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第三章
第5話『新しい可能性』
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「はぁ……町では有名だったんだけどなぁ~。とりあえず、海底から高そうな物でも引き上げようかな」
知名度が足りないなら高めるしかない、と結論を出すと、ウォルターは港の方に向かって歩き出しました。
でも、少し後ろを、さっきお別れを言ったばかりの黒髪のミファリスが付いて来ていました。
「あのぉ、ミファリスさん?」
「はい、何ですか?」
「お仕事探さないでいいんですか? 銀貨三枚なんて、直ぐに使い切ってしまいますよ」
ウォルターは背後をゆっくりと振り返ると、キョトンとしているミファリスに聞きました。
せっかくちょっとだけ助けたのに、このままだと行き倒れ確実です。
もうちょっと危機感を持った方がいいです。
「も、もちろん探しますよ。でも、家を追い出されてしまって、泊まる所がないんですよ。それで大変言いにくいんですけど……高級宿屋の部屋の隅でもいいので、泊めて欲しいんですけど……駄目ですか?」
「流石に出会ったばかりの女性と一緒は……」
「あっ、駄目ならいいんです! あっははは……町のゴロツキに襲われて、身包み剥がされて、お金を奪われるだけですから……ええ、大丈夫です。気にしないでください」
とても大丈夫そうには聞こえませんが、放っておけば、確実にそうなりそうです。
むしろ、お金を奪われた後に奴隷商に売られて、お金にも変えられそうです。
ウォルターは、これ以上は駄目女に関わらない方がいいとは思っています。
でも、漂流していたところを漁師に助けられた当時は金無し、宿無し状態でした。
今の自分が生きていられるのは、優しい町の人達に助けられたからです。
それにお金と家が無い心細い状態で、仕事を探したいという気持ちにはなれないはずです。
助ける力があるのならば、助けるべきだと、ウォルターは自分に言い聞かせました。
「分かりました。そういう事情なら宿屋に泊まってください」
「本当にいいですか!」
ウォルターが宿屋に泊めると言った瞬間に、ミファリスは満面の笑みを浮かべました。
やっぱり泊めてくれると期待していたようです。
「はい、本当にいいです。でも、仕事はキチンと探してくださいね」
「大丈夫です! 仕事はもう見つけましたから!」
「そうなんですか? いつの間に見つけたんですか?」
「何言ってるんですか? 駄目スキル仲間同士、一緒に採用されるように頑張りましょう!」
「えっ……」
ウォルターはあれだけ注意されていたにも関わらず、早くも悪い女に捕まりました。
そして何故だか、駄目スキル仲間として、一緒にリランの屋敷に雇われる事を目指す事になりました。
♦︎
「ウォルターさんも私と一緒で使えないスキル持ちなんですね。泳ぐだけなら、私でも500メートルは行けますよ」
「へぇー、意外と体力あるんですね」
ウォルターと一緒に港に向かいながら、ミファリスは楽しそうに話しています。
同じ駄目スキル仲間がいた事に、親近感と安心感を感じているようですが、実際は天と地の差があります。
【スキル『混ぜるLV5』=かなり上手に混ぜる事が出来る。】
ミファリスのスキルLVは高いですが、ウォルターと違って、スキルが覚醒せずに単独のままです。
このままだと、レベルが MAXになっても大した変化は起こりません。駄目駄目のままです。
「普通は危機的状況になれば、スキルが覚醒して新しいスキルが増えるはずなんですけど……今までに危機的状況になった事はないんですか?」
「危機的状況ですか? お腹が空いて死にそうになった事は何度かありましたけど、本当に死にそうになった事はまだ無いです。首を吊った状態で生クリームを作ればいいんですか?」
「いえ、そういうのはいいです。絶対にやらないでくださいね」
命を懸けて作った生クリームなんて、誰も食べたくないです。
どう見ても、ウォルターが助ける前から、ミファリスは危機的状況です。
それなのにスキルが単独のままなら、本人に自覚とやる気が無いのか、やっている事が間違っているしかありません。多分、話を聞く限りだと料理人に向いていないだけです。
「それじゃあ、たまには混ぜる物を変えてみましょうか。もしかすると、料理人以外の新しい可能性が見つかるかもしれませんよ」
「他の可能性ですか……分かりました! 命の恩人の頼みならばやってみます!」
ウォルターは市場で色々な混ぜれそうな物を買うと、それをミファリスに手渡しました。
金属粉や宝石粉、小石や薬草、コーヒー豆と、とにかく手当たり次第です。
これで駄目なら、諦めるしかありません。お金を渡して、あとは頑張って生きてもらうしかありません。
知名度が足りないなら高めるしかない、と結論を出すと、ウォルターは港の方に向かって歩き出しました。
でも、少し後ろを、さっきお別れを言ったばかりの黒髪のミファリスが付いて来ていました。
「あのぉ、ミファリスさん?」
「はい、何ですか?」
「お仕事探さないでいいんですか? 銀貨三枚なんて、直ぐに使い切ってしまいますよ」
ウォルターは背後をゆっくりと振り返ると、キョトンとしているミファリスに聞きました。
せっかくちょっとだけ助けたのに、このままだと行き倒れ確実です。
もうちょっと危機感を持った方がいいです。
「も、もちろん探しますよ。でも、家を追い出されてしまって、泊まる所がないんですよ。それで大変言いにくいんですけど……高級宿屋の部屋の隅でもいいので、泊めて欲しいんですけど……駄目ですか?」
「流石に出会ったばかりの女性と一緒は……」
「あっ、駄目ならいいんです! あっははは……町のゴロツキに襲われて、身包み剥がされて、お金を奪われるだけですから……ええ、大丈夫です。気にしないでください」
とても大丈夫そうには聞こえませんが、放っておけば、確実にそうなりそうです。
むしろ、お金を奪われた後に奴隷商に売られて、お金にも変えられそうです。
ウォルターは、これ以上は駄目女に関わらない方がいいとは思っています。
でも、漂流していたところを漁師に助けられた当時は金無し、宿無し状態でした。
今の自分が生きていられるのは、優しい町の人達に助けられたからです。
それにお金と家が無い心細い状態で、仕事を探したいという気持ちにはなれないはずです。
助ける力があるのならば、助けるべきだと、ウォルターは自分に言い聞かせました。
「分かりました。そういう事情なら宿屋に泊まってください」
「本当にいいですか!」
ウォルターが宿屋に泊めると言った瞬間に、ミファリスは満面の笑みを浮かべました。
やっぱり泊めてくれると期待していたようです。
「はい、本当にいいです。でも、仕事はキチンと探してくださいね」
「大丈夫です! 仕事はもう見つけましたから!」
「そうなんですか? いつの間に見つけたんですか?」
「何言ってるんですか? 駄目スキル仲間同士、一緒に採用されるように頑張りましょう!」
「えっ……」
ウォルターはあれだけ注意されていたにも関わらず、早くも悪い女に捕まりました。
そして何故だか、駄目スキル仲間として、一緒にリランの屋敷に雇われる事を目指す事になりました。
♦︎
「ウォルターさんも私と一緒で使えないスキル持ちなんですね。泳ぐだけなら、私でも500メートルは行けますよ」
「へぇー、意外と体力あるんですね」
ウォルターと一緒に港に向かいながら、ミファリスは楽しそうに話しています。
同じ駄目スキル仲間がいた事に、親近感と安心感を感じているようですが、実際は天と地の差があります。
【スキル『混ぜるLV5』=かなり上手に混ぜる事が出来る。】
ミファリスのスキルLVは高いですが、ウォルターと違って、スキルが覚醒せずに単独のままです。
このままだと、レベルが MAXになっても大した変化は起こりません。駄目駄目のままです。
「普通は危機的状況になれば、スキルが覚醒して新しいスキルが増えるはずなんですけど……今までに危機的状況になった事はないんですか?」
「危機的状況ですか? お腹が空いて死にそうになった事は何度かありましたけど、本当に死にそうになった事はまだ無いです。首を吊った状態で生クリームを作ればいいんですか?」
「いえ、そういうのはいいです。絶対にやらないでくださいね」
命を懸けて作った生クリームなんて、誰も食べたくないです。
どう見ても、ウォルターが助ける前から、ミファリスは危機的状況です。
それなのにスキルが単独のままなら、本人に自覚とやる気が無いのか、やっている事が間違っているしかありません。多分、話を聞く限りだと料理人に向いていないだけです。
「それじゃあ、たまには混ぜる物を変えてみましょうか。もしかすると、料理人以外の新しい可能性が見つかるかもしれませんよ」
「他の可能性ですか……分かりました! 命の恩人の頼みならばやってみます!」
ウォルターは市場で色々な混ぜれそうな物を買うと、それをミファリスに手渡しました。
金属粉や宝石粉、小石や薬草、コーヒー豆と、とにかく手当たり次第です。
これで駄目なら、諦めるしかありません。お金を渡して、あとは頑張って生きてもらうしかありません。
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