大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

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おまけ

48:蜜月のアップダウン②

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 私が目覚めたのは、ビーチの救護室だった。二人分の荷物は全て側に置いてある。

「……サミュエル?」
「ああ! 目が覚めました?」
「ココは…………救護室?」
「はい。更衣室前で倒れてる貴方を運び込みました。頭からの流血がありましたけど、傷は浅いので私の治癒魔法で事足りました」

 褐色のギャルみたいな見た目の魔法医が私の頭をポンポンと撫でる。

「何があったか聞かせてくれますか?」
「……あ、あの、もう一人男の人が居ませんでしたか? えっと、こんな感じで、黒髪の」
「あら、絵お上手。いえ、倒れているのは貴方だけでした」
「ッ!」

 何故? どうして? 誰が? 何の為に?
 サミュエルが危ない。攫われた。けど、どうして。

「…………人にやられたんですね。新婚?」
「はい……」
「近頃、新婚の方を狙った悪質な輩が徒党を組んで悪さをしているんです」

 新婚……あっ!

「アイツらだ!」
「心当たりが?」
「海に行く前、路地裏に連れ込まれた女性がいたので、助けたんです。憲兵さんに報告して対処してもらったんですけど……」
「……もし、その輩に相方さんが攫われたなら一刻を争います」
「?」

 何故、新婚の旅行客を狙うのか。金銭では無く人を攫うのか。土地勘が無く、逃げられない人を選んでいるのか。

「……ま、さか」
「最悪の場合、ショックで自死を選んだ被害者もいるそうです。捜索隊の要請を『バァン』あっ!」

 私は荷物を持って救護室を飛び出した。

「サミュエル! サミュエル!!」

 守ると誓ったのに!! 守れてないじゃないか!!
 私は彼の名を叫びながら血眼で探し回り、聞き込みを行った。
 けれど、観光客ばかりで全く情報が無い。
 人が多過ぎる。
 
「はぁ……はぁ……サミュエル」
「ワン!」

 走り疲れて立ち止まる私の足元にフワフワの毛玉が擦り寄って来た。

「トーマ?」
「ワンワン!」

 見覚えのある顔にホッとしても事態は何も解決していない。けど、緊張が少し解れた。

「アーサンさん? わぁ、お久しぶりです!」
「! ……エイハ君」
「こちらにまたいらしてたんですね。サミュエルさんは……ご一緒ではないんですか?」
「ッ助けてくれ!!」
「ぅえ!?」

 私はエイハ君に縋って、事情を説明した。トーマの嗅覚に頼らせて欲しいと。

「そんな事が……勿論協力させてください。トーマ、行けるよな?」
「ワン!」
「……ありがとう」

 サミュエルの荷物を渡して、トーマに匂いを覚えさせる。

「ワンワン!」

 走り出したトーマに必死について行く。
 辿り着いたのは、更衣室横の茂みの中。そこでサミュエルの匂いは途絶えてしまっているようで、トーマの動きが止まった。

「ここで匂いが途切れてるって、事でしょうか?」
「あ、ああ! クソが! 転移魔法か!!」

 ここまで魔法が憎いと思った事はない。
 転移魔法では、匂いも足も付かない。辿る事が出来ない。
 それでも懸命にトーマは地面に鼻を擦り付けるように匂いを嗅いで……再び走り始めた。

「ワン!」
「!?」
「……そうか、魔力の匂いですよ! 転移魔法で人の匂いは途切れても、転移先まで魔力の道筋はあるはずです!」

 魔力の匂いを辿って走り続けるトーマ。
 けれど、この世界には魔力が溢れている。匂いのキツイ魔力が目的の魔力を遮ってしまったら、いくら犬の嗅覚でも追跡は難しくなる。

「…………くぅん」
「ああ……見失ったみたいです」
「はぁぁぁ……けど、捜索区間が狭まった。ありがとうトーマ」
「くぅぅん」

 申し訳なさそうに私の足に擦り寄るトーマを労わる。
 不安が胸を締め付けて、悔しさが込み上がってくる。
 エイハ君の前だと言うのに、ボロッと涙を零してしまった。

「ご、ごめん……心配過ぎて、涙が」
「アーサンさん…………よし! トーマ、もう一回だ!」
「ワン!」

 いつの間に採取していたのか、転移場所の土を布に包んで持ってきていたエイハ君が、もう一度トーマに嗅がせる。
 何度か繰り返したが……やはり途中で見失ってしまう。

「……すみません。お役に立てず」
「いやいや! ここまでトーマが頑張ってくれただけ、本当にありがたいよ!」
「くぅぅん……くぅぅん……」

 私達が嗅覚による追跡を諦めかけていても、トーマは健気に何度も何度も匂いを辿ろうとしていた。
 可哀想なぐらい困った鳴き声を漏らしている。

「おい、どうしたどうした? 何か困ってんのか?」

 トーマの鳴き声に気付いて、店の中に居た店主が様子を見に出て来てくれた。

「ん? 兄ちゃん、どっかで」
「あ! 餌くれた店主!」

 迷子だったトーマに餌を分けてくれたあの時の店主と再会を果たした。
 トーマが困っている理由を簡潔に説明すると、穏やかな表情のままこめかみに青筋を浮かべた。

「この街にそんな不埒な輩がいるのか。はぁぁぁ全く……度し難い」

 トーマを抱き上げて、よしよしと撫でる店主が私に問いかけてきた。

「ところで兄ちゃん、犬は好きかい?」
「……大好きです!」


※ここから先の新婚旅行編はR18版の方に掲載しております。年齢制限物になりますので、全年齢版ではこの先を丸々カットさせていただきます。ご了承ください。※
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