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11:恥を積極的に積み重ねる人生①

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 関係が変わった以上、監禁を継続するのは僕の心情的に苦しくなる。

「この恋心は絶対受け入れて貰えないってわかっていたので、逃げられないように閉じ込めたんです。一度諦めかけましたけど、大和さんのおかげで今まで続いています」
「…………で?」
「で、ですから……その……心が通ったのなら、監禁理由が無いんです」
「お前馬鹿か? 監禁は犯罪だぞ? 監禁してたって事実の隠蔽が監禁理由になり得るだろ」
「同意の監禁って、ただのプレイじゃないですか。それに……二人で出掛けたりしたいです」

 身勝手なのは重々承知している。
 けれど、監禁プレイは継続出来るはずだ。

「同意は、それは、まぁ……そうか? んで、とりあえず二人で出掛けたいと? 監禁を一時中断して」
「はい。首輪の取り外し主導権が大和さんにも有れば、前の男が押し入って来ても逃げられるでしょ? 貴方の首輪が外れるなんて夢にも思わないはずです」
「あ、あーーいいな。それはちょっと魅力的だ」

 二度と会って欲しくないが、逃走手段を確保しておくのは重要な事だ。
 
「……それに、自分で外せるのに、僕に乱暴されたくて自らの意志で首輪を付けたままなの、すごくエッチだと思います」
『ジャラ』
「………………自己判断を羞恥にする手抜きは許さんぞ」
「ちゃんと指摘してあげるんで、そんなムッとしないでください」

 自分の判断が如何に変態的か自覚すれば羞恥に身を焦がすだろう。
 けれど、自家発電の羞恥心を抱え込ませるだけでは大和さんは満足しない。僕が指摘して詰ってやらなければ、気持ち良くなれないだろうし。
 
「大和さんが僕の恋人になってくれて嬉しいです」
『ジャララ!』
「!」

 鎖を引っ張り、大和さんを腕の中に閉じ込める。
 照れ臭そうにしながらも、顔を胸に擦り付けて甘えてきた。

「後悔するなよ」
「する訳ないじゃないですか」

 半年以上の監禁(?)を経て、交際へと辿り着けた。
 もっと時間がかかると思っていたが、前の男による強引な行為によって僕の優しさが大和さんにハマったんだろう。相乗効果ってヤツ。
 もっともっと大和さんに好かれるように頑張んないと。

『スル』
「……スースーする」
「ずっと付けっぱなしでしたからね」

 首輪を外してみると、居心地悪そうに身を捩る大和さん。落ち着かないらしい。

「首輪外しても大和さんが側に居る……すごく良い」
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないです」

 感激する僕に溜め息を吐きながら笑ってくれる。
 本当に、夢のようだ。
 刹那主義が極まったような衝動の結果がコレだなんて……都合が良過ぎる。

「それで? どうする?」
「?」
「出掛けたいんだろ? 何処に行きたいんだ?」
「!」

 初デートの話題を切り出してくれた大和さん。
 僕は練っていたデートプランを大和さんに伝えた。
 
「映画、食事、ショッピング ……普通だな」
「まぁ、初手なので手堅くいきたいです」
「確かに、堅実なお前らしいけど」

 欠伸が出そうな程につまらないと言いた気な大和さんだが、僕とのデートはちゃんと行ってくれるようだ。
 大和さんが楽しめるように、より綿密にプランを練らなければ!
 初めてのデートは手堅く無難なセレクトだが、内容が勝負所だ。
 
※※

 大和目線

 監禁加害者を好きになるなんて有り得ないと自分でも言っておきながら、俺は颯太を好きになっちまった。
 前のヤツがアレだった所為で颯太の良さが身に染みて、相乗効果で恋心の錯覚を生んだだけかもしれない。
 可もなく不可もなしなデートプランを聞いて、颯太の真面目さを改めて認識した。
 監禁される分には良いが、付き合うとなると違うかもしれない。

「ただのデートじゃ、きっと大和さんは刺激が無くてつまらないでしょうから……はい」
「!」

 デート当日の朝に手渡されたのは、特徴的な形をしたバイブだった。

「遠隔操作の出来るバイブです。こういうの好きでしょ?」
「…………」

 マジかよ……コイツ。

「勃っちゃうと周りにバレちゃうんで、固定用の貞操帯もあります。着け方解りますか?」
「……ああ」

 俺に二つのアイテムを手渡して、自分の支度を進める颯太。
 おいおい、今からデートだってのに自分でこのバイブと貞操帯着けろって事か?
 公共の場で秘密の羞恥プレイなんて…………俺が夢にまで見た憧れのシチュエーションじゃねえか!

「ん……ぁ、ふ……」

 俺は颯太に渡されたバイブを少量のローションでコーティングして後孔に埋め込み、前を貞操帯で固定する。
 ピッタリサイズでちょっと怖い。

『ガチャ』
「あ、準備早いですね。着けてるとこ見てあげようと思ったのに」
「ッ……颯太、コレどういう動きするんだ?」
「それはデート中のお楽しみに。歩けますか?」

 歩くと中が少し擦れるが、問題はない。
 外に出る前に転倒防止として杖を持たされた。

「(これ……腕組んでも、介助に見えるのか)」

 俺の安全面を考えての善意一〇〇パーセントの杖。本人にその気は無いだろうが、俺はそれを有り難く利用させてもらう。
 何の変哲もないデートが、一気にドキドキスリリングなデートに早変わりだ。

「(侮ってた。颯太は俺の的確な悦ばせ方を解ってんだな)」
『カチャ』

 颯太が玄関の扉を開けると眩しい朝日が視界に入った。
 監禁生活で余り自然光を浴びていなかったから、久々の日光に目が眩む。

「ッ……」
「大和さん?」
「眩し過ぎて……ちょっとクラっと来た」
「久しぶりですからね。サングラスかけます?」
「外の間はそうする」

 車の運転の際に颯太が偶に着用するというサングラスを借りた。
 それから颯太の腕に手を回して、エスコートされながら進む。
 いつスイッチがオンになるか、期待と不安に胸がむず痒い。

「映画の席、カップル席って言って劇場後方にマジックミラーの個室で二人っきりでゆったり観れるものがあるんです。カップルじゃなくても、友達や小さいお子さん連れの親御さんの利用もあるとか」
「最近ではそんなのもあるのか」

 映画館で二人の世界を作れるってわけだ。
 今回、その席を予約してくれているらしい。
 混み合った電車に乗って、目的地へ向かう。俺と離れないように抱き込む颯太。健全な女性との交際経験があって、素でこういう彼氏ムーブ出来るのに彼女に振られたんだよな。
 俺なら、この良物件手放さねえけど。

『ヴヴ……』
「ッ、ん」

 人が犇く車内。抱えるように握り込んだ杖を口に当てて声を抑える。
 バイブが動き出した。
 モーター音は思った程ない。電車の騒音に掻き消える程度だ。
 指より少し太いバイブが内部で形を変えて緩々と動いている。
 
「(颯太の前戯みてぇに、ねちっこい動きだ……)」

 俺の背を撫でる颯太の手に意識が行ってしまう。電車のガタンと揺れる振動が伝わる度に、中も連動して刺激されちまう。この微弱な快感を逃がす術がない。

「(やべ……勃ちそう)」
『ムニ』
「!」

 突然、颯太に尻を揉まれて思わず身体が強張った。

「……どうしました? あ、もしかして感じました?」

 耳元で小さく囁かれる。吐息交じりの声が腰に響いてゾクゾクする。
 周りに沢山人がいるのに、俺はバイブ咥えたケツ揉まれてる状況に興奮が抑え切れない。
 駅毎に乗り降り人の波の動きに合わせて動く。颯太の動きは痴漢プレイに勤しんでいる人間とは思えぬ程、スマートだった。

「ん……っ、ぁ……」
『ヴヴヴ……』

 バイブの刺激と尻への愛撫を受けながら、必死に声を抑える。

「ッ、ふ」
「大和さん、大丈夫ですか?」
「……だぃ、じょーぶ……だ」
「そうですか」

 颯太が身動ぐとバイブの動きが止まった。
 どうして? と見上げれば困ったように笑いながら視線を上にやる颯太。
 アナウンスがかかりそろそろ目的地に着くらしい。
 残念だと息を吐いたが、出だしでコレとは……期待させられる。
 
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