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第9話
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「この野朗ぉ~‼︎」
「藤岡君、行きますよ」
「ですが‼︎」
今にも藤岡は村長に殴りかかりそうな勢いだが、田代の方は興奮の熱が冷めたのか、村長に背を向けて歩き出した。藤岡はまだ言い足りないのか、田代を引き止めようとするが……
「何を言っても無駄ですよ。我々が事件を解決すればいいだけの話です。こんな馬鹿げたゲームはさっさと終わらせましょう」
「くぅ~、分かりました。おい、一億円用意して待ってろよ!」
田代の興奮の熱は冷めてなかった。心の中で静かに闘志を燃やし続けている。
それに気づいた藤岡は、テレビカメラに向かって強気に指差すと、犯人逮捕を宣言した。
「……田代警部」
「何ですか?」
「犯人って分かりますか?」
「はいぃ~?」
人混みの中を目的地の田口の家に向かって歩いていると、藤岡が静かに訊いた。
興奮の熱が冷めて、自分の言動を客観的に見れるようになったらしい。
犯人に心当たりもないのに、テレビカメラに向かって自信満々に捕まえると宣言してしまった。
これで野次馬達に先に犯人を見つけられたら、警察官として大恥をかいてしまう。
「いやぁ~まったく目星がないわけじゃないですよ! 田口とか悦子とか怪しいと思ってますよ!」
「藤岡君、怪しいだけでは逮捕は出来ませんよ。確かな証拠がないと」
「そうですよね……」
ピッロロピットホンホン~♪
「ちょっと失礼」
話の最中だったが、田代の携帯が鳴り出した。
田代は藤岡に軽く謝罪すると、スーツのポケットから携帯を取り出した。
「はい、田代です」
『おお、警部どの! 一躍スターですな!』
「はいぃ~?」
『テレビですよ、テレビ! 見ましたよ!』
田代が電話に出ると、鑑識の竹山の楽しそうな声が聞こえてきた。
さっきの騒動をテレビで見て、暇なのか連絡してきたようだ。
「竹山さん、我々は暇ではないんですよ。用がないなら切らせてもらいます」
『ちょっと警部⁉︎ 違います! 現場のゲソ痕(足跡)が判明したのでその報告です! 急いで調べたので苦労したんですよ!』
「それはそれはどうもありがとう。竹山さん、大至急リストを送ってください」
『まったく警部どのは人使いが荒い……はい送りましたぞ』
ピッロロピットホンホン~♪
「どうもありがとう」
不満を言いつつも、田代の携帯に竹山から報告書の画像が送られてきた。
田代は電話を切ると、藤岡と二人で送られてきた報告書の確認を始めた。
第一発見者の田中喜代美。
警察が到着するまで現場を封鎖していた村の男達。
村の責任者として無理矢理連れて来られた村長。
「あれ? 悦子がいない⁉︎」
「田口さんもいないようですね」
藤岡が怪しいと睨んでいた二人は報告書のリストに載っていなかった。
その代わり……
「田中美海さんですか……また意外な人が現れましたねぇ~」
村長の妻のゲソ痕が現場周辺から多数発見された。
二人が向かっていたのは田口の自宅だ。
運が良ければ、浮気相手の噂がある美海にも会えるかもしれない。
「藤岡君、行きますよ」
「ですが‼︎」
今にも藤岡は村長に殴りかかりそうな勢いだが、田代の方は興奮の熱が冷めたのか、村長に背を向けて歩き出した。藤岡はまだ言い足りないのか、田代を引き止めようとするが……
「何を言っても無駄ですよ。我々が事件を解決すればいいだけの話です。こんな馬鹿げたゲームはさっさと終わらせましょう」
「くぅ~、分かりました。おい、一億円用意して待ってろよ!」
田代の興奮の熱は冷めてなかった。心の中で静かに闘志を燃やし続けている。
それに気づいた藤岡は、テレビカメラに向かって強気に指差すと、犯人逮捕を宣言した。
「……田代警部」
「何ですか?」
「犯人って分かりますか?」
「はいぃ~?」
人混みの中を目的地の田口の家に向かって歩いていると、藤岡が静かに訊いた。
興奮の熱が冷めて、自分の言動を客観的に見れるようになったらしい。
犯人に心当たりもないのに、テレビカメラに向かって自信満々に捕まえると宣言してしまった。
これで野次馬達に先に犯人を見つけられたら、警察官として大恥をかいてしまう。
「いやぁ~まったく目星がないわけじゃないですよ! 田口とか悦子とか怪しいと思ってますよ!」
「藤岡君、怪しいだけでは逮捕は出来ませんよ。確かな証拠がないと」
「そうですよね……」
ピッロロピットホンホン~♪
「ちょっと失礼」
話の最中だったが、田代の携帯が鳴り出した。
田代は藤岡に軽く謝罪すると、スーツのポケットから携帯を取り出した。
「はい、田代です」
『おお、警部どの! 一躍スターですな!』
「はいぃ~?」
『テレビですよ、テレビ! 見ましたよ!』
田代が電話に出ると、鑑識の竹山の楽しそうな声が聞こえてきた。
さっきの騒動をテレビで見て、暇なのか連絡してきたようだ。
「竹山さん、我々は暇ではないんですよ。用がないなら切らせてもらいます」
『ちょっと警部⁉︎ 違います! 現場のゲソ痕(足跡)が判明したのでその報告です! 急いで調べたので苦労したんですよ!』
「それはそれはどうもありがとう。竹山さん、大至急リストを送ってください」
『まったく警部どのは人使いが荒い……はい送りましたぞ』
ピッロロピットホンホン~♪
「どうもありがとう」
不満を言いつつも、田代の携帯に竹山から報告書の画像が送られてきた。
田代は電話を切ると、藤岡と二人で送られてきた報告書の確認を始めた。
第一発見者の田中喜代美。
警察が到着するまで現場を封鎖していた村の男達。
村の責任者として無理矢理連れて来られた村長。
「あれ? 悦子がいない⁉︎」
「田口さんもいないようですね」
藤岡が怪しいと睨んでいた二人は報告書のリストに載っていなかった。
その代わり……
「田中美海さんですか……また意外な人が現れましたねぇ~」
村長の妻のゲソ痕が現場周辺から多数発見された。
二人が向かっていたのは田口の自宅だ。
運が良ければ、浮気相手の噂がある美海にも会えるかもしれない。
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