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異世界旅行編

戻らないものがある

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「ハァハァ! ここにいたか、魔王! 勝手に私の街を動き回るな!」
「おっと……」

 敵兵士の無事な方『コスン』に話しを聞いていると、王子が兵士達と遅れてやってきた。
 敵の女兵士が逃げそうな場所は、ここから一番近い占領した町『ベルホード』らしいぞ。
 まあ、たどり着くのは無理だけどな。

「お前はいつも遅いな。だが、ちょうどいい。良い知らせと良い知らせの二つがある。どちらから聞きたい?」
「話があるなら早く話せ。良いか悪いかは私が決める」
「フッ、欲張りな奴め♪ では、話してやる。七大悪魔はこの街を占領できるとしか思っていなかったらしい。だから、敗北した場合はどうすればいいのか誰も知らないらしい」

 魔王に対して口の利き方が悪いが、住民達の前だ。お前の気持ちを察してやる。
 兵士に聞き出したというより、勝手にペラペラ話した情報を教えてやった。

「つまり指揮系統が機能していないという事か……という事はそれぞれがバラバラに逃亡するはずだ。急いで近隣の町や村に避難指示を出さなくては!」

 今回は早過ぎるな。両手を地面につけると王子に言った。

「その必要はない。誰も逃げられなくする」
「ぐぅああ⁉︎ 地震か‼︎」
「大きいぞ、何かに掴まれ‼︎」

『創造主・地形変化』を使用した。
 地面が震え始めると、この街を囲むように巨大な岩山が地面から姿を現していく。
 山というよりは壁に近い。登るにはかなり苦労する山だ。

「これで街の外に出るのは難しくなった。もちろん入るのもな」

 街を完全封鎖してやった。しばらくは敵も味方も誰も逃げられない。
 もちろん俺からだ。さて、次は街の復興を手助けしてやろう。
 もちろん無料だが、無償とはいかないぞ。身体で払ってもらおうか。

 ♦︎

「魔王様、こちらをどうぞ!」
「ああ、悪いな」
「いえいえ、命の恩人様ですから!」

 王子に集めされるよりも住民に頼んだ方が早かった。紙袋に入った赤い蜜柑を渡された。
 魔物と悪魔、敵兵士の残党狩りは王子と兵士に任せて、治療と仮住まい建設を優先した。
 そのお陰で住民達の支持率は、今や完全に俺が王子を上回っている。

「もう魔王様がいなかったら、この『エルンディアの街』も終わりでしたよ」
「そうですそうですよ♪ もう魔王様に新しい国王様になって欲しいぐらいです」
「やめてくれ。国王になりたくて助けた訳じゃない。それにロワ王子も頑張っているじゃないか」
「あんなのただ若いだけですよ。あの褐色の肌も王妃似で、他国の血が半分混ざっている半血王子ですよ。だから、半人前なんですよ」

 王子の悪口を白豚オバサンに聞かされるが、確かに褐色肌の住民は少ない。
 元々他所者扱いの王子なら、俺が頑張らなくても、位の高いこの国の人間から地位を奪われるのも時間の問題だな。
 だとしたら、仲良くする必要もないか。好き勝手にやらせてもらうとしよう。

 住民達との会話を適当に切り上げると、街の探索を再開した。
 良さそうな魔物の死体からは皮を剥ぎ取り、可愛い少女には水と食糧を与え、両手でしっかりと身体を揉みながら、怪我しているところがないか診察した。
 どの娘もお股がパックリと割れていたが、それは生まれつきだと恥ずかしそうに言っていた。
 俺は魔物の王だから、人間の身体に詳しくない。これは仕方のない事故だ。

「ぁぁ……ぁっ、ぅ~~っ……ぅぅぁ♡」

(ふぅー、魔王プレイ最高♡)

 少女の穴を合法的に弄くり回す。これは治療だから何も問題ない。
 弄くり回してイかせるだけだから何も問題ない。

「どこも異常はないようだ。安心していいよ。これはお父さんとお母さんの分だ。また欲しい時はいつでも貰いに来ていいからね」
「ハァハァ! ハァハァ! は、はい、魔王様……あ、ありがとう、ございます……」

 岩ボトルに水を入れて、四角い木机に三本置いた。
 診察に十五分もかかってしまったが、それは俺の所為ではない。
 この指の所為だ。黄金の指を酷使し過ぎてしまった。
 この街は可愛い少女が多かった。俺を英雄として好意の視線で見つめる少女も多かった。
 だったら仕方ない。男には絶対に負けられない戦いがあるように、逃げられない戦いもあるんだ。

「さてと、そろそろ出したいな」

 両親が復興作業中の少女の家から出ると、次の予定を考えた。
 HPが限界まで溜まっている。早くHPを消費しないと命に関わる。
 潜伏中の女兵士を捕まえたという知らせはない。まだ上手く逃げているようだ。
 見つからないようなら、船に帰って、生意気黒髪ツインに天罰を与えるしかない。
 今なら三回連続で与えられる自信がある。

 だが、真なる男ならその辺の女で妥協しては駄目だ。黒髪ツインとはいつでもヤれる。
 少女十七人を指弄りで我慢して溜めたHPを使う相手は、それなりの相手じゃないと駄目だ。

 俺の男珍宝が言っている。
『この程度の小娘に我を使うとは舐められたものだ。舐められ過ぎて、人間としても舐められるのがくせになったのか?』……確かにその通りだ。
 男珍宝を舐められるのは良いが、男として舐められるのは駄目だ。

(よし、次は舐めるか。指疲れたし)

 ♦︎

「おお、魔王様! ちょうどいいところに! こちらに来てください!」
「おいおい、俺は忙しんだぞ」

 女兵士が見つからない。そろそろ帰りたいのに住民に捕まってしまった。
 俺を仮設マンションに連れ込みたいようだが、まさかサプライズパーティーか?
 街が破壊されてから、半日も経っていないのに暢気な奴らだ。
 ……下着の女は用意しているだろうな?

「おい、皆んな! 魔王様を連れて来たぞ! これで身元が分かりやすくなった!」
「「「おお! 本当だ! 魔王様だ!」」」
「……」

 どうやらエッチなパーティーではないらしい。
 案内された部屋には床一面に動かない人間が寝かされていた。
 このマンションは九階建てだ。全百九十室満室だとすると、三千人近くいる事になる。
 ちょっと死体の数が多過ぎないか? 俺、結構な人数助けたぞ。

「ん? この革鎧……敵の兵士が混じっているぞ」

 死体安置所にされるのは別にいいが、寝ている男に問題がある。この革鎧は敵兵士が着ていた物だ。
 敵と住民を一緒に寝かせると、気分を悪くする住民もいるはずだ。

「ええ、ですが、鎧だけでは判断できないので、数日は焼かずに保管しようかと……」
「なるほど。確かに敵のフリした味方かもしれないからな。軽率に処分は出来ないか」

 人口が多いと薄い人間関係は何処も同じだな。
 俺は近所の年頃の女は全員名前と顔写真を撮っているぞ。
 好みのセクシー女優の動画に顔を重ねるだけで、最高の即席おかずが完成する。

「そこで魔王様に損傷の激しい遺体を綺麗にしてもらおうかと。流石に臭いが……」

 住民達は布で鼻と口を覆っているが、そのマスクには限界がある。
 現に臭いに負けて不快そうな顔になっている。

「言いたい事は分かった。この部屋は不衛生で血の臭いで気分が悪くなる。扉を閉めても、そのうち外に漏れ出るだろう」
「その通りです。とりあえず遺体は一階に集めています。階段を上がって運ぶのは大変なので……どうか魔王様のお力をお貸しください」

 この死体愛好家達の事情は分かった。確かに綺麗な死体の方が吐かずに見ていられる。
 特に知り合いなら、顔が半分潰れていたり、臓物飛び出た姿なんか見たくないだろう。

「やれやれ、男の死体ばかりだな」

 住民達の願いを聞いて、死体の修復作業を始めた。
 若い女の死体ならやる気が出るのに、面倒な作業を引き受けたものだ。
 こうなったら先に女の死体があるのか確認したい。
 綺麗に修復して、今日は冷たい肉布団でお休みしたい。

「…………」

 ここにいたのかお前。道理で見つからないはずだ。
 誰も死んでいる人間は探さないだろうからな。

 死体部屋の一つを開けると、俺の探し人を見つけた。
 赤い胸鎧に赤い手甲、薄茶色の髪を頭の上でツインにした女だ。
 白い肌で歳は十五か十六か。猫と猿の中間のような小さな幼い顔をしている。
 遠目で見た時は二十ぐらいだと思ったが、こんな小娘だとは思わなかった。

「まったく……若さと命を無駄使いしやがって。死ぬなら俺に抱かれた後に気持ちよく死ね」

 女の死因は見れば分かる。女の胸に手を当てると回復魔法を使った。
 おそらく事故死だ。腹から下が無くなっている女に失った身体が戻っていく。
 腹、尻、太もも、脛、足の爪まで綺麗に戻った。だが、戻らないものがある。
 それが『命』だ。

 ♦︎
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