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第2章

第34話④プロットポイント①

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「んっ、ちゅっ、ちゅっ」

 違ったぁー。キスされるパターンのやつだった。
 リラの柔らかい唇が押し当てられて、濡れた舌が中に入ってきた。

「んっ、んっ、んっ」

 嗚呼、気持ち良い。
 やめた方がいいと頭では分かっているのに、唇と舌が勝手に動いてしまう。
 リラの唇を唇で挟んで、お互いの舌先や舌の真ん中を絡ませてしまう。

「はぁはぁ、はぁはぁ、エッチ」
「ええっ⁉︎」

 どっちが。唾液が糸が引くぐらいキスした後にリラが唇を離して言ってきた。
 押し倒されて、無理矢理キスされた被害者は俺だ。

「んちゅ、ちゅっ、ちゅっ」

 しかも、文句を言った口ですぐまたキスしてきた。
 何がしたいのか全然分からないのに、唇と舌が勝手に動いてしまう。
 悔しいけど、悔しくない。

「あふっ……はぁはぁ、もうキス禁止」
「あっ、あぅぅぅ!」

 自分からしといて勝手すぎる。
 もうこっちはキスの唇になっているのに。

「明日は早いんだから、もう寝るわよ。明日、頑張ったら続きしてあげるから」
「はぁはぁ、はぁはぁ!」

 やっぱり罠だった。リラが馬乗りをやめて寝転んだ。
 こんな状態で放置されたら、眠れるものも眠れなくなる。

「ふぅわあああ! ああ、よく寝た。ほら、さっさとLV上げに行くわよ」
「…………」

 ほら、やっぱり寝れなかった。
 長い夜をリラの寝息を聞きながら過ごしてしまった。
 頑張ってほしいなら、昨日の夜に頑張ってほしかった。

「街までは歩いていくわよ。まずはゴブリンぐらいは一人で倒せるようになりなさい」

 目も聖剣もギンギンだけど、体調管理も冒険者の仕事だと諦めるしかない。
 リラが馬車から降りて、さっさと出発するように急かしてきた。
 確かに時間もないし、さっさと行くしかない。

「いい。あんた、魔法使えるんだから、それを武器にするのよ。魔法も氣も一緒みたいなもんよ。拳に魔力を込めて殴れば倒せるんだから!」
「そうですね。頑張ります」

 出た、脳筋の謎思考だ。リラが自信満々に前に向かって拳を突き出した。
 歩きながらリラが戦い方を教えてくれているけど、それで倒せるなら苦労しない。
 その謎思考が本当なら、リラも魔法が使える事になる。
 使えていない時点で、もう答えが出ているようなものだ。

「ゴブリンじゃないけど、あれでいいわね」

 絶対に良くない。巨大な廃都型ダンジョンに到着した。
 最初にリラが見つけたモンスターは【ワーウルフ狼人間】の群れだった。
 数は五、七、八頭と探せば探すほどに増えていく。

「じゃあ、行って来て」

 脳筋だからだろうか、死ねと言っていると気づいてない。
 もしも気づいて言っているなら、この女は悪魔だ。
 いや、もしかすると悪魔なのかもしれない。
 昨日の夜も恐ろしく酷い事をした。あんなの人間のする事じゃない。

「よし!」

 とにかく頑張って生き残るしかない。そうすれば続きが受けられる。
 右手に状態異常魔法の杖、左手に妹の緑色の両刃の大剣を持った。
 この剣なら眠ている相手の首を一刀両断できる。

『ガルルゥゥ!』

 匂いで早くも気づかれたみたいだ。
 崩れた建物を壁に隠れながら近づいていたのに、ワーウルフ達が一斉にこっちを見てきた。

 ワーウルフは灰色の毛並みをした、体長160~180センチぐらいの痩せた身体の二足歩行の犬だ。
 武器は前足というか、前腕の鋭い爪と口に並んだ牙だ。
 ロックウルフが二足歩行になったと思えば、余裕で倒せる相手だ。

『ワオオオオン‼︎』

 うん、これ絶対ヤバイやつだ。ワーウルフの一頭が遠吠えをした。
 技名は【仲間を呼ぶ】だ。
 暢気に隠れていたら、あっという間に50~60頭に囲まれてしまう。

 仲間が集まる前に倒した方が良いけど、遠吠えされた時点でもう遅い。
 とにかく睡眠魔法を撃ちまくって、見えたワーウルフを片っ端から眠らせていくしかない。

「うおおおおお! ”スリープ〟!」

 壁から飛び出すと前方に向かって、睡眠魔法を五連射した。
 水色の光線がワーウルフ二頭に直撃した。

『ワフッ……』
「よし!」

 これが効かなかったら終わっていた。
 光線に撃ち抜かれた二頭が地面に崩れ落ちていく。

ゴーレム岩巨人】とかの非生物系モンスターには睡眠も麻痺も毒も効かない。
 リラがこのダンジョンを選んだのは、モンスターの数が多いのと、おそらくこれが理由だ。

 亜人系モンスターは人間と似ているから、普通に眠る。
 眠らせる事さえ出来れば、数なんて関係ない。
 倒して倒して倒しまくって、あっという間にLVアップだ。

「”スリープ〟”スリープ〟”スリープ〟!」

 10メートル以内に誰も近づかせない。
 そんな決意を胸に睡眠魔法を撃ちまくる。

『ワフッ……』
『ワフッ……』
『ワフッ……』

 と向かってきたワーウルフ達が次々に倒れていく。
 人間だったらこの状況を見て、一旦突っ込むのをやめて、壁に隠れるぐらいはする。

『グオオオオン!』

 でも、ワーウルフ達はまったく怯まない。
 圧倒的な数で獲物に襲い掛かって、何度も倒してきたのだろう。
 すでに四十頭以上が地面に寝ているのに向かってくる。

「はぁはぁ! ”スリープ〟!」

 獲物に休む暇を与えない短期集中決戦だ。
 常に獲物を全力疾走状態にさせて、疲れて倒れる瞬間を待っている。
 確かに呼吸も荒くなってきた。

「うおおおお! ”スリープ〟!」

 だけど、それだけだ。
 こっちはトリプルダンジョンでムチャクチャ鍛えてきた。
 もう体力とか精力とか、そんな低レベルな話の次元は超えている。
 目の前におっぱいとダンジョンがあれば、男はいつでも本気になれる。
 男とはそういう生き物なんだ。

「続きが待っているんだよ!」

 そう、男とはそういう生き物なんだ。
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