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寒い。寒い。空腹よりもまずは夜の寒さが身体を襲って来た。目を閉じて眠る事に意識を集中する事にした。耳元で虫の羽音が鳴り止まない。気になって眠る事も出来そうになかった。寝袋と耳栓を持ってくれば良かったと後悔するが、そもそもそんなものは家にはなかった。私と自然との我慢比べが始まった。絶対に勝つ事が出来ない相手だろう。頭の中で『我慢しろ』『帰ろう』『頑張れよ』『無理だな』と4つの声が聞こえて来る。家に帰る事は出来ない。濃縮な時間が止まったように流れて行く。まだ22時だとはとても信じられなかった。この暗闇の中で移動すれば確実に下に落ちて怪我をする。死に近づけば近づく程に頭は冷静になって行くが、私は何をしているのだろうか?
冷静になっていくと、自分の命と他人の命を秤にかけてしまう。それは自分の人生と他人の人生という秤でも当て嵌まる。どちらが自分にとって大切かという事だった。誰もが他人の為に死ねる覚悟がある訳がない。私は自分の為に聖者として誇りを持って死のうと誓ったが、それに何の意味があるだろうか?死を願ったのに神様は答えてくれなかった。私を殺さないのなら、誰かを殺すと神を脅迫した。何度も脅迫したのに神様は一度も答えてくれなかった。そんな神様がいると信じる事は出来ない。私は綺麗事を言って逃げただけだった。同級生の女性かもしれない人を殺すのが嫌で怖くて逃げただけだった。それはただの弱さで我儘だ。あれだけ母親や弟を嫌っているのに、殺したいと思っても、殺せないのは臆病だからだ。そう、人を殺すのは怖い。人殺しは怖くて怖くて出来ない。それが私だった。
『死ぬのも怖い。働くのも怖い。殺すのも怖い。怖くて何も出来ない。恐怖を捨てなければ身体も頭もまともに機能しません。そんな事は戦闘トレーニングで理解しています。誰かを殺す為には憎悪が必要だろうと、身体の中に憎悪を殺意を欲望を溜め込みました。あとは爆発させるだけです。自分が世界で一番不幸だと思える程に惨めに堕ちました。それでも、足りないという事です。何が足りない?足りないから殺せない?本当に?本当に?あぁ、分からない。人が人を殺すのに必要なもの………分からない。』
同じ事を何度も何度も考え続けている。人を殺す理由。人を殺せぬ理由。人を殺さなくても生きてはいける。人を殺せないのは捕まるのが怖いからではなく、自分の心が穢れるのが嫌だからだ。私は善人でいたい。聖者でいたい。醜い穢れた心の人間を誰が愛してくれるだろうか。人を殺せば、愛を失う。愛を捨てれば、人は殺せる。簡単な問い掛けに何度も答えた。答え続けたが、答えを正解とは認めたくなかった。
私が間違った選択をして、こんな場所で寒さに震えている事を認めたくはなかった。誰だってそうだろう。自分が頭のおかしな人間だとは認めたくはないものだ。これからどんなに頑張って生きていても、辛い目に遭うのが分かっている。分かっているのに生きなければならない。何故、生きなければならない?何故?何故?誰もが教えてくれない。誰もがそこまで深くは考えようとしない。考える事をやめればいいだけかもしれない。そうすれば、もっと楽になれるかもしれない。こうやって考えるから駄目なのだろう。もっとシンプルに考えよう。死にたいか、生きたいか、簡単な答えだった。
♠︎
朝がやって来た。今ならどんな事でも出来る自信があった。あぁ、楽しい。自然と口の中に甘い唾液が溢れて来る。自由である。あぁ、待ち望んでいた自由を手に入れた。だが、獣のように視界に入る者を殺すのは駄目だ。私という命の1コインを使って、このゲームを遊び尽くさなくてはいけない。早々に捕まってゲームオーバーは避けたいものだ。程良い疲労感が身体の力を奪って行く。まるで老人のような怠さだ。まずは体力を回復させなくてはいけない。喉も渇いた、腹も減った。だが、金は無い。ならば手に入れるしかない。歩きにくい、危険な山の中を進み続ける。このまま真っ直ぐに進めば道路に出られるだろう。車の音が聞こえる。獲物の気配を感じる。あと少し、あと少しで渇きも飢えも消えてくれる。楽しみで仕方なかった。
私は人通りの少ない登山道で待ち伏せしていた。最初に視界に入ったのは、登山客の中年男だった。金はあるだろうが、それだけだ。私の最初の獲物としては貧相な者であった。こいつは見逃す事にした。次にやって来たのは若いカップルだった。観光客か、それともデートか。階段を下りてやって来た。私は茂みの中に隠れて様子を見ていた。他に人の気配はしない。2人の年齢は24~25ぐらいだろう。男の方は身長があり、爽やかな好青年という印象だった。女性の方は少し茶色がかった黒髪が、肩の少し先まで伸びていた。男が7点、女が6点と言った所だろう。1対1ならば余裕だが、叫ばれるとこっちが狩られる者になってしまう。木刀を持って近づけば山賊だと思われてすぐに叫ばれる。そして、男が必死の抵抗を見せてくれるだろう。人は簡単に悲鳴を上げないと思っているなら、それは間違いだ。女性のほとんどがすぐに叫ぶ、最初は警戒する程度に小さく叫ぶが、すぐに確信に変わると大声で叫ぼうとする。非常に面倒である。私は地面に落ちている拳大の硬そうな岩を拾うと2人を食べる事に決めた。
瓦を割るように頭蓋骨を割ればいい。つまりは割れる強さで岩を頭に叩きつければ済む話である。男の背後から気配を消して近づく、走って近づけば不審人物として叫ばれる理由を与えてしまう。ゆっくりと近づく。知らない男が近づいて来るだけで叫ぶ人間はいない。こちらが一般的な行動を取れば、相手も一般的な反応を返してくれる。『おはようございます。』ゆっくりと振り返った男のコメカミに右手に握った岩を叩きつける。少し狙いがズレて目に当たってしまったが、問題ないだろう。女に叫ばれると面倒なので、素早く鼻の下に右の拳を叩き込む。休まずに腹部の急所、水月に右拳をめり込ませた。しばらくは呼吸が出来ない程、苦しいので叫ばれる心配はない。
男は気絶しているようだが、気絶は人によっては数十秒で回復する。意識を取り戻した瞬間は何が起こったか前後の記憶が飛んでしまうが、すぐに理解する事が出来る。血を撒き散らすのは嫌だが仕方ない。さっさと殺さないと別の獲物がやって来るかもしれない。3回後頭部強打した。これで死んでくれると助かる。
女は出来るだけ殺したくはないが仕方ない。苦しんでいる女の首に腕を回して、締めて行く。死んでもいいし、気絶でもいい。女の鼻血が服の袖付いてしまった。やれやれ本当に面倒だ。面倒事はさっさと終わりにしたい。やはり時間がかかってしまった。岩で殴り殺した方が40秒は早く死んでくれただろう。男の両足を持って茂みの奥に引き摺って行った。人目につかない程度でいい。すぐに女の方も引き摺って行こう。だが、男の髪や服や身体が土と草で汚れていた。同じように女を引き摺ってしまうと汚れてしまう。出来るだけ綺麗な方がいい。私は女を抱えた。負んぶするよりはお姫様抱っこの方が少し楽だった。
冷静になっていくと、自分の命と他人の命を秤にかけてしまう。それは自分の人生と他人の人生という秤でも当て嵌まる。どちらが自分にとって大切かという事だった。誰もが他人の為に死ねる覚悟がある訳がない。私は自分の為に聖者として誇りを持って死のうと誓ったが、それに何の意味があるだろうか?死を願ったのに神様は答えてくれなかった。私を殺さないのなら、誰かを殺すと神を脅迫した。何度も脅迫したのに神様は一度も答えてくれなかった。そんな神様がいると信じる事は出来ない。私は綺麗事を言って逃げただけだった。同級生の女性かもしれない人を殺すのが嫌で怖くて逃げただけだった。それはただの弱さで我儘だ。あれだけ母親や弟を嫌っているのに、殺したいと思っても、殺せないのは臆病だからだ。そう、人を殺すのは怖い。人殺しは怖くて怖くて出来ない。それが私だった。
『死ぬのも怖い。働くのも怖い。殺すのも怖い。怖くて何も出来ない。恐怖を捨てなければ身体も頭もまともに機能しません。そんな事は戦闘トレーニングで理解しています。誰かを殺す為には憎悪が必要だろうと、身体の中に憎悪を殺意を欲望を溜め込みました。あとは爆発させるだけです。自分が世界で一番不幸だと思える程に惨めに堕ちました。それでも、足りないという事です。何が足りない?足りないから殺せない?本当に?本当に?あぁ、分からない。人が人を殺すのに必要なもの………分からない。』
同じ事を何度も何度も考え続けている。人を殺す理由。人を殺せぬ理由。人を殺さなくても生きてはいける。人を殺せないのは捕まるのが怖いからではなく、自分の心が穢れるのが嫌だからだ。私は善人でいたい。聖者でいたい。醜い穢れた心の人間を誰が愛してくれるだろうか。人を殺せば、愛を失う。愛を捨てれば、人は殺せる。簡単な問い掛けに何度も答えた。答え続けたが、答えを正解とは認めたくなかった。
私が間違った選択をして、こんな場所で寒さに震えている事を認めたくはなかった。誰だってそうだろう。自分が頭のおかしな人間だとは認めたくはないものだ。これからどんなに頑張って生きていても、辛い目に遭うのが分かっている。分かっているのに生きなければならない。何故、生きなければならない?何故?何故?誰もが教えてくれない。誰もがそこまで深くは考えようとしない。考える事をやめればいいだけかもしれない。そうすれば、もっと楽になれるかもしれない。こうやって考えるから駄目なのだろう。もっとシンプルに考えよう。死にたいか、生きたいか、簡単な答えだった。
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朝がやって来た。今ならどんな事でも出来る自信があった。あぁ、楽しい。自然と口の中に甘い唾液が溢れて来る。自由である。あぁ、待ち望んでいた自由を手に入れた。だが、獣のように視界に入る者を殺すのは駄目だ。私という命の1コインを使って、このゲームを遊び尽くさなくてはいけない。早々に捕まってゲームオーバーは避けたいものだ。程良い疲労感が身体の力を奪って行く。まるで老人のような怠さだ。まずは体力を回復させなくてはいけない。喉も渇いた、腹も減った。だが、金は無い。ならば手に入れるしかない。歩きにくい、危険な山の中を進み続ける。このまま真っ直ぐに進めば道路に出られるだろう。車の音が聞こえる。獲物の気配を感じる。あと少し、あと少しで渇きも飢えも消えてくれる。楽しみで仕方なかった。
私は人通りの少ない登山道で待ち伏せしていた。最初に視界に入ったのは、登山客の中年男だった。金はあるだろうが、それだけだ。私の最初の獲物としては貧相な者であった。こいつは見逃す事にした。次にやって来たのは若いカップルだった。観光客か、それともデートか。階段を下りてやって来た。私は茂みの中に隠れて様子を見ていた。他に人の気配はしない。2人の年齢は24~25ぐらいだろう。男の方は身長があり、爽やかな好青年という印象だった。女性の方は少し茶色がかった黒髪が、肩の少し先まで伸びていた。男が7点、女が6点と言った所だろう。1対1ならば余裕だが、叫ばれるとこっちが狩られる者になってしまう。木刀を持って近づけば山賊だと思われてすぐに叫ばれる。そして、男が必死の抵抗を見せてくれるだろう。人は簡単に悲鳴を上げないと思っているなら、それは間違いだ。女性のほとんどがすぐに叫ぶ、最初は警戒する程度に小さく叫ぶが、すぐに確信に変わると大声で叫ぼうとする。非常に面倒である。私は地面に落ちている拳大の硬そうな岩を拾うと2人を食べる事に決めた。
瓦を割るように頭蓋骨を割ればいい。つまりは割れる強さで岩を頭に叩きつければ済む話である。男の背後から気配を消して近づく、走って近づけば不審人物として叫ばれる理由を与えてしまう。ゆっくりと近づく。知らない男が近づいて来るだけで叫ぶ人間はいない。こちらが一般的な行動を取れば、相手も一般的な反応を返してくれる。『おはようございます。』ゆっくりと振り返った男のコメカミに右手に握った岩を叩きつける。少し狙いがズレて目に当たってしまったが、問題ないだろう。女に叫ばれると面倒なので、素早く鼻の下に右の拳を叩き込む。休まずに腹部の急所、水月に右拳をめり込ませた。しばらくは呼吸が出来ない程、苦しいので叫ばれる心配はない。
男は気絶しているようだが、気絶は人によっては数十秒で回復する。意識を取り戻した瞬間は何が起こったか前後の記憶が飛んでしまうが、すぐに理解する事が出来る。血を撒き散らすのは嫌だが仕方ない。さっさと殺さないと別の獲物がやって来るかもしれない。3回後頭部強打した。これで死んでくれると助かる。
女は出来るだけ殺したくはないが仕方ない。苦しんでいる女の首に腕を回して、締めて行く。死んでもいいし、気絶でもいい。女の鼻血が服の袖付いてしまった。やれやれ本当に面倒だ。面倒事はさっさと終わりにしたい。やはり時間がかかってしまった。岩で殴り殺した方が40秒は早く死んでくれただろう。男の両足を持って茂みの奥に引き摺って行った。人目につかない程度でいい。すぐに女の方も引き摺って行こう。だが、男の髪や服や身体が土と草で汚れていた。同じように女を引き摺ってしまうと汚れてしまう。出来るだけ綺麗な方がいい。私は女を抱えた。負んぶするよりはお姫様抱っこの方が少し楽だった。
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