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第3章

第94話⑧プロットポイント②

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 扉を閉めると左右に一列、規則正しく並んでいる太い柱に、青い炎が蝋燭のように灯しり始めた。
 広さは充分だ。縦が70メートルと長く、横も25メートルぐらいはある。
 正面奥には数段の階段と、階段上には玉座と呼ばれる石椅子が一つ置かれている。

「倒せますよね?」

 チラッと俺を見るとエルシアが聞いてきた。
 ボスも現れてないのに倒せるとは言えないが、「当たり前だろ」と答えるしかない。

「だったら頑張ってください。私は外で待ってます」

 おい、出られるのかよ。閉めたはずの扉を普通に開いて、エルシアが外に出ていった。
 でも、外に逃げられるなら安心だ。本当にヤバイ時は四人を連れて逃げてやる。
 四つ目の職業とか、それ以外の凄い何かが手に入るとしても、妻と命よりも価値があるものはない。

『グゥホホホホ!』
「お、お前は⁉︎」

 待っていると玉座の後ろの壁から半透明のモンスターが出てきた。
 笑うコイツの姿には見覚えがある。【オールドロード老いた支配者】だ。
 妹を永遠に眠らせて、俺に強制的に童貞を捨てさせて、その後にも妹の仲間二人を襲わせた悪辣非道なモンスターだ。一体今度は誰を襲わせるつもりなんだ。

『”アセンブル集まれ〟』
『ゔがああぁ!』
「ぐぅっ!」

 俺みたいだ。リッチロードが呪文を唱えると、持っている杖の宝珠が不気味に黒く輝いた。
 すぐに壁や床から大量の人の形をした黒い液体が出てきた。

『”ユニオン合体〟』

 そして、次の呪文を唱えると、その黒い液体達が一つにくっ付き始めた。

「なるほど。【死霊術】か」

 死霊術——聞いた事がある。死んだ魂を操る禁じられた魔法だ。
 まあ、禁じられている以上に使える人がいない。
 俺も見るのは初めてだ。

『グゥホホホホ! 【黒狼死竜=デスアイズブラックドラゴン】』
『シィギャアアアアッ‼︎』

 死霊術によって完成した漆黒のモンスターが産声を上げた。
 六本の鋭い爪の生えた脚、前脚には布のような翼もある。
 頭には角が二本、身体は竜と狼のハーフのようだ。
 素早さと強靭さを兼ね揃えたその見た目は、まさに伝説のモンスター【悪魔】と呼ぶに相応わしい。

「で? これで準備完了か?」
『ウゴォ?』

 だが、悪魔だろうと関係ない。やれやれ、これが本気みたいだ。
 聞いてみたけど、リッチロードの反応が薄い。
 今の俺が何なのか知らないらしい。だったら教えてあげないと駄目だ。
 黒狼死竜の左前脚を狙って唱えた。

「”ウルトラヒール〟」
『グギャアアア‼︎』
『——ッグ⁉︎』

 黄金に光に包まれた左前脚が消し飛んだ。
 そっちが悪魔なら、俺は天使だ。推定LV300超えの超天使だ。
 俺を倒したければ、神様、いや、邪神様でも連れて出直して来い。

 もちろん、そんな事は絶対にさせない。
 黒狼死竜の残り五本の脚に次々にウルトラヒールをかけて、消し飛ばしていく。

 脚を失った黒狼死竜が床に崩れ落ちた。その黒狼竜に堂々と歩いて近づいていく。
 右拳に黄金の光を纏うと、凶悪な顔に向かって振り抜いた。

「邪魔だ!」
『グガアアア‼︎』

 殴られた顔の半分が消し飛んだ。けれども、流石は悪魔だ。
 殴り飛ばされずに、その場で耐えている。
 トドメの一発をもう何発か欲しいようだ。だったらくれてやる。

「おらっ!」

 残った左顔半分に右拳を再び叩き込んだ。

『ズガァアアァァア‼︎』

 産声に続いて、断末魔の叫びを上げると、黒狼死竜の巨体が水のように飛び散って消えた。
 どうやら俺は強くなり過ぎたようだ。もうボスも雑魚も同じだ。

「待たせたな。すぐに地獄に送ってやる」

 玉座の前の階段まで行くと、玉座の前に立つリッチロードを見上げて言った。

『グゥハハハ。愚かな人間め。お前はただの操り人形だ』
「ああ、そうかよ!」

 喋れるみたいだけど、喋る事は何一つない。
 腹に向かって右拳を、キツイ一発を打ち込んだ。

『グハァ……‼︎』

 リッチロードが玉座に殴り飛ばされ、腹に風穴を開けて、玉座に崩れ座って虫の息だ。
 次はトドメの一発を頭に打ち込んでやる。これでお前との関係は終わりだ。
 そう思っていたのに、

『ニィィ、愚かな。”ユニオン〟』
「何だ、これは……⁉︎」

 リッチロードの身体が黒い液体になって弾けると、俺の身体の中に入ってきた。

『良い身体だ。私の肉人形として、たっぷり使わせてもらうとしよう』
「ぐぅぅぅ、この死に損ないが!」

 頭の中に直にロードの声が聞こえてきた。
 これがマンドレイクの狙いだったみたいだ。
 ボス部屋なのに開いて逃げられる扉。この時点でおかしかった。
 コイツはボスだが、ボスじゃない。モンスターじゃなくて、生きている何かだ。

 そして、俺は生け贄だ。コイツと強制ユニオンさせられる生け贄だ。

「巫山戯んな‼︎ 俺の身体に入れてんじゃねえよ‼︎」

 俺は入れるの専門で、入れられるのは絶対にお断りだ。
 たまに妻に入れられるけど、ジジイに入れられるのは我慢できない。
 頭の中を掻き回される痛みを堪えて唱えた。

「”ウルトラヒール〟‼︎」
『グギャアアアアア‼︎』

 身体の中心から湧き上がった黄金の光が、俺の中に侵入した変態を追い出した。
 追い出された変態が空中で弾けて消えていった。
 変態が消えると、部屋の青い蝋燭も消えてしまった。

「はぁはぁ! 変態め!」

 なんか身体のあっちこっちが気持ち悪いが、変態を成仏させてやった。
 階段に座り込むとアイテム鞄から水筒を取り出して飲んだ。
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