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10:英才教育①
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催淫魔法士ノトス・ロルールの元へは、一際変わった顧客が来訪する時期がある。
『コンコン』
「……はい」
家の扉をノックされ、ノトスは無警戒にガチャリと戸を開けたのだが……その視線の先には、人ならざるモノが居た。
『ウネウネ』
『グネグネン』
鱗のない蛇のようなフォルムとピンク色の肉肉しい質感を持つ『触手』と呼ばれるモンスターがウネウネと蠢いていた。しかも、ローブを着たスケルトンの腕の中で。
そんな異質な来客の姿にノトスは、少し目を見開きながら腕を組んだ。
「もうそんな時期か。調子はどう?」
《お陰様で被害は減っております》
知人と対話するようにスケルトンに話しかけ、返ってきた念話での返答にノトスは少し口角を上げた。
「そうかい。それは何よりだ。その子達が今年の有望株達か」
《はい。指導のほど、よろしくお願い致します》
ノトスは彼らを家に招き入れ、地下へと続く階段へと歩みを進める。
世界には『淫獣』や『淫魔』と呼ばれるモンスターが存在する。
同種だけではなく、人間含めた異種族も繁殖の性的対象と捉えているモンスターだ。
モンスター討伐を請け負っている冒険者達は、淫獣や淫魔の類を非常に警戒する。
モンスターと人間では根本的な造形の差がある為、性的な行為で腹をぶち抜かれて死亡する例などもザラだ。
被害によっては群諸共焼き払われる。
その成果もあり、一部の淫獣や淫魔は人間から身を隠すようになった。
しかし、現在ノトスの前に姿を見せている彼らは非常に稀有な環境下にいる。
《最近では、私達の棲家に侵入する冒険者も減ってきました。巷では“えろとらっぷだんじょん”と呼ばれています》
「ははは! ダンジョンではないんだけどなぁ、触手部屋が多過ぎるからか、くく、エロトラップ、くはは! 多種族共栄地の防波堤が名物化してるな」
スケルトン、ゴブリン、スライム等の弱小モンスター達が身を隠しながら暮らしている地下洞窟は、地元では『エロトラップダンジョン』と呼ばれているらしい。
原因は明白。そこの住人であり番人を務めている触手達である。
今、ノトスの前にいるのが、その触手達の末弟だ。
親は同じ種族の触手か、ゴブリンやスライムだろう。表皮の色が様々だ。
「さて、まずは人を殺さないように加減を覚えないとな」
『ピーン』
スケルトンの腕の中にいる短めの触手達が返事をするように身をピンと正す。
侵入した冒険者を殺してしまうと人間に危険視され、スケルトン達まで皆殺しにされてしまう。
それを回避するには人を殺さぬ程度の力加減を覚える必要がある。
そこでノトスは、エロトラップダンジョンの次世代触手に人を殺さぬ技術を教える教育係を引き受けているのだ。
地下には日用品から冒険者の持つ鎧や剣まで揃っている。
触手達の分だけ机を運び、一体一体をその上に乗せる。
「サラ、手伝い頼める?」
《はい》
サラと呼ばれたスケルトンがノトスの助手を務める。
「さてと、まずは……」
まずは、エロトラップの一部として最低限の動きを教えていく。
『シュ!』ビッ!
『ウニョ』ベタン!
『ピーン』ジュワァ!
「……うーん」
第一段階・体液の溶解制御。
一般流通している衣服を切り取った布切れに包んだ鶏肉に触手達が自分達の体液を擦り付けるように各々に動いている。
包まれた鶏肉を傷付けずに、布だけを溶かす訓練である。
「これに関しては個体差が大きい。同じ触手でも調合スピードも得意不得意も違うから、周りと比べなくていい。自分の濃度を見つけよう」
『『ピーーン』』
失敗した鶏肉を新しい物と取り替えながらサラが回収している。
溶解液で蕩けた部分を綺麗に洗って加熱処理すれば食べられるが、処理が甘いと食道に穴が開く。
休憩を挟みながら、数時間で全員が布だけを溶かす濃度に辿り着いた。
「おお、優秀優秀。よし。その感覚を忘れないように。次は役割別に鎧の侵入箇所を説明する」
ガシャンと全身鎧を触手達の前へと運ぶ。
第二段階・侵入経路。
「媚薬分泌が出来る者は口元か下半身の局所部位を目指す。それ以外の拘束を担当する者は一番初めに武器を持つ手を封じる事」
触手達が云々と頭を上下に揺らして真剣に聞いている姿は、可愛らしくも見えるが内容は全く可愛くない。
「鎧への侵入だが、真正面以外から迅速に行く事。基本不意打ちを狙う。手足を拘束出来れば一番良いが、それが出来ない場合はさっき練習した繊維特化の溶解液をぶっかける。媚薬を混ぜるとなおよし。完全密封の鎧は存在しない」
出来る限りわかりやすく、鎧の隙間を指差しながら解説していく。
「こういった全身鎧の狙い目は、兜と胴体のつなぎ部分……そして、股関節部分」
『ピーン』
股関節を指差せば、触手達のやる気が満ちていく。際どいHな単語に反応する学生のように。
どの鎧にも機動力確保の問題で股関節部分には大きめな隙間がある。
「勿論、人間は動くからこの鎧みたいに直立している事はない。コレは、大人達がどういうタイミングで動くのか観察していれば、なんとなく理解出来る」
『ウネウネ』
「……不安そうだな。なら体験してみるか」
ノトスはサラに手伝ってもらいながら、鎧を着込む。
『パチン』
「人が入るとこんな感じ。直接潜ってみるといい。ただし、溶解液は出さないように」
触手達は机から床へとぴょんっと跳ねてノトスの元へと這っていく。
ノトスはわかりやすいようにゆっくり歩行しながら、鎧の動きを見せる。
『ガッション、ガシャン』
触手達はタイミングを見計らっているようで、身体を前後に揺らしている。
大縄跳びでなかなか内へ入れず足踏みしている子どものようだ。
『ガシャ、ガシャン……グルン!』
「お、そうだ。良い調子」
一体がノトスの動きを止めるようにギクシャクしながらも足に巻き付くと、それを皮切りに触手達は次々とノトスへ絡み付く。
手足を拘束する係、胴部分から這い上がり口元へ到達する媚薬係、下腹部を刺激する係と各々の役割に沿った動きをする。
言い付け通り溶解液は出していない為、服が溶ける事はないが衣服の上から拙い刺激を受ける。
「んっ……ふぅ……みんな上手に出来たな。コレは経験あるのみだから、焦らず自分のやりやすいタイミングと方法を大人達と探るといい」
『『ピーーン』』
ぞるぞると鎧から触手達が這い出て机の上に戻っていく。
ノトスは再びサラに手伝ってもらいながら鎧を脱いで、次のステップへ。
『コンコン』
「……はい」
家の扉をノックされ、ノトスは無警戒にガチャリと戸を開けたのだが……その視線の先には、人ならざるモノが居た。
『ウネウネ』
『グネグネン』
鱗のない蛇のようなフォルムとピンク色の肉肉しい質感を持つ『触手』と呼ばれるモンスターがウネウネと蠢いていた。しかも、ローブを着たスケルトンの腕の中で。
そんな異質な来客の姿にノトスは、少し目を見開きながら腕を組んだ。
「もうそんな時期か。調子はどう?」
《お陰様で被害は減っております》
知人と対話するようにスケルトンに話しかけ、返ってきた念話での返答にノトスは少し口角を上げた。
「そうかい。それは何よりだ。その子達が今年の有望株達か」
《はい。指導のほど、よろしくお願い致します》
ノトスは彼らを家に招き入れ、地下へと続く階段へと歩みを進める。
世界には『淫獣』や『淫魔』と呼ばれるモンスターが存在する。
同種だけではなく、人間含めた異種族も繁殖の性的対象と捉えているモンスターだ。
モンスター討伐を請け負っている冒険者達は、淫獣や淫魔の類を非常に警戒する。
モンスターと人間では根本的な造形の差がある為、性的な行為で腹をぶち抜かれて死亡する例などもザラだ。
被害によっては群諸共焼き払われる。
その成果もあり、一部の淫獣や淫魔は人間から身を隠すようになった。
しかし、現在ノトスの前に姿を見せている彼らは非常に稀有な環境下にいる。
《最近では、私達の棲家に侵入する冒険者も減ってきました。巷では“えろとらっぷだんじょん”と呼ばれています》
「ははは! ダンジョンではないんだけどなぁ、触手部屋が多過ぎるからか、くく、エロトラップ、くはは! 多種族共栄地の防波堤が名物化してるな」
スケルトン、ゴブリン、スライム等の弱小モンスター達が身を隠しながら暮らしている地下洞窟は、地元では『エロトラップダンジョン』と呼ばれているらしい。
原因は明白。そこの住人であり番人を務めている触手達である。
今、ノトスの前にいるのが、その触手達の末弟だ。
親は同じ種族の触手か、ゴブリンやスライムだろう。表皮の色が様々だ。
「さて、まずは人を殺さないように加減を覚えないとな」
『ピーン』
スケルトンの腕の中にいる短めの触手達が返事をするように身をピンと正す。
侵入した冒険者を殺してしまうと人間に危険視され、スケルトン達まで皆殺しにされてしまう。
それを回避するには人を殺さぬ程度の力加減を覚える必要がある。
そこでノトスは、エロトラップダンジョンの次世代触手に人を殺さぬ技術を教える教育係を引き受けているのだ。
地下には日用品から冒険者の持つ鎧や剣まで揃っている。
触手達の分だけ机を運び、一体一体をその上に乗せる。
「サラ、手伝い頼める?」
《はい》
サラと呼ばれたスケルトンがノトスの助手を務める。
「さてと、まずは……」
まずは、エロトラップの一部として最低限の動きを教えていく。
『シュ!』ビッ!
『ウニョ』ベタン!
『ピーン』ジュワァ!
「……うーん」
第一段階・体液の溶解制御。
一般流通している衣服を切り取った布切れに包んだ鶏肉に触手達が自分達の体液を擦り付けるように各々に動いている。
包まれた鶏肉を傷付けずに、布だけを溶かす訓練である。
「これに関しては個体差が大きい。同じ触手でも調合スピードも得意不得意も違うから、周りと比べなくていい。自分の濃度を見つけよう」
『『ピーーン』』
失敗した鶏肉を新しい物と取り替えながらサラが回収している。
溶解液で蕩けた部分を綺麗に洗って加熱処理すれば食べられるが、処理が甘いと食道に穴が開く。
休憩を挟みながら、数時間で全員が布だけを溶かす濃度に辿り着いた。
「おお、優秀優秀。よし。その感覚を忘れないように。次は役割別に鎧の侵入箇所を説明する」
ガシャンと全身鎧を触手達の前へと運ぶ。
第二段階・侵入経路。
「媚薬分泌が出来る者は口元か下半身の局所部位を目指す。それ以外の拘束を担当する者は一番初めに武器を持つ手を封じる事」
触手達が云々と頭を上下に揺らして真剣に聞いている姿は、可愛らしくも見えるが内容は全く可愛くない。
「鎧への侵入だが、真正面以外から迅速に行く事。基本不意打ちを狙う。手足を拘束出来れば一番良いが、それが出来ない場合はさっき練習した繊維特化の溶解液をぶっかける。媚薬を混ぜるとなおよし。完全密封の鎧は存在しない」
出来る限りわかりやすく、鎧の隙間を指差しながら解説していく。
「こういった全身鎧の狙い目は、兜と胴体のつなぎ部分……そして、股関節部分」
『ピーン』
股関節を指差せば、触手達のやる気が満ちていく。際どいHな単語に反応する学生のように。
どの鎧にも機動力確保の問題で股関節部分には大きめな隙間がある。
「勿論、人間は動くからこの鎧みたいに直立している事はない。コレは、大人達がどういうタイミングで動くのか観察していれば、なんとなく理解出来る」
『ウネウネ』
「……不安そうだな。なら体験してみるか」
ノトスはサラに手伝ってもらいながら、鎧を着込む。
『パチン』
「人が入るとこんな感じ。直接潜ってみるといい。ただし、溶解液は出さないように」
触手達は机から床へとぴょんっと跳ねてノトスの元へと這っていく。
ノトスはわかりやすいようにゆっくり歩行しながら、鎧の動きを見せる。
『ガッション、ガシャン』
触手達はタイミングを見計らっているようで、身体を前後に揺らしている。
大縄跳びでなかなか内へ入れず足踏みしている子どものようだ。
『ガシャ、ガシャン……グルン!』
「お、そうだ。良い調子」
一体がノトスの動きを止めるようにギクシャクしながらも足に巻き付くと、それを皮切りに触手達は次々とノトスへ絡み付く。
手足を拘束する係、胴部分から這い上がり口元へ到達する媚薬係、下腹部を刺激する係と各々の役割に沿った動きをする。
言い付け通り溶解液は出していない為、服が溶ける事はないが衣服の上から拙い刺激を受ける。
「んっ……ふぅ……みんな上手に出来たな。コレは経験あるのみだから、焦らず自分のやりやすいタイミングと方法を大人達と探るといい」
『『ピーーン』』
ぞるぞると鎧から触手達が這い出て机の上に戻っていく。
ノトスは再びサラに手伝ってもらいながら鎧を脱いで、次のステップへ。
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