41 / 77
39:時限のネーミング
しおりを挟む宝石商にて──
「よい思い出は出来ましたか?」
「そりゃあもう」
「一生の思い出が出来た」
下見から帰宅して、早速向かった宝石商で今回の思い出を元に宝石を選ぶ事にする。
私達の見た物を定員さんに伝えると、目を輝かせて店の奥へと入って急いで戻ってきた。
「夜空や流星群、夕陽などはこのような宝石で表現されては如何でしょうか!」
「うっわぁ……すごい。初めて見た」
「…………これは」
「オパールだよ」
オパールはオパールでも、見る角度によって多彩な輝きを見せるプレシャスオパールだ。
「こんな……すごい、宝石があるのか」
「神秘的だね」
「オパールは同じ物でも違いがあります。当店に取り扱いのあるオパールは、こちらの数になります」
同じオパールでも見える光の種類や強さが違う。
同じ物は一つもない。唯一無二だ。
「アーサン、あれ」
「そうだね。すみません、この二番目のオパール見せてもらえますか」
「はい」
専用の台に乗せられて差し出されたブラックオパールは正に理想の輝きを放っていた。
「海に映る夜空みたい」
「小さいのに、いろんな色が見える」
ダークブルーに散りばめられた輝きに一目惚れした。
メインはこの子になる事になった。
そして、サイドに飾る宝石や裏石は石言葉で選んでいった。
サイドの宝石はサファイア。裏石はペリドットと決まった。
「イニシャルを刻む為に、こちらへお名前のご記入をよろしくお願いします。代筆も可能です」
「はい……その工程って最後にしていただく事は可能ですか?」
「はい、問題ございません」
実は、まだ彼の名前が決まっていない。
候補は幾つかあるが、どれも決定打に欠けていて中々決まらないのだ。
指輪の製作をお願いして、私達は店を後にした。
「決まりそう?」
「わからない」
「……煮詰まってる感じだね」
「アーサンはどうやって決めたんだ?」
Qマリ主人公ネームを“あああ”って入力してたから……今考えてみると、クソみたいな理由だな。
「直感……かな。その場で名前言わないとダメな雰囲気だったから」
「やっぱり時間制限設けた方がパッと決まるか?」
何処ぞの見た目は子ども、頭脳は大人な探偵も追い詰められて瞬時に本の著者から名前取ったりしてるからな。
「……………時間制限欲しい?」
「あ? ああ、欲しい」
「なら……私と結婚式を挙げないか?」
「!?」
「指輪も名前も必要になる。その時までに、考えよう」
必要ないかな?、と思っていたが、やはり皆に彼を祝福して欲しいし、私も彼のウエディング姿が見たい。
「結婚式って、教会でやるヤツだよな? 誓いやら、なにやら……」
「うん、そうだよ。期限は半年。プランとかの打ち合わせや、ウエディングスーツの仕立てもあるから、命名だけに時間は取れない」
「……半年後でも急過ぎる」
「ごめんね」
人前に立つ事が苦手な彼には、あまり良い提案では無いかもしれない。けれど、嫌では無さそうだ。
「はぁ…………わかった。それぐらい大きな目標があれば、決められるだろう」
「うん、ありがとう」
どんな名前だろうと、彼への愛は変わらない。
けれど、彼を愛せる響きが増えると思うと、心の底からその日が待ち遠しい。
100
お気に入りに追加
320
あなたにおすすめの小説
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く
川原源明
ファンタジー
伊東誠明(いとうまさあき)35歳
都内の大学病院で救命救急センターで医師として働いていた。仕事は順風満帆だが、プライベートを満たすために始めた婚活も運命の女性を見つけることが出来ないまま5年の月日が流れた。
そんな時、久しぶりに命の恩人であり、医師としての師匠でもある秋津先生を見かけ「良い人を紹介してください」と伝えたが、良い答えは貰えなかった。
自分が居る救命救急センターの看護主任をしている萩原さんに相談してみてはと言われ、職場に戻った誠明はすぐに萩原さんに相談すると、仕事後によく当たるという占いに行くことになった。
終業後、萩原さんと共に占いの館を目指していると、萩原さんから不思議な事を聞いた。「何か深い悩みを抱えてない限りたどり着けないとい」という、不安な気持ちになりつつも、占いの館にたどり着いた。
占い師の老婆から、運命の相手は日本に居ないと告げられ、国際結婚!?とワクワクするような答えが返ってきた。色々旅支度をしたうえで、3日後再度占いの館に来るように指示された。
誠明は、どんな辺境の地に行っても困らないように、キャンプ道具などの道具から、食材、手術道具、薬等買える物をすべてそろえてた。
3日後占いの館を訪れると。占い師の老婆から思わぬことを言われた。国際結婚ではなく、異世界結婚だと判明し、行かなければ生涯独身が約束されると聞いて、迷わず行くという選択肢を取った。
異世界転移から始まる運命の嫁ちゃん探し、誠明は無事理想の嫁ちゃんを迎えることが出来るのか!?
異世界で、医師として活動しながら婚活する物語!
全90話+幕間予定 90話まで作成済み。
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる