異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
上 下
39 / 63

第39話

しおりを挟む
「じゃあ、あとはよろしく。危なくなったら、回復アイテムを置いていくから使うんだぞ」
『『『ビイイ!』』』

 ノイジーの森に虎蜂三匹を残す事にした。
 回復アイテムを九本置いて、僕はコルヌコピアイの町に帰る。
 確か昆虫の睡眠時間は一日二時間個人的希望ぐらいだったはずだ。
 僕が町で休んでいる間も、虎蜂三匹には森の魔物を倒して回ってもらう。
 つまりは睡眠学習だ。寝ている間にレベルアップが出来るという訳だ。
 
 とりあえず、HPが減った時用に回復アイテムを九本も置いてある。
 僕無しでも、三対一で森の魔物達を蹂躙できるはずだ。
 安全対策もバッチリなので、安心して任せられる。
 さっさと町に帰って、夜ご飯を食べて、軽く初級土魔法を習得しよう。

「麺類は飽きたし、たまには贅沢してマーボーカレーにするか」

 晩ご飯を考えながら、神フォンのホームをタッチする。
 僕の身体は光に包まれていく。しばらくすると閃光を放って、町に転送された。

「ふぅー、やっぱり帰れる家があると落ち着くよ」

 コルヌコピアイの町にも夜があるようだ。町の中がノイジーの森に出掛ける前よりも暗くなっていた。
 やっぱり野宿生活から解放されると精神的な余裕が生まれる。
 今も森で残業中の友達三匹には悪いけど、僕は温かい食事を食べてから、温かいベッドの中で眠る事にする。

「食堂に行く前に、虎蜂のクエストが終わっているから、ギルドに行かないとな」

 虎蜂十匹の討伐報酬は240エルと少ないけど、今日だけでも二十匹も倒した。
 クエストが再受注可能ならば、寝ている間に虎蜂達がクエストを達成してくれるはずだ。
 ちょっとして小銭稼ぎが出来るかもしれない。

「すみません、マニアさん。クエストが終わりました。報酬を受け取りに来ました」

 クエスト嬢のマニアにカウンター越しに話しかける。
 前と一緒で書類の束を眠たそうな目で捲っていた。
 もしかすると、書類を捲るだけの仕事なのかしれない。

「んっ? 意外と早かったね。どのクエストが終わったの?」
「虎蜂です」
「りょ。じゃあ、神フォンを渡して。チェックするから」
「分かりました」

 受付カウンターにやって来たマニアに、言われた通りに素直に神フォンを手渡した。
 画面をタッチして、何やら調べているようだけど、イヤらしい動画の閲覧履歴はないので、何を調べられても困る事はないはずだ。
 
「ふむふむ……ほぉー……」
「何を調べているんですか?」
「んっ? 換金済みの魔物と収納している魔物をチェックしているところ。報酬が欲しいなら、魔物を倒したら必ず収納しないと駄目だよ」
「なるほど。なら、問題ないです」

 倒した魔物は全て収納済み、換金済みだ。
 これで換金した魔物の数は討伐数に入らないとか言われたら、軽くショックだ。
 そういう重要な情報があるなら、初めに言って欲しい。

「りょ。虎蜂二十匹を換金しているみたいだから、報酬はクエスト二回分で480エルになるよ。はい、報酬は神フォンに送ったから返すね」

 マニアから返された神フォンのエル残高を調べたら、確かに報酬分が追加されていた。
 初クエスト達成なんだけど、あまり喜びはなかった。
 まあ、大した報酬じゃなかったし、僕はほとんど見ていただけだから、そうなるでしょう。

「ありがとうございます。同じクエストを再受注したいんですけど、出来ますか? また、虎蜂のクエストを受けたいんですけど」
「再受注? ……あっ、それなら必要ない。一度受注したクエストはそのまま使い続ける事が出来るから。何度も同じクエストを説明して、受注する手続きは面倒でしょう。私が」
「あっはは……確かに面倒ですよね」

 再受注する必要がない事は分かったけど、マニアは明らかに、この仕事に対してやる気がなさそうだ。
 眠そうな目が今すぐに眠りたいと訴えてきている。

「そっ。だから、最低でも報酬が1000エル以上になってから来て欲しい」
「うっ、すみません。次からはそうします」
「りょ。あと営業時間は午前九時から午後六時までだから、もうとっくに営業時間外。ちょっと迷惑」
「うっ、重ね重ね、すみません」

 ペコペコと謝り続けているけど、どっちも最初に来た時に伝えていない方が悪い。
 僕としては聞いてもいない事で叱られたくはないけど、文句を言ったら仕事を受けられなくなりそうだ。
 まあ、電話越しでブチ切れる女神様よりは、生身の綺麗なお姉さんに目の前で叱られる方が気持ち良い。

「分かればいい。次からは報酬減額するから注意して」
「はい、気をつけます」
「じゃあ、おやすみ。閉店ガラガラガラ、ガシャン」
「……」

 無口キャラは撤廃した方がよさそうだ。
 マニアは両手を上に上げるとシャッターを掴んで、受付を強制終了してしまった。
 きっと、夜中にドンドンと叩いても開けてはくれないだろう。

 よく見れば、食堂以外の他の店もシャッターを閉めようとしている。
 多分、午後六時三十分を過ぎた頃からシャッターを閉めるんだろう。
 だったら、食堂が閉まる前に引っ越しの挨拶をしないとマズイ。

「すみません」
「はい⁉︎ えっ、えっ、わぁ~、凄いカッコいい人がいる‼︎」

 白の三角巾さんかくきんを頭につけて、白の割烹着かっぽうぎを着た黒髪の女が、木のテーブルに突っ伏して寝ていたので声をかけた。
 ビックリして飛び起きたけど、さらに僕の顔を見てビックリしている。
 どうやら、この町にも少しは見る目がある女がいるようだ。

「ちょっと、いいかな?」

 セクシーな声とキメ顔で頬を紅く染めている、サザエさんに出て来るお母さん女に話しかけた。
 
「ズキューン♡ は、はい、ダ、ダミア、十六歳。彼氏募集中でちゅ! ひゃあっ~、噛んじゃった⁉︎」
「そっ。俺はトオル、十五歳。今日からこの町に住む事になったんだ。お隣同士、よろしくね」

 ミステリアスなクール系男子風に、僕はノリノリでダミアに引っ越しの挨拶をする。
 そうそう、本来ならば、イケメンダークエルフに対しての反応はこれが正解なんだ。
 黒髪お下げの田舎女には、まったく興味はないけど、その気にさせれば、食事代が永遠にタダになるかもしれない。ちょっとだけ頑張ってみようかな。

「は、はい! あっ~~~、な、何か食べて行きますか? 色々とありますよ」
「じゃあ、マーボーカレー一つ。愛情たっぷりで」
「はい、少々お待ちください! あっ~~~、中に入ってテーブルに座ってください!」
「お邪魔するよ」

 カウンターを軽々と飛び越えて、食堂の中に入ると、遠慮なくテーブルに座った。
 割烹着女がチラチラとこっちを見ながら、料理を続けている。
 目が合うたびにアイドルのような笑顔を振りまいた。

「きゃ~! きゃ~!」

 ふぅー、アイドル活動も楽じゃないよ。
 
「マーボーカレー、お待たせしました♡」
「ありがとう」
「あのぉ~……年上の女は恋愛対象になりますか?」
「んっ? 全然、OKだよ」
「きゃ~~~~~‼︎」

 うるせいなぁ~! 食事中に騒ぐんじゃねぇよ!
 もちろん思うだけだ。絶対に口に出しては言わない。
 僕の食べる姿を見ながら、うっとりしているダミアは無視して、急いでマーボーカレーを胃の中に流し込んだ。
 ハァ、ハァ、ハァ……あとは言いたくないけど、食事代無料の為だ。言いたくないけど、言ってやる。

「美味しかったよ。また食べに来てもいいかな?」
「もちろんです! いつでもお待ちしています。なんなら、夜中に忍び込んで来てもいいぐらいです。きゃ~~、私ったら積極的ぃ~~~!」
「は、はっはは……う、うん、今度お邪魔するよ」

 正直言って、ここまでモテると逆に引いてしまう。夜のお誘いは丁寧に辞退するとしよう。
 僕はゆっくり休みたいし、魔法の習得に忙しい。それに一番重要なのは、相手を選ぶ権利があるという事だ。
 女なら誰でもいいと言える程に、僕は飢えた狼じゃない。田舎女に手を出すには早過ぎる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘つきレイラ

織部
ファンタジー
1文800文字程度。通勤、通学のお供にどうぞ。 双子のように、育った幼馴染の俺、リドリーとレイラ王女。彼女は、6歳になり異世界転生者だといい、9歳になり、彼女の母親の死と共に、俺を遠ざけた。 「この風景見たことが無い?」 王国の継承順位が事件とともに上がっていく彼女の先にあるものとは…… ※カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しております。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

烙印騎士と四十四番目の神・Ⅲ 封じられし災い編

赤星 治
ファンタジー
 バルブラインの異変、突如として魔力壁が消えたゼルドリアス、未知の脅威。  様々な問題がひしめく中、ジェイクはガーディアンとして戦えるように成長していく。そして、さらなる世界の謎が立ちはだかる。

箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

物部妖狐
ファンタジー
不幸のままに終わった女性が死後選ばれて箱庭の異世界に転生する。 ただ幸せになりたいという思いが行きつく先に何が起きるのか……。 これは後に英雄と呼ばれる事になる三人の物語。 作られた箱庭で彼女は何を思うのか…… 更新頻度:毎週土曜更新予定、投稿までの間に治癒術師の非日常を読んで頂けると嬉しいです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...