巻き込まれ転移者の特殊スキルはエロいだけではないようです。

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6・昇級試験

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モモが言っていた事がよーーくわかった。

『ビュルル、ビュク……』
「ンっ……」
「はぁ……なんだ、この穴」

 俺のナカがかなりの名器になっているらしく、挿れて数秒と持たず射精してしまうようだ。
 昨日のみんなの射精ペースが早かったのは、コレの前兆だったのか。
 中出しの回数も稼げて、お客様も気持ちが良いと言ってくれるが……俺は生殺し状態だ。焦らしプレイをされている気分。
 目的は中出しだけど、これはこれでキツい。もっと突いて欲しい……足りない。
 身体の疼きに堪らず壁向こうの腰が妖艶に揺れる。それに感化されたお客様が相手をしてくれるが……

「はぁ……はぁ……はぁ……んん!」
『ジュポ……ビュク!』
「んぐぅ! すげぇ、搾り取られるッ」
『ビュルン、ビュル!』
「はぁ……あっ」

 こんな調子だ。
 空腹時、口に飴を突っ込まれるも、すぐに引き抜かれてお預けを食らっているような気分だ。
 俺の立場は男娼なので、お客様が満足してもらう事が第一だが、身体を苛むもどかしさに思わずはしたない声が出てしまう。

「はあ……あ……ンッ……ンッ、もっとぉ」
『ニュポッ、ズプッ』
「んあッ、あ!」
『ビュッ、ビュルル』

 早く出して終わってくれるのが最善だけど、長く繋がっていたいと思ってしまうのは、俺自身がこの行為を楽しんでいるからだろうか?
 俺ってやっぱりエロいのかな? だからこんなスキルを授かったのかな?
 自分の知らない一面に気付いて、どうしようもなく淫乱な自分が恥ずかしくなった。
 勇者達の手助けになりたいって思ってやっているこの行為が酷く浅ましいモノのように感じて、涙が溢れてくる。
 枕に顔を埋めてそんな事をぐるぐる考えていると、待ち望んでいた感覚が突如やってきた。

『ジュプン!』
「ッッ~~~~」
「くは……凄いな」

 二突き出来れば良い方だったハズなのに、俺のナカを気にせず、三、四と連続してピストン運動を繰り返す。

「アッ、あ、あ、あぁ!」
『グチュ、ヌポン!』
「凶悪なもん持ってんな……けど、これなら」

 焦らしに焦らされ、溜まっていた欲が絶頂の波となって押し寄せ、全身を駆け巡る。

「遅漏の俺でも、普通になれる」
「んああ、きもちぃ……イ、く。イく、イっちゃ……く、んんんん!」

 鋭くなった感覚にダイレクトな快感が打ち付けられ、筋肉が収縮を繰り返しビクンっと跳ね上がる。

「うっ! 出る!」
『ビュゥーー! ビュクン、ビュルル……』
「ぁ、ああ……すごぃ……」

 身体を震わせながら、何度も襲ってくる快楽の余韻に浸る。
 早漏も素晴らしいけど、遅漏も素晴らしい。なんて、現金な考えが浮かぶ。一回イったらスッキリして、ネガティブな思考がリセットされたようだ。
 やっぱり性的な欲求不満はダメだな。心の毒。
 この日の成果は、こんな感じ。

名:ハラノ ジュンイチロー
LV:15
HP:100(+2861)
MP:0(+321)
ATK:5(+321)
EDF:5(+321)
スキル:搾精超強化Lv2、肉体性感度(高)

 スキルレベルの影響か、数値の上がり幅が尋常じゃない。
 チップも貰えたし、今日もモモに美味しい物を買って帰れる。
 
※※※

 それから数日後、久しぶりに冒険者ギルドへやってきた。モモが必要なので、肩に乗せて連れていく。

「ジュンイチローさん、お久しぶりですね」
「お久しぶりです」
「今日も薬草採取されていかれますか?」
「あ、いえ。今日は……昇級をしたくて」
「え!!」

 俺の言葉に受付嬢どころか周りの顔見知りの冒険者まで驚きの表情でこちらへ顔を向けられた。
 それもそうだ。二年間ずっとE級でぬくぬくしていたおっさんが急に昇級を希望すれば、何事だと思うだろう。

「えぇっと……昇級ですね。お伺い致します」
「とりあえず、依頼達成数ならC級までの数、満たしてます?」
「はい……C級までなら即、昇級承認は出来ます。B級の昇級にはA級相当の討伐依頼を二回熟すか、もしくはギルド専属の戦闘指導員から一本取るのが条件になります」
「……じゃ、戦闘指導員の昇級試験を受けます」

 ザワザワッ!

 戦闘指導員の昇級試験を受けると伝えた途端、周囲がざわつき始めた。
 
『ジュンイチロー、私が出来るのは鑑定で相手の数値を教える事だけだ。この身体では戦闘の手助けは出来ない』
「大丈夫、頑張るよ」

 ギルド内にある修練場へ赴くと、俺の試験を見ようとギャラリーがゾロゾロと集まってきた。

「ジュンイチローじゃないか。お前が修練場に来るなんて珍しいな」
「お久しぶりです。ゴドーさん、早速コレを」
「?」

 冒険者ギルドで戦闘指導員として働く元A級冒険者の剣士であるゴドーさんに、受付嬢がくれた昇級試験の書類を手渡す。

「……本気か?」

 空気が変わった。肌を突き刺すような緊張感が漂う。
 周囲の視線が俺へ一斉に集まる。

「俺は、本気です」
「あんまり言いたくないが、レベル15のお前が勝てる程、俺は弱く無いし手加減も出来ねえぜ?」
「……承知の上です」

 俺の覚悟を感じ取ったのか、ゴドーさんの目に鋭さが宿る。
 二年間、常識知らずな俺に良くしてくれたギルド職員の中で、俺を一番気にかけてくれていたのはゴドーさんだ。
 弱くて警戒心も薄く、無知故に危険な目にも遭ってきた俺をいつも心配して話しかけてくれた。
 前に怪我をした時も、手当てしてくれたのもゴドーさんだった。
 俺の弱さを俺と同じくらい知っている人だからこそ、この昇級試験に俺が挑む無謀さを悟っている。

「昇級試験の申請書を提出されたからには、しっかりやるが……ポーション効きにくい体質だからって怪我してビービー言うなよ?」
「はは、言いませんよ」

 木刀を手渡され、双方位置につく。

『いいか? ヤツのステータスを伝える。よく聞け』
「ん」

名:ゴドー
LV:28
HP:2800
MP:1300
ATK:750
EDF:785
スキル:葉狩流剣術(中)、堅牢Lv3、自動防御Lv1

『以上だ。葉狩流は守りの剣技。長引けばこちらの不利になる。ジュンイチローのレベルで油断してるが、油断の隙は初手しか通らない。つまり、一撃で決めなきゃ勝ち筋はない』
「わかった」

 開始の声と共に構える俺に対し、腰を落とし木刀を低い姿勢で構えるゴドーさん。

「(……一本取るのは、相手より早く身体の何処かに一撃を入れる事)」

 素人丸出しの構えで、木刀を握りしめジリジリと近付く俺にゴドーさんが哀れみの失笑を零した瞬間、俺は地面を思い切り蹴り上げて一気に距離を詰めた。

『ドンッ!!』
「ッ!」

 自動防御のスキルが発動したのか、ゴドーさんの力量か、俺の爆発的加速に驚きながらも反応し、身に迫る木刀を弾く為に素早く横一閃を振るった。
 往なすと減速してしまう。

「(だったら!)」

 斬撃を跳躍で飛び越えた。体感時間がスローモーションのように遅く感じるのは集中力の影響か。
 ゴドーさんと目が合ったまま、俺は飛びかかるように木刀を振り抜いた。

『バキィ!!』
「「!」」

 首に直撃するギリギリで、柄頭で防がれるも俺の木刀が嫌な音を立てて折れた。
 力を入れ過ぎたようだ。
 しかし、武器が折れても諦める気はない。これだけ接近出来れば十分だ。
 掌に集めた魔力を瞬時に変換して地面へ放った。

「ファイアー!!」
『ボワァ!』
「なっ!」

 自分とゴドーさんを巻き込んだ至近距離で炎の魔法を発動する。
 魔法の初歩の初歩である、薪に灯すだけのファイアーも、火達磨になる程に火が大きければ脅威に変わる。
 炎の中でゴドーさんは信じられないと言いたげな表情で俺を見ていた。
 俺は魔法が使えないと散々言ってきたし、それは事実だ。けれど、今は使える。
 
『ドン』
「……一本」

 両足が地面に着いたと同時に、ゴドーさんの胸部に折れた木刀の断面を押し当てた。
 
『バシャン!!』
「んぇ!」

 外野が火達磨の俺達を見て水魔法をぶっかけてきた。

「ジュンイチローが魔法使ったぞ!」
「試験を命懸けでやってんじゃねえよ……心臓に悪い」

 ギャラリーが騒ぎ立てる声を聞きながら、びしょ濡れになったゴドーさんを見上げる。

「……びっくりしました?」
「…………そりゃ、もう……いろいろと」
「ふふん。頑張って調整したんですよ。消し炭にならないように」
「お前、レベル虚偽ってんじゃねえよな?」
「してませんよ。なんらもう一回レベル判定します?」

 俺のレベルは15だ。
 けれど、ステータスはこの数日で結構上がってる。

名:ハラノ ジュンイチロー
LV:15
HP:100(+6726)
MP:0(+620)
ATK:5(+755)
EDF:5(+755)
スキル:搾精超強化Lv2、肉体性感度(高)

 MPは魔法の練習で少し減っているが、問題無い。
 この数日の間に二回もモモに抱いてもらったし、ジョッキも一杯だが飲めている。
 ステータスだけなら、ゴドーさんを多少上回っているが、やっぱり経験値の差が出たな。

「一本取られたからには、昇級を認めるが……あんな死にに行くような戦い方はするな」
「二度としませんよ」

 B級に昇級出来た。うん。十分だ。
 燻っていたE級から一気にB級に昇級した冒険者の前例は無く、ギルドは必要書類を掻き集めるのに慌ただしかった。申し訳ないな。

「なんだよぉジュンイチロー、魔法使えるなら言えって」
「つか、あんな身のこなし出来るなら森狼フォレストウルフなんか瞬殺だったろ」

 仲良くしてもらってる冒険者のリュウさんとエルミズさんに肩を組まれて昇級祝いの食事を奢ってもらっている。
 モモは机の下でモシャモシャと魚を食べている。

「同じランクになったなら討伐依頼の争奪戦にジュンイチローも加わるのか」
「討伐依頼は報酬額が高いですからね」
「その通りだが、あの討伐依頼だけは当分無くならねえだろうな」
「ああ……魔王の討伐依頼ですか?」
「そう。勇者クラスじゃねえと無理だってあんなの」
「まぁBの俺らにゃ関係ないけどな」

 酒を呷り、笑う彼等につられて俺も笑う。
 良い無関心さだ。

「(E級じゃ、魔王に近付く隠れ蓑の依頼が無い。B級なら、近場の討伐依頼を受けて接近出来る。魔王討伐を公でやる気はない)」

 そんな事したら、王の元に呼び戻されかねない。
 俺が搾精スキルを使う事を受け入れていると知れば、自由の無い肉便器にされてしまうかもしれない。
 勇者にも、肉便器にもなりたくない。
 いや、そもそも王は搾精スキルを与えられた俺に同情するぐらいの良心があるから、そこまで待遇は悪くないだろうが……人間兵器には、絶対なりたくない。

「今日も行く?」
「あ、あの男色の娼館?」
「女より良い穴があるって聞いたぜ」

 別のテーブルの世間話が耳に飛び込んできて、顔を咄嗟に伏せてしまった。

「ジュンイチロー?」
「ははーん……さてはお前、ああいう話題苦手なのか?」
「苦手とかじゃなくて……ちょっと恥ずかしいだけです」
「それを苦手って言うんだよ。その歳で初心なのはちょっと引く」
「ええ……」

 好き勝手言われてしまった。
 まぁ、けど、おっさんが乙女のようなに恥じらうのは気持ち悪いよな。
 笑って下ネタ言えるぐらいがちょうどいいんだと思う。

「さっきの人達が言ってた男色の娼館って、最近有名だよな。ちょっと興味ある」
「わかるわかる。そっちの気はないけど、めちゃくちゃ良いって聞くから気になる」
「そ、そうなんだ……」
「「…………」」

 恥ずかしさを紛らわせようと高頻度でちびちび酒を飲む俺を無言で見つめる二人。
 小さくなってる俺の頭上でリュウさんとエルドさんがアイコンタクトを交わしていた。

「「(こいつ童貞だな)」」

 二人にポンポンと肩を叩かれた。
 すごい優しい眼差しを送られて、酷く動揺した。
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