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リル・スタットレイ 〜小さな町の小さな家に住む生命の錬金術師〜

第9話・リルと空の魔物達

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 トンテン、カンテンと町の修復作業が本格的にスタートしたようです。壊れた家を解体して、その瓦礫を集めては、リルの錬金術で新しい建築資材を作り出しています。

「まったく、私は生命の錬金術師で建築屋さんじゃないんですよ!」

「申し訳ありません。リル様の力がないと新しい家なんて我々だけでは作れません。どうか我々に、リル様の偉大なる力をお貸しください」

 僧侶はもうリルの扱い方を心得ているようです。とにかく褒めれば何とかなるです。

「まったく、そこまで言われたら仕方ありませんねぇ~♬ 1分もあれば、新築一戸建てぐらいは作れます。危ないから魔法陣の外まで退がっていてくださいよ。一緒に建築資材になっちゃいますから」

 トラ、リス、ウサギの半獣人達がリルの前に這いつくばり、見事な土下座で頼み込んでいます。木材、土、岩と建築資材がある程度集まったら、今度はリルの錬金術で一気に家の形にしてもらいます。

 3人で組み立てた場合は、まず、やり方が分かりません。もう自力で作るのが無理なのは分かっています。リルを煽てて手伝ってもらった方が確実で早いです。

「あれ? いつもの魔法陣と模様が違うような?」

 カッカッ、カッカッといつものとは違う魔法陣です。何度も見た事があるので、流石に3人も気づいたようです。

「ああ、こっちの魔法陣は非生命体用です。ゴーレムとか、ガーゴイルとか、スケルトンとかです。アイツら感情とか痛覚がないから、殴っても、雷で攻撃しても怖がらないし、痛がらないんです。全然面白くないので作るのはやめました。でも、こんな風に家を建てる時には便利なので時々は使っているんですよ」

「へぇ~~、確かに便利そうですね。料理とかは作れないんですか?」

「それは無理です。あなた達が着ている服とか、首輪なら作れるんだけどね」

 リルは何でもないように答えていますが、3人はやっぱりそうなんだと納得しています。。つまりは生物が痛がったり、泣き叫ぶ姿を見るのが面白いと言っているようなものです。

 今では、森でライオンと熊に襲われているリルを助けなければよかったと後悔しています。

「さあ、完成です。今日からこの家があなた達が暮らす家になります」

 いつもとは違い爆発は起こりません。ガタガタ、グネグネと材木や土が変形しては、くっ付いていきます。あっという間に二階建ての木造建築が完成しました。

「これは凄いな」

「魔物を作らなくても、格安の家を作って売ればいいだろうに」

「本当に才能の無駄ですね」

 昔は木や土で命令されないと動けない人形(トレントやゴーレム)を作って遊んでいたリルが、今では肉と骨を使って、立派に意思を持つ生物を作っています。ちょっとだけ口が悪いのが問題ですが。

「なかなか良い家ですね。でも、リル様の力があれば、町なんかすぐに直せるんじゃないですか?」

「そうだよ。俺達がいなくても大丈夫だろ。首輪を外して町に帰せよ!」

 うさ耳僧侶は従順なようですが、リス耳魔法使いはまだまだ反抗的なようです。こんな時は癒し系アイドルのデカチュウの出番です。デカチュウに爆弾首輪を付けて、町の外に出してあげましょう。

「さあ、デカチュウ。森に帰っていいですよ」

「deka choo⁈」と、こんな夢みたいな事を言われてビックリしています。でも、リルの事は仲間のデカチュウ達に聞いています。喜ばせてから、地獄に落とす最低最悪の悪女です。隙さえあれば、メタメタのギタギタにしようと日夜、檻の中で復讐を誓い合っています。

「どうしたんですか? 森の中で暮していいんですよ。それとも、檻の中の方が良いですか?」

「deka choo!」と、それは絶対に嫌です。昨日も獅子熊にペロリと6匹も犠牲になってしまいました。檻の中で食べられるのを待つよりは逃げた方がいいです。

 タッタッタッ、とリズムカルに軽やかにデカチュウは自由を求めて町から、森に向かって走って行きます。

「この町から出たい人はデカチュウと一緒に今行ってください。私は止めたりしません。さあ、早く」

「いや、それは…」「俺もこの姿はそこまで嫌じゃ…」「僕もまだやり残した事が…」

 さっきまでは町を出たいと言っていたのに気が変わったようです。自分の首に付けられたのが爆弾首輪だと知っている人は絶対に町から出ようとは思いません。だって町の外に出るとどうなるか、馬鹿じゃなければ分かります。

 ポチ、バァン! 町の外で何かが爆発したような音が聞こえました。何の音でしょうか? 爆発した何かは森の動物さん達が美味しくいただいたそうです。

「おやぁ~~? 何の音でしょう? 木でも倒れたんですか。フッフフ、さて、皆さんはここに残りたいようなので、お仕事をしてもらいます。私の実験の助手です。作った動物や魔物を戦って倒して、大人しくしてもらいます。いいですね?」

「つまりはタダ働きか」

「酷いです! もちろん報酬は用意します。ファイちゃんにはオリハルコンの武器と防具はどうでしょう?」

「それなら、是非欲しい!」

「マ~ちゃんには古代攻撃魔法を教えてあげますよ。リッちゃんには可愛い服を作ってあげましょう!」

「古代魔法だって!! それなら俺も協力するよ」

「何で僕だけ服なんだよ」

 2人は大喜びのようですが、1人はガッカリしています。女の子にとって可愛い服は戦闘服のようなものです。もっと喜んでください。

 何はともあれ頼もしい仲間達が町の住民に加わりました。彼女達の活躍で、錬金術で作った魔物達が次々と仲間になりました。

 ♦︎

「Grrrr」「mew Roar」と、ケルベロスと獅子熊が森の中をウロウロと彷徨いています。リルの町に近づく不審者を倒して、町まで運ぶように命令されています。摘み食いでもしようものなら、ポチとボタンを押されてしまいます。

「さてさて、冒険者さんが町に多く移住するようなってくれたので助かります。お陰で錬金術の研究は順調です」

「………」と、多くの冒険者は拉致監禁されて、無理矢理に人体改造されただけです。突然大量発生した危険な魔物の原因を調査しに来て、リルの魔物達に倒されてしまいました。気がついた時は身も心も性別も変わり果てた姿に変わっていました。

「さて、これだけの凄腕冒険者さんが集まれば、絶対に作ってはいけない魔物も作っていいはずです。今日は思い切って、2匹作りましょう!」

 冒険者達が苦労して集めて育てた動物達が、リルの手によって危険な魔物に変えられます。今回は大鷲と馬、ライオンと大蛇と大蝙蝠オオコウモリです。

「皆さん、喜んでください! この実験が成功したら、魔物飛行部隊が誕生するんです。これで遠くの町とも交流が出来るようになります。ワァ~~、今から楽しみです」

 どう考えても最悪の時代が始まりそうな予感しかしません。危険な魔物達が空から襲い掛かってくるのです。それは町との交流ではなく、町への攻撃です。

「止めるべきなのだろうが、命は惜しい」

「止めてやめるようなら、とっくにやめているだろうよ」

「お前が止めろよ!」「お前がやれよ!」

「もうぅ~~、喧嘩はダメだよぉ~~」

 ようするに誰も命を賭けてまで、リルの実験に反対するつもりはないようです。

 リルは周りの騒音は気にせずに、カッカッ、カッカッと魔法陣2個を一瞬で描き上げます。

「皆さん、戦闘準備してください! 相手は《グリフィン》《キメラ》です。絶対ぃ~~~に! 空に逃げられたら駄目ですよ!」

 そんな事を言ったら絶対に逃げられそうな予感しかしません。ボン! と魔法陣が爆発すると、いつものように白い煙の中から魔物が現れました。

⚫︎グリフィン 体力120 攻撃力50 防御力50 魔法攻撃力0 魔法防御力30 大鷲オオワシと馬の合成魔法生物。大変凶暴なので背中に飛び乗るのは自殺行為に等しい。

⚫︎キメラ 体力120 攻撃力50 防御力50 魔法攻撃力40 魔法防御力30 ライオンと大蛇と大蝙蝠の複数合成魔法生物。口から火を吐き、尻尾の蛇に噛まれると毒状態になります。背中のコウモリの翼で短時間だけ空を飛ぶ事も出来ます。

「Wee~aaa!!」「Meow!!」と灰色の翼と黒い翼が大きく広げられました。

「………皆さん、頑張ってください」

 スタスタスタと、リルはオリハルコンの家に帰って行くと、ガチャ、ガチャと鍵を閉めていきます。ちょっと魔力を使い過ぎちゃったのかな?

 ♦︎

☆冒険者達 体力300 攻撃力150 防御力120 魔法攻撃力150 魔法防御力120 冒険者達20人によるパーティ。オリハルコンの装備と首輪爆弾で強敵とも命をかけて戦えます。

①斬撃の雨(ダメージ50) ②炎の雨(ダメージ90) ③空振り ④矢の雨(ダメージ50) ⑤空振り ⑥氷の嵐(ダメージ90)

★グリフィン・キメラ 体力240 攻撃力100 防御力100 魔法攻撃力40 魔法防御力60 

①毒の尻尾(1ターンごとにダメージ20) ②炎の息(ダメージ20) ③翼で切る(ダメージ20) ④鋭い鉤爪(ダメージ20) ⑤空に逃げる(逃走) ⑥嘴で抉る(ダメージ20)

 とにかく空に逃げられたら終わりです。逃げられる前に倒してしまいましょう。先制攻撃は冒険者達からです。さあ、頑張りましょう!

 ♦︎

 



 
 

 

 






 
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