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第2章
第48話⑦ピンチポイント②
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「やはり伝説は本当じゃったか……はっ! お前達、早く逃げるぞ‼︎ あれは人間が倒せる相手じゃない‼︎」
三人で呆然と現れた封印されし武器【ウェポンキメラ】を見ていたら、トン爺さんが叫んだ。
確かにその通りだ。同じA級ダンジョンのボスだとしても、【ヘビーリザード】とは次元が違う。
明らかに【AAAダンジョン】のボスレベルの強さを持っている。
最低でもLV90の七人以上パーティで相手しないと倒せない恐るべき強敵だ。
「逃げる? 何、馬鹿な事言ってんのよ。私がアイツ倒して、その伝説になってあげるわよ!」
「よせ、やめろ‼︎ 死にたいのか‼︎」
それなのにリラが軽く笑うと、ウェポンキメラに向かって走った。
トン爺さんの止める声を無視して、まったく止まらない。
「くっ!」
もう戦うしかない。急いでリラの後に続いた。
逃げるにしても、リラを置いて逃げるなんて出来ない。
「オラアアアッ‼︎」
オーガ四匹が集まったような太い左前脚に、リラの強力な右拳が炸裂した。
けれども、
「ぐぅぅぅ!」
「無駄じゃ。鉱山を相手にしているようなものじゃ。素手で山は壊せぬ……」
鉄の延べ棒を金槌で激しく打ったような音が鳴り響いただけだった。
左前脚はピクリとも動かない。リラの拳が止まっている。
延べ棒は火で熱さないと、鍛治師でも武器には変えられない。
『ギギギィ……』
「ヤバイ‼︎ ”ジャスト〟‼︎」
初見の相手だけど、何をするのかすぐに分かった。左前脚が軽く浮いて内側に曲げられた。
すぐさまリラに向かって、邪魔だと言わんばかりに外側に振り払われた。
「がはあ……‼︎」
緑色の光に包まれたリラの身体が吹き飛んだ。
17メートルは蹴り飛ばされると、そのまま地面に落下。地面を激しく転がりまくる。
そして、7メートルほど転がると、転がりながら立ち上がった。
「はぁはぁ! はぁはぁ! クソ馬の分際で、よくもやったわね!」
「リラ、待って! 二人でやらないと勝てない!」
ジャストヒールが間に合ったのに、相当なダメージを受けている。
立ち上がったけど、その場から動けずに膝を曲げてしまった。
軽減できたのは受けるダメージの半分以下がいいところだ。
「二人ともやめるんじゃ! 今ので分かったじゃろ! LV70と僧侶で勝てる相手じゃない! 早く瓦礫に隠れながら逃げるんじゃ! 命を粗末にするんじゃない!」
「ごちゃごちゃうるさいわね! 逃げたきゃ一人で逃げなさいよ! こっちはコイツ倒さないと明日には死ぬかもしれないのよ! 本気で命懸けている人間に、命語ってんじゃないわよ!」
「リラぁ……」
リラが命を懸けてもいいほどに、俺の事を思っていたなんて知らなかった。
必死に逃げるように説得するトン爺さんに向かって、リラが思いを爆発させた。
「イ、イカれておる。だったら好きにしろ! ワシは逃げるぞ! 恨むなら自分を恨むんだな!」
もう何を言っても無駄だと、トン爺さんが逃げ出した。
リラと結婚してなかったら、昔の俺だったら、きっと間違いなく同じ事をしている。
でも、今の俺は違う。今の俺なら愛する人を置いて逃げたりしない。
「フンッ。一発で駄目なら、壊れるまで殴り続けるだけよ。覚悟しなさい、私はしぶといわよ」
「リラ、もういいから」
リラの前に立ち塞がると、戦わないようにお願いした。
すると、
「何がいいのよ! アイツ、倒せば上級職になれるかもしれないのよ! だったら倒さないと駄目じゃない! あんたの回復があれば倒せるわよ! 簡単に諦めるんじゃないわよ!」
涙を滲ませて、リラが強く言ってきた。
それだけで充分だ。リラの気持ちは充分に分かった。
「諦めてないよ」
「……えっ?」
「リラは安全な所で見ていて。アイツは俺一人で倒すから」
傷つくのは俺一人で充分だ。
回れ右してリラに背中を向けると、大切なリラを傷付けたウェポンキメラを睨んだ。
「む、無理よ! そんなの危険よ! 二人でやらないと駄目よ!」
「いいから俺を信じて。それに単独で倒さないと意味がないんだ。大丈夫。リラを未亡人にするつもりはないから。生きて帰れたら、いっぱい馬車で子作りしようね」
「馬鹿ぁ……死んだら絶対に許さないんだからぁ……」
「大丈夫、死ぬのはリラとエッチしている時だけって決めているから」
聖剣も死亡フラグも今は立てるつもりはない。両拳に紫のアンチポイズンヒールを纏わせた。
確かに一発で倒せるとは思ってない。でも、百発も殴れば脚の一本ぐらいは折れると思っている。
逃げるつもりはないけど、二本も折れば逃げても追いかけて来れない。
「チャッチャッと倒させてもらうぞ。妻が心配しているからな」
『ギギギィ……』
ウェポンキメラの正面に立つと、錆びた金属が擦れるような音を鳴らして、ゆっくりと向かってきた。
動きは遅い。あるのは圧倒的な重量と頑丈な身体。それと力だけだ。
懐に入り込んで、殴り壊す。俺の拳とお前の脚、どっちが先に壊れるか勝負だ。
三人で呆然と現れた封印されし武器【ウェポンキメラ】を見ていたら、トン爺さんが叫んだ。
確かにその通りだ。同じA級ダンジョンのボスだとしても、【ヘビーリザード】とは次元が違う。
明らかに【AAAダンジョン】のボスレベルの強さを持っている。
最低でもLV90の七人以上パーティで相手しないと倒せない恐るべき強敵だ。
「逃げる? 何、馬鹿な事言ってんのよ。私がアイツ倒して、その伝説になってあげるわよ!」
「よせ、やめろ‼︎ 死にたいのか‼︎」
それなのにリラが軽く笑うと、ウェポンキメラに向かって走った。
トン爺さんの止める声を無視して、まったく止まらない。
「くっ!」
もう戦うしかない。急いでリラの後に続いた。
逃げるにしても、リラを置いて逃げるなんて出来ない。
「オラアアアッ‼︎」
オーガ四匹が集まったような太い左前脚に、リラの強力な右拳が炸裂した。
けれども、
「ぐぅぅぅ!」
「無駄じゃ。鉱山を相手にしているようなものじゃ。素手で山は壊せぬ……」
鉄の延べ棒を金槌で激しく打ったような音が鳴り響いただけだった。
左前脚はピクリとも動かない。リラの拳が止まっている。
延べ棒は火で熱さないと、鍛治師でも武器には変えられない。
『ギギギィ……』
「ヤバイ‼︎ ”ジャスト〟‼︎」
初見の相手だけど、何をするのかすぐに分かった。左前脚が軽く浮いて内側に曲げられた。
すぐさまリラに向かって、邪魔だと言わんばかりに外側に振り払われた。
「がはあ……‼︎」
緑色の光に包まれたリラの身体が吹き飛んだ。
17メートルは蹴り飛ばされると、そのまま地面に落下。地面を激しく転がりまくる。
そして、7メートルほど転がると、転がりながら立ち上がった。
「はぁはぁ! はぁはぁ! クソ馬の分際で、よくもやったわね!」
「リラ、待って! 二人でやらないと勝てない!」
ジャストヒールが間に合ったのに、相当なダメージを受けている。
立ち上がったけど、その場から動けずに膝を曲げてしまった。
軽減できたのは受けるダメージの半分以下がいいところだ。
「二人ともやめるんじゃ! 今ので分かったじゃろ! LV70と僧侶で勝てる相手じゃない! 早く瓦礫に隠れながら逃げるんじゃ! 命を粗末にするんじゃない!」
「ごちゃごちゃうるさいわね! 逃げたきゃ一人で逃げなさいよ! こっちはコイツ倒さないと明日には死ぬかもしれないのよ! 本気で命懸けている人間に、命語ってんじゃないわよ!」
「リラぁ……」
リラが命を懸けてもいいほどに、俺の事を思っていたなんて知らなかった。
必死に逃げるように説得するトン爺さんに向かって、リラが思いを爆発させた。
「イ、イカれておる。だったら好きにしろ! ワシは逃げるぞ! 恨むなら自分を恨むんだな!」
もう何を言っても無駄だと、トン爺さんが逃げ出した。
リラと結婚してなかったら、昔の俺だったら、きっと間違いなく同じ事をしている。
でも、今の俺は違う。今の俺なら愛する人を置いて逃げたりしない。
「フンッ。一発で駄目なら、壊れるまで殴り続けるだけよ。覚悟しなさい、私はしぶといわよ」
「リラ、もういいから」
リラの前に立ち塞がると、戦わないようにお願いした。
すると、
「何がいいのよ! アイツ、倒せば上級職になれるかもしれないのよ! だったら倒さないと駄目じゃない! あんたの回復があれば倒せるわよ! 簡単に諦めるんじゃないわよ!」
涙を滲ませて、リラが強く言ってきた。
それだけで充分だ。リラの気持ちは充分に分かった。
「諦めてないよ」
「……えっ?」
「リラは安全な所で見ていて。アイツは俺一人で倒すから」
傷つくのは俺一人で充分だ。
回れ右してリラに背中を向けると、大切なリラを傷付けたウェポンキメラを睨んだ。
「む、無理よ! そんなの危険よ! 二人でやらないと駄目よ!」
「いいから俺を信じて。それに単独で倒さないと意味がないんだ。大丈夫。リラを未亡人にするつもりはないから。生きて帰れたら、いっぱい馬車で子作りしようね」
「馬鹿ぁ……死んだら絶対に許さないんだからぁ……」
「大丈夫、死ぬのはリラとエッチしている時だけって決めているから」
聖剣も死亡フラグも今は立てるつもりはない。両拳に紫のアンチポイズンヒールを纏わせた。
確かに一発で倒せるとは思ってない。でも、百発も殴れば脚の一本ぐらいは折れると思っている。
逃げるつもりはないけど、二本も折れば逃げても追いかけて来れない。
「チャッチャッと倒させてもらうぞ。妻が心配しているからな」
『ギギギィ……』
ウェポンキメラの正面に立つと、錆びた金属が擦れるような音を鳴らして、ゆっくりと向かってきた。
動きは遅い。あるのは圧倒的な重量と頑丈な身体。それと力だけだ。
懐に入り込んで、殴り壊す。俺の拳とお前の脚、どっちが先に壊れるか勝負だ。
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