巻き込まれ転移者の特殊スキルはエロいだけではないようです。

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10・体温の浸透

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 勇者負傷の話を聞いて半年。
 今のところ勇者の動向を耳にしないが、そろそろ復帰してもいい頃だ。恐らく魔王との再戦に向けて万全を期す為、鍛錬に励んでいるのだろう。
 ギルドの掲示板には魔王討伐依頼の紙が未だに貼り付けられている様子から、まだ時間はある。
 討伐依頼も程々にこなして、バトルアックスにも慣れて自在に動かせるようになった。実践経験を積み上げ、レベルを少しでも上げておく。
 娼館では、俺の身体が評判となりバイトへ行く度に多くの人に精を貰った。
 レベル3になったら、より名器になってしまったので一回の射精で搾り取るナカの蠕動に耐えきって二回戦に持ち込めるのは性欲が人並み以上に強い人ぐらいだ。
 一人一回の射精では、抽出確率は低い。
 
「ジュンイチロー」
「支配人、お疲れ様です」
「お疲れ様でした。今日のチップです」
「また多いですね……」
「それと、コチラを」

 支配人から差し出されたのは、無加工ながら美しい輝きを放つ石だった。

「コレは……?」
「魔石です」
「(魔石……初めてちゃんと見た。鑑定)」

魔石:体内で生成される魔力の元。大きく、そして高純度の魔石は価値も生成魔力量も跳ね上がる。

「太っ腹なお客様がいらっしゃったようでして、コチラをチップにされたようです。なのでコチラは君のモノです。来るべき日が近いと思うので、装備もきっちり整えておきなさい」
「わかりました」

 魔石を使用した装備品は防御力だけではなく魔法への耐性も上昇させる事が出来ると聞いた。武器や防具で身を固めて備えるのがベストだな。
 
「腕利きの鍛冶屋を知っています。私の推薦状を持って行けば事はスムーズに進みますよ」
「何から何まで、ありがとうございます」
「未来への投資は当然の事ですよ。この店の利益にもなりますし、死なずに生きて戻ってください」

 そう言って笑みを浮かべる支配人はとても優しい顔をしていた。
 支配人が利益を上げたがるのは従業員の為だ。ただの商魂逞しい守銭奴ではないのを最近知った。
 サポートしてくれた支配人の恩義には報いたい。
 
 俺は魔石を持ってモモを引き連れて早速紹介された鍛冶屋へ赴いた。

『一回目の遠征に向けて装備を整えるのは賛成だが……その魔石をチップにする程、お前に熱心な奴がいるのか』
「ありがたい事じゃん。しっかり使わせてもらおう。こんにちはー」

 武具のマークのある店に入ると筋肉隆々の強面男が奥に座って居た。俺が入ってくるなり眉を寄せて睨んでくる。
 
「なんだ?」
「あ、あの」

 ドスを効かせた声を向けられてビクッとするが、俺は怯まず用件を口にした。

「この魔石で防具を作って欲しいんです」
「……ほぉ、純度の高い二級の魔石だ。それにこの大きさ。金貨一枚はくだらない」
「き、金貨!?」

 金貨一枚って……俺の感覚からしたら10万円だ! 10万円以上のチップを受け取ってたのか俺は! モモが訝しがるわけだ……やべえもん。

「なんだおめぇ……魔石の価値もわかんねえで、俺に頼みに来たってのか?」

 男は苛立った様子を隠さず、威圧感を剥き出しにして立ち上がると、こちらに向かって来た。デカいし怖い!

「ひぇ、すみません……あの、腕利きの鍛冶屋としてココを紹介されたので……」
「あ? 誰にだ?」
「コチラを……」
「?」

 支配人の推薦状を男に渡すと、目が文字を追う毎に男の眼光が強くなった。

「支配人の紹介か……って、事はあの娼館の男娼って事だな」
「は、はひ」

 ジロジロ見られると恥ずかしい……しばらく見つめられると納得がいったようで男は口を開いた。
 さっきまでの刺々しい雰囲気は鳴りを潜めて普通になっていた。

「なるほど。その異様なステータス値は確かに搾精スキル持ちのそれだな」
「!」
『ジュンイチロー、コイツは鑑定スキル持ちだ』

 モモ以外で初めての鑑定スキル持ちに出会った。

「俺はゲンゾウ。同じ穴の狢の誼みだ。安くしてやるよ」

 そう言った彼の言葉はどこか嬉しげで、誇らしさがあった。

「同じ穴の? もしかして……」
「俺もあの館の男娼の出だ。親父の店が潰れて借金抱えてた頃、あそこの世話になった。今じゃこんなナリだがな。支配人にはすげぇ世話になった。彼からの直伝なら喜んで引き受けてやるよ」

 支配人の人望はすごいな。
 コレは益々客寄せパンダになれるよう頑張らなければ。

「防具だけでいいのか?」
「え?」
「こんだけ立派な魔石の防具に対して武器が貧相過ぎる」
「そうなんですか?」
「物の価値がわかんねえ奴だな……他行ってたらぼったくられてたぞ」

 ああ……だから支配人は俺に彼を紹介してくれたんだな。
 モモからスキル内容を聞いたところ、鍛冶職人らしいスキルを持っている。

名:ゲンゾウ
LV:27
HP:1550
MP:2000
ATK:720
EDF:730
スキル:生成術Lv4、鑑定Lv3、熱耐性(中)
     ∟複製術Lv2

 生成術とは、素材から加工工程をすっ飛ばしてアイテムを生み出す技能だ。
 スキルレベルが上がる程より大きな物が作れるようになり、生成したアイテムの性能は素材の品質に依存する。
 勿論、加工工程の知識が無ければ生み出すアイテムの形を模っても見た目通りの性能は得られない。

「店の奥で身体の寸法を測らせてもらうぜ」
「よろしくお願いします」

 採寸の為に部屋に入って衣服を脱ぐ。

「おい、下まで脱ぐな」
「あっ! 癖でつい!」
「その癖絶対他所でやんなよ!」

 娼館での癖で下着まで脱いでしまっていた。急いで服を整えて採寸をしてもらう。

「ステータス値には見合わない普通の身体だな」
「これでも筋肉付いたんですよ」

 毎日バトルアックス振り回してるおかげで腹筋もシックスパックになったんだ。
 ゲンゾウさんに比べたら貧相だけど。
 
「ジュンイチロー……推薦状のこの部分なんだが……」
「はい?」

 ピラっと支配人が渡してきた推薦状に目を通すと、そこにはゲンゾウさんに宛てた丁寧な文章が綴られていたが、最後に付け加えられていたのは──

「……出来るならば、床入りも許可して欲しい、と書かれていますね」
「…………俺は、支配人の願い出なら仕方ねえから受け入れるが、お前はどうなんだ?」
「構いませんよ」

 即答するとゲンゾウさんは神妙な表情で俺の肩にポンっと手を置いた。

「ジュンイチロー、搾精の事もあるがあまり外でポイポイ足開くなよ?」
「ひ、開きませんよ!」
『野外でご開帳してた癖に』

 うるさいぞモモ! もうゴブリンの巣にレイプ突撃かましてないだろ!

「支配人が信頼してるゲンゾウさんなら、俺も安心して任せられますから」
「そうか。なら、今からヤッとくか」
「まだ午前ですけど!?」
「先に面倒毎片した方が気兼ねなく作業に取り掛かれるだろ」

 貞操観念というか、セックスへの気軽さが俺の事言えないと思う!
 けど、作ってもらうのに文句は言えない。効率的に作業が出来るなら、それが一番良い方法だ。

「あー……そんじゃ……ヤるか」
「はぁ……」

 なんだろう……なんか恥ずかしいな……そういえば、娼館じゃ人の顔見てシた事ないや。

 採寸部屋より奥の畳の寝室があった。仮眠部屋らしい。
 面と向かってお互い服を脱ぐ。

「下脱ぐのも間違ってませんでしたね」
「うるせえ」

 裸になると、やっぱり鍛えられた肉体美があって、思わずドキッとした。トキメキでは無く、男としての焦燥感で。
 
「(自分が貧相に見える……)」
「なんだ」
「いえ、何も」
「……あんま期待すんなよ」

 妙に哀愁を纏うゲンゾウさんが俺をうつ伏せに薄い布団の上の押し倒して、俺の尻を鷲掴みにした。

「……本当に、男娼やってたんだな」
「どこ見て言ってるんですか」
「ココ」

 ゲンゾウさんの指先が、俺のアナルに触れる。

「んぁ!」
「ココが女性器みたいに縦割れしてんだよ。ヤられまくってなきゃ普通はこうはならない」
「っ……そう、ですか」
『ツプン』

 俺の縦割れアナルは簡単にゲンゾウさんの太い指を飲み込んでいく。

「ふっ、ぅ、く……」
「痛いか?」
「へ、いき、です……」
「……ナカの動きが異様だ。しかも愛液みてぇな分泌液が溢れてくる」

 俺の身体はセックス特化で、いやらしい気持ちになると潤滑油無しに自分でトロトロに濡らしてしまう。
 排泄器官として不備無く動くのに、こういう時は敏感な性器に早変わる。

「(自分の身体なのに……よくわかんねぇ作りになってく……)」
『チュプ……ズルン』
「ひっ……」

 ゲンゾウさんが俺のアナルから指を引き抜くと、その指先とアナルの間に糸が引いていた。

「この具合なら挿れても大丈夫そうだな」
「はい……」

 ゲンゾウさんが傍らに準備していた酒瓶を持ってグビっと呷る。

「酒の匂いがしません。なんですか?」
「コレは精力剤だ。コイツが無えと、俺はもう勃たない」

 男娼時代の後遺症だと言う。
 後ろを教え込まれて勃起不全になる男娼もそれなりに多いとゲンゾウさんが教えてくれた。

「よし、もう挿れるぞ」
「はい……」

 俺のアナルにゲンゾウさんの大きなモノが当てられる。
 熱い、脈打ってるのがわかる。
 ドクンドクンと、まるで心臓のように。
 そして、ゆっくりと侵入してくる。
 さっきまで解されていたとはいえ、大きな肉棒を迎え入れるのは息が詰まる。
 
『グプ……ズズ……ヌグン』
「はっ……ぁ……あッ」

 俺に覆いかぶさるようにゲンゾウさんが大勢を低くして、俺を抱え込むように肘をついてゲンゾウさんは腰をゆっくり進めていく。

「ぅ、すごい……な……コレは」
「んんッ……ンーーッ!」

 俺のナカはゲンゾウさんを離さないと言わんばかりにキュウっと締め付ける。
 ゲンゾウさんの荒い息遣いが耳元でする。
 背中に分厚い胸筋と腹筋がゴリっと当たる。
 ゲンゾウさんが少し身じろぎすると、太腿同士がぶつかる。
 初めてだった……初めて、人とちゃんと一対一でセックスしている実感が急に湧いた。

「ふぁ、あっ! ひっ!」
「挿れただけでイってんのか? ナカは凶悪だが、初心な喘ぎ声は可愛いじゃねえか」

 押さえつけられるように俺を抱き締めて、そのまま釘打ちのような上下の抽送で責め立てられる。
俺の前立腺がゲンゾウさんの下腹部で潰されて、擦られて、突かれて、押し込まれる。
 パンッ! パチュン! ジュブ! 肌と粘膜が激しくぶつかり合う粘着質な音が部屋に響く。もう聞き慣れているはずなのに、和室の風景に背徳感を覚えてドキドキしてる。
 ゲンゾウさんが俺の頸に歯を立て、甘噛みをする度にゾクッとする快感が全身を襲う。
 ゲンゾウさんの動きが更に激しくなる。俺の腸壁を削るような動きから射精に向けての動きに変わる。


「ジュンイチロー……ッ! 出すぞ……ナカに、全部ッ……ッ!!」
「ぁ、あッ……あぁあーーッ!!!」
『ドプッドプン……ゴポッ……ビュルルルル』

 奥の奥に叩き付けられるような熱くて粘っこい精液。
 量が多いし、とても濃く感じだ。
 ゲンゾウさんのモノが抜かれても、まだジンジンと奥が痺れている。
 身体が余韻に震えて息が上手く整えられない。
 ゲンゾウさんも、大きく肩で息をして汗をかいていた。
 二人共しばらく動けなかった。
 ゲンゾウさんが俺の横に寝転んで、背を摩ってくれた。
 俺は無意識にゲンゾウさんの腕に抱き着いて、持て余した余韻の熱に耐える。

「……久しぶりだ」
「?」
「久しぶりに前だけでちゃんと感じて出せた。やっと元の自分に戻れた気がする」
「…………そうみたいですね」

 スッと下を見遣ると、一回萎えた筈のゲンゾウさんのモノが完勃ちしていた。

「精力剤の影響ですか?」
「いや、お前の影響だ……男って単純だよな、本当。下半身事情の解消がこんなに安心出来るとは思わなかったぜ」
「……もう一回シます?」
「いや、一回じゃ治んねえからいい」
「何回でも付き合いますよ」

 俺の誘いに、ゲンゾウさんは苦笑して了承してくれた。
 その後、間に数分のインターバルを挟みながら交わった。
 騎乗位で俺の尻を掴んで揺さぶったり、正常位はお互いに腰を打ち付け合って獣のようなセックスを何度も繰り返した。

「うぁ……はぁ……ん、ふ……ふぁ……」
「はぁ……ふぅ……暑」

 俺達はお互いの体液でドロドロになっていた。
 潮吹きまでしてしまったので、布団の染みはほぼ俺。
 最後は対面座位の体勢になって、俺がゲンゾウさんの首に腕を回し、ゲンゾウさんが俺の腰を両手でガッチリ押さえて腰を振る。
 俺は人肌の温もりと快楽に酔いしれる。

「はぁ……はぁ……はぁ……ジュンイチロー……」
「ぅ……はい?」
「もうすぐ、昼だ。一旦、離れねえと……やべぇ」

 離れないとこのまま延々としてしまいそうだ。
 離れ難い。せめて、もう一回だけ。

「うっ! おま、腰振んな! ぁああ、クソ!」
「ごめんなさい、もう少し、あと一回……ふ、んん!」
「この……淫乱が……ッ!」
『ズリュ、ズチュ、ズププッ!』
「あ、あぁあ、イく……また、出ちゃ! ひっ……あッ!」 

 結局もう一回が続き、抜かずの三発を貰って漸く落ち着いた。
 モモが不機嫌になりながらも台所を借り昼飯を作って持ってきてくれた。
 距離を開けてお互い布団の端っこで飯を口に運ぶ。
 チラッと横を見ると目が合う。ゲンゾウさんはバツが悪そうな顔をして、すぐに視線を逸らされた。

「こんな予定じゃ無かったんだが……」
「え? 何か言いましたか?」

 呟いた言葉を聞き取れず、聞き返すとゲンゾウさんは頭をガシガシ掻いて溜め息を吐く。

「何でもねぇよ。ただ、こんなにハマっちまった自分が情けなくて仕方無ェってだけだ」

 照れ隠しなのか、ぶっきらぼうに答えてそっぽを向いてしまった。
 その様子に思わず笑ってしまった。

「笑うなよ」
「へへ、だって、俺も同じですよ。ゲンゾウさんとのセックスが良過ぎて、時間を浪費させた事が申し訳ないですもん」
「お前なぁ……男娼の営業トークみたいな事言うんじゃねえよ」

 呆れたようにゲンゾウさんが笑う。スッキリとした顔付きだ。強面だった顔が柔らかくなった。眉間の皺もない。
 昼を済ませたら、体を清めて一旦お暇する。

『……いつもと違った』
「ん?」

 帰り道の途中でモモがポツリと漏らす。
 ゲンゾウさんとする俺の様子が今までとは違う事を言っているようだ。俺のセックスを見てきたモモだからわかる変化だ。
 

『ステータスの為じゃなく、性交渉の快楽の為でもなく……なんと言うべきか……安心? 充実感、か? 何だったんだ?』

 俺達のセックスがエゴ的に見えなかったようだ。
 求めているモノがステータスでも快楽でもない。

「(ぶっちゃけ、ステータスも快楽もあわよくば得たいって思ってたけど……人肌の温もりに触れてのセックスだったから、いつもと違う多幸感があった)」

 モモとする時も胸の奥がホワホワするけど、それとは違う。
 
「……他人の体温に浮かされたんだ」
『体温……』

 俺の返事にモモは家に着くまで考え込んでしまった。
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