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第4話
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「和ちゃんが殺された? 何言ってんだい! 和ちゃんが亡くなったのは認知症で徘徊してたせいじゃないか!」
「でも、村長が……」
「村長? あの間抜けに何聞いたか知らないけどさー、和ちゃんは殺されてないよ! 本当に殺されたのなら、噂話になるかい! もっと大騒ぎになるよ!」
「た、確かにそうですね……」
「馬鹿なこと聞き回ってないで、さっさと勇雄さん、殺した犯人見つけな! この税金泥棒!」
「す、すみません!」
村長宅を出た二人は周辺の村人に聞き込み調査を始めた。
けれども、村人の反応は同じようなものばかりだった。
藤岡は50代のおばさんに馬鹿なことを言うなと、凄く怒られている。
この反応も五人目になる。
「はぁー、また怒られましたよ。あの村長、デタラメ言いやがって!」
「どうやら、あの村長が信憑性(しんぴょうせい)のない噂の出所のようですね。ですが、別の噂が聞けたのは朗報です。そうですか、浮気ですか……」
藤岡の聞き込みは、怒られるだけの無駄な聞き込みで終わらなかった。
村長・田中一の妻・田中美海(みなみ)・36歳が去年村に移住してきた若い男・田中陽平(ようへい)・24歳と浮気しているという噂話を聞くことが出来た。
「まあ、事件とは関係ない話ですが、これで連続殺人の可能性は消えましたね!」
これ以上の聞き込みは不要と思ったのか、藤岡はホッと一安心したが、田代の考えは違うようだ。
「それはどうでしょう。認知症だから足を滑らせて、田んぼの中で溺れ死んだ……それこそ出来過ぎた話、作り話じゃありませんか?」
「まあ、そうかもしれませんが……田中夫婦に恨みを持つ人はいないと、村長が言って——ハッ!」
「そう。その村長の話が信用出来なくなりましたからね。被害者の家に向かうとしましょうか。近所の人ならば、確かなことが聞けるでしょう」
「はい!」
村長の証言が当てにならないことに、藤岡は気づいてしまった。
だからこそ新しい証言が必要になると、田代は被害者の自宅に手がかりを求めた。
「ここみたいですね……」
被害者の家は古びた二階建ての木造家屋だった。
藤岡は家の周囲を見て、違和感を感じた。一人暮らしの男の住む家にしては荒れてなかった。
手入れされた庭、外壁や窓も綺麗に磨かれている。とても妻を亡くして落ち込んでいる男の家じゃない。
むしろ、認知症の妻を亡くして、生き生きと生活している感じさえする。
「あら、刑事さん! ちょうど良かったわ!」
「えーっと、どちら……」
家に入ろうとする二人だったが、その前に呼び止められてしまった。
服装を見ると、畑仕事の最中に二人を見て、駆け寄って来た感じだ。
「田中よ、田中よ! お向えのね!」
「そうですか。それで我々にご用でしょうか?」
誰だか分からなかった藤岡だが、田中と名乗る40代の女性は近くに見える家を指差した。
被害者の話を聞くにはちょうどいい相手だと言える。
「でも、村長が……」
「村長? あの間抜けに何聞いたか知らないけどさー、和ちゃんは殺されてないよ! 本当に殺されたのなら、噂話になるかい! もっと大騒ぎになるよ!」
「た、確かにそうですね……」
「馬鹿なこと聞き回ってないで、さっさと勇雄さん、殺した犯人見つけな! この税金泥棒!」
「す、すみません!」
村長宅を出た二人は周辺の村人に聞き込み調査を始めた。
けれども、村人の反応は同じようなものばかりだった。
藤岡は50代のおばさんに馬鹿なことを言うなと、凄く怒られている。
この反応も五人目になる。
「はぁー、また怒られましたよ。あの村長、デタラメ言いやがって!」
「どうやら、あの村長が信憑性(しんぴょうせい)のない噂の出所のようですね。ですが、別の噂が聞けたのは朗報です。そうですか、浮気ですか……」
藤岡の聞き込みは、怒られるだけの無駄な聞き込みで終わらなかった。
村長・田中一の妻・田中美海(みなみ)・36歳が去年村に移住してきた若い男・田中陽平(ようへい)・24歳と浮気しているという噂話を聞くことが出来た。
「まあ、事件とは関係ない話ですが、これで連続殺人の可能性は消えましたね!」
これ以上の聞き込みは不要と思ったのか、藤岡はホッと一安心したが、田代の考えは違うようだ。
「それはどうでしょう。認知症だから足を滑らせて、田んぼの中で溺れ死んだ……それこそ出来過ぎた話、作り話じゃありませんか?」
「まあ、そうかもしれませんが……田中夫婦に恨みを持つ人はいないと、村長が言って——ハッ!」
「そう。その村長の話が信用出来なくなりましたからね。被害者の家に向かうとしましょうか。近所の人ならば、確かなことが聞けるでしょう」
「はい!」
村長の証言が当てにならないことに、藤岡は気づいてしまった。
だからこそ新しい証言が必要になると、田代は被害者の自宅に手がかりを求めた。
「ここみたいですね……」
被害者の家は古びた二階建ての木造家屋だった。
藤岡は家の周囲を見て、違和感を感じた。一人暮らしの男の住む家にしては荒れてなかった。
手入れされた庭、外壁や窓も綺麗に磨かれている。とても妻を亡くして落ち込んでいる男の家じゃない。
むしろ、認知症の妻を亡くして、生き生きと生活している感じさえする。
「あら、刑事さん! ちょうど良かったわ!」
「えーっと、どちら……」
家に入ろうとする二人だったが、その前に呼び止められてしまった。
服装を見ると、畑仕事の最中に二人を見て、駆け寄って来た感じだ。
「田中よ、田中よ! お向えのね!」
「そうですか。それで我々にご用でしょうか?」
誰だか分からなかった藤岡だが、田中と名乗る40代の女性は近くに見える家を指差した。
被害者の話を聞くにはちょうどいい相手だと言える。
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