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第1章
第18話⑦ピンチポイント②
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「”アンチポイズン〟」
「やれば出来るじゃないですか」
紫色の光線を鞭で弾き飛ばしながら言われても嬉しくない。
ヨハネの身体を紫色の光が包んでいる。俺にとってはまったく無駄な行為だ。
でも、少しだけ信用が回復した気がする。
これなら俺を信用して弾き返さない可能性もある。
だけど、そんなの信用できない。杖のダイヤが水色に光った瞬間が勝負だ。
睡眠光線がリラじゃなくて、ヨハネに飛んで来たら妨害しよう。
「よし!」
ダイヤが水色に光った。手に持った杖の投擲準備用意だ。
全力で手が滑った事にする。水色の光線が向かった先は……
『”####〟」
「アンチスリープ‼︎」
ヨハネだ。魔力を込めずに呪文だけ唱えて、杖を全力でヨハネに投げつけた。
杖がクルクル回転しながら、ヨハネに向かって飛んでいく。
「あうっ……!」
死ぬ気の一撃が見事にヨハネの背中に直撃した。
その怯んだ隙に水色の光線が直撃した。
「くぅ……何のつもり……ですか……」
よし、倒した。いや、倒れただ。
地面にヨハネが倒れたので、素早く駆け寄り杖だけ回収した。
「テメェー、ゴミ! 何してんだよ!」
「すみません! 手が滑りました!」
「巫山戯んな! さっさと回復しろ!」
ブチ切れ脳筋が速攻で脅してきたけど、それは出来ない。
起こしたら次のチャンスはない。ヨハネを死守するように杖を構えて言った。
「こっちは任せてください! 目の前の敵に集中してください!」
「言われなくてもやってるよ!」
これで脳筋は前だけ見てくれる。後ろは振り返らない。
あとはダイヤがひび割れるのを待つだけだ。それも脳筋の奮闘のお陰で、すぐにやって来る。
それまでは躱されないように、しっかりジャスト回復だ。
「来た! よいしょ!」
ピキキィ。ロードが持つダイヤがひび割れた。待ちに待った瞬間だ。
妹と違って軽い。ヨハネを抱き抱えると走った。
「うおおおおお!」
「はぁ? おい、何やってんだよ! ゴミ!」
目指す場所はリラの後ろだ。狙いを一点、一方向に絞らせる。
ダイヤが濃い水色の光に輝き出した。これで麻痺や毒の光だったら終わっていた。
それはそれで二人を倒せるけど、時間をかけて楽しめない。
最低でも麻痺ぐらいにはなってもらわないと困る。
『”#######〟』
「ぐぅ……!」
ありがとう、オールドロード。俺の考えた通りに動いてくれたボスに感謝した。
リラの頭を水色の光線が突き抜け、こっちに向かって飛んできた。
「そりゃー!」
光線の予定通路にヨハネを放り投げて、全力で横に跳んだ。
光線がヨハネの身体を通過して、俺の足裏のすぐ側を通り過ぎていった。
「た、助かったぁ~!」
危機一髪だった。三人仲良く永眠させられるところだった。
『グゥハハハハ!』
ロードの笑い声に振り向いた。以前と同じように塵になって消えていく。
ひび割れたダイヤも消えていった。残されたのは一冊の古ぼけた本だ。
「あれは……【レシピ本】?」
レシピ本は開けば、アイテムの作り方が理解できる【レアアイテム】だ。
アイテムはモンスターから集めた素材を、特定の組み合わせでのみ作る事が出来る。
それをレシピ無しで作る機関が【研究所】だ。
冒険者はこの研究所に素材を売って、主に収入を得ている。
冒険者の中にはレシピ本を秘匿して、自分でアイテムを作って売って儲ける奴や、特殊なアイテムを独り占めして名声を得ている者がいる。
どちらにしても、レシピ本は貴重なレアアイテムだ。
だけど、レシピ本で分かるのは、そのレシピ本を落としたモンスターの素材から作れるアイテムだけだ。
相手がレアボスならば、作れるアイテムの数は一つや二つがいいところだ。
つまり、このレシピ本はあまり価値がないハズレレシピ本だ。
アイテムが作れないなら売れないし使えない。ついでに生きて帰れないから売れない。
死ぬ前に運を使い果たした気分だけど、死ぬ前にやる事がある。
復讐だ。二人に復讐する。レシピ本は無視して地面に寝ている二人を見た。
「すぅ……すぅ……」
「スー……スー……」
どちらも完全に寝ている。【状態異常試験紙】を使わなくても分かる。
今なら何をやっても起きない。
「ご、ごくり……!」
幼馴染のデカパイ女と美少女冷血貴族令嬢だ。
どっちも俺がどんなに頑張っても、手に入れる事が出来ない高嶺の花だ。
それをこれから好き放題できる。死ぬ前のご褒美だとしても、ご褒美過ぎる。
【復讐の神様】がいるのなら、俺は死ぬほど感謝する。
こんな日が来るなんて生きてて良かった。
「やれば出来るじゃないですか」
紫色の光線を鞭で弾き飛ばしながら言われても嬉しくない。
ヨハネの身体を紫色の光が包んでいる。俺にとってはまったく無駄な行為だ。
でも、少しだけ信用が回復した気がする。
これなら俺を信用して弾き返さない可能性もある。
だけど、そんなの信用できない。杖のダイヤが水色に光った瞬間が勝負だ。
睡眠光線がリラじゃなくて、ヨハネに飛んで来たら妨害しよう。
「よし!」
ダイヤが水色に光った。手に持った杖の投擲準備用意だ。
全力で手が滑った事にする。水色の光線が向かった先は……
『”####〟」
「アンチスリープ‼︎」
ヨハネだ。魔力を込めずに呪文だけ唱えて、杖を全力でヨハネに投げつけた。
杖がクルクル回転しながら、ヨハネに向かって飛んでいく。
「あうっ……!」
死ぬ気の一撃が見事にヨハネの背中に直撃した。
その怯んだ隙に水色の光線が直撃した。
「くぅ……何のつもり……ですか……」
よし、倒した。いや、倒れただ。
地面にヨハネが倒れたので、素早く駆け寄り杖だけ回収した。
「テメェー、ゴミ! 何してんだよ!」
「すみません! 手が滑りました!」
「巫山戯んな! さっさと回復しろ!」
ブチ切れ脳筋が速攻で脅してきたけど、それは出来ない。
起こしたら次のチャンスはない。ヨハネを死守するように杖を構えて言った。
「こっちは任せてください! 目の前の敵に集中してください!」
「言われなくてもやってるよ!」
これで脳筋は前だけ見てくれる。後ろは振り返らない。
あとはダイヤがひび割れるのを待つだけだ。それも脳筋の奮闘のお陰で、すぐにやって来る。
それまでは躱されないように、しっかりジャスト回復だ。
「来た! よいしょ!」
ピキキィ。ロードが持つダイヤがひび割れた。待ちに待った瞬間だ。
妹と違って軽い。ヨハネを抱き抱えると走った。
「うおおおおお!」
「はぁ? おい、何やってんだよ! ゴミ!」
目指す場所はリラの後ろだ。狙いを一点、一方向に絞らせる。
ダイヤが濃い水色の光に輝き出した。これで麻痺や毒の光だったら終わっていた。
それはそれで二人を倒せるけど、時間をかけて楽しめない。
最低でも麻痺ぐらいにはなってもらわないと困る。
『”#######〟』
「ぐぅ……!」
ありがとう、オールドロード。俺の考えた通りに動いてくれたボスに感謝した。
リラの頭を水色の光線が突き抜け、こっちに向かって飛んできた。
「そりゃー!」
光線の予定通路にヨハネを放り投げて、全力で横に跳んだ。
光線がヨハネの身体を通過して、俺の足裏のすぐ側を通り過ぎていった。
「た、助かったぁ~!」
危機一髪だった。三人仲良く永眠させられるところだった。
『グゥハハハハ!』
ロードの笑い声に振り向いた。以前と同じように塵になって消えていく。
ひび割れたダイヤも消えていった。残されたのは一冊の古ぼけた本だ。
「あれは……【レシピ本】?」
レシピ本は開けば、アイテムの作り方が理解できる【レアアイテム】だ。
アイテムはモンスターから集めた素材を、特定の組み合わせでのみ作る事が出来る。
それをレシピ無しで作る機関が【研究所】だ。
冒険者はこの研究所に素材を売って、主に収入を得ている。
冒険者の中にはレシピ本を秘匿して、自分でアイテムを作って売って儲ける奴や、特殊なアイテムを独り占めして名声を得ている者がいる。
どちらにしても、レシピ本は貴重なレアアイテムだ。
だけど、レシピ本で分かるのは、そのレシピ本を落としたモンスターの素材から作れるアイテムだけだ。
相手がレアボスならば、作れるアイテムの数は一つや二つがいいところだ。
つまり、このレシピ本はあまり価値がないハズレレシピ本だ。
アイテムが作れないなら売れないし使えない。ついでに生きて帰れないから売れない。
死ぬ前に運を使い果たした気分だけど、死ぬ前にやる事がある。
復讐だ。二人に復讐する。レシピ本は無視して地面に寝ている二人を見た。
「すぅ……すぅ……」
「スー……スー……」
どちらも完全に寝ている。【状態異常試験紙】を使わなくても分かる。
今なら何をやっても起きない。
「ご、ごくり……!」
幼馴染のデカパイ女と美少女冷血貴族令嬢だ。
どっちも俺がどんなに頑張っても、手に入れる事が出来ない高嶺の花だ。
それをこれから好き放題できる。死ぬ前のご褒美だとしても、ご褒美過ぎる。
【復讐の神様】がいるのなら、俺は死ぬほど感謝する。
こんな日が来るなんて生きてて良かった。
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