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「なんでそこいったんだよ」
「うるせー」
好きなゲームやアニメで心を掴まれる“推しキャラ“が出来るのは、当然の事だ。そして、腐女子において推しキャラは非常に重要なコミュニケーションツールでもある。
右左、リバで派閥が出来る。推しキャラであっても、なんでも食える雑食の者は少ない。本当に供給が少ない過疎地ならば皆なんでも有難がるが、私のハマっているジャンルは有難い事に各々のキャラの村があり、定期的に公式から焼いてもらえる恵まれた環境であった。
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称Qマリ。
平民出身の青年が、魔法学園で様々な人と出会い、交流を深めて、攻略対象の心を救い、結婚するまでを描くゲーム。
まぁ、ここまでは普通のBLゲームなんだけど、Qマリには、攻略対象毎に裏ルートが存在する。それは、心の救い方が極めて極悪な主人公の闇落ちルート。攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない闇堕ちルートは、闇の腐女子にクリーンヒットした。
かく言う私も裏ルートで仕留められた一人だが……一つ問題を抱えている。
「名前の発表なんてされるわけないって」
「いやいやいや! エルデン君の養父だぞ! 絶対、公式から発表されるって!」
「設定集出て二年経ってる。ここまできたらもう出ないだろ。マジで、なんでそこいっちゃったかなー」
Qマリのマイナーキャラが最推しな点だ。
私は一人で名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情を注いでいる。
攻略対象の養父だが、ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、裏ルートで主人公によって殺される。
主役達のノイズにならないように、名が付けられておらず、ただのシナリオギミックでしかない中年のおっさんだ。
だけど、ろくでなしの飲んだくれが、奨学金ではなく、有金叩いて息子を学園へ入れた事。唯一のセリフは、裏ルートで死の間際に呟いた息子の名。
いや、好きじゃん。息子の名に含まれた感情考察が捗る。ボイスもないテキストでご飯三杯食える。
公式アカウントのフォロワーが数万人という規模の界隈だけど、彼を推しているのは私だけらしい。嘘だと言って欲しい。
好きっちゃ好きだけど推すほどじゃないな~ってやんわり言ってくれる方が大半だ。検索してもモブおじ化された同人誌やアンチスレばっか出てくる。悲しみしかない。
「例え私一人でも彼を愛すけど、自給自足は苦しい」
「推し性、乙です。あんた絵上手いのに見る人少な過ぎて勿体ない」
「ありがとう。でも、美麗イラストじゃないから……」
現在私は、仲の良いフォロワーと通話中。
偶にこうして付き合ってくれる人がいるだけ報われている。
『ピピッ』
「あぁ、もうこんな時間……」
「そろそろ寝ないとね。明日も仕事だし」
「仕事行きたくなーい。絵描きたーい」
「寝なさい。そろそろ死ぬよ」
そうして、私の一日はベッドの中で終わりを告げた。
まさか、私の人生さえも区切りがついてしまうなんて、思いもしていなかった。
「うるせー」
好きなゲームやアニメで心を掴まれる“推しキャラ“が出来るのは、当然の事だ。そして、腐女子において推しキャラは非常に重要なコミュニケーションツールでもある。
右左、リバで派閥が出来る。推しキャラであっても、なんでも食える雑食の者は少ない。本当に供給が少ない過疎地ならば皆なんでも有難がるが、私のハマっているジャンルは有難い事に各々のキャラの村があり、定期的に公式から焼いてもらえる恵まれた環境であった。
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称Qマリ。
平民出身の青年が、魔法学園で様々な人と出会い、交流を深めて、攻略対象の心を救い、結婚するまでを描くゲーム。
まぁ、ここまでは普通のBLゲームなんだけど、Qマリには、攻略対象毎に裏ルートが存在する。それは、心の救い方が極めて極悪な主人公の闇落ちルート。攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない闇堕ちルートは、闇の腐女子にクリーンヒットした。
かく言う私も裏ルートで仕留められた一人だが……一つ問題を抱えている。
「名前の発表なんてされるわけないって」
「いやいやいや! エルデン君の養父だぞ! 絶対、公式から発表されるって!」
「設定集出て二年経ってる。ここまできたらもう出ないだろ。マジで、なんでそこいっちゃったかなー」
Qマリのマイナーキャラが最推しな点だ。
私は一人で名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情を注いでいる。
攻略対象の養父だが、ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、裏ルートで主人公によって殺される。
主役達のノイズにならないように、名が付けられておらず、ただのシナリオギミックでしかない中年のおっさんだ。
だけど、ろくでなしの飲んだくれが、奨学金ではなく、有金叩いて息子を学園へ入れた事。唯一のセリフは、裏ルートで死の間際に呟いた息子の名。
いや、好きじゃん。息子の名に含まれた感情考察が捗る。ボイスもないテキストでご飯三杯食える。
公式アカウントのフォロワーが数万人という規模の界隈だけど、彼を推しているのは私だけらしい。嘘だと言って欲しい。
好きっちゃ好きだけど推すほどじゃないな~ってやんわり言ってくれる方が大半だ。検索してもモブおじ化された同人誌やアンチスレばっか出てくる。悲しみしかない。
「例え私一人でも彼を愛すけど、自給自足は苦しい」
「推し性、乙です。あんた絵上手いのに見る人少な過ぎて勿体ない」
「ありがとう。でも、美麗イラストじゃないから……」
現在私は、仲の良いフォロワーと通話中。
偶にこうして付き合ってくれる人がいるだけ報われている。
『ピピッ』
「あぁ、もうこんな時間……」
「そろそろ寝ないとね。明日も仕事だし」
「仕事行きたくなーい。絵描きたーい」
「寝なさい。そろそろ死ぬよ」
そうして、私の一日はベッドの中で終わりを告げた。
まさか、私の人生さえも区切りがついてしまうなんて、思いもしていなかった。
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