癖の強いBL短編集

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壁の向こうから、失礼します。④

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 水戸さんが海老名さんへ性的被害を被っている現象の相談を行ったところ、脳外科や神経科や肛門科などの病院へ行っても特に異常は無く。
 お寺の人に霊視してもらったが、霊は憑いてないし部屋にもいないと言っていたらしい。
 海老名さんは相当お怒りで、すぐに相談しなかった水戸さんもしっかり叱られていた。
 そして、最近は水戸さんを置いて仕事へ行くのを渋るようになるし、水戸さんは異変があるとすぐに海老名さんへ報告するようになった。
 まぁ、二人には見えないし、触れられないから、目の前で恋人が犯されててもどうしようも出来ないんだけどね。
 代わりにお清めセックスがめちゃくちゃ激しい。
 壁越しに肌がぶつかり合う音と水っぽい音が聞こえて来る。

『バチュン! バチュッ! ドチュン!』
『ひぎっ! あっあっあ゛~~~ッ!』

 今日は騎乗位か。敷き布団を乱しながら、えげつない音を鳴らして突いている海老名さんは、水戸さんにもう声を抑えろと言わなくなった。
 見せつけているのだろう。何かわからない原因に。
 ご馳走様です。
 そういう日の翌日には、海老名さんから菓子折りが届く。
 しかも、たまに照れまくってる水戸さんを連れて来ている事もあるから本当に生真面目な人だ。

「別に気にしてませんよ。恋人同士なんですから。聞こえてるの俺ぐらいですし」
「いえ、安眠妨害の自覚はあるので……すみません」
「いやいや。ふふ、仲が良いのは良い事ですよ」

 貴方の恋人を毎度犯してるの俺なんですけどね。たはは~~……バレたら殺されかねないな。気を付けよ。

《〇〇銀行の金庫から、およそ一億円が盗まれた事件の捜査は難航しており──》
「はぁ……強盗なんてしてないで、もっと有意義に生きればいいのに」

 輪っかを渡してきた男は、こんな素敵なものをどう持て余してたんだ?
 欲の無い人間も居るんだな。
 コレのおかげで人生が色付いて、しっかり生きようと思えた。ちゃんとシフトを組んで仕事をして、貯金をする。
 
 疑われないように、勤務先の休憩時間にもちょくちょく接続してタイミングを見計らって致した。
 俺が休みの日だけ犯されてたら流石に怪しいからな。
 お下劣な歪形いがみなりを伴った隣人関係を続けているが、一層捻れ始める。
 お隣さんが慣れ始めたのだ。

 姿の見えない相手。向こうからしたら、実在するのかも怪しい超常現象。対応策が無い。けれど、水戸さんの心は何一つ揺らがず海老名さんのもの。
 俺はアブノーマルなプレイはしていない。挿れて出すだけ。ディルドで時折楽しむ程度。
 だが、二人のプレイスタイルが羞恥プレイに近いものになっていた。
 なんというか……俺の行為が二人のセックスに組み込まれてる感じ。

『グチョ、グプ』
『ぁ、見……ないで……』
『そういうわりに、見られて興奮してるな』

 俺に犯されてる最中の水戸さんをM字開脚させて、挿れられている穴を凝視している海老名さん。
 海老名さんが言う通り、見られてる所為かきゅんきゅんとナカが反応している。
 犯されている自分を恋人に見られている現状に羞恥心と性的興奮に震えていた。
 罪悪感は大分薄くなってきた様子。

『グポ、グポン』
『ひ、ぁ……あ、ィ……く』
『イきそうか?』
『イく、んっ、海……海、いやだ、いや、見ないで、イくとこ、みなぃで』
『ダメだ。ちゃんと見せてくれ』

 海老名さんの声に反応して、イき顔を見られながら、俺のを搾り取るような畝りをキツくした。
 堪らず中に出してしまった。

『ビュク、ビュクン』
『ぅ……で、てる……中出し、されてる』
『……寿人』
『海、海ぃ、中、気持ち悪い……上書きして』
『ああ……』

 セックスの興奮剤としての役割が出来始めた俺は、なんだか一仕事ヤリ終えた男優の気分だ。
 隣から聞こえてくるラブラブお清めセックス。
 輪っかで覗きながら、その様子を撮影する。

『あっ、海、もっ……あ、ああ!』
『ドチュンドチュンドチュン!』
『ィ、でる! イってる、からぁ!』

 水戸さんの絶頂と、痙攣する体を押さえつけて更に突き上げている海老名さん。
 連続絶頂してる水戸さんは、俺に見られているなんて気付きもせずに蕩けた顔をこちらへ向けている。
 何故、こんなエゲツないセックスをしているのに、水戸さんのトロ顔に幼さを感じてしまうのだろうか。
 ただの美化だろうが、あまりに可愛らしいから……ああ、我慢できないな。

『ビュクン』
『ふぁえ!?』
『……顔射……目、入ってないか?』
『らい、じょうぶ……おれ、うみのが、ほしぃ』

 顔にぶっかけてしまった。海老名さんのこめかみに青筋が浮かぶも水戸さんのおねだりにすぐ気分を切り替えていた。
 口端についた俺の精液をペロリと短い舌が舐めるのが見えて、ドキリと心臓が跳ね上がった。
 ティッシュでゴシゴシと海老名さんがすぐに拭き上げたが、その一瞬だけで十分だ。

『寿人、気持ちいいか?』
『んっ、ん! きもちぃ、海が一番、きもちいいよ』
『そうか』

 満足気に勝ち誇った海老名さんが、水戸さんが望んでいた中で絶頂を迎えようとしていた。

『愛してるぞ、寿人』
『海……海っ! ああ!』
『ドプ』

 俺の余韻も残穢も全て掻き消すように奥へ吐精し、子種を擦り付けるように捏ねながら体重をかけている。

『あ、がっ……ィ、ああ!』
『精液練り込まれてイってるな……孕みそうなメスイキだ』

 爪先が丸まり、力みでガクガクで揺れて、きゅぅっと窄まる肛門で咥え込んでいる海老名さんのモノを締め付けて、また達した。
 
「(……やばいな)」

 ゲイのセックスなんて男の俺からしたら、嫌厭対象だったと言うのに……もう、水戸さんの尻穴か二人のセックスでしか抜けなくなってきた。
 俺と隣人達……どっちが得をしたのだろうか。
 まぁ、どっちでも良いか。
 


「おはようございます」
「ぉ、はよ゛ー」
「声枯れてますよ」
「お恥ず゛かしい゛…」

 隣人である限り、互いに得のあるままだ。
 この最低最悪で最高の時間が、少しでも長く続きますように。

END
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