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第七章
第2話『手掛かりを求めて』
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「誰も信じたら駄目、誰も信じたら駄目……」
キアラは囚人部屋で学んだ教訓を詠唱しています。
この世界で本当に信じていいのは自分一人だけです。
幸運の虹色水晶をしっかりと握ると、テーブルに向かいました。
「準備が出来たみたいだから、ルールを説明するよ。キアラさんには私が指定したトランプを勘で当ててもらいます。その方が良さそうだから、まずはスペードのエースを当ててみて」
「うん、分かった。やってみる……」
緊張しているキアラに、淡々とディアナはトランプゲームの説明します。
キアラは幸運の虹色水晶を胸にしっかりと抱きながら、テーブルの上の五十四枚のトランプを右から左、左から右に一回見ると決めました。
「これにします」
そして、トランプを右手の人差し指でタッチすると、恐る恐る捲りました。
「……やった!」
「おめでとう、あと二回。次はハートのクイーン。出来なければ、囚人部屋に帰ってもらうよ」
「うっ! えっーと、これ……よし!」
「姉さん、あと一回だよ。イケるよ!」
キアラは無理だと言いながらも簡単に二回正解しました。自由まで、あと一回です。
心配して見守っていたウォルターも、ちょっと安心しています。
「安心するのはまだ早いよ。最後はジョーカーを見つけて。二枚あるから簡単でしょう?」
「えっ? ジョーカーは駄目だよ! ジョーカー引いたら負けるんだから!」
ジョーカーを引けと言われて、キアラは急に顔色を真っ青に変えて、取り乱し始めました。
ウォルターは急いでキアラの元に駆け寄ると、優しく抱き締めて、背中をさすって落ち着かせます。
囚人部屋での、過酷なババ抜きを思い出して、軽いパニック発作を起こしているようです。
「キアラ姉さん、落ち着いてよ。負けじゃないよ。ジョーカー引いたら勝ちなんだから」
「えっ、えっ、ジョーカー引いたら勝ちにルール変更されたの? あっ! また、皆んなで私を騙そうとしている! 騙そうとしている‼︎」
「騙してないから。姉さん、落ち着いて」
これはもう失敗しても、囚人部屋には戻さない方がいいです。
ウォルターに宥められる事、三分。ようやくキアラは少し落ち着きを取り戻しました。
「本当に? 本当に信じていいの?」
「うん、僕を信じて。ジョーカーを引いたら自由だから」
「分かった。これと……これ」
子供っぽくなってしまったキアラを、ウォルターはテーブルまで連れて行きます。
キアラはテーブルの上のトランプを、迷わずに二枚指差しましたが、自分では捲らないようです。
「姉さん、代わりに捲るからね」
ウォルターはキアラの代わりに一枚捲ると、死神が描かれたジョーカーが現れました。
確かにこれは引きたくないです。
もう一枚の方も念の為に捲りましたが、こっちもジョーカーでした。
「おめでとう。試験は合格だよ」
「姉さん、合格だって! おめでとう。これで自由になれるよ」
「うん! うん! 私、頑張ったよ!」
ディアナはテーブルの上のトランプを片付けながら言います。
次の準備があるので、テーブルは片付けないといけません。
キアラの事はとりあえず、ウォルターが引き続き宥めているので、そのうち落ち着くはずです。
ディアナはパパッとトランプを片付けると、棚から折り畳まれた紙を持って来ました。
「準備が出来たよ。次が本番だから、頑張るなら、こっちを頑張って」
準備が出来たのか、ディアナがキアラを呼びました。
今度はテーブルの上には世界地図が広げられています。
おそらくは勘を使わせて、手掛かりがある場所を当てさせたいようです。
「これをどうすればいいの?」
「手掛かりがありそうな場所を選んでみて。参考になるかもしれないから」
「えっー、でも……」
ディアナの説明では、今度は適当に選んで欲しいとの事です。
キアラは地図を端から端まで何度も見ていますが、決められないようです。
「姉さん、分からない時は分からないって、言っていいんだよ」
「あっ、うううん、違うの。何となくだけど、一つに決められないだけというか、沢山あり過ぎるというか……」
なかなか決められないキアラをウォルターを気遣います。
けれども、手掛かりが多過ぎて決められないだけのようです。
「複数あるなら、行けそうな所で、一番良さそうな場所でいいから選んでみて。そうしないと調べられないから」
「じゃあ……この辺かな? 何となくだけど」
ディアナに急かされて、キアラは地図の一ヶ所を指差しました。
手掛かりがある場所は、海岸沿いではない、内陸部にあるようです。
「なるほど、ここなんだね。今、印を付けるから指は動かさないでね」
そう言うと、ディアナは地図に赤丸を付けました。
どうやら目的地が決まったようです。
既にウォルターとミファリスは旅支度は済ませています。
あとは目的地に向かって出発するだけです。
「プルトス王国か……確か裕福な国で有名な所だったから、お金持ちの誰かが、手掛かりになる物を持っているのかな?」
キアラは地図上の赤丸を見ながら言います。
冒険者ギルドの職員なので、地理には少し詳しいようです。
「それは分からないけど、行ってみれば分かると思う。キアラさんも兄様達と一緒に行ってみて。旅費も出すから楽しんで来て」
「本当に⁉︎」
「うん。一生懸命に頑張ってくれたから、当然だよ。私は行けないけど、私の代わりに、兄様が変な事をしないか見張っていて」
「任せてください。ウォルター、リゾート地で旅行なんて楽しみだね!」
九歳とはいえ、ディアナは王女なので簡単に国外に行けません。
今回は城に残って、キアラにウォルターの世話を任せるようです。
少しガッカリしていますが、キアラの方はタダで旅行が出来ると聞いて、かなり喜んでいます。
急いで旅支度と身嗜みを整えると、ウォルター達と一緒に港に向かって、船に乗りました。
でも、向かう場所は今はリゾート地ではないです。隣国との戦争中です。
キアラは囚人部屋で学んだ教訓を詠唱しています。
この世界で本当に信じていいのは自分一人だけです。
幸運の虹色水晶をしっかりと握ると、テーブルに向かいました。
「準備が出来たみたいだから、ルールを説明するよ。キアラさんには私が指定したトランプを勘で当ててもらいます。その方が良さそうだから、まずはスペードのエースを当ててみて」
「うん、分かった。やってみる……」
緊張しているキアラに、淡々とディアナはトランプゲームの説明します。
キアラは幸運の虹色水晶を胸にしっかりと抱きながら、テーブルの上の五十四枚のトランプを右から左、左から右に一回見ると決めました。
「これにします」
そして、トランプを右手の人差し指でタッチすると、恐る恐る捲りました。
「……やった!」
「おめでとう、あと二回。次はハートのクイーン。出来なければ、囚人部屋に帰ってもらうよ」
「うっ! えっーと、これ……よし!」
「姉さん、あと一回だよ。イケるよ!」
キアラは無理だと言いながらも簡単に二回正解しました。自由まで、あと一回です。
心配して見守っていたウォルターも、ちょっと安心しています。
「安心するのはまだ早いよ。最後はジョーカーを見つけて。二枚あるから簡単でしょう?」
「えっ? ジョーカーは駄目だよ! ジョーカー引いたら負けるんだから!」
ジョーカーを引けと言われて、キアラは急に顔色を真っ青に変えて、取り乱し始めました。
ウォルターは急いでキアラの元に駆け寄ると、優しく抱き締めて、背中をさすって落ち着かせます。
囚人部屋での、過酷なババ抜きを思い出して、軽いパニック発作を起こしているようです。
「キアラ姉さん、落ち着いてよ。負けじゃないよ。ジョーカー引いたら勝ちなんだから」
「えっ、えっ、ジョーカー引いたら勝ちにルール変更されたの? あっ! また、皆んなで私を騙そうとしている! 騙そうとしている‼︎」
「騙してないから。姉さん、落ち着いて」
これはもう失敗しても、囚人部屋には戻さない方がいいです。
ウォルターに宥められる事、三分。ようやくキアラは少し落ち着きを取り戻しました。
「本当に? 本当に信じていいの?」
「うん、僕を信じて。ジョーカーを引いたら自由だから」
「分かった。これと……これ」
子供っぽくなってしまったキアラを、ウォルターはテーブルまで連れて行きます。
キアラはテーブルの上のトランプを、迷わずに二枚指差しましたが、自分では捲らないようです。
「姉さん、代わりに捲るからね」
ウォルターはキアラの代わりに一枚捲ると、死神が描かれたジョーカーが現れました。
確かにこれは引きたくないです。
もう一枚の方も念の為に捲りましたが、こっちもジョーカーでした。
「おめでとう。試験は合格だよ」
「姉さん、合格だって! おめでとう。これで自由になれるよ」
「うん! うん! 私、頑張ったよ!」
ディアナはテーブルの上のトランプを片付けながら言います。
次の準備があるので、テーブルは片付けないといけません。
キアラの事はとりあえず、ウォルターが引き続き宥めているので、そのうち落ち着くはずです。
ディアナはパパッとトランプを片付けると、棚から折り畳まれた紙を持って来ました。
「準備が出来たよ。次が本番だから、頑張るなら、こっちを頑張って」
準備が出来たのか、ディアナがキアラを呼びました。
今度はテーブルの上には世界地図が広げられています。
おそらくは勘を使わせて、手掛かりがある場所を当てさせたいようです。
「これをどうすればいいの?」
「手掛かりがありそうな場所を選んでみて。参考になるかもしれないから」
「えっー、でも……」
ディアナの説明では、今度は適当に選んで欲しいとの事です。
キアラは地図を端から端まで何度も見ていますが、決められないようです。
「姉さん、分からない時は分からないって、言っていいんだよ」
「あっ、うううん、違うの。何となくだけど、一つに決められないだけというか、沢山あり過ぎるというか……」
なかなか決められないキアラをウォルターを気遣います。
けれども、手掛かりが多過ぎて決められないだけのようです。
「複数あるなら、行けそうな所で、一番良さそうな場所でいいから選んでみて。そうしないと調べられないから」
「じゃあ……この辺かな? 何となくだけど」
ディアナに急かされて、キアラは地図の一ヶ所を指差しました。
手掛かりがある場所は、海岸沿いではない、内陸部にあるようです。
「なるほど、ここなんだね。今、印を付けるから指は動かさないでね」
そう言うと、ディアナは地図に赤丸を付けました。
どうやら目的地が決まったようです。
既にウォルターとミファリスは旅支度は済ませています。
あとは目的地に向かって出発するだけです。
「プルトス王国か……確か裕福な国で有名な所だったから、お金持ちの誰かが、手掛かりになる物を持っているのかな?」
キアラは地図上の赤丸を見ながら言います。
冒険者ギルドの職員なので、地理には少し詳しいようです。
「それは分からないけど、行ってみれば分かると思う。キアラさんも兄様達と一緒に行ってみて。旅費も出すから楽しんで来て」
「本当に⁉︎」
「うん。一生懸命に頑張ってくれたから、当然だよ。私は行けないけど、私の代わりに、兄様が変な事をしないか見張っていて」
「任せてください。ウォルター、リゾート地で旅行なんて楽しみだね!」
九歳とはいえ、ディアナは王女なので簡単に国外に行けません。
今回は城に残って、キアラにウォルターの世話を任せるようです。
少しガッカリしていますが、キアラの方はタダで旅行が出来ると聞いて、かなり喜んでいます。
急いで旅支度と身嗜みを整えると、ウォルター達と一緒に港に向かって、船に乗りました。
でも、向かう場所は今はリゾート地ではないです。隣国との戦争中です。
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