53 / 84
生五話 ペ、ペトラァッ‼︎
しおりを挟む
「もぉー、ペトラさんのお知り合いなら先に言ってくださいよぉ。ラナさんの具合は悪いままなんですか?」
「えぇ、まぁ……」
明るくなった店長に対して、気怠げに返事した。
店長が神対応になったので、今度はこっちが塩対応してやる。
やられたらやり返す、倍返しじゃないけどちょい返しだ!
「大変ですよねぇー。えっと……失礼ですが、ペトラさんとはどういう関係なんですか? お兄さんはいなかったはずだし、若い男性のお知り合いの話は聞いた事がなかったので……」
しまった。店長の対応が悪かったから、ラナさんの名前を出してしまったけど、そこまで考えてなかった。
親戚、友達、彼氏、近所の者と候補はあるけど、親戚と彼氏は除外できる。だとしたら友達と近所の者だ。
「えっと、俺の母さんとラナさんが知り合いで、母さんが忙しいんで薬を買ってくるように頼まれたんですよ」
「ああ、なるほど。もしかして、ナヨンさんですか? こんな大きなお子さんがいるとは知りませんでした。数カ月前にお隣に引っ越して来たとペトラさんに聞いた事があったんですけどね」
「えぇ、まぁ……」
何故かバンダナの息子になってしまったけど、まあ別に問題なさそうだ。
今だけバンダナの息子バンにでもなっていよう。
……それにしても世間話が長すぎる。
さっさと店の奥に薬の錠剤を取りに行かせよう。
こっちは何処にあるのかもう知っている。
「すみません。急いでいるんですけど、まだかかりますか?」
「おっと失礼! すぐに用意しますね!」
立ち話が長い店長に遠回し、いや、ほぼ直でお願いすると、ダッシュで取りに行ってくれた。
やっぱりお願いするって大事だよね。特に自分から動こうとしない駄目店長にはねえ。
「お待たせしました! 魔力消し薬と回復薬、四百グラムずつで銀貨七枚になります」
(はあ? おい、値上げしてんじゃねえよ)
前に買った時は銀貨五枚だった。明らかに値上げしている。
神対応していると思っていたのに、ゲス対応してきやがった。
人の命がかかっているのに人間のやる事じゃない。
「えっ? 銀貨七枚は高すぎるでしょ。一般的に銀貨五枚が妥当ですよ」
「あー、そう言われましても……うちは品質にこだわっていますし、それに銀貨七枚も相場より安いと思いますよ」
このぉー! 私が素人だと思って舐めてやがる。絶対に銀貨七枚で売るつもりだ。
こっちは前回も払って、今回も払うと金貨一枚と銀貨二枚になる。
流石に高すぎる! ラナさん助けても私が生活できなくなる!
「……分かりました。じゃあ、薬草がたくさんあるので、それを買取ってくれませんか? それなら銀貨七枚でいいです」
「薬草ですかぁー……分かりました。普段は個人からの買取りはやってないんですが、ラナさんのお知り合いという事で特別に買取らせてもらいます」
いちいち言い方がムカツク。だけど、薬草はたくさん(五キロぐらい)ある。
この店、破綻させてやる。左胸から包丁小を取り出して、冷蔵庫に変えた。
冷蔵庫を開けて、白鞄の中から薬草を詰め込んだ布袋を取り出した。
この私を怒らせた事を後悔させてやる。
ドサドサ、ドサドサと布袋から薬草を掴み出して、床に並べていく。
こっちは急いでいるから、三十秒以内に査定してもらう。
ちょっとでも遅れたら、迷惑料として薬代をマケてもらう。
今の私は一流クレーマーだ。簡単に許してもらえると思わない方がいい。
前回払ったんだがら、今回は無料でもらっていく。
「あーこれは駄目ですね。薬草は一つもありませんねぇ」
「はぁ?」
十秒も経たずに査定が終了した。それも違法な手段でだ。
適当に見て、全部ゴミだと買取り拒否してきた。
これは犯罪なので、薬草を指差し言ってやった。
「ちゃんとよく見てくださいよ。全部薬草です。『耳長ギザギザ草』に『緑葉っぱデカデカ草』と……森で取ってきたんだから間違いないです」
「はい? 耳長ギザギザ草ですか……この『フタセリ草』の事を言ってるんですか?」
「ええ、そうです。薬草ですよね?」
店長が指差しながら訊いてきたけど、耳長ギザギザ草の別名なんて知らない。
こっちは薬草に詳しいペトラと一緒に取ってきたんだから間違いない。
「いえ、ただの何の価値もない雑草です。フタセリ草、カサネ草、マダラ紅草、ワタワタ草、これなんかは毒草の『ブルネック毒草』です。こんなの使ったら死にます。嘘だとお思いなら、別の薬屋で確認してもらっても結構ですよ」
「な、な、なななっ‼︎」
店長が薬草達を次々指差し、知らない名前を言っていく。
私には分かる。これは嘘を言っている人間の目じゃない。
自信に満ちた人間の目だ!
(ハァハァ、ハァハァ、ペ、ペトラァッ‼︎ 私に雑草拾わせて、私とお母さんに毒草食べさせたの⁉︎)
信じたくない。信じたくないけど、多分真実だ。残酷な真実だ。
ペトラが知ったかぶりして、雑草と毒草を材料に私にクソ不味い料理を作らせた。
道理で不味いと思ったよ。私があんな不味い料理作れるはずないんだから。
「えぇ、まぁ……」
明るくなった店長に対して、気怠げに返事した。
店長が神対応になったので、今度はこっちが塩対応してやる。
やられたらやり返す、倍返しじゃないけどちょい返しだ!
「大変ですよねぇー。えっと……失礼ですが、ペトラさんとはどういう関係なんですか? お兄さんはいなかったはずだし、若い男性のお知り合いの話は聞いた事がなかったので……」
しまった。店長の対応が悪かったから、ラナさんの名前を出してしまったけど、そこまで考えてなかった。
親戚、友達、彼氏、近所の者と候補はあるけど、親戚と彼氏は除外できる。だとしたら友達と近所の者だ。
「えっと、俺の母さんとラナさんが知り合いで、母さんが忙しいんで薬を買ってくるように頼まれたんですよ」
「ああ、なるほど。もしかして、ナヨンさんですか? こんな大きなお子さんがいるとは知りませんでした。数カ月前にお隣に引っ越して来たとペトラさんに聞いた事があったんですけどね」
「えぇ、まぁ……」
何故かバンダナの息子になってしまったけど、まあ別に問題なさそうだ。
今だけバンダナの息子バンにでもなっていよう。
……それにしても世間話が長すぎる。
さっさと店の奥に薬の錠剤を取りに行かせよう。
こっちは何処にあるのかもう知っている。
「すみません。急いでいるんですけど、まだかかりますか?」
「おっと失礼! すぐに用意しますね!」
立ち話が長い店長に遠回し、いや、ほぼ直でお願いすると、ダッシュで取りに行ってくれた。
やっぱりお願いするって大事だよね。特に自分から動こうとしない駄目店長にはねえ。
「お待たせしました! 魔力消し薬と回復薬、四百グラムずつで銀貨七枚になります」
(はあ? おい、値上げしてんじゃねえよ)
前に買った時は銀貨五枚だった。明らかに値上げしている。
神対応していると思っていたのに、ゲス対応してきやがった。
人の命がかかっているのに人間のやる事じゃない。
「えっ? 銀貨七枚は高すぎるでしょ。一般的に銀貨五枚が妥当ですよ」
「あー、そう言われましても……うちは品質にこだわっていますし、それに銀貨七枚も相場より安いと思いますよ」
このぉー! 私が素人だと思って舐めてやがる。絶対に銀貨七枚で売るつもりだ。
こっちは前回も払って、今回も払うと金貨一枚と銀貨二枚になる。
流石に高すぎる! ラナさん助けても私が生活できなくなる!
「……分かりました。じゃあ、薬草がたくさんあるので、それを買取ってくれませんか? それなら銀貨七枚でいいです」
「薬草ですかぁー……分かりました。普段は個人からの買取りはやってないんですが、ラナさんのお知り合いという事で特別に買取らせてもらいます」
いちいち言い方がムカツク。だけど、薬草はたくさん(五キロぐらい)ある。
この店、破綻させてやる。左胸から包丁小を取り出して、冷蔵庫に変えた。
冷蔵庫を開けて、白鞄の中から薬草を詰め込んだ布袋を取り出した。
この私を怒らせた事を後悔させてやる。
ドサドサ、ドサドサと布袋から薬草を掴み出して、床に並べていく。
こっちは急いでいるから、三十秒以内に査定してもらう。
ちょっとでも遅れたら、迷惑料として薬代をマケてもらう。
今の私は一流クレーマーだ。簡単に許してもらえると思わない方がいい。
前回払ったんだがら、今回は無料でもらっていく。
「あーこれは駄目ですね。薬草は一つもありませんねぇ」
「はぁ?」
十秒も経たずに査定が終了した。それも違法な手段でだ。
適当に見て、全部ゴミだと買取り拒否してきた。
これは犯罪なので、薬草を指差し言ってやった。
「ちゃんとよく見てくださいよ。全部薬草です。『耳長ギザギザ草』に『緑葉っぱデカデカ草』と……森で取ってきたんだから間違いないです」
「はい? 耳長ギザギザ草ですか……この『フタセリ草』の事を言ってるんですか?」
「ええ、そうです。薬草ですよね?」
店長が指差しながら訊いてきたけど、耳長ギザギザ草の別名なんて知らない。
こっちは薬草に詳しいペトラと一緒に取ってきたんだから間違いない。
「いえ、ただの何の価値もない雑草です。フタセリ草、カサネ草、マダラ紅草、ワタワタ草、これなんかは毒草の『ブルネック毒草』です。こんなの使ったら死にます。嘘だとお思いなら、別の薬屋で確認してもらっても結構ですよ」
「な、な、なななっ‼︎」
店長が薬草達を次々指差し、知らない名前を言っていく。
私には分かる。これは嘘を言っている人間の目じゃない。
自信に満ちた人間の目だ!
(ハァハァ、ハァハァ、ペ、ペトラァッ‼︎ 私に雑草拾わせて、私とお母さんに毒草食べさせたの⁉︎)
信じたくない。信じたくないけど、多分真実だ。残酷な真実だ。
ペトラが知ったかぶりして、雑草と毒草を材料に私にクソ不味い料理を作らせた。
道理で不味いと思ったよ。私があんな不味い料理作れるはずないんだから。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
初めて本気で恋をしたのは、同性だった。
芝みつばち
恋愛
定食屋のバイトを辞めた大学生の白石真春は、近所にできた新しいファミレスのオープニングスタッフとして働き始める。
そこで出会ったひとつ年下の永山香枝に、真春は特別な感情を抱いてしまい、思い悩む。
相手は同性なのに。
自分には彼氏がいるのに。
葛藤の中で揺れ動く真春の心。
素直になりたくて、でもなれなくて。
なってはいけない気がして……。
※ガールズラブです。
※一部過激な表現がございます。苦手な方はご遠慮ください。
※未成年者の飲酒、喫煙シーンがございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる