大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

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19:成育のリビジョン

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 今、私は猛烈に困っている。

「アーサン、アーサン……ゲップが出ない」
「肩に顔を乗せて、背を優しく叩いて」
『トントン……ケプ』
「よーしよしよし、上手に出来た」
「俺を撫でてどうする」

 エルサさんとココルデさんが畑の作物の収穫で多忙を極めてて、私達が現在エルデン君を預かっている。
 引き篭もってる彼に、もっとエルデン君と関わってほしいからだろう。
 いや、本当に……この光景やばい。

「うっ、ぅうっ……アーサン」
「ぁ、あう……あぶーー」
「あはは、真似っこされてる」
「腕が痛いから、変わってくれ」
「はいはい」

 慣れない赤ちゃんの世話に四苦八苦してる彼は、本当に尊い。胸が苦しくてたまらない。困るってマジで。

「よしよし、エルデン君」
「はぶぶぶ……えぶぶ」
「下唇ブルブルさせるのにハマってるの? 赤ちゃんだね~」
『ぷにぷに』
「…………なんで赤ちゃんって、こんな可愛いんだ?」

 頬をつつきながら、心底不思議そうに首を傾げる彼。君もすっごい可愛いよ。

「可愛く見えるのは、この子が好きだからだよ。大事にしたいって、思ってるからだ」

 一瞬、キュートアグレッションって言う単語が浮かんだが、無視する事にした。

「好き……って、そういうもんなのか」
「好きの種類は様々だけどね。赤ちゃんに対する可愛いって気持ちは、庇護欲の好きが大きいかも」
「…………じゃあ、お前が俺に向ける好きって、どの種類だ?」
「えっ!?」

 すごいドストレートな質問に私はたじろいですぐに言葉が出てこなかった。

「え、えっと……その……あぅ……」
「アーサン、顔真っ赤だ」
「す……好きだけど、わかんない……いっぱい好きだから、どうって言えない」
「ふーん」
「聞いといて興味無くすのやめて」

 腐女子的な好きと夢女的な好きにも違いがある。私自身の好きって感情は、彼に向けるにはあまりに歪で、汚らしい。

「ふぇあっ!」
「あっと……ごめんごめん。君も好きだよ。エルデン君」

 ゲームでのエルデン君の事もそれなりに好きだったけど、こんなちっちゃい頃を見てしまうと、親戚のおばちゃんになっちゃう。無責任に甘やかしてしまう。

「んぁ、んしょ、んしょ」
「きゃは~~エルデン君が掴まり立ちでスクワットしてるぅ~オムツで出っ張ったお尻可愛い~」
「やかましい」

「まっま、ままま、ま」
「まま。まーま。はい、ぱーぱ」
「まーぱ」
「どっちが先だろうな」

「あーしゃ、あーしゃん」
「アーサンですよぉ」
「おにぃ」
「……兄って歳じゃねえけどな」
「お兄ちゃんでいいでしょ」

 私達は、夫婦と共にエルデン君を可愛がりながら成長を見守っていた。
 エルデン君が公園で走り回れるようになった頃、私達は成人の十八歳を迎えた。
 酒が飲める歳になったが、私は元々酒をあまり飲まないから生活は変わらない。
 ただ、彼は……ゲーム通り、酒が好きなようだ。

「うーー……」
「二日酔いには味噌汁……なんだけど、味噌無いから、貝の吸い物」
「……なんで、こんな頭痛くなるんだよ」
『ズズ』
「うま」
「簡単にいえばアルコール分解で出来た物質を肝臓が処理しきれなくて、それが二日酔いの症状を出してる」

 説明したところで、今はそれどころじゃないだろうな。
 水も飲ませて脱水症状を予防させる。

「うぇ……はぁぁぁ」
「(思ったより酒に弱いんだな。てっきり強いのかと思った)」

 すぐに酔っ払うし、二日酔いで毎度苦しんでる。
 とても新鮮。
 
「あーさん……」
「なに?」
「今日は、一緒に過ごせるよな?」
「うん。一日家にいるよ」
「一緒に……酒飲みたい」

 迎酒でもする気か。とりあえず、昼までは酒は禁止。
 それまではゆっくりさせておく事にした。

「あーさぁん」
「もぉ~だらしなくなっちゃって……可愛い」
「……んぅーー」

 二日酔いの後はぐでんぐでんで、だらしない彼が、私にくっついて離れなくなる。
 嬉しいけど、ちょっと……下半身がやばい。

「エルデン君に酔っ払いおじさんって言われちゃうよ?」
「エルデンはそんな事言わないぃ」
「ふふ、そうだね~」

 出来るだけ穏やかな気持ちで彼を抱き締めて、昼まで惰眠を貪った。
 そして、目が覚めたら二人で食事をしながら酒を飲む。

「ぷは……」
「お酒本当好きだね」
「ああ、コレが無いともう生きていけない」
「…………私とお酒、どっちが好き?」
「めんどくさ。嫉妬すんなよ」

 私は絡み酒をしてしまうようで、女々しい事を言ってしまいがちだ。
 彼に対しては特に。

「昼から飲んでたら、マグナさんに怒られるな」
「不摂生だってか……ふん。ムカつく」

 彼はハイペースでクピクピ飲んでいく。
 そして案の定、酔っ払ってしまう。

「ヒック」
「ゆっくり飲もう。ペース早いって」
「こうしないと酔わねえじゃん」
「酒飲みたいんじゃなくて、酔っ払いたいのか」
「んーー」

 酔っ払う感覚は心地良いからな。私はあんまり良さがわからないけど。
 中毒性があるから、セーブしてやらないと。

「ストップ。次の一口は二分後」
「は?」
「怖っ、怒らないでよ。長く楽しみたいならガバガバ飲まないで」
「……わかった」
「ありがとう」

 コップに手を置いて量を調整する。
 犬みたいに鼻で手を退かそうとする度に頭を撫でて宥めると、機嫌が良くなる。
 可愛い。すごい可愛いけど……心配になってきた。

「あーさん」
「うぅ……」
「なぁ、あーさん」
「なんだ?」
「んふふ、興奮するか?」

 酔っ払った彼を寝かし付けようとしたら、私の上に乗って胸板に頬を押し付けながら見上げてくる。
 します。めっちゃ興奮してます。

「ふざけてないで寝なさい」
「キスしてくれよ。そしたら寝る」
「……寝ろ」
「ちぇー」

 悪ノリが酷い。こんなの私以外にしたら襲われてしまうぞ。
 酔いの眠気に負けて眠った彼の額に唇を押し当てる。

「おやすみ。お酒は程々にね」
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