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第一章・風竜編
第3話 猫と怪しい取引現場に遭遇
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「よし、出発だ」
鞄から鉄の短剣を取り出して、膝が少し見える茶色の半ズボンのベルトに挟んだ。
防具はない。普段着の白の半袖シャツ、茶の半ズボン、布のパンツ、布の靴が今の全てだ。
「……?」
洞窟に入って直ぐに鉄柵が見えてきた。
あれで洞窟の中からスライムが逃げないようにしているようだ。
「うん、壊すのは無理そうだけど、指二本なら通るね」
間近で五センチ程の四角い隙間が空いている鉄柵を調べてみる。
鍵の付いていない扉を三つのかんぬきが開かないように固定している。
これなら、かんぬきを動かせば、扉を開ける事が出来る。
「開けっ放しは危険だよね」
扉を開けて、中に入って、扉を閉める。
そして、鉄柵の隙間から、かんぬきを指で動かして、キチンと扉を固定した。
これでスライムは外に出られない。
証明書にはスライムの簡単な絵が描かれていて、その見た目は潰れた大きなボールだった。
柵の隙間が縦横三十センチ程ないと通る事は出来ないと思う。
「こんなに楽でいいんだろうか?」
幅二メートル、高さ三メートルの長方形の広い洞窟通路を進んでいく。
灯りを持っていなかったけど、壁には照明が等間隔で埋め込まれている。
快適過ぎる。観光で使っていた洞窟にスライムが住み着いたんだろうか?
「あっ……」
スライムの前に、通路にまた鉄柵を見つけた。鍵は無いけど、扉にかんぬきがある。
洞窟の安全対策はバッチリのようだ。これなら、扉の閉め忘れはそうそうないと思う。
扉を開けて、中に入って、またキチンと閉めた。
「ふぅ~……やっと部屋に出たよ」
二枚目の鉄柵を通って、しばらく通路を進んで行くと、広い部屋に辿り着いた。
縦五メートル、横八メートル、高さ五メートルぐらいはある。
部屋にはスライムは居なかったけど、前方と左右に三方向に続く通路が見える。
「さて……うん、前進あるのみだ」
数秒だけ考えて、真っ直ぐ進む事に決めた。
やっぱり分かれ道を選ぶのは、壁に打つかった後がいい。
簡単に選んだ道を変えるような優柔不断な男にはならない。
「うっ! 今度は左右だよ……左にしようかな?」
選んだ道は直ぐに壁にブチ当たった。
とりあえず、左右に分かれている道の左を選んでみた。
やっぱり道は自分の好きなように進んだ方が楽しいと思う。
勘と気分を頼りに洞窟の奥を目指して、広い部屋に辿り着くたびに二択、三択の通路を進んでいく。
もう帰り道が分からないかもしれない。地図を描いておくべきだった。
「……ニャ……ニャ……」
「んっ? 猫?」
洞窟に入って、二十分ぐらいは過ぎたと思う。
微かに猫のような鳴き声が聞こえてきた。
証明書にはスライムの鳴き声までは書いてなかったけど、何か居るのは間違いない。
当てもない道に光が見えた気がする。
鞘から短剣を抜いて、鳴き声を頼りに進んでいく。
(いきなり飛び掛かって来るかも……)
気配を消して進んでいく。
猫のような鳴き声が大きくなってくる。
あまりにも猫の鳴き声に似ている。
ここまで来ると子猫でも迷い込んだのかもしれない。
その場合は今日のクエストは子猫の救助に変更しよう。
「……こ……いいだろ……」
「……当に……夫なん……うな?」
(んっ? 誰かいるみたいだ)
猫の声以外にも二人の男の声が聞こえてきた。
先に10級の人が洞窟に入っていたみたいだ。
道理でスライムと遭遇しないはずだよ。
二人が倒した後を進んでいたら出会えるはずがない。
「心配症だな。あんたが使う前に効果が見たいと言ったんだぜ」
「当たり前だ! 大金を払うんだから、失敗されたら堪らない」
「失敗するかは、あんたの使い方次第で決まる。こっちは商品を売っているだけだ。嫌なら無理して買わなくてもいいんだぜ」
「そ、そんな事は言ってない⁉︎ 成功するか確証が欲しいんだ!」
挨拶しようと思って近づいてみたら、何か酷く揉めているみたいだった。
なので、隠れてしまった。喧嘩が始まったら止めに入ればいいかな?
「やれやれ、保証できるのは商品の効果だけだって言ってるだろう」
「私が欲しいのは保証じゃない。確かな結果なんだ。その薬を使えば、動物を魔物に変えられるんだな?」
「何度も言わせるなよ。こうやってサンプルも用意している」
「ニャー、ニャー」
十字の分かれ道がある広い部屋の左側の通路の前で、二人の男が言い争っている。
一人は四十代後半のポッチャリとした体型の短い茶色い髪の男。
高そうな灰色のジャケットとズボンを着ている。
お金持ちには見えるけど、冒険者には見えない。
もう一人は三十歳前後で、青みがかった黒色の古めかしい帽子とスーツとズボンを着ている。
長身のスッキリと引き締まった体型で、黒髪を油で後ろに流している。
陰のある白い顔は非常に整っていて、王子様にも凄腕の冒険者にも見える。
そして、何故だか鉄籠に茶色と黒の縞模様の猫を入れている。
「多少凶暴になるとか、その程度の変化じゃない。まさに変身だ。さあ、猫の変身のお披露目だ」
「ニャー! ニャー!」
黒服の男が鉄籠から暴れる猫を引き摺り出している。懐かれてはいないようだ。
首根っこを掴んで、胸ポケットから取り出したケースを猫の口元に近づけている。
ケースは銀色で縦八センチ、横五センチ、厚さ二センチ程の長方形だ。
「対象の大きさや抵抗力によって、多少は使用量は変化する。猫なら一錠で十分だが、馬なら五錠ぐらいは必要だ。間違っても大量にやらない事だ。変化に耐え切れずに死ぬだけだからな」
よく分からないけど、猫に変な薬を飲ませて魔物に変えるみたいだ。
止めた方がいいのか、悪い事なのか分からないけど、ちょっと可哀想だな。
でも、止める権利もないし、自分のペットを魔物にしたいだけかもしれない。
「ニギャャー‼︎」
「少し危ないから下がっていろよ」
黒服の男は猫に無理矢理にケースの中の薬を飲ませると、部屋の中央に放り投げた。
猫が口から泡を吐いて酷く苦しんでいる。
やっぱり止めた方がよかったかもしれない。
「おい⁉︎ 本当に大丈夫なのか? 死ぬんじゃないだろうな」
「そう慌てるな。動物実験の成功率は九十パーセントを超えている。ほら、変化してきたぞ」
「うっ……」
灰服の男は酷く心配しているけど、黒服の男は落ち着いている。
そして、黒服の男が言う通りに猫に変化が現れ始めた。
「グニャャ……グギャァ……ガァ、ガアアアア‼︎」
猫の身体が破裂して、ボコボコと筋肉が膨れ上がっていく。
もう猫の面影は無く、数十倍に巨大化した身体の表面を血管が脈打つ肉の塊に覆われている。
(うぐっ、気持ち悪い……)
あれは可愛くないから、ペットには飼いたくない。
「くっ……時間がかかり過ぎだ。もっと早く変わらないのか? これだと逃げられるじゃないか!」
「もうすぐ終わる。安定させて変化させるには時間がかかる。三分も待てないのか?」
「くっ……三分だと! 即効性じゃないのか」
灰服の男は薬の効果に不満があるようだ。
三分で変身するなら十分に早いと思うけど、それだと駄目なようだ。
こっちは気持ち悪い変身を見たから、しばらくは肉料理は食べたくないよ。
「そこはあんたが知恵を使って、解決するんだな。ほら、肉を突き破って出て来るぞ」
黒服の男が言う通りに肉の塊を突き破って、大きな猫が勢いよく飛び出して来た。
茶色と黒の縞模様は同じだけど、大きさは二メートルを超えている。
子供のように可愛いかった顔は、強面のおじさんに急成長したように怖い。
「グゥルルルル‼︎」
「ひぃぃ‼︎ だ、大丈夫なんだろうな⁉︎」
怖い唸り声で灰服と黒服の男を威嚇している。やっぱり懐かれていない。
「安心しろ。その為に俺がいる。失せろ!」
「フゥッ、シャアアア!」
黒服の男が地面を勢いよく踏んで、大きな音を立てて巨大猫を追い払った。
巨大猫は右側の通路に飛び込んで逃げていった。
こっちに来なくて助かったけど、意外と図体だけで臆病なのかもしれない。
「……フッ、フフ。言う事は聞かせられるのか?」
「それは無理だ。手当たり次第に暴れるだけで、寿命は個人差はあるが、大抵は短くなる。用が済んだら、あとは死ぬだけだ」
「ちっ……使えないな。まあいい。皆殺しに出来れば問題ない」
皆殺し? もしかして、悪い事にあの薬を使おうとしているのかも。
だとしたら、すぐに誰かを呼んで来ないと駄目だ。
「それで買うのか、買わないのか、どっちなんだ?」
「買うに決まっている! 大型犬五頭分でいい。すぐに用意してくれ!」
「そう言うと思って用意している。一錠三十万ギルだ。何錠欲しいんだ?」
「十錠……いや、十五錠でいい!」
黒服の男が銀色のケースを見せて、灰服の男に聞いている。
三十万ギルもする薬を十五錠も買うなんて、やっぱりお金持ちだ。
でも、これで間違いない。あんな危なそうな薬に大金を払うのは悪い人しかいない。
よし、出口は分からないけど、出口を目指そう。
「珍しいスライムだな?」
「えっ? アグッッ‼︎」
突然、背後から男の声が聞こえてきた。
慌てて振り返ろうとしたけど、頭に凄い衝撃が襲ってきた。
そして、短剣を右手に持ったまま地面に倒れてしまった。
♢
鞄から鉄の短剣を取り出して、膝が少し見える茶色の半ズボンのベルトに挟んだ。
防具はない。普段着の白の半袖シャツ、茶の半ズボン、布のパンツ、布の靴が今の全てだ。
「……?」
洞窟に入って直ぐに鉄柵が見えてきた。
あれで洞窟の中からスライムが逃げないようにしているようだ。
「うん、壊すのは無理そうだけど、指二本なら通るね」
間近で五センチ程の四角い隙間が空いている鉄柵を調べてみる。
鍵の付いていない扉を三つのかんぬきが開かないように固定している。
これなら、かんぬきを動かせば、扉を開ける事が出来る。
「開けっ放しは危険だよね」
扉を開けて、中に入って、扉を閉める。
そして、鉄柵の隙間から、かんぬきを指で動かして、キチンと扉を固定した。
これでスライムは外に出られない。
証明書にはスライムの簡単な絵が描かれていて、その見た目は潰れた大きなボールだった。
柵の隙間が縦横三十センチ程ないと通る事は出来ないと思う。
「こんなに楽でいいんだろうか?」
幅二メートル、高さ三メートルの長方形の広い洞窟通路を進んでいく。
灯りを持っていなかったけど、壁には照明が等間隔で埋め込まれている。
快適過ぎる。観光で使っていた洞窟にスライムが住み着いたんだろうか?
「あっ……」
スライムの前に、通路にまた鉄柵を見つけた。鍵は無いけど、扉にかんぬきがある。
洞窟の安全対策はバッチリのようだ。これなら、扉の閉め忘れはそうそうないと思う。
扉を開けて、中に入って、またキチンと閉めた。
「ふぅ~……やっと部屋に出たよ」
二枚目の鉄柵を通って、しばらく通路を進んで行くと、広い部屋に辿り着いた。
縦五メートル、横八メートル、高さ五メートルぐらいはある。
部屋にはスライムは居なかったけど、前方と左右に三方向に続く通路が見える。
「さて……うん、前進あるのみだ」
数秒だけ考えて、真っ直ぐ進む事に決めた。
やっぱり分かれ道を選ぶのは、壁に打つかった後がいい。
簡単に選んだ道を変えるような優柔不断な男にはならない。
「うっ! 今度は左右だよ……左にしようかな?」
選んだ道は直ぐに壁にブチ当たった。
とりあえず、左右に分かれている道の左を選んでみた。
やっぱり道は自分の好きなように進んだ方が楽しいと思う。
勘と気分を頼りに洞窟の奥を目指して、広い部屋に辿り着くたびに二択、三択の通路を進んでいく。
もう帰り道が分からないかもしれない。地図を描いておくべきだった。
「……ニャ……ニャ……」
「んっ? 猫?」
洞窟に入って、二十分ぐらいは過ぎたと思う。
微かに猫のような鳴き声が聞こえてきた。
証明書にはスライムの鳴き声までは書いてなかったけど、何か居るのは間違いない。
当てもない道に光が見えた気がする。
鞘から短剣を抜いて、鳴き声を頼りに進んでいく。
(いきなり飛び掛かって来るかも……)
気配を消して進んでいく。
猫のような鳴き声が大きくなってくる。
あまりにも猫の鳴き声に似ている。
ここまで来ると子猫でも迷い込んだのかもしれない。
その場合は今日のクエストは子猫の救助に変更しよう。
「……こ……いいだろ……」
「……当に……夫なん……うな?」
(んっ? 誰かいるみたいだ)
猫の声以外にも二人の男の声が聞こえてきた。
先に10級の人が洞窟に入っていたみたいだ。
道理でスライムと遭遇しないはずだよ。
二人が倒した後を進んでいたら出会えるはずがない。
「心配症だな。あんたが使う前に効果が見たいと言ったんだぜ」
「当たり前だ! 大金を払うんだから、失敗されたら堪らない」
「失敗するかは、あんたの使い方次第で決まる。こっちは商品を売っているだけだ。嫌なら無理して買わなくてもいいんだぜ」
「そ、そんな事は言ってない⁉︎ 成功するか確証が欲しいんだ!」
挨拶しようと思って近づいてみたら、何か酷く揉めているみたいだった。
なので、隠れてしまった。喧嘩が始まったら止めに入ればいいかな?
「やれやれ、保証できるのは商品の効果だけだって言ってるだろう」
「私が欲しいのは保証じゃない。確かな結果なんだ。その薬を使えば、動物を魔物に変えられるんだな?」
「何度も言わせるなよ。こうやってサンプルも用意している」
「ニャー、ニャー」
十字の分かれ道がある広い部屋の左側の通路の前で、二人の男が言い争っている。
一人は四十代後半のポッチャリとした体型の短い茶色い髪の男。
高そうな灰色のジャケットとズボンを着ている。
お金持ちには見えるけど、冒険者には見えない。
もう一人は三十歳前後で、青みがかった黒色の古めかしい帽子とスーツとズボンを着ている。
長身のスッキリと引き締まった体型で、黒髪を油で後ろに流している。
陰のある白い顔は非常に整っていて、王子様にも凄腕の冒険者にも見える。
そして、何故だか鉄籠に茶色と黒の縞模様の猫を入れている。
「多少凶暴になるとか、その程度の変化じゃない。まさに変身だ。さあ、猫の変身のお披露目だ」
「ニャー! ニャー!」
黒服の男が鉄籠から暴れる猫を引き摺り出している。懐かれてはいないようだ。
首根っこを掴んで、胸ポケットから取り出したケースを猫の口元に近づけている。
ケースは銀色で縦八センチ、横五センチ、厚さ二センチ程の長方形だ。
「対象の大きさや抵抗力によって、多少は使用量は変化する。猫なら一錠で十分だが、馬なら五錠ぐらいは必要だ。間違っても大量にやらない事だ。変化に耐え切れずに死ぬだけだからな」
よく分からないけど、猫に変な薬を飲ませて魔物に変えるみたいだ。
止めた方がいいのか、悪い事なのか分からないけど、ちょっと可哀想だな。
でも、止める権利もないし、自分のペットを魔物にしたいだけかもしれない。
「ニギャャー‼︎」
「少し危ないから下がっていろよ」
黒服の男は猫に無理矢理にケースの中の薬を飲ませると、部屋の中央に放り投げた。
猫が口から泡を吐いて酷く苦しんでいる。
やっぱり止めた方がよかったかもしれない。
「おい⁉︎ 本当に大丈夫なのか? 死ぬんじゃないだろうな」
「そう慌てるな。動物実験の成功率は九十パーセントを超えている。ほら、変化してきたぞ」
「うっ……」
灰服の男は酷く心配しているけど、黒服の男は落ち着いている。
そして、黒服の男が言う通りに猫に変化が現れ始めた。
「グニャャ……グギャァ……ガァ、ガアアアア‼︎」
猫の身体が破裂して、ボコボコと筋肉が膨れ上がっていく。
もう猫の面影は無く、数十倍に巨大化した身体の表面を血管が脈打つ肉の塊に覆われている。
(うぐっ、気持ち悪い……)
あれは可愛くないから、ペットには飼いたくない。
「くっ……時間がかかり過ぎだ。もっと早く変わらないのか? これだと逃げられるじゃないか!」
「もうすぐ終わる。安定させて変化させるには時間がかかる。三分も待てないのか?」
「くっ……三分だと! 即効性じゃないのか」
灰服の男は薬の効果に不満があるようだ。
三分で変身するなら十分に早いと思うけど、それだと駄目なようだ。
こっちは気持ち悪い変身を見たから、しばらくは肉料理は食べたくないよ。
「そこはあんたが知恵を使って、解決するんだな。ほら、肉を突き破って出て来るぞ」
黒服の男が言う通りに肉の塊を突き破って、大きな猫が勢いよく飛び出して来た。
茶色と黒の縞模様は同じだけど、大きさは二メートルを超えている。
子供のように可愛いかった顔は、強面のおじさんに急成長したように怖い。
「グゥルルルル‼︎」
「ひぃぃ‼︎ だ、大丈夫なんだろうな⁉︎」
怖い唸り声で灰服と黒服の男を威嚇している。やっぱり懐かれていない。
「安心しろ。その為に俺がいる。失せろ!」
「フゥッ、シャアアア!」
黒服の男が地面を勢いよく踏んで、大きな音を立てて巨大猫を追い払った。
巨大猫は右側の通路に飛び込んで逃げていった。
こっちに来なくて助かったけど、意外と図体だけで臆病なのかもしれない。
「……フッ、フフ。言う事は聞かせられるのか?」
「それは無理だ。手当たり次第に暴れるだけで、寿命は個人差はあるが、大抵は短くなる。用が済んだら、あとは死ぬだけだ」
「ちっ……使えないな。まあいい。皆殺しに出来れば問題ない」
皆殺し? もしかして、悪い事にあの薬を使おうとしているのかも。
だとしたら、すぐに誰かを呼んで来ないと駄目だ。
「それで買うのか、買わないのか、どっちなんだ?」
「買うに決まっている! 大型犬五頭分でいい。すぐに用意してくれ!」
「そう言うと思って用意している。一錠三十万ギルだ。何錠欲しいんだ?」
「十錠……いや、十五錠でいい!」
黒服の男が銀色のケースを見せて、灰服の男に聞いている。
三十万ギルもする薬を十五錠も買うなんて、やっぱりお金持ちだ。
でも、これで間違いない。あんな危なそうな薬に大金を払うのは悪い人しかいない。
よし、出口は分からないけど、出口を目指そう。
「珍しいスライムだな?」
「えっ? アグッッ‼︎」
突然、背後から男の声が聞こえてきた。
慌てて振り返ろうとしたけど、頭に凄い衝撃が襲ってきた。
そして、短剣を右手に持ったまま地面に倒れてしまった。
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