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異世界旅行編

黒盗賊と人魚

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「あー眠い。眠過ぎる」
「……」

 悪魔の世界から女神の世界に帰ってきた。ここなら敵はいないから安全に熟睡できる。
 あとは錬金術で簡単な布団とベッドを作って、風呂入って寝るだけだ。

 残念ながら女兵士は体調が万全じゃないから、王子に預けてきた。
 流石の俺も病み上がりの女に無茶はさせない。俺の相手はベリーハードだ。
 回復魔法で元気になるなら、間違いなくさせていたが。
 蘇生後の体調不良は回復魔法じゃ治せなかった。

「おい! いつまで私をここに閉じ込めておくつもりだ!」
「あっ……」

 やべえ。女四天王を檻に監禁してたの忘れてた。
 俺、基本的に抱いた女は忘れるんだよな。悪い悪い餌の時間だっけ?

「エルフって、肉食わねえよな? 野菜と木の実、あと果物もあるけど、どれがいい?」

 上着裏の魔法のポケットを探せば、大量の食糧が出てくる出てくる。
 ポケットの中に便利な時間停止機能はないから、早く食べないと腐っちまう。
 だとしたら冷蔵庫も作んないとな。魚保存するなら大型冷凍庫もいるな。
 あーやる事多過ぎて過労死するわ。マジ優秀な部下が欲しいぜ。

「くっ、お前は私を飼い殺しにするつもりか……私には大事な使命があるというのに……」
「もぐもぐ……これ蜜柑じゃないな。あーあれだ。あれあれ。そうだ、あれだ。スイカの皮だ!」

 要らないみたいだから、赤い皮の蜜柑を剥いて食べてみた。
 そしたら懐かしい味がした。高校の夏休み合宿で食べたスイカの皮だ。
 あの大玉スイカ、一玉千五百円で買ったのに全然甘くなかったんだよな。

「私の話を聞いているのか?」
「ああ、聞いてるぜ。囚われのお姫様。そういえば今更だけど何で王女のフリしてたんだ? 本物の王女殺して入れ替わったのか? 何の為に?」

 地魔法で四角い大きな岩風呂を作りながら、アルテに訊いてみた。
 あとは水魔法と火魔法で楽々完成だ。完成した風呂にはアルテも一緒に入れる。
 俺はアルテの露天風呂にも入るつもり、いや、挿れるつもりだ。
 そこで一日の疲れをたっぷり取ってやる。たっぷりとな♪

「話して欲しければ、私を自由にしろ。私を拘束する理由はないはずだ」
「確かにそうだな。いくら美しくても何度も抱けば飽きる。それが男というものだ」
「ああっ——」

 自由の可能性を少し見せただけで、この期待の表情か。
 何とも甘い女だ。この俺から簡単に自由になれる訳がないだろう。

「だが断る!」
「なっ⁉︎」

 期待させるだけさせて、当然のように容赦なく断った。
 甘い希望が断たれて、アルテはショックを受けている。
 だが、まだまだこんなもんじゃないぞ。絶望するのはな。

「お前は貴重な四人だ。俺から自由になりたいのなら、それなりの成果を示せ。まずは俺の身体を綺麗にしろ。その身体を使ってな♪」
「くっ、この下衆め!」
「クククッ♪ それはもう教えたはずなんだが、まだ足りないらしい。まったくお前は勉強家だな♪」

 俺の男珍宝を四発も喰らったのに、まだ食い足りないらしい。
 おいおい、俺の男珍宝を過労死させるつもりか?
 
 ♦︎

「あー腹減った。やっぱ宿屋が良かったな」

 異世界強制召喚でほぼ無職になった。
 だから気が済むまでベッドで寝てみたが、起きたら腹が減っていた。
 当然と言えば当然だが、金払ってその辺の店でまともな食事が食べたい。
 食糧というよりも食材を生で食うには限界がある。
 特に俺のような舌の肥えた人間には辛いものだ。

「よし、外食するか。お前も連れて行ってやるから感謝しろよ」
「……」

 隣に寝ている褐色黒髪エルフに言った。昨日、頑張ったご褒美だ。
 いや、頑張ったのは俺の方だな。いやぁー頑張った。二回も頑張った。
 頑張り過ぎたから、今日は男珍宝の休業日だな。

 だが、その前に……このエロい服をどうにかしないとマズイな。
 隣を見ると、アルテの服は黒の紐なしブラジャーとミニボクサーパンツだけだ。
 外食するなら、このほぼ下着服を着替えさせないといけない。

 俺が商売女に金払って、尻撫で回しながら連れ歩いているように見られる。
 いい女を連れ歩くのは男の勲章だが、商売女を連れ歩くのはモテない男だと吹聴しているようなものだ。

 褐色の肌にはやはり黒が似合う。イメージは動きやすい盗賊服だ。
 ブラのような上着『ビスチェ』はヘソ出しのものを、下はホットパンツを錬金した。
 ビスチェの上に羽織るように、長袖の赤いジャケットも錬金した。
 靴は脛まである革ブーツが妥当だな。最後に髪紐を作れば完璧だ。
 
「まあ、こんなもんだな♪」

 コスプレ選びはラブホで慣れている。
 ポニーテールの黒盗賊、または二代目破滅の錬金術師が完成した。
 赤いジャケットを着せただけで、ほとんど変わってない気もするが。
 まあいいだろう。外食ついでに服も買ってやる。

 ♢

 さて問題だ。金を持ってない俺がどうやって外食すると思う?
 答えは簡単だ。この世界は海神に支配された世界だ。
 つまり石ころが貴重品になる世界だ。

「さーて、この魔法で出した岩がいくらになるかな♪」

 潮風を頬に感じながら、俺の風魔法で船は順調に進んでいる。
 船に戻ると船長の爺さん『トプソン』に命じて、首都船を目指した。
 目指す首都船の場所は、旅人の『異世界地図』のスキルで分かる。
 方位磁石要らずだ。

「ジェネシス様、あちらをご覧ください。『人魚』がいます」
「人魚だと?」

 甲板の縁でのんびりしていると、船長が近づいてきて遠くの海面を指差した。
 魔眼を発動させて、望遠鏡のようにして遠くを確認した。

(あれが人魚? 金髪の白人女にしか見えないぞ)

 海面から覗く女の顔は人間にしか見えない。
 歳は三十四前後で、俺を見て微笑んでいるように見える。
 それにしても爺さん。目が良過ぎるな。百八十メートルはあるぞ。

「お気をつけくださいませ。奴らは三十から四十の集団で船を襲います。海に引き摺り込まれたら終わりです。縁は特に危険です。ささっ、安全な船長室に移動を」
「……」

 船長が自然に誘うが、その部屋が一番危険そうだ。絶対に入らない。

「ちょうどいい、退屈していたところだ。人魚で遊ばせてもらおうか」
「ジェネ様、危険です‼︎ おやめください‼︎」
「よっと」

 船の縁に立つと、爺さんを無視して海に飛び込んだ。
 どさくさに紛れて、名前を省略する爺さんが心底気持ち悪い。

(あー海は久し振りだけど、冷たくて気持ち良いなぁ~♪)

 目を閉じると海を全身で感じた。
 このまま人魚なんて忘れて、心地良い眠りに落ちたいものだ。
 まあ、それはやめておくか。まだまだ死ぬには早過ぎる。
 さて、俺という極上の餌に雌人魚は何人やって来るかな?

『ハァガアアア‼︎』

 余裕満々で目を開けると、鋭い歯が並んだ口を大きく開けた人魚が見えた。
 腰から下は魚の鱗で覆われた一本の足だ。足先に大きな鰭が付いた足だ。

(あーこれは駄目だな)

 おっぱいも一応あるが、おっぱいが鱗で覆われている。
 女なら誰でもいい訳ない。あんなおっぱい揉みたくない。

 ♦︎
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