「えええ!!」
昌幸が悩んでいた事をズバンっと包み隠さず提示した正義に、若い二人が顔を真っ赤にする。
「さ、流石に……それは……」
「せ、せぃ……」
キスでいっぱいいっぱいだった花蓮が、正義の性行為発言でキャパオーバーを迎えてフラついて電柱によりかかった。
「……まぁ、二人の交際経緯を知ってる私と広田さんなら、そういうアレになるわけです」
「!」
「……そうですか……はぁ~~恥ずかしい恥ずかしい!」
美琴が赤くなった顔を手で扇ぎながら、電柱に寄りかかっている花蓮の手を引いて前を歩く。
「……倫さん、フォローありがとうございます」
「いえ、男性が女性にアレを言うのはハードルが高過ぎます。私と同じでよろしかったですか?」
「も、問題ないっス……はい」
「あっ! 駅前に美味しい中華屋さんがあるんですよ! 一緒に行きませんか?」
「いいですね。是非、ご一緒させて下さい」
“アレ”について勘違いしていたのは、自分達だけではない事を、この時の四人は知る由もなかった。
「結構勢いでアレって言っちまったけど、大丈夫だよな?」
「ええ、記憶は無くとも八手は八手なので、大丈夫だと思います」
「そうですよ。竹葉さんとは頻繁にしてたはずですし」
「那月さん、お二人の関係にお詳しいんですね」
花蓮の何気ない一言にギクっと反応する美琴に、昌幸が確かにと首を傾げる。
霊能を百歩譲って信じてもらえたとしても、元地縛霊と言う経歴は、どう考えても精神状態を疑われる。
そして、昌幸をノイローゼまで追い込んだ張本人である美琴は、尚更事実を告げる事が出来なかった。
「ぃ、いや~惚気話よく聞いてたんで! 天道寺さんも、いろいろ突っ込んだ話題だったけど、大丈夫でした?」
「……はい……その、私もそういった事には、関心があるので」
花蓮の言葉に正義は片眉を上げて、訝しげに会話を進める二人を見つめる。
「恋人同士と言えば……はい……」
「あー……お嬢様の理想だと夜景が見えるとこでとか?」
「お嬢様っぽい」
「ば、場所は何処でも……」
「(ん? 何処でも?)」
赤面してゴニョゴニョと“アレ”について語り合う三人と違和感に気付き始めた倫。
「けど、家でサラッとするのもいいですね」
「ああ、そうですね。家でする事もあると聞いてます」
「まぁ、野外はちょっとな……」
「あっ……そうですよね。お二人は同性ですし……気にされますよね」
「ああ~、そっか」
今度は昌幸が違和感を覚えたようだった。
青姦なんて一部を除き同性異性関係なく憚られる行為だというのに、美琴と花蓮は異性なら野外で普通に出来るといったニュアンスの会話をしている。
「(まさか、俺の知らない間に異性間のSEXは大公開時代に突入していたのか!? そんな馬鹿な!!)」
一人、心の中で葛藤している昌幸を尻目に、二人は更に会話を続ける。
「那月さんは、どういったシチュエーションが理想ですか?」
「私は……夜の遊園地で、ひっそりと」
「はぁ~素敵です!」
「(遊園地で!? 素敵なのか!?)」
大胆過ぎるシチュエーションに昌幸が驚きの声を上げそうになった時、正義が眉間を押さえながら口を開いた。
「すみません……お二人の“アレ”って……なんの事を指して言ってますか?」
「え? キスですよ?」
「デートですが?」
二人の“アレ”を知って、SEX派だった昌幸と正義が衝撃を受けたのは言うまでもない。
「そ、そうでした……か」
「あらぁ! 那月さんはき、きき、キスを想定していらしたの!?」
「天道寺さんこそ! デートって……まぁ、天道寺さんのイメージにはピッタリですけど」
「「……………」」
「す、すごいすれ違いが起きてしまいましたね。お二人はなんだったんですか?」
赤くなりながら花蓮が無邪気な笑顔を浮かべて二人に問い掛ける。
昌幸は目線を泳がせまくり、ダラダラと冷や汗を流す。SEXなどと言ってはセクハラになりかねないと思い、必死に脳内辞書から代用単語を探していた。
「……いえ、俺は……えっと」
「性行為です」
「「せい……ッ!?」」
「えええ!!」
昌幸が悩んでいた事をズバンっと包み隠さず提示した正義に、若い二人が顔を真っ赤にする。
「さ、流石に……それは……」
「せ、せぃ……」
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「……まぁ、二人の交際経緯を知ってる私と広田さんなら、そういうアレになるわけです」
「!」
「……そうですか……はぁ~~恥ずかしい恥ずかしい!」
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「……倫さん、フォローありがとうございます」
「いえ、男性が女性にアレを言うのはハードルが高過ぎます。私と同じでよろしかったですか?」
「も、問題ないっス……はい」
「あっ! 駅前に美味しい中華屋さんがあるんですよ! 一緒に行きませんか?」
「いいですね。是非、ご一緒させて下さい」
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