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最終話
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「いい加減にするのは、村長。あなたの方ですよ‼︎」
「うぐぐぐっ!」
村長のスーツの胸ぐらを掴み返すと、田代は村長の目を真っ直ぐに見て言った。
村長は何とか田代の手を胸ぐらから離そうとするが、全然離れない。
「まだ分からないんですか? ダイイング・メッセージの『犯人は田中』から『犯人は田口』を引けば、答えは出るじゃないですか‼︎ 答えは『1』——田中『一』さん、あなたのことですよ‼︎」
「——ッ‼︎ 馬鹿な⁉︎ あり得ない‼︎」
ダイイング・メッセージの答えを聞かされた瞬間、村長の顔色が真っ青になった。
まるで恐ろしい幽霊でも見たように驚いている。
「あの場所に深夜の見回りの際、車で運んでダイイングメッセージを書いたのは、犯行現場を偽装する為ですね。こうやって被害者があなたに握らされた石で、あなたと悦子さんが立ち去った後、暗闇の中で最後の力を振り絞って書いたんですよ‼︎」
村長の右手を左手で握り締めると、田代は村長の右手を力尽くで下に移動させて、数字の1を書かせていく。
「やめろぉー‼︎ やめてくれぇー‼︎ 刺されてから何時間経ってると思ってんだ‼︎ 死人に書けるわけがない‼︎ きっと誰か別の奴が書いたんだ‼︎ 誰だ‼︎ 誰が書いたんだぁー‼︎」
田代に激しく追及されて、とうとう村長がイカれてしまった。
犯人は自分だと自白しながら、『1』を書いた犯人は出て来いと、村人達を両目を見開いて怒鳴りつけている。
もちろん村人の誰も名乗り出ないが、村長の共犯者が名乗り出た。
「私は悪くないわ‼︎ 私は病院に連れて行こうとしたのに、『どうせ一年以内に死ぬからって』……あの男が止めたのよ‼︎」
「悦子、お前ぇー‼︎ お前が遺言書の練習を見られたせいで、勇雄と口論になって刺したんだろうが‼︎ 刺したのは私じゃない、あの女だぁー‼︎」
加害者二人がお互いを激しく指差して、どっちが悪いか怒鳴り合っている。
もちろんどっちも悪いに決まっている。我慢の限界はとっくに過ぎている。
田代が二人に向かって吠えた。
「いい加減にしなさぁーい‼︎」
「「ひいいい‼︎」」
「あなた達が言うべき言葉は他にあるでしょ‼︎ 残り僅かな人生を生きようとした人間の命をお金の為に奪ったんですよ‼︎ あなた達がまずやるべきことは被害者への謝罪の言葉です‼︎ 恥を知りなさい‼︎」
……
…
「いやぁ~、まさかダイイング・メッセージが二度書きされていたなんて、分かりませんでしたよぉ~!」
村長と悦子はパトカーに乗せられて、警察署に連行されていった。
けれども、まだ最後の謎が残されている。藤岡はその謎について田代に訊いてみた。
「でも、被害者の死亡推定時刻は午後2時頃ですよ。10時間後に生き返って、書くことなんて出来るんですか?」
「案外(あんがい)、亡くなった奥さんかもしれませんねぇ~」
田代は遠くに見える田んぼを見つめながら、微笑んで答えた。
ロマンチックな答えだが、そんなことはあり得ないと藤岡は笑っている。
「まさかぁ~! 田代警部は幽霊が助けったって言うんですか? それこそあり得ませんよぉ~!」
「たまにはあり得ないことが起きても良いじゃないですか。さあ、我々も帰りましょう」
「ああっ警部⁉︎ 一億円‼︎ 一億円貰わないんですか⁉︎」
それこそあり得ない。一億円貰えるかもと右往左往している藤岡は放って置いて、田代は歩き出した。
「うぐぐぐっ!」
村長のスーツの胸ぐらを掴み返すと、田代は村長の目を真っ直ぐに見て言った。
村長は何とか田代の手を胸ぐらから離そうとするが、全然離れない。
「まだ分からないんですか? ダイイング・メッセージの『犯人は田中』から『犯人は田口』を引けば、答えは出るじゃないですか‼︎ 答えは『1』——田中『一』さん、あなたのことですよ‼︎」
「——ッ‼︎ 馬鹿な⁉︎ あり得ない‼︎」
ダイイング・メッセージの答えを聞かされた瞬間、村長の顔色が真っ青になった。
まるで恐ろしい幽霊でも見たように驚いている。
「あの場所に深夜の見回りの際、車で運んでダイイングメッセージを書いたのは、犯行現場を偽装する為ですね。こうやって被害者があなたに握らされた石で、あなたと悦子さんが立ち去った後、暗闇の中で最後の力を振り絞って書いたんですよ‼︎」
村長の右手を左手で握り締めると、田代は村長の右手を力尽くで下に移動させて、数字の1を書かせていく。
「やめろぉー‼︎ やめてくれぇー‼︎ 刺されてから何時間経ってると思ってんだ‼︎ 死人に書けるわけがない‼︎ きっと誰か別の奴が書いたんだ‼︎ 誰だ‼︎ 誰が書いたんだぁー‼︎」
田代に激しく追及されて、とうとう村長がイカれてしまった。
犯人は自分だと自白しながら、『1』を書いた犯人は出て来いと、村人達を両目を見開いて怒鳴りつけている。
もちろん村人の誰も名乗り出ないが、村長の共犯者が名乗り出た。
「私は悪くないわ‼︎ 私は病院に連れて行こうとしたのに、『どうせ一年以内に死ぬからって』……あの男が止めたのよ‼︎」
「悦子、お前ぇー‼︎ お前が遺言書の練習を見られたせいで、勇雄と口論になって刺したんだろうが‼︎ 刺したのは私じゃない、あの女だぁー‼︎」
加害者二人がお互いを激しく指差して、どっちが悪いか怒鳴り合っている。
もちろんどっちも悪いに決まっている。我慢の限界はとっくに過ぎている。
田代が二人に向かって吠えた。
「いい加減にしなさぁーい‼︎」
「「ひいいい‼︎」」
「あなた達が言うべき言葉は他にあるでしょ‼︎ 残り僅かな人生を生きようとした人間の命をお金の為に奪ったんですよ‼︎ あなた達がまずやるべきことは被害者への謝罪の言葉です‼︎ 恥を知りなさい‼︎」
……
…
「いやぁ~、まさかダイイング・メッセージが二度書きされていたなんて、分かりませんでしたよぉ~!」
村長と悦子はパトカーに乗せられて、警察署に連行されていった。
けれども、まだ最後の謎が残されている。藤岡はその謎について田代に訊いてみた。
「でも、被害者の死亡推定時刻は午後2時頃ですよ。10時間後に生き返って、書くことなんて出来るんですか?」
「案外(あんがい)、亡くなった奥さんかもしれませんねぇ~」
田代は遠くに見える田んぼを見つめながら、微笑んで答えた。
ロマンチックな答えだが、そんなことはあり得ないと藤岡は笑っている。
「まさかぁ~! 田代警部は幽霊が助けったって言うんですか? それこそあり得ませんよぉ~!」
「たまにはあり得ないことが起きても良いじゃないですか。さあ、我々も帰りましょう」
「ああっ警部⁉︎ 一億円‼︎ 一億円貰わないんですか⁉︎」
それこそあり得ない。一億円貰えるかもと右往左往している藤岡は放って置いて、田代は歩き出した。
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