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第8話

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「入場料と挑戦料込みで一日千円! 村に移住して田中になれば、無料で犯人探し放題だよ!」
「はいはい! 移住したいなら早い者勝ちだよ! 空き家は沢山あるけど、先着五十名限定だよ!」
「田代警部、これは……!」
「ええ、大変な馬鹿騒ぎですね。さっさと村長を見つけましょう」

 田代と藤岡が村の入り口に到着すると、村人達が入って来る人達から金を取っていた。
 昨日までは簡素な村だったのに、今は有名観光地に変貌している。
 村人達は手作りのおにぎりや麦茶を売ったり、トイレを有料で貸し出していたりと、ド田舎の不便さを上手く利用して商売している。
 そんな村人達の中に拡声器を片手に一際大声で目立っている男がいる。
 田代達は人混みを掻き分けて、その人物に近づいていく。

「村長、随分と馬鹿なことをしましたね」

 田代が不愉快そうな顔を浮かべて村長に近づくと、ハッキリと言った。

「おや? 確か……」
「警視庁から来た、田代と藤岡です」

 村長は昨日会ったばかりの二人の名前をド忘れしたのか、思い出そうとしている感じだったが、待つだけ時間の無駄だと田代は名乗った。

「お~そうでしたそうでした! それで私に何かご用ですか? あいにくと忙しいところでしてな。一億円効果は絶大ですよ! このまま事件が未解決のままなら村が賑わってくれて助かるんですがね……あーでも、刑事さん達にとってはそれはマズイか⁉︎ いやぁー困りましたなぁー!」

 住民が死に、村が他所者達に荒らされているのに村長は満面の笑みだ。
 商売繁盛で忙しい人気店の店主だ。そんな有頂天の村長に田代は笑みを消して告げた。

「だったらすぐに暇にしてあげますよ。皆さん、事件は解決しました‼︎ 犯人はいません、被害者は自殺です‼︎」
「えっ? 何だよ、自殺かよ。入場料返せよな」
「ちょっ、ちょっ、刑事さん‼︎ やめてくださいよ‼︎ 皆さん、今のは嘘です‼︎ 犯人は村にいます‼︎ 犯人を見つけて、一億円手に入れましょう‼︎」

 警察手帳を頭上高くに上げて、他所者に田代は大声で事件解決を知らせていく。
 村長は商売を中止されそうになって、慌てて田代を止めようとするが……

「村長‼︎」
「——はい‼︎」

 田代が急に振り向き、向かって来た村長の顔に至近距離で叫んだ。
 村長は驚き悲鳴を上げて、後退りしている。

「やめて欲しいと思っているのは住民達の方ですよ‼︎ あなたがやっていることは村の為ではなく、自分の為です‼︎ 今すぐにこんな馬鹿げたことはやめなさい‼︎」
「ち、違う……私は村に活気を取り戻したいだけだ‼︎ お前達みたいな都会の人間には分からないだろう‼︎ 廃村間近の村が生き残るには、死ぬ気でやるしかないんだ‼︎」
「死者を冒涜する行為、これがあなたの言う活気ですか? 私には燃え尽きる前のロウソクの風前の灯火にしか見えませんよ‼︎」
「うるさい‼︎ うるさいうるさいうるさーい‼︎ ここは私の村だ‼︎ 他所者は黙っていろ‼︎ 村のことは私が決める‼︎ これ以上邪魔するのなら、マスコミを通して、お前達(警察)の横暴を全国に公開するぞ‼︎」

 村長と田代の激しい口論を聞きつけて、テレビ局のカメラが続々と集まってくる。
 警察官以外のこの場にいる全員が、一億円を与える村長の味方をしている。
 カメラのレンズを田代と藤岡に向けて、一億円のチャンスを奪う二人に敵意の視線を向ける。
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