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生五話 ペ、ペトラァッ‼︎

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「もぉー、ペトラさんのお知り合いなら先に言ってくださいよぉ。ラナさんの具合は悪いままなんですか?」
「えぇ、まぁ……」

 明るくなった店長に対して、気怠げに返事した。
 店長が神対応になったので、今度はこっちが塩対応してやる。
 やられたらやり返す、倍返しじゃないけどちょい返しだ!

「大変ですよねぇー。えっと……失礼ですが、ペトラさんとはどういう関係なんですか? お兄さんはいなかったはずだし、若い男性のお知り合いの話は聞いた事がなかったので……」

 しまった。店長の対応が悪かったから、ラナさんの名前を出してしまったけど、そこまで考えてなかった。
 親戚、友達、彼氏、近所の者と候補はあるけど、親戚と彼氏は除外できる。だとしたら友達と近所の者だ。

「えっと、俺の母さんとラナさんが知り合いで、母さんが忙しいんで薬を買ってくるように頼まれたんですよ」
「ああ、なるほど。もしかして、ナヨンさんですか? こんな大きなお子さんがいるとは知りませんでした。数カ月前にお隣に引っ越して来たとペトラさんに聞いた事があったんですけどね」
「えぇ、まぁ……」

 何故かバンダナの息子になってしまったけど、まあ別に問題なさそうだ。
 今だけバンダナの息子バンにでもなっていよう。

 ……それにしても世間話が長すぎる。
 さっさと店の奥に薬の錠剤を取りに行かせよう。
 こっちは何処にあるのかもう知っている。

「すみません。急いでいるんですけど、まだかかりますか?」
「おっと失礼! すぐに用意しますね!」

 立ち話が長い店長に遠回し、いや、ほぼ直でお願いすると、ダッシュで取りに行ってくれた。
 やっぱりお願いするって大事だよね。特に自分から動こうとしない駄目店長にはねえ。

「お待たせしました! 魔力消し薬と回復薬、四百グラムずつで銀貨七枚になります」

(はあ? おい、値上げしてんじゃねえよ)

 前に買った時は銀貨五枚だった。明らかに値上げしている。
 神対応していると思っていたのに、ゲス対応してきやがった。
 人の命がかかっているのに人間のやる事じゃない。

「えっ? 銀貨七枚は高すぎるでしょ。一般的に銀貨五枚が妥当ですよ」
「あー、そう言われましても……うちは品質にこだわっていますし、それに銀貨七枚も相場より安いと思いますよ」

 このぉー! 私が素人だと思って舐めてやがる。絶対に銀貨七枚で売るつもりだ。
 こっちは前回も払って、今回も払うと金貨一枚と銀貨二枚になる。
 流石に高すぎる! ラナさん助けても私が生活できなくなる!

「……分かりました。じゃあ、薬草がたくさんあるので、それを買取ってくれませんか? それなら銀貨七枚でいいです」
「薬草ですかぁー……分かりました。普段は個人からの買取りはやってないんですが、ラナさんのお知り合いという事で特別に買取らせてもらいます」

 いちいち言い方がムカツク。だけど、薬草はたくさん(五キロぐらい)ある。
 この店、破綻させてやる。左胸から包丁小を取り出して、冷蔵庫に変えた。
 冷蔵庫を開けて、白鞄の中から薬草を詰め込んだ布袋を取り出した。
 この私を怒らせた事を後悔させてやる。

 ドサドサ、ドサドサと布袋から薬草を掴み出して、床に並べていく。
 こっちは急いでいるから、三十秒以内に査定してもらう。
 ちょっとでも遅れたら、迷惑料として薬代をマケてもらう。
 今の私は一流クレーマーだ。簡単に許してもらえると思わない方がいい。
 前回払ったんだがら、今回は無料でもらっていく。

「あーこれは駄目ですね。薬草は一つもありませんねぇ」
「はぁ?」

 十秒も経たずに査定が終了した。それも違法な手段でだ。
 適当に見て、全部ゴミだと買取り拒否してきた。
 これは犯罪なので、薬草を指差し言ってやった。

「ちゃんとよく見てくださいよ。全部薬草です。『耳長ギザギザ草』に『緑葉っぱデカデカ草』と……森で取ってきたんだから間違いないです」
「はい? 耳長ギザギザ草ですか……この『フタセリ草』の事を言ってるんですか?」
「ええ、そうです。薬草ですよね?」

 店長が指差しながら訊いてきたけど、耳長ギザギザ草の別名なんて知らない。
 こっちは薬草に詳しいペトラと一緒に取ってきたんだから間違いない。

「いえ、ただの何の価値もない雑草です。フタセリ草、カサネ草、マダラ紅草、ワタワタ草、これなんかは毒草の『ブルネック毒草』です。こんなの使ったら死にます。嘘だとお思いなら、別の薬屋で確認してもらっても結構ですよ」
「な、な、なななっ‼︎」

 店長が薬草達を次々指差し、知らない名前を言っていく。
 私には分かる。これは嘘を言っている人間の目じゃない。
 自信に満ちた人間の目だ!

(ハァハァ、ハァハァ、ペ、ペトラァッ‼︎ 私に雑草拾わせて、私とお母さんに毒草食べさせたの⁉︎)

 信じたくない。信じたくないけど、多分真実だ。残酷な真実だ。
 ペトラが知ったかぶりして、雑草と毒草を材料に私にクソ不味い料理を作らせた。
 道理で不味いと思ったよ。私があんな不味い料理作れるはずないんだから。
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