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第一章・風竜編
第23話 容疑者二人の尋問
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(証拠、証拠……そんなの無いよ)
首輪でもあれば見せられるけど、最初からそんなの持ってない。
自分がチャロだという証明も、ルディだという証明も難しい。
ここは二人の思い出話を話して、信じてもらうしかない。
「聞いてくれ。晩ご飯は焼き魚で、朝ご飯は茹で卵とソーセージだった。俺はチャロだ」
「ひゃあ! まさか、ずっと家の中を覗いてたんですか⁉︎ このエッチ、エッチ!」
「痛い痛い! 何でそうなるの⁉︎ 家の中で食べたんだよ!」
迂闊だった。変態だと罵られ、何か硬い盾のような物で頭を叩かれた。
チャロだと証明しようにも相手はエイミーだった。
普通に勘が鋭い人なら分かってくれるけど、エイミーに期待したら駄目だ。
もっと確実に分かりそうなものじゃないと伝わらない。
いつもみたいに、「クゥ~ン、クゥ~ン」と鳴いてみるか?
駄目だ。より変態にしか見えなくなる。
昨日の夜に見た、エイミーの日記帳の内容はどうだろうか?
誰も知らないような話だけど、部屋に忍び込んだ変態だと叩かれそうだ。
思い出話もチャロを拷問して、聞き出したと思われそうだ。
何を話しても、信じてくれそうにない。
いや、待てよ?
逆に知らない話をすればいいんじゃないのか?
何も信じてくれないなら、何を話しても同じだ。
屋敷の前で、エイミーと分かれた後、チャロがどうなったのか話してみよう。
「ちょっと待て! エイミーと分かれた後の話をするよ。あの後、屋敷に忍び込んで、玄関に倒れている男に動物を魔物に変える薬を飲まされたんだ。そしたら、ルディに戻ったんだよ!」
「えっ?」
細かな部分は省略するけど、フレデリックを追跡して、殺人計画を知ってしまった。
その殺人計画を阻止しようとして、逆に捕まって、薬を飲まされた。
薬を飲んだら、人間に戻っていて、前よりも身長が伸びていた。
その後は超人的な力で化け物を倒して、最後にフレデリックから女性二人を救出した。
まあ、こんな感じで華麗に事件を解決させて、犯人と一緒に家に帰って来た訳だ。
そして、現在。何故だか、うつ伏せ状態で地面に押し倒されている。
これが真実だ。
「……何だか、作り話みたいな話ですね。本当ですか?」
「嘘じゃないよ。それにこの家に犯人を連れて来る意味がないでしょう? 犯人が居るんだから、ここに連れて来て、あっちにも聞いてよ」
「う~ん、油断させる為の罠かも」
油断なら、エイミーはいつもしている。
これ以上、油断させようがない。
「とにかく、人質でも怪しい人物でもいいから、楽な体勢にさせてよ。押し潰されて死んじゃうよ」
「それは困ります。ベアーズ、座らせてあげて」
「グマ」
ほっ。背中から巨大熊が下りていく。
でも、腕は掴まれたまま、その状態で立たされ、熊さんの前に座らされた。
さっきよりは楽な体勢にはなったけど、熊さんに後ろから抱き締められている。
頭の上に顎を乗せられている。
精神的には全然楽になっていない。
♢
「偽チャロの隣に下ろして」
「ガァル」
「うっ……」
「はい、連れて来ましたよ」
エイミーに言われて、リックが玄関に放置されていたフレデリックを運んできてくれた。
俺の左横に下ろされたフレデリックはまだ気絶している。
それとも、今は気絶している振りだろうか?
この熊さんには通用しないから、振りなら、早くやめた方がいい。
「早く起きないと槍で足を突き刺されるぞ」
「ゔうっ! ゔうっ!」
試しに声をかけてみたら、フレデリックはすぐに目を覚ました。
口と手足は縛られているから、必死に何か言っても、誰にも伝わらない。
「ロープを解くから静かにしてくださいね」
悪者相手なのに、エイミーの対応は優しすぎる。
リックにお願いして、フレデリックの口のロープを解いた。
母親と少女を暴行していた部分は省略せずに、もっと伝えておけばよかった。
「頼む、助けてくれ! その男に襲われたんだ!」
「落ち着いてください。歯が折れてるみたいですけど、大丈夫ですか?」
「その男がいきなり私を殺そうと殴りかかってきたんだ! 早くロープを解いてくれ!」
ロープが取れると同時に、フレデリックはエイミーに被害者面で助けを求め始めた。
言っている事は事実だけど、それは女性を殴っているのを止めたからだ。
「その前に聞きたい事があります。数日前にスライム洞窟でルディという冒険者を殺しましたか?」
「スライム洞窟? そんな場所は知らない。ルディとか言う子供にも会った事がない」
「そうですか……隣の男も知らないんですか?」
「今日、初めて会った男だ。全然知らない男だ!」
エイミーの質問にフレデリックは、本当に知らないみたいに答えていく。
そして、そのルディが隣にいるのに全然気づいていない。
これだと俺が偽チャロ、偽ルディだと言っているみたいだ。
「それじゃあ、森の中で女性を殴っていた理由は何ですか? まさか、殴ってくださいと、お願いされた訳じゃないですよね? その両拳の怪我は殴った跡ですよね?」
エイミーがフレデリックの拳を指差しながら聞いている。
明らかに隠せない犯罪の証拠だ。
「い、いや、これは……その、だな……大人には色々と変わった趣味があるんだ。子供には分からないだろうが、あれは合意の行為だったんだ」
「へぇー、痛そうな変わった趣味ですね」
言い訳できないと思っていたけど、フレデリックは困った感じに趣味だと言い切った。
かなり無理があるけど、変わった趣味と言われれば納得できてしまう。
うちの村にも年に一度、裸で村の中で隠れ坊をする変わった祭りがある。
見つかったら、恥ずかしいから参加者全員が本気で隠れようとする。
「とにかく、私は何も悪い事はしていない。ロープを解いてくれないか? 私は貴族の家系なんだ。助けてくれたら、それなりのお礼を約束する」
「そうだったんですか?」
「ああ、そうなんだ。そうだ! 私の鞄はどこにあるんだ? 鞄の中に宝石があったはずだ。まさか、お前! 盗んだのか⁉︎」
「はぁっ?」
突然、こっちを睨んできて、泥棒呼ばわりされた。
黙って聞いていたら、嘘デタラメしか言ってない。
何が貴族だ。ただの犬と馬の世話係じゃないか。
「盗んだのは、お前だろう! エイミー、コイツの言ってる事は全部デタラメだ! 信じたら駄目だ!」
「お嬢ちゃん、信じたら駄目だ。コイツを見てみろ。髪は伸ばしっ放しだし、服もサイズが合ってない。明らかに盗んだ服だ。コイツは泥棒だ!」
「確かに怪しいですね……」
お互いが嘘吐きだと言い合って譲らない。
エイミーはどっちの言う事を信じたらいいのか分からないようだ。
困った感じに二人の男の顔を行ったり来たりしている。
俺がチャロだと証明できれば、簡単に解決できるのに、その方法が見つからない。
才能やスキルの嗅覚や引っ掻くで、箱の中身を当てるとか、爪を伸ばしてみるとかもある。
でも、それが出来たからといって、チャロだと証明される訳じゃない。
(くっ、駄目だ。何も出来ない)
「う~ん、分かりました。どっちが本当の事を言ってるのか分からないので、明日、第三者に決めてもらいましょう。二人はそれまで拘束させてもらいます」
「えっ?」「何だと?」
何も出来ないと悩んでいたら、エイミーがそう結論を出した。
まさかの他人任せだったけど、三人で何を言っても、答えはハッキリしないと思う。
こうなったら覚悟を決めるしかない。
俺がやった悪い事は服を盗んで、金持ちを二十人程放り投げて、胸を揉んだぐらいだ。
事件を解決したから、あれぐらいは笑って許してくれると信じたい。
「ちょ、ちょっと待て! それは困る!」
「どうしてですか? 悪い事をしてないなら、問題ないですよね?」
「うっ! くぅぅ! あ、明日の朝に隣町で大事な取引きがある。今から行かないと間に合わない」
覚悟を決めた俺と違って、途端にフレデリックは取り乱し始めた。
悪い事をやった自覚が少しはあるようだ。
「隣町の名前は何ですか? 今から行って、朝に着くのは……」
「イシュルだ! 取引きが終わったら、すぐに戻って来る。取引きが台無しになったら、お嬢ちゃんに四十億ギル全額弁償してもらう事になるぞ」
「そんな大金払えません」
「だったら、ロープを解いて、行かせてくれ。それで問題解決だ」
エイミーが隣町の名前を言えないでいると、フレデリックが代わりに答えた。
しかも、脅迫している。明らかに悪者のやり方にしか見えない。
エイミーが脅迫に負けて、ロープを解く前に妨害しよう。
「おかしいな? 急いでいたのに、森の中で変わった趣味をやる時間はあったんだな」
「くっ! お前が邪魔しなければ、すぐに終わっていたんだ‼︎」
「殺して?」
「そうだ‼︎ ……ハッ! いやいや、違う違う‼︎ 言い間違えだ!」
「本当に?」
「当たり前だ。馬鹿な事を聞くな」
おかしな点をちょっと指摘しただけで、フレデリックは激情した。
俺にカトリーナとナタリアを殺すのを邪魔されて、実はかなり怒っているみたいだ。
殺す意思があったと口を滑らせて、慌てて誤魔化している。
でも、もう遅い。エイミーは明らかにもう信用してない。
「やっぱり怪しいです。間違っていたら、一緒に謝りに行くので、今日はここに居てください。ベアーズとリックは二人を部屋に運んであげて」
「グマ」「ガァル」
「巫山戯るな! この、ゔゔっ! ゔゔっ!」
フレデリックは抵抗しようと頑張ったけど、リックに簡単にロープで口を塞がれた。
もう言い訳は出来ない。
♢
首輪でもあれば見せられるけど、最初からそんなの持ってない。
自分がチャロだという証明も、ルディだという証明も難しい。
ここは二人の思い出話を話して、信じてもらうしかない。
「聞いてくれ。晩ご飯は焼き魚で、朝ご飯は茹で卵とソーセージだった。俺はチャロだ」
「ひゃあ! まさか、ずっと家の中を覗いてたんですか⁉︎ このエッチ、エッチ!」
「痛い痛い! 何でそうなるの⁉︎ 家の中で食べたんだよ!」
迂闊だった。変態だと罵られ、何か硬い盾のような物で頭を叩かれた。
チャロだと証明しようにも相手はエイミーだった。
普通に勘が鋭い人なら分かってくれるけど、エイミーに期待したら駄目だ。
もっと確実に分かりそうなものじゃないと伝わらない。
いつもみたいに、「クゥ~ン、クゥ~ン」と鳴いてみるか?
駄目だ。より変態にしか見えなくなる。
昨日の夜に見た、エイミーの日記帳の内容はどうだろうか?
誰も知らないような話だけど、部屋に忍び込んだ変態だと叩かれそうだ。
思い出話もチャロを拷問して、聞き出したと思われそうだ。
何を話しても、信じてくれそうにない。
いや、待てよ?
逆に知らない話をすればいいんじゃないのか?
何も信じてくれないなら、何を話しても同じだ。
屋敷の前で、エイミーと分かれた後、チャロがどうなったのか話してみよう。
「ちょっと待て! エイミーと分かれた後の話をするよ。あの後、屋敷に忍び込んで、玄関に倒れている男に動物を魔物に変える薬を飲まされたんだ。そしたら、ルディに戻ったんだよ!」
「えっ?」
細かな部分は省略するけど、フレデリックを追跡して、殺人計画を知ってしまった。
その殺人計画を阻止しようとして、逆に捕まって、薬を飲まされた。
薬を飲んだら、人間に戻っていて、前よりも身長が伸びていた。
その後は超人的な力で化け物を倒して、最後にフレデリックから女性二人を救出した。
まあ、こんな感じで華麗に事件を解決させて、犯人と一緒に家に帰って来た訳だ。
そして、現在。何故だか、うつ伏せ状態で地面に押し倒されている。
これが真実だ。
「……何だか、作り話みたいな話ですね。本当ですか?」
「嘘じゃないよ。それにこの家に犯人を連れて来る意味がないでしょう? 犯人が居るんだから、ここに連れて来て、あっちにも聞いてよ」
「う~ん、油断させる為の罠かも」
油断なら、エイミーはいつもしている。
これ以上、油断させようがない。
「とにかく、人質でも怪しい人物でもいいから、楽な体勢にさせてよ。押し潰されて死んじゃうよ」
「それは困ります。ベアーズ、座らせてあげて」
「グマ」
ほっ。背中から巨大熊が下りていく。
でも、腕は掴まれたまま、その状態で立たされ、熊さんの前に座らされた。
さっきよりは楽な体勢にはなったけど、熊さんに後ろから抱き締められている。
頭の上に顎を乗せられている。
精神的には全然楽になっていない。
♢
「偽チャロの隣に下ろして」
「ガァル」
「うっ……」
「はい、連れて来ましたよ」
エイミーに言われて、リックが玄関に放置されていたフレデリックを運んできてくれた。
俺の左横に下ろされたフレデリックはまだ気絶している。
それとも、今は気絶している振りだろうか?
この熊さんには通用しないから、振りなら、早くやめた方がいい。
「早く起きないと槍で足を突き刺されるぞ」
「ゔうっ! ゔうっ!」
試しに声をかけてみたら、フレデリックはすぐに目を覚ました。
口と手足は縛られているから、必死に何か言っても、誰にも伝わらない。
「ロープを解くから静かにしてくださいね」
悪者相手なのに、エイミーの対応は優しすぎる。
リックにお願いして、フレデリックの口のロープを解いた。
母親と少女を暴行していた部分は省略せずに、もっと伝えておけばよかった。
「頼む、助けてくれ! その男に襲われたんだ!」
「落ち着いてください。歯が折れてるみたいですけど、大丈夫ですか?」
「その男がいきなり私を殺そうと殴りかかってきたんだ! 早くロープを解いてくれ!」
ロープが取れると同時に、フレデリックはエイミーに被害者面で助けを求め始めた。
言っている事は事実だけど、それは女性を殴っているのを止めたからだ。
「その前に聞きたい事があります。数日前にスライム洞窟でルディという冒険者を殺しましたか?」
「スライム洞窟? そんな場所は知らない。ルディとか言う子供にも会った事がない」
「そうですか……隣の男も知らないんですか?」
「今日、初めて会った男だ。全然知らない男だ!」
エイミーの質問にフレデリックは、本当に知らないみたいに答えていく。
そして、そのルディが隣にいるのに全然気づいていない。
これだと俺が偽チャロ、偽ルディだと言っているみたいだ。
「それじゃあ、森の中で女性を殴っていた理由は何ですか? まさか、殴ってくださいと、お願いされた訳じゃないですよね? その両拳の怪我は殴った跡ですよね?」
エイミーがフレデリックの拳を指差しながら聞いている。
明らかに隠せない犯罪の証拠だ。
「い、いや、これは……その、だな……大人には色々と変わった趣味があるんだ。子供には分からないだろうが、あれは合意の行為だったんだ」
「へぇー、痛そうな変わった趣味ですね」
言い訳できないと思っていたけど、フレデリックは困った感じに趣味だと言い切った。
かなり無理があるけど、変わった趣味と言われれば納得できてしまう。
うちの村にも年に一度、裸で村の中で隠れ坊をする変わった祭りがある。
見つかったら、恥ずかしいから参加者全員が本気で隠れようとする。
「とにかく、私は何も悪い事はしていない。ロープを解いてくれないか? 私は貴族の家系なんだ。助けてくれたら、それなりのお礼を約束する」
「そうだったんですか?」
「ああ、そうなんだ。そうだ! 私の鞄はどこにあるんだ? 鞄の中に宝石があったはずだ。まさか、お前! 盗んだのか⁉︎」
「はぁっ?」
突然、こっちを睨んできて、泥棒呼ばわりされた。
黙って聞いていたら、嘘デタラメしか言ってない。
何が貴族だ。ただの犬と馬の世話係じゃないか。
「盗んだのは、お前だろう! エイミー、コイツの言ってる事は全部デタラメだ! 信じたら駄目だ!」
「お嬢ちゃん、信じたら駄目だ。コイツを見てみろ。髪は伸ばしっ放しだし、服もサイズが合ってない。明らかに盗んだ服だ。コイツは泥棒だ!」
「確かに怪しいですね……」
お互いが嘘吐きだと言い合って譲らない。
エイミーはどっちの言う事を信じたらいいのか分からないようだ。
困った感じに二人の男の顔を行ったり来たりしている。
俺がチャロだと証明できれば、簡単に解決できるのに、その方法が見つからない。
才能やスキルの嗅覚や引っ掻くで、箱の中身を当てるとか、爪を伸ばしてみるとかもある。
でも、それが出来たからといって、チャロだと証明される訳じゃない。
(くっ、駄目だ。何も出来ない)
「う~ん、分かりました。どっちが本当の事を言ってるのか分からないので、明日、第三者に決めてもらいましょう。二人はそれまで拘束させてもらいます」
「えっ?」「何だと?」
何も出来ないと悩んでいたら、エイミーがそう結論を出した。
まさかの他人任せだったけど、三人で何を言っても、答えはハッキリしないと思う。
こうなったら覚悟を決めるしかない。
俺がやった悪い事は服を盗んで、金持ちを二十人程放り投げて、胸を揉んだぐらいだ。
事件を解決したから、あれぐらいは笑って許してくれると信じたい。
「ちょ、ちょっと待て! それは困る!」
「どうしてですか? 悪い事をしてないなら、問題ないですよね?」
「うっ! くぅぅ! あ、明日の朝に隣町で大事な取引きがある。今から行かないと間に合わない」
覚悟を決めた俺と違って、途端にフレデリックは取り乱し始めた。
悪い事をやった自覚が少しはあるようだ。
「隣町の名前は何ですか? 今から行って、朝に着くのは……」
「イシュルだ! 取引きが終わったら、すぐに戻って来る。取引きが台無しになったら、お嬢ちゃんに四十億ギル全額弁償してもらう事になるぞ」
「そんな大金払えません」
「だったら、ロープを解いて、行かせてくれ。それで問題解決だ」
エイミーが隣町の名前を言えないでいると、フレデリックが代わりに答えた。
しかも、脅迫している。明らかに悪者のやり方にしか見えない。
エイミーが脅迫に負けて、ロープを解く前に妨害しよう。
「おかしいな? 急いでいたのに、森の中で変わった趣味をやる時間はあったんだな」
「くっ! お前が邪魔しなければ、すぐに終わっていたんだ‼︎」
「殺して?」
「そうだ‼︎ ……ハッ! いやいや、違う違う‼︎ 言い間違えだ!」
「本当に?」
「当たり前だ。馬鹿な事を聞くな」
おかしな点をちょっと指摘しただけで、フレデリックは激情した。
俺にカトリーナとナタリアを殺すのを邪魔されて、実はかなり怒っているみたいだ。
殺す意思があったと口を滑らせて、慌てて誤魔化している。
でも、もう遅い。エイミーは明らかにもう信用してない。
「やっぱり怪しいです。間違っていたら、一緒に謝りに行くので、今日はここに居てください。ベアーズとリックは二人を部屋に運んであげて」
「グマ」「ガァル」
「巫山戯るな! この、ゔゔっ! ゔゔっ!」
フレデリックは抵抗しようと頑張ったけど、リックに簡単にロープで口を塞がれた。
もう言い訳は出来ない。
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