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第1章

第17話⑦ピンチポイント②

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 早くも休憩終わりだ。ボス部屋の扉がリラによって開かれた。
 中に入って扉を閉めると、部屋の中央に魔法陣が現れた。
 魔法陣から現れるのは【キングオーク豚巨人】【ヘビーリザード巨大な赤トカゲ】【アルぺニアゴーレム剛腕剛足の岩人形】の三体のどれかだ。

 巨大な肉包丁を振り回すだけのキングオークはハズレ。
 アルペニアゴーレムは攻撃力と魔法防御力は高いけど、動きが遅すぎる。リラを倒すには力不足だ。
 期待できるのは攻撃力と速度のあるヘビーリザードだけだ。

 コイツが現れない時は俺が戦闘を妨害するしかない。
 ボスを回復したり、攻撃の邪魔になる位置に移動して立ち塞がる。
 ボスと俺、リラとヨハネの二対二のチームバトルだ。

「なぁっ⁉︎」

 だけど、予想外のボスが現れた。【オールドロード老いた支配者】だ。
 レアボスのくせに現れ過ぎだ。

「剣は落ちてないみたいだな。だったらさっさと倒して訊問だな」
「ええ。そうですね。今度こそ本当の事を喋ってくれると期待しましょう」

 レアボスなのに女二人がガン無視して地面を探している。
 何も無いと分かると、武闘家が拳、魔導師が鞭と杖を構えた。
 状態異常魔法しか使えないロードだと一方的に倒される。

 でも、考えようによっては絶好のチャンスかもしれない。
 あの呪いの一撃なら、当たれば確実に一人倒せる。
 それにもしかすると二人倒せるかもしれない。

 あの呪い魔法の一撃は貫通属性だった。
 俺のアンチスリープを撃ち破り、妹の身体を水色の光が貫通していた。
 アンチスリープ無しなら、きっと威力も速度も落ちない。
 何とか二人を誘導して、直線に並ばせる事が出来れば可能だ。

「ごくり……」

 それに二人を眠らせれば、妹同様にたっぷり復讐できる。
 帰り道のモンスターを倒せなくなるから生きて出られなくなるけど、その前に死ぬほど楽しめる。
 運が良ければ、あの三人組みたいな冒険者がやって来て、生きて帰る事も出来る。
 男ならこのチャンスを見逃したら駄目だ。

『”####〟』
「ぐぅ! 何だ、これは……うっ……」

 よし、効くみたいだ。ロードの杖から放たれた水色の光線がリラに直撃した。
 崩れ落ちるように地面に倒れて寝てしまった。

「すぅ……すぅ……」
「即死魔法じゃないみたいですね。おそらく睡眠魔法ですね。ゴミ、早く回復してください」
「はい!」

 仲間が倒れたのに、ヨハネが冷静に状況分析している。いつもの事だ。
 脳筋が二人もいるから、コイツが安全な位置から指示を出している。
 二人を呪いで眠らせたいなら、まずはヨハネを通常睡眠魔法で眠らせないと駄目だ。
 そして、脳筋リラだけを起こして、ロードを瀕死にさせる。

 あとは寝ているヨハネを呪いの一撃が当たる位置まで運んで、永遠に眠らせる。
 俺が二人を倒す方法は、これしか考えられない。

「”アンチスリープ〟」

 その為にはまずは信用させるしかない。
 リラに向かって、魔法を唱えた。リラの身体が水色の光に包まれた。

「ううっ……何で寝てしまったんだ……?」

 すぐに脳筋が起きてくれたけど、状況が分かってない。
 ここは家のベッドじゃなくて、命懸けの戦場だ。

「睡眠魔法です。ゴミが回復するので、いつも通りに戦ってください」
「チッ。姑息な魔法使いやがって。おい、ゴミ! ジャストで回復しろ! 出来なかったら玉潰すぞ!」
「お任せください!」

 脅さなくても回復してやる。こっちは初見じゃない。
 一つ問題があるとしたら、この脳筋じゃなくて魔導師だ。
 それを確かめる方法はあるけど、多分確かめる必要もない。

 ヨハネは鞭に防御魔法をかけて、相手の攻撃魔法を弾き返す事が出来る。
 ロードの光線もきっと弾き返す。だから、弾き返せないように妨害する。
 避難するようにヨハネの近くに移動して、杖を構えて待機した。
 毒と麻痺なら見逃す。狙うはアイテムを使った自己回復が出来ない睡眠だ。

「”####〟」

 リラに攻撃されながらも、ロードが黄色の光線をヨハネに撃ってきた。
 麻痺光線だ。これは見逃していい。

「無駄です。”スペルシールド魔力の盾〟」

 パシィン。やっぱりだ。飛んできた光線が鞭に弾き飛ばされた。
 しかも、俺の横を通過していった。弾き飛ばす方向までコントロールしている。

「……今、ジャストしませんでしたよね? 死にたいんですか?」

 そして、当然のように横目で睨んで脅してきた。

「すみません! 余計なお世話だと思ったので!」
「ゴミが余計な事を考える必要はないんです。次失敗したら、次はないですよ」
「はい! すみませんでした!」

 失敗した。必死に謝ってみたものの、今ので絶対に警戒している。
 俺がジャストしなくても、自分でも防御するはずだ。
 こうなったら眠らせるのは非常に困難だ。
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