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中編・前
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「ハァハァ……ハァハァ……ユッく~~ん!」
「あっ! ベッキーさ~~ん!」
待ち合わせ場所の街の入り口で待っていると、金色のツインテールヘアと赤いスカートを揺らしてベッキーさんが走って来た。ベッキーさんが左手を振っているので、僕も両手を元気に振ってみた。
ベッキーさんは可愛らしい白い服を着ていて、右手には植物のツルで編んだ四角い籠を持っている。今日は記念すべき初デートの日だ。と言っても、ベッキーさんと一緒に冒険者の仕事をするだけだ。
「ごめんね、ユッくん。待ったよね?」
「そんな事ないよ。僕も今来たところだから」
本当は二十分前から待っていたけど、待ち合わせ時間の五分前にやって来たベッキーさんは悪くない。僕が念の為に早く来てしまっただけだ。
「ねぇ、ユッくん? 手とか繋いでいいかな?」
「う、うん、もちろん……」
街の外の草原を二人で並んで歩いているとベッキーさんが聞いてきた。ベッキーさんの左手の甲が僕の右手にチョンチョン当たっていたから、そんな気はしていたけど、やっぱり手を繋ぎたかったみたいだ。
……くぅぅ、僕から言わないといけないかったのに! でも、可愛い!
照れながらも柔らかいベッキーさんの手を握って、二人で目的地に向かって歩いて行く。
今日はスライムというカラフルな色をしたモンスターを倒すそうだ。退治せずに放って置くと、草原の草が全部食べられてしまうので重要な仕事らしい。
「ユッくん、剣はしっかりと握るんだよ」
「えーっと、こんな感じで良いのかな?」
「そうそう。ギュッと強く握り締めて」
……柔らかくて、良い匂いがする!
背中にプニュプニュとベッキーさんの胸が当たっている。後ろからベッキーさんに剣の持ち方を習っているけど、これだと剣よりも胸に集中してしまう。
「いち、に、いち、に、いち、に……」
……はぁぁ、幸せ過ぎて死にそうだ。
ベッキーさんの身体が密着した状態で、ベッキーさんの掛け声に合わせて、剣の素振りを始めた。お仕事のお手伝いをして欲しいと頼まれたけど、これはどう見てもデートだ。
「ユッくん、凄く才能あるよ! 絶対に冒険者になった方が良いよ!」
「そ、そうかな……」
「うんうん! 百年に一人の天才剣士だよ!」
「じゃあ、また今度一緒にお仕事しようかな」
本当に軽く上下に百回だけ剣を振っただけなのに、ベッキーさんは凄く褒めてくれる。嬉しいんだけど、草原に転がっているボール状のスライムは一匹も倒してない。
デートもいいけど、お仕事も頑張らないといけない。
ベッキーさんに剣を借りると二人で赤、青、緑、黄色のスライムを切っていく。
切られたスライムは身体を破裂させて、ベトベトの液体を周りにばら撒いてしまう。ベッキーさんの身体も僕と一緒でベトベトになっていて、ポタポタと身体から液体が落ちている。
……ちょっとエッチ過ぎる。
「ユッくん、そろそろお昼ご飯にしよう!」
「はぁーい!」
ベトベトの剣を振って、ベッキーさんが呼んでいる。夢中でスライムを倒していたから気付かなかった。もうそんな時間になっていた。
涼しそうな木の下に行くと、ベッキーさんがおしぼりを渡してくれた。フタの開いた四角い籠の中には、可愛らしいサンドイッチが沢山並んでいる。
「もしかして手作り?」
敷物の上に座ると、ベトベトの手をおしぼりで拭きながら聞いてみた。お店には売られてないような珍しい具材もあるので、多分手作りだ。
「あの……もしかして手作りとか食べたくないですか……」
ベッキーさんが落ち込んだ感じに表情を暗くさせてしまった。きっと前の彼氏が手作り料理が嫌いだったんだ。こんな美味しそうな料理を嫌いだなんて勿体ない。
「そんな事ないよ! 嬉しいに決まっているよ! 僕が本当に食べていいの?」
「う、うん……ユッくんの為に作ったんだよ。私一人じゃこんなに食べ切れないよ」
……か、可愛いっ!
僕が食べていいのか聞くと、恥ずかしそうに照れたようにベッキーさんが食べていいと言ってくれた。キューンと胸が締め付けられる。下心満載で近づいたけど、初めての彼女がベッキーさんで本当に良かった。
モグモグ、バクバク……
「美味しいよ! 凄く美味しいよ! こんなに美味しいのを食べたら、他のサンドイッチは食べられなくなるよ!」
「もー! ユッくん! 私の分まで食べたらダメだよ!」
「はっ! ごめんなさい……」
調子に乗って食べていたら怒られてしまった。シュンと落ち込んでしまう。そんな落ち込んでいる僕に、ベッキーさんは意地悪な笑みを浮かべて近づいてくる。
「フフッ、でも、嬉しいから許してあげるね。はい、あーん」
「あ、あーん……」
かなり恥ずかしいけど口を大きく開けて、ベッキーさんが持っているサンドイッチを受け入れた。
すぐにポフッと口の中に三角のサンドイッチの角が入ってきた。口を閉じると、ちょっぴり辛いマスタードの味が口の中に広がっていく。
「じゃあ、次はユッくんの番だよ。これで、あーんして」
「あっ、う、うん……あーん……」
僕の歯型が付いたサンドイッチを渡されると、ベッキーさんがあーんを求めてきた。
間接あーんだけど、恋人同士ならこれが普通なのかもしれない。手をぷるぷるさせながらも、ベッキーさんの口に入れようとした。
「おいおい、いつからここはガキどものデートスポットになったんだよ」
「えっ……」
突然、ドスの効いた男の声が聞こえてきた。サンドイッチを食べさせる手が止まってしまった。
「あっ! ベッキーさ~~ん!」
待ち合わせ場所の街の入り口で待っていると、金色のツインテールヘアと赤いスカートを揺らしてベッキーさんが走って来た。ベッキーさんが左手を振っているので、僕も両手を元気に振ってみた。
ベッキーさんは可愛らしい白い服を着ていて、右手には植物のツルで編んだ四角い籠を持っている。今日は記念すべき初デートの日だ。と言っても、ベッキーさんと一緒に冒険者の仕事をするだけだ。
「ごめんね、ユッくん。待ったよね?」
「そんな事ないよ。僕も今来たところだから」
本当は二十分前から待っていたけど、待ち合わせ時間の五分前にやって来たベッキーさんは悪くない。僕が念の為に早く来てしまっただけだ。
「ねぇ、ユッくん? 手とか繋いでいいかな?」
「う、うん、もちろん……」
街の外の草原を二人で並んで歩いているとベッキーさんが聞いてきた。ベッキーさんの左手の甲が僕の右手にチョンチョン当たっていたから、そんな気はしていたけど、やっぱり手を繋ぎたかったみたいだ。
……くぅぅ、僕から言わないといけないかったのに! でも、可愛い!
照れながらも柔らかいベッキーさんの手を握って、二人で目的地に向かって歩いて行く。
今日はスライムというカラフルな色をしたモンスターを倒すそうだ。退治せずに放って置くと、草原の草が全部食べられてしまうので重要な仕事らしい。
「ユッくん、剣はしっかりと握るんだよ」
「えーっと、こんな感じで良いのかな?」
「そうそう。ギュッと強く握り締めて」
……柔らかくて、良い匂いがする!
背中にプニュプニュとベッキーさんの胸が当たっている。後ろからベッキーさんに剣の持ち方を習っているけど、これだと剣よりも胸に集中してしまう。
「いち、に、いち、に、いち、に……」
……はぁぁ、幸せ過ぎて死にそうだ。
ベッキーさんの身体が密着した状態で、ベッキーさんの掛け声に合わせて、剣の素振りを始めた。お仕事のお手伝いをして欲しいと頼まれたけど、これはどう見てもデートだ。
「ユッくん、凄く才能あるよ! 絶対に冒険者になった方が良いよ!」
「そ、そうかな……」
「うんうん! 百年に一人の天才剣士だよ!」
「じゃあ、また今度一緒にお仕事しようかな」
本当に軽く上下に百回だけ剣を振っただけなのに、ベッキーさんは凄く褒めてくれる。嬉しいんだけど、草原に転がっているボール状のスライムは一匹も倒してない。
デートもいいけど、お仕事も頑張らないといけない。
ベッキーさんに剣を借りると二人で赤、青、緑、黄色のスライムを切っていく。
切られたスライムは身体を破裂させて、ベトベトの液体を周りにばら撒いてしまう。ベッキーさんの身体も僕と一緒でベトベトになっていて、ポタポタと身体から液体が落ちている。
……ちょっとエッチ過ぎる。
「ユッくん、そろそろお昼ご飯にしよう!」
「はぁーい!」
ベトベトの剣を振って、ベッキーさんが呼んでいる。夢中でスライムを倒していたから気付かなかった。もうそんな時間になっていた。
涼しそうな木の下に行くと、ベッキーさんがおしぼりを渡してくれた。フタの開いた四角い籠の中には、可愛らしいサンドイッチが沢山並んでいる。
「もしかして手作り?」
敷物の上に座ると、ベトベトの手をおしぼりで拭きながら聞いてみた。お店には売られてないような珍しい具材もあるので、多分手作りだ。
「あの……もしかして手作りとか食べたくないですか……」
ベッキーさんが落ち込んだ感じに表情を暗くさせてしまった。きっと前の彼氏が手作り料理が嫌いだったんだ。こんな美味しそうな料理を嫌いだなんて勿体ない。
「そんな事ないよ! 嬉しいに決まっているよ! 僕が本当に食べていいの?」
「う、うん……ユッくんの為に作ったんだよ。私一人じゃこんなに食べ切れないよ」
……か、可愛いっ!
僕が食べていいのか聞くと、恥ずかしそうに照れたようにベッキーさんが食べていいと言ってくれた。キューンと胸が締め付けられる。下心満載で近づいたけど、初めての彼女がベッキーさんで本当に良かった。
モグモグ、バクバク……
「美味しいよ! 凄く美味しいよ! こんなに美味しいのを食べたら、他のサンドイッチは食べられなくなるよ!」
「もー! ユッくん! 私の分まで食べたらダメだよ!」
「はっ! ごめんなさい……」
調子に乗って食べていたら怒られてしまった。シュンと落ち込んでしまう。そんな落ち込んでいる僕に、ベッキーさんは意地悪な笑みを浮かべて近づいてくる。
「フフッ、でも、嬉しいから許してあげるね。はい、あーん」
「あ、あーん……」
かなり恥ずかしいけど口を大きく開けて、ベッキーさんが持っているサンドイッチを受け入れた。
すぐにポフッと口の中に三角のサンドイッチの角が入ってきた。口を閉じると、ちょっぴり辛いマスタードの味が口の中に広がっていく。
「じゃあ、次はユッくんの番だよ。これで、あーんして」
「あっ、う、うん……あーん……」
僕の歯型が付いたサンドイッチを渡されると、ベッキーさんがあーんを求めてきた。
間接あーんだけど、恋人同士ならこれが普通なのかもしれない。手をぷるぷるさせながらも、ベッキーさんの口に入れようとした。
「おいおい、いつからここはガキどものデートスポットになったんだよ」
「えっ……」
突然、ドスの効いた男の声が聞こえてきた。サンドイッチを食べさせる手が止まってしまった。
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