勇者に敗れた魔王は、野望を果たす為に子作りをする。

7ズ

文字の大きさ
30 / 38

29:エピローグ(END)

しおりを挟む
 時は流れ、人類の総人口は七分の一にまで減少し、その内訳は魔族化した人間が満たしていた。

「ねぇ、ニンゲンって知ってる?」
「知らない。食べ物?」
「私達のご先祖様らしいよ」

 そして、“人間”と言う種族は世界から消え失せ、世代を紡ぎ、“魔人”と言う種族に取って代わられた。
 魔人の少女は、空き地のブランコで遊びながら聞き齧った話を兎人ラビットの少女へ自慢気に話している。

「世界で一番多かったんだって」
「もう残ってないの?」
「うん。けど、魔人の中にちょーっとだけ残ってるって、パパが言ってた」
「なんで、居なくなっちゃちゃんだろうね」
「それは……わかんない。聞きに行こっか」
「うん!」

 魔人の少女と兎人の少女は、ブランコから降りて手を繋いで魔人の少女の家へと向かった。

「パパー」
「おかえり」
「こんにちは、タクトおじさん」
「こんにちは」

 兎人に似た特徴を持ちながら、龍人の鱗を持つ男性が娘と兎人の少女を書き物をしながら出迎えた。

「ねぇ、ニンゲンの話しして。なんでニンゲン居なくなったの?」
「いきなりだな」

 膝に顎を乗せる娘の頭を撫でながら、タクトはサラッと軽く伝える。
 
「魔王様が、みんなを守る為に人間を魔人に変えたからだよ」
「そうなんですか? なんで?」
「おじさんのパパも、いろいろ人間に苦労させられたって言ってたよ。仲良くする為に魔王様はそうされたと聞いた」
「そっか。魔王様の奥さんだもんね。おじいちゃんはニンゲン見た事あるの?」

 興味津々の二人に苦笑しながら、タクトは律儀に応えていた。

「人間が支配する全盛期の世界で生きてたからよく知ってると思うよ」
「「へぇぇーー」」
「今度会った時、聞いてみるといい」
「わかった!」

 再び遊びに出て行くパワフルな子ども達を見送って、仕事に戻るタクト。

 この先も、人間と言う単語は聞くだろう。もはや昔話の中でしか存在し得ない生き物の話しを。
 


「ふふ」
「どうしたタスク」
「魔人の子と兎の子が仲良く遊んでて……感慨深くなりました。本当に平和になりましたね」
「ああ」

 窓の外から見える緑の多い町の中で駆け回る子ども達を眺めるタスク。
 その横でセリアスは、タスクの肩を抱き寄せてキスを落とした。

「魔王様?」
「……ヘルのおかげで、これから先も良いものが見れるぞ」
「ええ、そうですね」

 長い年月を過ごしたタスクは、あの頃とあまり変わらずそこにいた。
 獣人の寿命はとっくのとうに過ぎ去っている。
 長寿の理由は、肌に散った鱗が物語っていた。
 セリアスの魔族化が魔族である牛獣人に影響を及ぼした事を思い出したヘルクラスが、セリアスとの間に授かった子ども達に協力してもらえば、エルフの影響を与えられるのではと考え至った。
 ストールの推測のもと、動物実験を行った結果、エルフ程ではないが老いがとても緩やかになる事が判明。
 タスクはエルフと龍人の遺伝子を身体に溶かして、セリアスと共に居られる長寿を実現させた。
 タスクだけではなく、ホープやラージャも恩恵を受けている。

「セリアス様、デジィさんがまた壁に突っ込んだみたいです!」
「またか……高層建築物の間を飛行するなと何度も言っているのに」
「あっはっは! 笑いに行きましょうか、魔王様」
「ああ。ホープ、ヘルも呼んでくれ。修復費を算出してデジィに請求する」
「はーい。へへへ、デジィさん、平和になったら一気に問題児になりましたね」
「全くだ……針を抜き過ぎた」

 問題児の報告を受け、笑い合いながら現場へ向かう。
 身勝手な野望を叶えた末の世界を見守る魔王として、セリアスはこの上ない穏やかな時間を謳歌していく。
 この先も、ずっと。


END
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...