巻き込まれ転移者の特殊スキルはエロいだけではないようです。

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16・要人との接触

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 護衛対象はなんと、この国の第二王子と聖女様だった。

「(要人中の要人じゃねえか……)」

 魔王の亡骸が見つかった森に行く為の道に停められた馬車から降りて来た要人に度肝を抜かれる。
 モモとカムフラはお留守番にしてよかった。

「君が冒険者の護衛役だね。よろしく頼むよ。兵達は対人特化で魔物とはあまり面識が無いものでね」
「なるほど」

 第二王子とは二年前に召喚直後一度だけお目通りがあったが、対話も無く一瞬で終わったのを覚えている。金髪碧眼の線の細い美丈夫で俺でも分かる上質な白い服に身を包んでいた。
 王位継承権のある第一王子が政殿を主に行い、第二王子が国の防衛を行う役割がある。王が命じて召喚した勇者達は第二王子の指揮下にある。
 俺は王子様と聖女様の前で膝をつき頭を下げた。絶対粗相は出来ない相手だ。

「お初にお目に掛かります。光栄にも今回、御二方の護衛を務めさせて頂きます冒険者のジュンイチローと申します」

 俺の行為に第二王子と聖女様は驚いた様子で、特に聖女様は目を丸くさせていた。

「面を上げてくれ。いや……冒険者にここまで丁寧な挨拶をされたのは初めてだ。君は礼儀作法の心得があるようだね」

 顔を上げると、満足気に微笑む第二王子と目が合った。
 聖女様は未だポカンとしている。
 実は礼儀作法なんて知らない。王宮で見た騎士の敬礼を真似ただけだ。

「ボクはこの国の第二王子、ドトーリン・J・エルコンドル。こちらの方は第十五代聖女のマナリア様」

 そんな名前だったな。
 聖女様は縦ロールの銀髪と桃色の瞳が特徴的な女性でスカートタイプの神官服を着込んでいた。小柄で幼い顔付きもあって、一見少女に見えるのだが、成人はしているらしい。

「今回の仕事内容をこの者から聞いておいてくれ。では、貴殿の働きには期待しておこう」

 俺への説明を護衛の騎士任せると馬車へと戻っていった。

「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼むよ。では、歩きながら説明させていただく」

 護衛の仕事内容は、討伐現場の討伐者の手がかり探しとの事。魔王が居なくなって魔物が戻ってきているので、遭遇した場合は俺に魔物の相手をして欲しいのと、一応討伐者の手がかり探しへの参加だった。
 調査期間は二日間。野宿も予定しているようだ。
 
「あの御二方が直々に現地へ足を運ばれるなんて、相当な事では?」
「ああ。マナリア様もドトーリン様も勇者達の為に早く討伐者を見つけ出したいようで、自ら調査に乗り出された」
「え? 勇者様の為にですか?」
「俺も詳しくはわからないが、調査の動機はそれだろう」
「なるほど……ありがとうございます」

 護衛任務に当たる騎士と少し話しながら目的地に向かう中、馬車から自分に向けられる視線に何一つ気付かなかった。

「……冒険者は粗暴で下品な方が多いのに、あの方は見た目に反して礼儀正しく控えめな男性でしたね」
「おや? 聖女様が男性を褒めるのは珍しいですね。確かに、精一杯我々に礼儀を尽くそうとした姿勢は好印象でしたが、相手は冒険者。しかも……明らかにステータスの偽装をしている」
「偽装……何か訳ありでしょうか」
「……どうでしょうね。ただの良い人である事を祈るばかりですよ」



 現在偽装している俺のステータスはこんな感じ。

名:ジュンイチロー
LV:30
HP:2900
MP:1500
ATK:900
EDF:1050
スキル:気配遮断、生成術Lv2、鑑定Lv1

「(変なところは無いと思う。それに、二人も鑑定妨害の魔法具を付けているのか、鑑定が出来なかった)」

 まぁ、王族が丸見えにさせておくわけないよな。
 道中で魔物に遭遇する事は無かく、無事討伐現場に到着した。

「それでは、調査を開始する。攻防のあったであろう現場一帯をくまなく探すように!」
「「「ハッ!!」」」

 王子の指示に従い、俺は改めて戦闘現場を見渡した。

「ジュンイチロー殿は、ボクと行動を共にしてもらう」
「分かりました」

 王子と二人きりで行動する事になったが、信頼のまだ薄い冒険者と王子が二人きりなんて……いいんだろうか? 
 別に何もしないけど。
 丘に登って、俯瞰で現場を見渡す。

「冒険者の貴方は魔王討伐者をどう思う? この戦闘規模に火炎放射の被害範囲」
「苦戦したのは確実です。複数人で討伐したのでは?」
「初めは我々もそう思った。だが、ココに残っていた人の足跡は一種のみ。魔物使いの可能性もあったが、魔物特有の戦闘痕が現場には残されていない」
「(なんだか、犯罪捜査に協力する犯人の気分だ……胃がヒヤヒヤする)」

 魔物特有の戦闘痕か……まぁ、モモの戦闘痕は無いだろうな。地面に立てる爪も抜ける毛も無い。血さえ出ないからな。草が押し潰されている場所もあったが、火炎放射で炭と化し、ほんの一部の草が潰れているだけだ。
 丘の上で手がかりを探すが、やはり討伐者の手がかりになりそうなものは見つからなかった。

「特に収穫出来るものはなかったな」

 王子が諦めて別の場所に向かおうとした時、王子が何かに気が付き、足を止め、振り返った。俺も釣られて振り向くと、そこには一本の木。

「王子?」
「……ジュンイチロー殿、こちらへ」

 王子に呼ばれて木に近づくと、幹に凹みが出来ていた。
 そしてこの位置から見える景色にドキッと心臓が跳ね上がる。

「この部分、何かが食い込んだ痕跡に見えないか?」
「……た、確かに」

 黒竜から身を隠してモモとセックスした場所だ。イった時に指先が木にめり込んだ跡だ。
 王子がスルリと幹にしなやかな指を這わせて窪みに指先を入れる。

「……5本、人間の指だな。しかも、男の。まだ新しいが昨日今日ではない」

 王子の視線が上から下へ動き木をじっくり観察している。

「ジュンイチロー殿、ココに少し立ってくれるか?」
「はい……」

 恥ずかしいのを顔には出さず王子の指示通り木の前に立つ。
 
「窪みに指先を嵌めるようにしてくれ」
「こ、こうですか?」
「ああ。そのまま……」

 俺の視界の端から急に王子が消えたと思ったら、ガッと腰を掴まれた。

「うっ! びっくりした……」
「すまんな。もう少し屈んで腰を出してくれ」
「?」

 言われるがまま、実行して腰を突き出す姿勢にさせられる。
 その状態の俺を様々な角度から観察する。
 そして、俺から視線を離した先には……

「(ん? なんか変だな)」

 木の根元の草だけが異様に伸びている。目に付く程には伸びている。
 その位置は、俺が飛び散らせた精液が落ちた場所だった。

「……ふむ」
「あ、あの……終わりました? もういいでしょうか……この格好は、少々恥ずかしいのですが」
「…………」

 ダメだ。平静を装えず、顔が赤くなってしまう。俯いて腰を突き出したまま、王子の言葉を待っていたら……

「街の噂では……男娼が魔王を討伐したと聞いていた。与太話にも程があると思ったが、もしかしたら事実かもしれんな」
「!?」
「この場で事に及んだ形跡だ……そういう性癖の持ち主なのかな?」
「こんな場所で? 正気では無いでしょう……」
「そうだな」

 俺の言葉に同意しながら、王子は後ろから俺に覆い被さってきた。
 何故急にこんな事を……振り払いたいが、国の王子相手に暴力は震えない。
 王子の指が俺の胸元から際どい股座までなぞる。

「魔王を討伐する程の者が正気なわけがあるまい」
『スリ……スルリ』
「王子……お戯が過ぎますよ」
「戯れてなどいない。致したとなれば、二人組の可能性が導き出される」

 グッと王子の腰が押し付けられて、腰が揺れそうになるのを必死に耐える。

「おっと、指先に力は込めるな。貴重な手がかりが台無しになる」
「っ、申し訳ありません」

 王子がやっと覆い被さっていた身を引いてくれた。
 許可は得てないが、もういいだろうと姿勢を正して王子の方を見ると……折り畳まれた紙を指先で弄んでいた
 
「手ぐせの悪い事をしてすまんな。鑑定妨害のスクロールを身に付けている者と行動を共にするのはこちらも気が抜けん」
「!?」

 胸元を見ると折り畳んで身に付けていた鑑定妨害のスクロールが2枚抜き取られていた。先程のいやらしい手付きは演技か。

「ぉ、王子……コレには訳が……」
「訳なら、ステータスに語ってもらおう」
「!」

 俺は無意味にバッと顔を覆って、蹲った。

「!? コレは……ぁ、いや、そんなはず」
「王子……勘弁してください」

 王子は動揺していた。
 恐らく、俺のスキルを見たからだろう。隠したがる理由を。

名:ジュンイチロー
LV:30
HP:2900(+2500)
MP:1500(+500)
ATK:900(+500)
EDF:1050(+500)
スキル:搾精超強化Lv1、肉体性感度(高)、鑑定Lv3

「搾精……」
「言わないでください……」
「……ぁ、す、すま……本当にすまない。ジュンイチロー殿……まさか、このような」

 ふぅーーバレてないバレてない。
 鑑定妨害はもう1セットブーツに仕込んである。隠す理由を見せる為の二重の妨害工作。モモの案だ。
 大金叩いて買った甲斐があった。

「不信感を抱いたからと、このような方法で暴かれるのは些か心外です」
「そ、そうだろうな。だが、これは必要な事なんだ。許してくれ」
「…………言いふらさなければ、この事は無かった事にします」

 王子から妨害スクロールを受け取り、再び胸元に仕舞う。
 少し気不味い雰囲気が流れるが、王子からの警戒は無くなりその後の調査はスムーズに進んだ。
 木の窪みに関しては、二人組の可能性があるのだが、戦闘現場には一人だけ。
 謎は深まるばかり。

 日が暮れ、薄暗くなってきた頃に野営の準備が行われていた。
 俺も夕飯作りに参加する。
 食材が豪華だ。流石王族。
 
「手際が良いですね」
「炊事は慣れているので」

 野菜を切り、肉の筋を取り、火の通りの順番を考えて鍋に入れ、調味料を入れていく。
 良い香りが野営地に立ち込める。

「中々に腕が良いな」
「光栄です」
「味見をしても?」
「ぁはい」

 俺が作ったスープを王子がスプーンで味見する。

「毒は入れてませんけど、毒味役通さなくて良いんですか?」
「ジュンイチロー殿はボクらの命を狙っているような人ではないと、理解した。その証明と受け取って欲しい」
「……わかりました」

 命懸けで信頼の証明をされてしまったら、もう何も言えない。
 皆で食事を摂った後、今日の収穫の報告と明日の調査範囲の話し合いを行った。

「焼け焦げた地面に残った足跡、木に残っていた指の跡、魔石を掘り返した場所に獣の爪痕……決定的な手がかりでは無いが、少しづつでも討伐者の姿を定める要因となっている。朝からの調査ご苦労だった。明日に備えてしっかり休むように」
「「「ハッ!」」」

 見張りを立てて就寝となった。
 初めの見張りに俺も立っていたが、森に音が戻っている事を改めて実感した。

「(夜鳥の鳴き声……虫の音、小動物の動く音)」

 あの夜は全くしなかった音達が戻っている。
 焚き火の光を警戒して魔物は寄ってこない。

「…………」

 モモが隣に居ない夜は久しぶりだ。
 寂しいと言うか、それを新鮮に感じてる自分を知る。
 もう生活の一部になっているんだ。隣に居るのが当たり前。その当たり前が形を変えても続いていけるように、今を乗り切ろう。
 腹部を撫でて、きっといつか来るであろう未来に想いを寄せた。

「交代の時間です。冒険者殿も休まれてください」
「ああ、ありがとうございます。何かあれば遠慮なく起こしてください」
「はい」
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