催淫魔法士の日常

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24:甘え

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 時空間魔法の書を手に入れて半年が経過した頃……ついにその時がやってきた。

「コレが……遅延性媚薬」
「三分後に一気に媚薬の効果を爆発させる。絶頂後に爆発が一番理想なんですが、今はコレが最高の遅延性です」
「本当にそんな効果があるなら、媚薬界の革命だぞノトス」

 娼館へ卸す為に支配人へプレゼンを行い、オプション棚に並べてもらえるように交渉する。

「疑っているなら試飲してみます?」
「枕営業はお断りだ」
「いや、試飲後のケアをするただの枕です」
「……やけにテンションが高いな。それほど自信作なら期待しておく」

 支配人がクピッと媚薬を飲み込む。

「うむ、いい味だ。後味がスッキリしていて飲みやすい。即効性ならすぐにカッと熱くなるが……何も感じない。今までの遅延性ならば、少しは熱が篭るものだが……」
「まぁ、ひとまず三分待ちましょう」


 ──三分後


「そろそろですね」
「本当に効果が出」
『ドクン』
「ッ!?」
「キッチリ三分です」

 半信半疑な様子の支配人だったが、媚薬の効果が一気に表れ、バッと前屈みになる。

「こりゃ、すごい……不意打ちでくる分、衝撃が半端じゃない。腰が抜けるぞ」
「媚薬の性能的には遅延性以外の変化はありません。どうでしょうか。今なら先行販売出来ますよ?」
「この媚薬は間違いなく売れる。ただ、使うとなるとかなり注意が必要だ。客にはオプションでのみ提供する形になる。そうなると、正直今は多くは仕入れ出来ない」
「はい。その辺りは上手くやっていきましょう」

 媚薬の販売が決まり、料金の交渉をする二人。

「では、今回はこの値段で」
「……ノトス、もうちょっと欲張ってもいいんだぞ。生活大丈夫なのか?」
「コレだけが収益源じゃないんで、ご心配無く」
「他でもこんな値段じゃ儲けは高が知れてる。薬屋の方もちゃんとやった方が余裕出るだろ」
「だから、大丈夫ですから。商談成立したんですから、金の話は終わりにしましょう」

 ある程度話が纏まり、解散する流れになったが……

「……落ち着けそうですか?」
「…………」

 支配人は俯いたままノトスの言葉に一切返事をしない。
 その様子にノトスはやれやれと肩をすくめる。

「俺の媚薬は何もせずに治まる程、生優しいものじゃない事は、貴方が一番知っているでしょう」
「はぁ……」

 媚薬の効果が凄まじいのは当然だが、ノトスの得意気な態度が気に食わない支配人。
 催淫魔法士の媚薬は高値で取り扱われるが、ノトスが提示する価格は破格で極めて良心的。性格も穏和で取引先として、とても得難い存在だ。
 娼館の一支配人としては、ノトスは大変重宝しているが、一個人としてはノトスの掌の上で転がされている事が気に障っていた。
 
「毎度毎度、年下に良いようにやられるのは……思うところあるだろ」
「……なるほど。一理ある」
『ぞくんっ』

 ノトスの微笑に支配人の心臓が高く鼓動する。

「(なんだこの感覚は……奴を見るたびに胸がゾクゾクと……恋でもしてるかのように)」
『ウズ、ウズ……』
「……何をした」
「少々魅了をかけました。言い訳がある方が俺の所為にしやすいでしょう」

 そんな支配人にノトスは身体を寄せて耳打ちをする。

「最後の一押し、どうしますか?」
「……調子に乗るなよ。たく、あの純情なドレスの息子だってのに、とんだエロガキになりやがって」
『グイッ』

 支配人はノトスの胸ぐらを掴み、強引に唇を奪う。

「んっ……ん、はっ……ぁ」

 舌を入れる濃厚なキスをされながら、胸を揉まれるが……ノトスは焦らすように敏感な部分を絶妙に避ける愛撫を受ける。
 支配人の脚の上に跨り、キスで高められた体は既に準備が整いつつある。

「苦い……」
「ぷはぁ……ふぅっ、名残惜しいです」

 ノトスの口から混ざり合った唾液の糸が二人の口内を繫ぐ。
 この事態を見越して、無排薬を飲んでいた為、名残りに支配人は顔を顰める。

『スルン』
「……最初から素直にすればいいのに」
「喧しい」

 腰を抱き寄せて下着の中に手を滑り込ませて、ツンケンとした態度とは相反して丁寧に商談机へノトスを押し倒す。

「(この人のセックスは一際優しくて好きだ……)」
「何考えてるんだ」
「んっ……別に、貴方の事を考えていました」
「はは、憎たらしい……」

 太腿の感触を確認するように撫で回す。
 正常位の体勢で、ノトスの開いた股の間には身体ごとのし掛かるように入っている支配人。

『クプ』
「……んっ」
「柔らかいな……」
「(すごい忍耐力だ……もう限界のはず……なのに、このねちっこい指の動き)」

 ノトスの経験の中で、支配人は考えられない程前戯に手間をかけている。
 娼婦の前戯不足の愚痴を聞いている支配人だからではない。
 
「はぁ…………ん」
『グチュ、グチュ』
「もう、いいです」
「まだだ……」

 支配人にとってノトスは旧友ドレスの息子である。肉体関係を持っている時点で大分おかしいが、友の子を傷を付けたくないというごく自然な心理が働いているだけだ。
 すっかり濡れぼそった後孔をずっと弄ばれて、ノトスの方が限界を迎える。

「は、やく……もぉ、いいで、す」
「欲しいなら、娼婦顔負けのおねだりをしてみろ。お得意だろ」
「んっ……」

 支配人に言われた通り、下品に股を開きながら腰をくねらせて、指を咥えた孔に手を伸ばし見せつけるように広げてみせる。

「挿れてください。俺のここに……貴方をいれてほしいです」
『クチュン、クチュン』
「気持ちいいっ……もう、ダメです、貴方の指が……気持ちよすぎて、もう我慢出来ない……奥、奥に……下さい」
「……っ、何処でそんな表情覚えてくるんだ」

 発情した猫のように、腰をカクつかせて、頬を染めて瞳に涙を浮かべているノトス。
 その表情と声色の破壊力は凄まじい。支配人は思わず息を飲む。
 一度体を離した支配人はズボンを脱ぎ、腹に着きそうなほど勃起した性器をノトスのひくつく孔へあてがう。
 ぬるりと先走りで濡れそぼった亀頭を焦らすように擦りつければ、それだけでも感じるのかピクッピクッと爪先が反応する。
 物欲しそうに、切なそうに見上げるノトス。

「父親と同じ歳のジジイにまで欲情しやがって」
「ん……」

 悪態を吐きながらも、支配人の愛撫はどこまでも丁寧で優しい。
 反り上がった硬い性器に手を添えて、ゆっくり押し込んでやれば嬉しそうに飲み込んでいく。

「ひぃ、ゃあぁんぐっ!」
「……あまり、声を出すな」
「んっ……ふぁい」

 両手を口に当てて、支配人の命令に頷く。

『クプ……グッ、グプン!』

 そうして、ようやく根本まで受け入れる事の出来たノトス。
 支配人もノトスも大きな刺激は受けていないのに、それだけで息遣いが荒くなる。
 商談の場で事に及ぶ罪悪感と背徳感による危うい興奮。
 小刻みな抽挿により腸壁全体が擦られる度、奥を突かれる度に熱が篭っていく……そして、それは次第に肥大化し大きく広がってくる。
 頭の天辺から爪先まで……ジワジワと侵食していく絶頂の前兆。
 腰の動きが早まるほど、短くなる呼吸。
下半身に熱が渦巻く。あっという間に果ててしまう。
 射精を伴わない、内だけで達してしまうメスイキが癖づいているノトスには大きな快感の波が何度も訪れる。

「イきまくってるな。そんなにいいのか、ん?」
「っ! っっーー!」

 大きく頷きながら、ビクッと打ち上げられた魚のように体を反らせた後、時間差で力が一気に抜ける。
 硬く口を覆っていた手が緩んでしまうほど深い絶頂だ。

「ぁ……はっ、らめ、イくの、止まらない……イッてまひゅ、止まらない、あつい、らめ」

 続けざまにオーガズムを迎えていたノトスは余韻にだらしなく喘ぐ。
 これでは本気でおかしくなってしまうと流石に危機感を覚え始めるノトス。
 
「声抑えろ。外に聞こえる」
「むぃ……ちからが、ぬけて」
「たく、鼻で息しろよ」

 ノトスの口をキスで塞ぐ支配人。
 そのまま腰をゆっくりと動かした。
 喉をついて出そうだった甘い喘ぎが支配人の咥内に搔き消えて、律動に合わせた呼吸を続ける。
 流し込まれる支配人の唾液を自ら啜りコクンと喉を鳴らして飲み込めば、更に官能の芯が蕩けた。
 ズン……と押し上げられた途端、最奥でじんわりと熱く広がる心地良さに弛緩して、中はぐねぐねと蠢く。

『グチュン……ニュプチュ……ジュプンッ』

 支配人のモノが張り詰め、限界が近付く。

『ジュプッジュプッ、グチ、グチュ……ズン!』
「ん……」
『ビュッ! ビュルッ!』

 射精を終えたら、軽く抽挿して孔の中で精液を塗り伸ばす。
 敏感な箇所を圧迫された事でまた達したノトスは、支配人の舌を甘噛みしてから、肩で息をした。

「(種付け、されてる……孕ませる動きだ)」
「…………はっ……抜くぞ」
『ズルル……』
「あっんん!」
「……またイったのか」

 机の上でぱっかりM字開脚をしたまま、服従した犬のようなポーズで、後孔をクパクパと開閉し精子を零している。

『ぴく、ぴく……びゅくん!』
「はっ、ふぅ……すぅ……はぁ」

 余韻を楽しむようにピクピクと軽く甘イきをしながら乱れた呼吸を整える。

「……俺がドレスに罪悪感抱えてたら死んでる光景だな」
「んぁ……そ、ですね。貴方が、薄情でよかったです」
「ふん」

 後始末を手早く済まして、ノトスの衣服を整える。

「他でもこんな風に媚びてるのか?」
「流石に貴方だけです」
「ハッ、どうだか」
「本当ですよ」

 事実、ノトスが素面の状態で行為を求める相手は支配人だけ。
 父の温もりとは別ベクトルの暖かさを持つ支配人にある意味甘えているのだ。
 身嗜みが整ったノトスが立ち上がり、荷物を持って退出する。

「それでは、失礼します」
「……ああ」
『バタン』
「…………はぁぁ……クソが」

 口元を押さえながら天を仰ぎ、深い深いため息を吐く支配人。
 年甲斐もなく取り乱してしまった事が心苦しい。

「(この遅延性媚薬はすごいが、やはりオプションオンリーだな。一般販売は危険過ぎる)」

 理想的な遅延性媚薬の性能が口コミで広がれば売れるだろうが、一口飲んだ瞬間媚薬だと分かる即効性とは違い、遅延性は媚薬と瞬時に気付けない。
 考えていた通り、性犯罪に利用される可能性が非常に高い。
 ノトスもそのリスクを分かった上でオプション提供のみという販売条件を了承した。

「(しかし、あの歳で界隈のロマンを実現させるとは……全く恐ろしい才能だ)」
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