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第3章
第79話⑤ピンチポイント①
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さて、目指すはAAA級ダンジョン【妖岩絶歌の洞窟】だ。
一般的な推奨挑戦レベルは80~90ぐらいは必要だ。
でも、旧コンドミニアム市街地と同じ強さの隠しボスがいるなら、120ぐらいは欲しい。
俺と同じように調査に強制参加させられている男冒険者達のレベルに期待したい。
もしも80ぐらいの集団なら、あの時のリラと同じで役立たずになる。
「あんっ、あんっ、凄いです!」
「エルシア様、もうすぐ着くと思います」
荷台の中のエルシア様に報告した。
何故だか、影俺とやりまくって、本物をまったく相手にしてくれない。
まあ、感覚共有で気持ち良さは共有できている。
間接的だけど、俺もやっているようなものだ。
「はぁはぁ、ご苦労様。まさか、あんたが【キュラス】を倒しているなんて予想外よ。お陰で一ヶ所向かう必要がなくなったわ」
「いえ、超雑魚を倒しただけです」
しばらく待っていると、カーテンを捲って、荷台の中から乱れたエルシア様が顔だけ出してきた。
戦力を知りたいと言われたので、黒大剣を出すと「何で、これ持っているの⁉︎」と凄く驚いていた。
「なら、ここの奴も倒していいわよ。仲間にするつもりだったんだけど、どうせ遅かれ早かれ殺さないといけないから」
「かしこまりました」
「あんっ、だめですよぉ。そんなところに入れちゃあ!」
ご主人様に対して、執事のように礼儀正しく頭を下げて了承した。
すぐにご主人様が荷台の中に引っ込んでしまった。
多分、これは我慢タイムだ。洞窟の隠しボスを倒したら、今度はご褒美タイムが待っている。
そしたら、今度は影俺が御者台で、俺が荷台になる。これは頑張るしかない。
「あれは……」
渓流洞窟と呼ばれるのは川の近くにあるダンジョンだからだ。
岩山を削られて作られた道を進んでいくと、洞窟の入り口前に野営地が作られていた。
お揃いの白い制服を着た男女数名は研究所の職員で間違いない。
「エルシア様、研究所の職員がいます。冒険者らしい服装って出来ますか?」
流石に町娘みたいな服装の女の子をダンジョンの中に連れて行けない。
カーテンを少しだけ捲って、中のエルシア様に聞いてみた。
「冒険者らしいって……ちょっと待ってて」
ちょっとどころか何分でも待つ。少し困った感じだったけど、何か思いついたみたいだ。
服装がコロコロ変わっていくと、最後に魔法使いみたいな服装に落ち着いた。
「どう?」
「おお! 素敵です! 最高です!」
金の刺繍がされた、白と黒の身体にピッタリと張り付くドレスに高そうな漆黒のフード付きのローブ。
足には黒いブーツを履いていて、手には状態異常魔法の杖を持っている。
どう見ても可憐な貴族令嬢魔法使いだ。
「お前はさっさと戻れ!」
服装の問題は解決したので、これで安心して野営地に入れる。
影俺を急いで戻すと、馬車が五台止まっている場所があったので、そこに愛馬を止まらせた。
「どうどう」
「ご苦労様です。調査に参加される冒険者の方ですね?」
「ああ、その通りだ。ここで合っているか?」
馬車を止めると制服女性が聞きに来た。
研究所から渡された地図と証明書を差し出して、こっちも聞いてみた。
「はい、間違いありません。残念ながら調査が進行していない状況でして……」
すると、証明書を確認した後に暗い顔で、申し訳なさそうに言ってきた。
「そうなのか?」
「はい、何しろ現場を指揮しているのが、あのトン爺さんなので……」
「ああ、前科持ちだからな。あんた達も苦労しているな」
「はい……」
ここにトンでも爺さんがいるみたいだ。それも現場を指揮するぐらい偉いみたいだ。
でも、旧市街地で長年ゴミ拾いしていた人物に指揮が務まるとは思えない。
こりゃー数年単位の調査になる前に、さっさと隠れボスを俺が引き摺り出すしかない。
ほぼやる気のない制服職員達の野営地を通り抜けて、エルシア様とダンジョンに入った。
ここのモンスターは非生物系の岩石なので、状態異常魔法の杖は役に立たない。
麻痺も毒も睡眠も効かないから、ここは俺が倒すしかない。
俺の硬い拳と熱い想いが岩をも砕くという事をエルシア様に証明する。
『ガフッ!』
「【ロックサイ】か」
ダンジョンに入って最初に現れたのは、鋼鉄の太いツノを額に一本生やした、黒い岩石の大豚だった。
あのツノなら鉄の盾でも軽々貫通しそうだ。もちろん人間だって軽々殺せる。
「”ウルトラソウル〟——エルシア様は俺の後ろに」
右拳に暗黒拳を溜めると、エルシア様を庇うように前に立った。
我ながら超カッコいいと思う。
「待ちなさい。倒すなら粉々にせずに、魔法石だけを一撃で貫いて。壊れた石像は使えないから」
「……承知しました」
すると、無理難題を言ってきた。
どうやら超カッコいいだけじゃ足りないらしい。超超カッコいい姿が見たいらしい。
正直やりたくないが、男ならやるしかない。やりたいなら、やりたくない事もやらないといけない。
「くっ、出来るのか⁉︎」
黒大剣で突き刺すと威力がデカ過ぎる。確実に真っ二つになる。
死突を小さく飛ばすという方法もありそうだけど、そんな微妙な手加減できるはずがない。
やるならこれだ。人差し指の一点にウルトラソウルで強化した暗黒を纏わせた。
指を使った【死突】だ。
間違いなく突き指しそうだけど、【神秘の守り】で指を一応守ってみた。
それに折れた時は治せば問題ない。俺ならやれる。男ならやるしかない。
一般的な推奨挑戦レベルは80~90ぐらいは必要だ。
でも、旧コンドミニアム市街地と同じ強さの隠しボスがいるなら、120ぐらいは欲しい。
俺と同じように調査に強制参加させられている男冒険者達のレベルに期待したい。
もしも80ぐらいの集団なら、あの時のリラと同じで役立たずになる。
「あんっ、あんっ、凄いです!」
「エルシア様、もうすぐ着くと思います」
荷台の中のエルシア様に報告した。
何故だか、影俺とやりまくって、本物をまったく相手にしてくれない。
まあ、感覚共有で気持ち良さは共有できている。
間接的だけど、俺もやっているようなものだ。
「はぁはぁ、ご苦労様。まさか、あんたが【キュラス】を倒しているなんて予想外よ。お陰で一ヶ所向かう必要がなくなったわ」
「いえ、超雑魚を倒しただけです」
しばらく待っていると、カーテンを捲って、荷台の中から乱れたエルシア様が顔だけ出してきた。
戦力を知りたいと言われたので、黒大剣を出すと「何で、これ持っているの⁉︎」と凄く驚いていた。
「なら、ここの奴も倒していいわよ。仲間にするつもりだったんだけど、どうせ遅かれ早かれ殺さないといけないから」
「かしこまりました」
「あんっ、だめですよぉ。そんなところに入れちゃあ!」
ご主人様に対して、執事のように礼儀正しく頭を下げて了承した。
すぐにご主人様が荷台の中に引っ込んでしまった。
多分、これは我慢タイムだ。洞窟の隠しボスを倒したら、今度はご褒美タイムが待っている。
そしたら、今度は影俺が御者台で、俺が荷台になる。これは頑張るしかない。
「あれは……」
渓流洞窟と呼ばれるのは川の近くにあるダンジョンだからだ。
岩山を削られて作られた道を進んでいくと、洞窟の入り口前に野営地が作られていた。
お揃いの白い制服を着た男女数名は研究所の職員で間違いない。
「エルシア様、研究所の職員がいます。冒険者らしい服装って出来ますか?」
流石に町娘みたいな服装の女の子をダンジョンの中に連れて行けない。
カーテンを少しだけ捲って、中のエルシア様に聞いてみた。
「冒険者らしいって……ちょっと待ってて」
ちょっとどころか何分でも待つ。少し困った感じだったけど、何か思いついたみたいだ。
服装がコロコロ変わっていくと、最後に魔法使いみたいな服装に落ち着いた。
「どう?」
「おお! 素敵です! 最高です!」
金の刺繍がされた、白と黒の身体にピッタリと張り付くドレスに高そうな漆黒のフード付きのローブ。
足には黒いブーツを履いていて、手には状態異常魔法の杖を持っている。
どう見ても可憐な貴族令嬢魔法使いだ。
「お前はさっさと戻れ!」
服装の問題は解決したので、これで安心して野営地に入れる。
影俺を急いで戻すと、馬車が五台止まっている場所があったので、そこに愛馬を止まらせた。
「どうどう」
「ご苦労様です。調査に参加される冒険者の方ですね?」
「ああ、その通りだ。ここで合っているか?」
馬車を止めると制服女性が聞きに来た。
研究所から渡された地図と証明書を差し出して、こっちも聞いてみた。
「はい、間違いありません。残念ながら調査が進行していない状況でして……」
すると、証明書を確認した後に暗い顔で、申し訳なさそうに言ってきた。
「そうなのか?」
「はい、何しろ現場を指揮しているのが、あのトン爺さんなので……」
「ああ、前科持ちだからな。あんた達も苦労しているな」
「はい……」
ここにトンでも爺さんがいるみたいだ。それも現場を指揮するぐらい偉いみたいだ。
でも、旧市街地で長年ゴミ拾いしていた人物に指揮が務まるとは思えない。
こりゃー数年単位の調査になる前に、さっさと隠れボスを俺が引き摺り出すしかない。
ほぼやる気のない制服職員達の野営地を通り抜けて、エルシア様とダンジョンに入った。
ここのモンスターは非生物系の岩石なので、状態異常魔法の杖は役に立たない。
麻痺も毒も睡眠も効かないから、ここは俺が倒すしかない。
俺の硬い拳と熱い想いが岩をも砕くという事をエルシア様に証明する。
『ガフッ!』
「【ロックサイ】か」
ダンジョンに入って最初に現れたのは、鋼鉄の太いツノを額に一本生やした、黒い岩石の大豚だった。
あのツノなら鉄の盾でも軽々貫通しそうだ。もちろん人間だって軽々殺せる。
「”ウルトラソウル〟——エルシア様は俺の後ろに」
右拳に暗黒拳を溜めると、エルシア様を庇うように前に立った。
我ながら超カッコいいと思う。
「待ちなさい。倒すなら粉々にせずに、魔法石だけを一撃で貫いて。壊れた石像は使えないから」
「……承知しました」
すると、無理難題を言ってきた。
どうやら超カッコいいだけじゃ足りないらしい。超超カッコいい姿が見たいらしい。
正直やりたくないが、男ならやるしかない。やりたいなら、やりたくない事もやらないといけない。
「くっ、出来るのか⁉︎」
黒大剣で突き刺すと威力がデカ過ぎる。確実に真っ二つになる。
死突を小さく飛ばすという方法もありそうだけど、そんな微妙な手加減できるはずがない。
やるならこれだ。人差し指の一点にウルトラソウルで強化した暗黒を纏わせた。
指を使った【死突】だ。
間違いなく突き指しそうだけど、【神秘の守り】で指を一応守ってみた。
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