勇者に敗れた魔王は、野望を果たす為に子作りをする。

7ズ

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16:擬態

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 初夜を迎えた次の日に、ホープは初の出産を経験した。

「六体……ホープ、大丈夫か?」
「ヒュー……カヒュッ」

 出産に伴う快楽にガクガクと内腿を痙攣させ、メスイキが止まらないホープ。
 その腕の中には、我が子がすやすやと眠りながら快楽で溢れた母乳に濡れていた。

「刺激が強過ぎたようだ」
《複数個体産むのにはやはり男でなければ耐えられそうにないですね。子宮だと多産のスペースが取れません》
「……女性に子宮破裂のリスクは負わせられないな」
「ふふ……末っ子だ」

 震えるホープの傍で、タスクは今朝産まれた一体を布に包んで抱いていた。
 周りには興味深そうに末っ子を覗き込む兄弟の触手達が集まっている。

「すぐに下の子が出来る。束の間の末っ子だ」
「っ……はい。そうですね」
「ん、んぁ……はぁ……」

 漸くホープが身体を動かせるようになり、セリアスが甲斐甲斐しく身体を拭き、服を着せていく。

「……不思議な、感覚です……ふへ、触手が生まれるなんて、へへへ……僕の子ども……は、ひひ」

 一生叶わないと思っていた子宝を少々特殊な形で授かったホープはくすぐったそうに笑いながら、ぷーすか眠る我が子に頬を寄せる。

「セリアス様……ありがとうございます」
「こちらこそ……私の子を産んでくれて、ありがとう」
「これからも、いっぱい子作りしましょうね」
「ああ。けれど、無理は禁物だぞ。出産の負担は身をもって知っただろう?」
「うっ……はい」

 シュンと垂れた牛耳を摩りながら、背を撫でる。

「子作りの為に私達は一緒になったのではない。愛し合う為に、助け合う為に……共にある」
「セリアス様……今更ですが、僕が番に加わっても、大丈夫ですか? 仲間に聞いたんですけど、龍人は一夫一妻の文化だって」
「それは龍人同士の文化であって、異種間の私達には関係ない事だ。気にしなくていい。どうか、私の番になってくれ」
「は、ぃ……嬉しいです」

 タスクとホープの肩を抱き寄せながら、セリアスは胸がいっぱいであった。




 だが、それから三日もしないうちに事件が起きた。
 いや、事件というにはあまりに摩訶不思議な神秘的な現象が起きていた。

「ぅ、ぬーー」
「あーぅ」
「…………どういう、事だ?」
「朝起きたら……子ども達が」
「……そっくり」

 子ども達は母体違いの兄弟別に寝床が用意されていたのだが、朝起きて見てみると子ども達の様子が一変していた。

「ス、ストール! ストールストール!」
《はい! お呼びですか魔王様!》
「ストール! この現象はわかるか!?」

 部屋に駆けつけたストールをセリアスが両手で抱き上げて、子ども達の前へ連れて行く。
 つぶらな瞳がストールに集まる。

《あぁ~~~~コレは……》
「だぅ」
「おっおっ」
《珍しい事象ですが、近い遺伝子を持つ触手が集まっていると遺伝子情報にある容姿を集団で模倣する習性があるんです》

 二人の子ども達は、セリアスの持つ青い鱗を体に散らした獣人の姿になっていた。それぞれ母体の特徴も持っている。
 兎の耳と尻尾を持つ赤子と牛の耳と尻尾を持つ赤子がセリアスと同じ金色の瞳でこちらを見つめる。

「何故……?」
《え? 何故ってそりゃ、同じ容姿であれば同族だと思って油断するじゃないですか。苗床獲得率グッと上がります》
「逞しいな」

 所謂擬態というモノだった。

《普通なら五十体以上似通った遺伝子が居ないと起こらない習性なんですが、この子達は魔族二体分の強くて濃ゆい遺伝子があったので少人数で模倣出来たのでしょう。今回は知能が低い段階での結合なので、ほぼ一個体の意識に統一されてますね》
「……僕の子達はタスクさんの子達より少なかったのに?」
《…………あのぉ……セリアス様が、ホープさんの後ろを解す際に、ホープさんの精液も使ったので、濃厚な遺伝子が取り込まれたのかと……》

 初夜におけるセリアスとの前戯を思い出して、ボッと赤くなるホープ。
 考えられる原因としては、それぐらいだ。

「……よいしょっと」

 タスクが抱き上げれば、兎の赤子は何もわかっていなさそうな無垢な瞳で見つめてくる。

「よしよし……俺がわかるか? 生みの親だぞ」
「ぅう」
「ふふ、姿が変わってもお前達は可愛い俺達の子に変わらない」

 タスクの赤子に慣れた抱き方を見習って、ホープも同じように抱き上げる。

「ち、ちっさ。潰しそうです」
「首をココに凭れさせて……そうそう」
「んぶ……あぅ」
『パク』
「「あ」」

 ホープの子が、服越しに乳首を食んでか弱い力で吸っている。

『ちゅぅ……』
「……授乳って、触手に必要でしたっけ?」
《いいえ。飲食は一切必要ありません。ですが、擬態している種に寄せた動きをするので、授乳されたがってるのは事実です》
「そう、ですか」

 おずおずと服を捲って、胸を差し出せばハムっと柔らかく小さな唇の感触があった。

「んっ」
「大丈夫か?」
「はい……んへへ、形だけでも僕の乳が本来の意味を果たせてると思うと、嬉しいです」

 人間の飲み物として搾取されてきた牛獣人の母乳は、本来は子を育てる為のものである。
 ホープは泣きそうな表情で、乳を飲む我が子を撫でる。

「いっぱい飲んで、大きくなるんだよ」
「あぅあ~」
「ストールや他の触手達のように喋れるようになるまで、どれほどかかる」
《個体差ありますが、半年程で言語でコミュニケーションは取れるようになります》
「そうか。ふふ、第一声が楽しみだな」
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