78 / 102
第二章・騎士団入団編
第75話 朝目覚めたら隠れん坊
しおりを挟む
「んんっ……? ふわぁ~~、よく寝たぁ」
目を覚ますとベッドの上に寝ていた。
確か取り調べを受けていて、その後にベッドの上でマッサージをしてもらっていた。
気持ち良くて、そのまま眠ってしまったようだ。
窓を隠す布には明るい光が当たっている。
朝か昼か知らないけど、お腹が空いているから何か食べたい。
「ん? 何で裸なんだ?」
身体の上に乗っている薄緑色の毛布を退かして、ベッドから起きようとした。
でも、ちょっと退かしただけで、何も着ていない事に気づいてしまった。
シャツやズボンなら分かるけど、流石に下着まで脱いで寝たりしない。
「これだと、部屋の外に出られないよ……ん?」
服が無いなら毛布を身体に巻くという方法もあるけど、それは最終手段だ。
まずは近くに服やアイテムポーチが落ちてないか探してみよう。
そう思って、右隣のベッドの上を見てしまった。
そこには銀色の髪の女性が寝ていた。
(おい、嘘だろう⁉︎ 同じ部屋で裸でマッサージって、全然記憶が無いけど、どんなマッサージを受けてたんだよ!)
慌てて周囲の状況から何が起こったのか推理してみた。
シルビアのベッドに付けられている棚の上には、折り畳まれた茶色い制服と白い靴下が見える。
そして、薄緑色の毛布からチラッと見えている、シルビアの肩や背中は何も身に付けていない。
何をやったのか思い出せないけど、裸の男女が同じ部屋で別々のベッドに寝ているのは普通じゃない。
身も心も何だかスッキリした気分だから、何かをやってしまったのだろう。
(んっ~~~、駄目だ! 全然思い出せない。もう一度、マッサージをしてもらえば思い出せるかもしれないけど)
とりあえず、そんな時間はない。
この状況を兵士やクラトス、レーガンに見られるのは非常に気まずい。
朝か昼か知らないけど、早く何か着ないと駄目だ。
夜中に人は部屋にやって来ないけど、朝と昼ならやって来る。
「おはようございます」
「ハッ⁉︎」
ほら、やっぱりやって来た。分かっていたけど、遅かったようだ。
突然、部屋の扉が二回叩かれて、女性の声が聞こえてきた。
「すみません。この部屋にルディはいますか?」
「エ、エイミー⁉︎」
扉の向こう側にいるのは、エイミーのようだ。
『何故、ここにいるんだ?』という混乱する頭で考えてみた。
その結果、おはようございますで、今が朝だという事が分かった。
多分、昨日の昼から今日の朝まで、この部屋で寝ていたんだ。
そして、エイミーが宿屋に居るという事は、エイミーのお母さんもいるはずだ。
一晩中、どんなマッサージをしていたのか思い出したいけど、今はそれどころじゃない。
(ベッドの下に隠れるしかない!)
毛布から飛び出すと、ベッドを軽々と持ち上げて、その下に潜り込んで隠れた。
きっと、腕力はこんな時の為に鍛えておくんだと思う。
(まさか、村以外で裸隠れん坊をする事になるとは……)
ベッドの下の二十センチ程の隙間から、息を殺して部屋の中を見る。
このままエイミーが扉から立ち去れば、何も問題ない。
それと俺の服は床には落ちてないようだ。
シルビアのアイテムポーチの中に入っているんじゃないだろうか?
マッサージの料金として、身ぐるみ剥がされてしまった可能性がある。
「すみません。おはようございます」
「んんっ~~、はぁ~い。ちょっと待ってて」
「くっ!」
しつこく扉を叩いて聞いてくるエイミーに、シルビアは起きてしまった。
返事をした後に、ゴソゴソと物音を立ててから、ベッドから降りて扉に向かっていく。
靴下は履いてなかったけど、茶色い制服を着ているのが見えた。
あの服装なら変な事をしていたとは疑われない。
まあ、別に疑われても問題ないとは思うけど、変な誤解をされるのは困る。
シルビアとはマッサージだけの関係だから、恋人や彼女は別に作りたい。
身近な女の子はとりあえず、候補として確保しておきたい。
「あっ、えっーと……ルディはいますか? ここにいるかもしれないと聞いたんですけど……」
シルビアが扉を開けると、微妙な間が発生したけど、すぐにエイミーは喋り始めた。
誰に聞いたか知らないけど、正確だ。
でも、朝っぱらから俺に何の用があるんだろうか?
「ここには居ないわよ。ここは私の部屋だから。あなた、可愛いわね。もしかして、彼女なの?」
「いえいえ、そんな関係じゃないです⁉︎ ルディが騎士団に入ると聞いたので、私も連れて行ってもらおうと思ったんですけど、失礼しました。他を探してみます」
二人の生足を見ながら、会話を聞き漏らさないように集中する。
俺の彼女かと聞かれて、エイミーは強く否定している。
これはヤバイ。女の子同士の会話を盗み聞くのは意外と興奮する。
ベッドの隙間から見ているから、凄くいけない事をしている気分だ。
エイミーが俺を探している理由は分かったけど、死亡率四割の仕事なんてしない方がいい。
安全以外は何もないけど、パロ村でゆっくりのんびりと暮らした方がいい。
「ちょっと待って」
「はい?」
でも、そんな俺の優しい願いはシルビアに阻止された。
立ち去ろうとしていたエイミーを呼び止めた。
「だったら、私に話をした方が早いわよ。調査部にルディを紹介するのは私だから。さあ、中に入って。ゆっくり話しましょう。私はシルビアよ」
「あっ、はい。エイミーと言います。十五歳で冒険者8級です。よろしくお願いします!」
「若いわね。とりあえず、奥の方のベッドに座って」
「はい」
(ひぃぃ‼︎ 嘘だろう⁉︎)
エイミーが部屋の中に入ってくると、俺が隠れているベッドの上に座った。
エイミーがいつも履いている、くるぶしまで隠している茶色い靴と生足が至近距離に見える。
反対側のベッドには靴を履いてないシルビアの足が見える。
ベッドの下に隠れただけなのに、この状況は非常にマズイ。
どう見ても裸の変態が、見ず知らずの女性の部屋の中に忍び込んだみたいだ。
絶対に見つかったらいけない隠れん坊が始まってしまった。
「8級だと基本的に無理ね。6級でもお勧め出来ないわ。だから、非戦闘の雑務作業をしてもらう事になるけど、大丈夫?」
「はい、実力不足なのは分かっています」
「と言っても、あなたの場合は基本的に保護が目的かな。あなた、テイマーなんでしょう? 誘拐される危険性があるなら、調査部は身を隠すには最高の場所よ」
二人は向かい合って、普通に話している。
俺もその非戦闘の雑務作業がしたいけど、そもそも仕事内容はまったく聞いてない。
俺もしっかりと聞くから、ここはエイミーに詳しく聞いてもらいたい。
特に仕事場所が、街か村かは重要な事だ。
近くに娯楽が無ければ、ただの牢獄暮らしと変わらない。
「そうなんですね。ありがとうございます。それで外出とかは出来るんでしょうか? 近くに魔物がいるなら、倒して強くなりたいんですけど……」
「う~ん、それは基本的に無理かな。でも、カルナが魔物の素材を集めていたから、ちょうどいいかもね。ルディと一緒にカルナの仕事を手伝ってみる?」
「はい、それでお願いします。ルディは私の言う事なら、何でも聞いてくれるから問題ないと思います」
(おい!)
聞きたい情報ではなかったけど、エイミーが俺の事をどう思っているのかは分かった。
まぁ、従魔だから仕方ないとは思うけど、何でも言う事を聞く訳じゃない。
「フッフフ。頼もしい彼氏ね。じゃあ、紹介状は書くけど、無理そうならいつでも言うのよ」
「はい、そうします。それと本当に彼氏じゃないですから」
「そうなの? 優秀そうだから、今のうちに手懐けた方がいいわよ。駄目なら捨てればいいんだから」
「う~ん、一応考えておきます。それじゃあ、よろしくお願いします」
「はぁーい」
エイミーの中では余程、重要な事なのだろう。しっかりと彼氏じゃないと否定している。
でも、出世すれば考えるみたいな事を言っているので、優秀になってから逆に捨てるのも有りだ。
(さて、どうしたものか……)
部屋からエイミーが出ていったけど、シルビアはまだ部屋の中にいる。
昨日の夜にお互いの裸を見た関係ならば、ベッドの下から現れても問題ないかもしれない。
でも、悲鳴を上げられたら、エイミーも含めた大量の兵士が駆け付けてくる。
そしたら、安全は安全でも、安全な牢獄に送られてしまう。
「可愛らしい彼女さんね。見つかったら、大喧嘩になってたわね。はい、服。先に出るけど、早く服を着て出るのよ。すぐに馬車が出発すると思うから」
「……はい、ありがとうございます」
どうしようかと考えていたら、俺の畳まれた服が目の前の床に置かれた。
シルビアにはベッドの下に隠れていた俺が見えていたようだ。
「あのぉ……起きたら裸だったんですけど、昨日の夜に俺達、何かしたんですか? ちょっと記憶にないんですけど……」
俺が隠れているベッドに座って、長い白靴下を履いているシルビアに、気になっていた事を聞いてみた。
自分でも最低の事を聞いている自覚はあるけど、覚えていないから仕方ない。
それにもしも、何か取り返しの付かない事をしているなら知っておきたい。
「そう。覚えてないならいいわ。私は楽しかったけど、あなたにとっては、その程度の夜だったのね」
傷ついたような悲しい声が上から聞こえてきた。
とりあえず急いで謝って、いい感じに誤魔化すしかない。
「ご、ごめんなさい! そういう意味じゃなくて、記憶が飛んでしまうぐらいに、凄かったという意味なんです!」
「ウッフフフ。確かにそうね。記憶が飛びそうになるぐらいに激しかったわね。じゃあ、私は別の場所で仕事があるから。今度会ったら、またお願いね」
「あっ、はい。また今度」
よく分からないけど、上手く誤魔化せたようだ。
シルビアは我慢できないといった感じに笑いながら、部屋から出ていった。
俺もベッドから早く出て、服を着よう。
「それにしても、また今度か……次はしっかりと覚えておかないとな」
♢
目を覚ますとベッドの上に寝ていた。
確か取り調べを受けていて、その後にベッドの上でマッサージをしてもらっていた。
気持ち良くて、そのまま眠ってしまったようだ。
窓を隠す布には明るい光が当たっている。
朝か昼か知らないけど、お腹が空いているから何か食べたい。
「ん? 何で裸なんだ?」
身体の上に乗っている薄緑色の毛布を退かして、ベッドから起きようとした。
でも、ちょっと退かしただけで、何も着ていない事に気づいてしまった。
シャツやズボンなら分かるけど、流石に下着まで脱いで寝たりしない。
「これだと、部屋の外に出られないよ……ん?」
服が無いなら毛布を身体に巻くという方法もあるけど、それは最終手段だ。
まずは近くに服やアイテムポーチが落ちてないか探してみよう。
そう思って、右隣のベッドの上を見てしまった。
そこには銀色の髪の女性が寝ていた。
(おい、嘘だろう⁉︎ 同じ部屋で裸でマッサージって、全然記憶が無いけど、どんなマッサージを受けてたんだよ!)
慌てて周囲の状況から何が起こったのか推理してみた。
シルビアのベッドに付けられている棚の上には、折り畳まれた茶色い制服と白い靴下が見える。
そして、薄緑色の毛布からチラッと見えている、シルビアの肩や背中は何も身に付けていない。
何をやったのか思い出せないけど、裸の男女が同じ部屋で別々のベッドに寝ているのは普通じゃない。
身も心も何だかスッキリした気分だから、何かをやってしまったのだろう。
(んっ~~~、駄目だ! 全然思い出せない。もう一度、マッサージをしてもらえば思い出せるかもしれないけど)
とりあえず、そんな時間はない。
この状況を兵士やクラトス、レーガンに見られるのは非常に気まずい。
朝か昼か知らないけど、早く何か着ないと駄目だ。
夜中に人は部屋にやって来ないけど、朝と昼ならやって来る。
「おはようございます」
「ハッ⁉︎」
ほら、やっぱりやって来た。分かっていたけど、遅かったようだ。
突然、部屋の扉が二回叩かれて、女性の声が聞こえてきた。
「すみません。この部屋にルディはいますか?」
「エ、エイミー⁉︎」
扉の向こう側にいるのは、エイミーのようだ。
『何故、ここにいるんだ?』という混乱する頭で考えてみた。
その結果、おはようございますで、今が朝だという事が分かった。
多分、昨日の昼から今日の朝まで、この部屋で寝ていたんだ。
そして、エイミーが宿屋に居るという事は、エイミーのお母さんもいるはずだ。
一晩中、どんなマッサージをしていたのか思い出したいけど、今はそれどころじゃない。
(ベッドの下に隠れるしかない!)
毛布から飛び出すと、ベッドを軽々と持ち上げて、その下に潜り込んで隠れた。
きっと、腕力はこんな時の為に鍛えておくんだと思う。
(まさか、村以外で裸隠れん坊をする事になるとは……)
ベッドの下の二十センチ程の隙間から、息を殺して部屋の中を見る。
このままエイミーが扉から立ち去れば、何も問題ない。
それと俺の服は床には落ちてないようだ。
シルビアのアイテムポーチの中に入っているんじゃないだろうか?
マッサージの料金として、身ぐるみ剥がされてしまった可能性がある。
「すみません。おはようございます」
「んんっ~~、はぁ~い。ちょっと待ってて」
「くっ!」
しつこく扉を叩いて聞いてくるエイミーに、シルビアは起きてしまった。
返事をした後に、ゴソゴソと物音を立ててから、ベッドから降りて扉に向かっていく。
靴下は履いてなかったけど、茶色い制服を着ているのが見えた。
あの服装なら変な事をしていたとは疑われない。
まあ、別に疑われても問題ないとは思うけど、変な誤解をされるのは困る。
シルビアとはマッサージだけの関係だから、恋人や彼女は別に作りたい。
身近な女の子はとりあえず、候補として確保しておきたい。
「あっ、えっーと……ルディはいますか? ここにいるかもしれないと聞いたんですけど……」
シルビアが扉を開けると、微妙な間が発生したけど、すぐにエイミーは喋り始めた。
誰に聞いたか知らないけど、正確だ。
でも、朝っぱらから俺に何の用があるんだろうか?
「ここには居ないわよ。ここは私の部屋だから。あなた、可愛いわね。もしかして、彼女なの?」
「いえいえ、そんな関係じゃないです⁉︎ ルディが騎士団に入ると聞いたので、私も連れて行ってもらおうと思ったんですけど、失礼しました。他を探してみます」
二人の生足を見ながら、会話を聞き漏らさないように集中する。
俺の彼女かと聞かれて、エイミーは強く否定している。
これはヤバイ。女の子同士の会話を盗み聞くのは意外と興奮する。
ベッドの隙間から見ているから、凄くいけない事をしている気分だ。
エイミーが俺を探している理由は分かったけど、死亡率四割の仕事なんてしない方がいい。
安全以外は何もないけど、パロ村でゆっくりのんびりと暮らした方がいい。
「ちょっと待って」
「はい?」
でも、そんな俺の優しい願いはシルビアに阻止された。
立ち去ろうとしていたエイミーを呼び止めた。
「だったら、私に話をした方が早いわよ。調査部にルディを紹介するのは私だから。さあ、中に入って。ゆっくり話しましょう。私はシルビアよ」
「あっ、はい。エイミーと言います。十五歳で冒険者8級です。よろしくお願いします!」
「若いわね。とりあえず、奥の方のベッドに座って」
「はい」
(ひぃぃ‼︎ 嘘だろう⁉︎)
エイミーが部屋の中に入ってくると、俺が隠れているベッドの上に座った。
エイミーがいつも履いている、くるぶしまで隠している茶色い靴と生足が至近距離に見える。
反対側のベッドには靴を履いてないシルビアの足が見える。
ベッドの下に隠れただけなのに、この状況は非常にマズイ。
どう見ても裸の変態が、見ず知らずの女性の部屋の中に忍び込んだみたいだ。
絶対に見つかったらいけない隠れん坊が始まってしまった。
「8級だと基本的に無理ね。6級でもお勧め出来ないわ。だから、非戦闘の雑務作業をしてもらう事になるけど、大丈夫?」
「はい、実力不足なのは分かっています」
「と言っても、あなたの場合は基本的に保護が目的かな。あなた、テイマーなんでしょう? 誘拐される危険性があるなら、調査部は身を隠すには最高の場所よ」
二人は向かい合って、普通に話している。
俺もその非戦闘の雑務作業がしたいけど、そもそも仕事内容はまったく聞いてない。
俺もしっかりと聞くから、ここはエイミーに詳しく聞いてもらいたい。
特に仕事場所が、街か村かは重要な事だ。
近くに娯楽が無ければ、ただの牢獄暮らしと変わらない。
「そうなんですね。ありがとうございます。それで外出とかは出来るんでしょうか? 近くに魔物がいるなら、倒して強くなりたいんですけど……」
「う~ん、それは基本的に無理かな。でも、カルナが魔物の素材を集めていたから、ちょうどいいかもね。ルディと一緒にカルナの仕事を手伝ってみる?」
「はい、それでお願いします。ルディは私の言う事なら、何でも聞いてくれるから問題ないと思います」
(おい!)
聞きたい情報ではなかったけど、エイミーが俺の事をどう思っているのかは分かった。
まぁ、従魔だから仕方ないとは思うけど、何でも言う事を聞く訳じゃない。
「フッフフ。頼もしい彼氏ね。じゃあ、紹介状は書くけど、無理そうならいつでも言うのよ」
「はい、そうします。それと本当に彼氏じゃないですから」
「そうなの? 優秀そうだから、今のうちに手懐けた方がいいわよ。駄目なら捨てればいいんだから」
「う~ん、一応考えておきます。それじゃあ、よろしくお願いします」
「はぁーい」
エイミーの中では余程、重要な事なのだろう。しっかりと彼氏じゃないと否定している。
でも、出世すれば考えるみたいな事を言っているので、優秀になってから逆に捨てるのも有りだ。
(さて、どうしたものか……)
部屋からエイミーが出ていったけど、シルビアはまだ部屋の中にいる。
昨日の夜にお互いの裸を見た関係ならば、ベッドの下から現れても問題ないかもしれない。
でも、悲鳴を上げられたら、エイミーも含めた大量の兵士が駆け付けてくる。
そしたら、安全は安全でも、安全な牢獄に送られてしまう。
「可愛らしい彼女さんね。見つかったら、大喧嘩になってたわね。はい、服。先に出るけど、早く服を着て出るのよ。すぐに馬車が出発すると思うから」
「……はい、ありがとうございます」
どうしようかと考えていたら、俺の畳まれた服が目の前の床に置かれた。
シルビアにはベッドの下に隠れていた俺が見えていたようだ。
「あのぉ……起きたら裸だったんですけど、昨日の夜に俺達、何かしたんですか? ちょっと記憶にないんですけど……」
俺が隠れているベッドに座って、長い白靴下を履いているシルビアに、気になっていた事を聞いてみた。
自分でも最低の事を聞いている自覚はあるけど、覚えていないから仕方ない。
それにもしも、何か取り返しの付かない事をしているなら知っておきたい。
「そう。覚えてないならいいわ。私は楽しかったけど、あなたにとっては、その程度の夜だったのね」
傷ついたような悲しい声が上から聞こえてきた。
とりあえず急いで謝って、いい感じに誤魔化すしかない。
「ご、ごめんなさい! そういう意味じゃなくて、記憶が飛んでしまうぐらいに、凄かったという意味なんです!」
「ウッフフフ。確かにそうね。記憶が飛びそうになるぐらいに激しかったわね。じゃあ、私は別の場所で仕事があるから。今度会ったら、またお願いね」
「あっ、はい。また今度」
よく分からないけど、上手く誤魔化せたようだ。
シルビアは我慢できないといった感じに笑いながら、部屋から出ていった。
俺もベッドから早く出て、服を着よう。
「それにしても、また今度か……次はしっかりと覚えておかないとな」
♢
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる