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第2部 最終章 絶対絶命のF級冒険者
第56話 ウィルとドワーフの隠れ家
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「はぁ、はぁ、はぁ」
合計三回お風呂に入れて、脇の下、股の下、足の裏と見落としがちな部分も綺麗に洗った。ちょっとグッタリしているのは慣れないお風呂でのぼせた所為だろう。あとは歯を磨かせて、爪の手入れをすれば完璧だ。
(素材が良いのに勿体ないな)
白のワンピースを着せたドロシーはお姫様のように綺麗に見える。エメラルドグリーンの髪は宝石のように煌めき、泥で汚れた肌は肌色に戻った。身体のあっちこっちにあった切り傷や咬み傷はHP回復薬を飲ませて、傷薬を塗って綺麗に治療した。あとは身体が大人っぽく成長していれば文句はない。
「神様、私、そろそろ帰ります。早く帰らないと仲間が心配しますから。助けてくれてありがとうございます。お世話になりました」
「ちょっと、ちょっと! 仲間を助けてほしいんじゃなかったの? 仲間のところまで送って行ってあげるよ」
「その、それは、私一人じゃ決められないというか、その」
「んんっ?」
何故だか、ドロシーは頭を下げて仲間の元に一人で帰ろうとしている。理由を聞いてもハッキリと答えてくれない。僕を連れて行くのに問題でもあるかのようだ。
それにこの建物から下りるには僕の力が必要だ。ここから飛び下りたら普通の人は潰れて死んでしまう。山の下まで送るのも、家の前まで送るのも、僕にとっては大して変わらない。
「分かったよ。じゃあ家の前まで送るから、僕を仲間に紹介していいか君達の代表者に聞いてみてよ。それならいいでしょう?」
「はい、それならいいと思います」
「じゃあ今日は遅いから寝ようか? そこのベッドを使っていいからね」
チラッとベッドの方を見たドロシーは、「えっ、私、ここに寝ないと駄目なの?」みたいな表情をしたが、強引にベッドに連れて行く。
「えっ、えっ、神様も一緒に寝るんですか!」
(当然だ)
ドロシーをベッドに優しく押し倒すと、一枚の毛布を一緒に被って寝た。彼女の見た目は十歳の子供だが、実年齢は二十三歳だ。何の問題もない。さあ、裸の付き合いをしよう。
♢
朝八時頃にベッドから起きると、まずは風呂の準備をした。準備が終わるとベッドから裸のドロシーをお姫様抱っこして浴槽の中に入れる。ついでに僕も裸になって入る。
「本当に神様なんですよね?」
「もちろん神様だよ」
「そうですか」
ドロシーはブルーの瞳でジッと僕を見つめている。僕が本当に神様なのか疑っているようだ。残念だけど神様だって人間で男なんだ。バイコーンの精力増強焼き肉を食べた状態で、綺麗な女性を見たら、なるようになるのだ。ほら、こんな風に。
「神様、それを早く隠してください! もうぉ~」
真っ赤な顔のドロシーは目のやり場に凄く困っているようだ。チャプチャプとお湯で遊んで、僕の方を見ようとしない。ドワーフ族はドロシーのように身長が低く、全員が子供のような外見をしているらしい。つまり僕のアレがドワーフ族の男のアレより明らかに大きいのだ。
「ドロシー、朝ご飯は何がいい? 昨日の肉でいいかな?」
背後から濡れた髪を撫でながら聞いてみた。機嫌が悪いのなら機嫌を良くすればいい。一番簡単な方法はおそらく食べ物だ。美味しい物を食べれば、機嫌も直ぐに良くなるだろう。
「いいです。昨日、たくさん食べたのでお腹一杯なんです。それに本当に早く帰らないと皆んな心配するんです。神様、お願いします。早く帰らせてください!」
その言い方だと、僕が拉致して監禁したように聞こえる。まあ、朝ご飯がいらないのなら、それだけ早く出発できる。望み通りに早く家に送り届けてあげよう。
「分かった。じゃあ、風呂からあがったら行こうね」
「はい、よろしくお願いします」
本当に早く帰りたいようだ。ドロシーはザバァンと急いで風呂からあがると、乾いたタオルで身体を拭いて白のワンピースを着てしまった。彼女から預かった黒狼の毛皮とボロボロの臭い布切れは、完成した洗濯機に入れたらこの世から汚れと一緒に綺麗に消えてしまった。もう返せないのでお詫びの気持ちも込めて、僕が持っている可愛い服と下着をいくつか差し上げるつもりだ。
(とりあえず水玉パンティーと、あとはミニスカートよりもズボンの方が似合いそうだ)
収納袋には僕の子供が生まれた時の為に、子供服が大量に入っている。必要になるのはまだまだ先の予定だから、ドロシー達、ドワーフ族に使ってもらった方が服も喜ぶというものだ。
♢
「このまま進んで、あの辺で下ろしてください」
「あの辺だね」
ドロシーの案内通りに空を進んで行くと、森と森の間のちょっとした大地の裂け目に到着した。
「ここまででいいです。神様はちょっと待っていてください」
「ああ、ゆっくりでいいよ。待っているから」
ドロシーは器用に大地の裂け目を下りていく。離れた岩と岩の隙間をジャンプしたり、蔦を掴んでスルスルと下に下にと下りていく。B級クラスの強さはこの世界では弱い方だが、普通に暮らす分には驚異的な身体能力だ。この程度の断崖絶壁はものともしない。
(さて、僕は飛んで追跡するか)
収納袋から透明マントを取り出すと、それを被って姿を隠した。ドロシーには悪いけど、隠れ家の場所まで案内してもらう。
念の為にドロシーから五十メートルほど離れた位置で観察していると、断崖に突き出た岩場まで来た所で止まってしまった。周囲をキョロキョロと警戒し始めたので、トイレじゃないのなら、この辺に隠れ家の入り口があると思っていい。
しばらく待っていると、岩壁に向かってドロシーはしゃがみ込んで岩壁の隙間に両手の指を突っ込んだ。両手に力を入れて岩壁からズルズルと縦横八十センチメートル、厚さ一メートルの四角い岩のブロックを引っ張り出していく。
(あれが入り口か。知らないと絶対に分からないな)
ドロシーは岩壁に出来た穴に這って入って行くと、今度は中から四角い岩のブロックを引っ張って入り口を隠した。あんなことをしていたら、せっかくの白いワンピースも生地が傷んで汚れてしまう。なんとか人間らしい暮らしに戻さないと、服が何枚あっても意味はないだろう。
(そろそろ行くか)
一分ぐらい待ってから、ドロシーが入った穴の前まで移動した。魔力で四角い岩ブロックを素早く引っ張り出すと、暗い穴に這って入って行く。穴の奥に槍を持った男達が待ち構えていないといいんだけどな。
突っ伏した状態で手と足を動かして、前に前に匍匐前進を続けること約十秒。「早!」と思わず思ってしまった。もう這って進む必要がないようだ。立ち上がって広い洞窟の通路を見ると、どうやら炭鉱跡地のようだ。奥へと進む前に、岩のブロックを戻して入り口を隠しておこう。
合計三回お風呂に入れて、脇の下、股の下、足の裏と見落としがちな部分も綺麗に洗った。ちょっとグッタリしているのは慣れないお風呂でのぼせた所為だろう。あとは歯を磨かせて、爪の手入れをすれば完璧だ。
(素材が良いのに勿体ないな)
白のワンピースを着せたドロシーはお姫様のように綺麗に見える。エメラルドグリーンの髪は宝石のように煌めき、泥で汚れた肌は肌色に戻った。身体のあっちこっちにあった切り傷や咬み傷はHP回復薬を飲ませて、傷薬を塗って綺麗に治療した。あとは身体が大人っぽく成長していれば文句はない。
「神様、私、そろそろ帰ります。早く帰らないと仲間が心配しますから。助けてくれてありがとうございます。お世話になりました」
「ちょっと、ちょっと! 仲間を助けてほしいんじゃなかったの? 仲間のところまで送って行ってあげるよ」
「その、それは、私一人じゃ決められないというか、その」
「んんっ?」
何故だか、ドロシーは頭を下げて仲間の元に一人で帰ろうとしている。理由を聞いてもハッキリと答えてくれない。僕を連れて行くのに問題でもあるかのようだ。
それにこの建物から下りるには僕の力が必要だ。ここから飛び下りたら普通の人は潰れて死んでしまう。山の下まで送るのも、家の前まで送るのも、僕にとっては大して変わらない。
「分かったよ。じゃあ家の前まで送るから、僕を仲間に紹介していいか君達の代表者に聞いてみてよ。それならいいでしょう?」
「はい、それならいいと思います」
「じゃあ今日は遅いから寝ようか? そこのベッドを使っていいからね」
チラッとベッドの方を見たドロシーは、「えっ、私、ここに寝ないと駄目なの?」みたいな表情をしたが、強引にベッドに連れて行く。
「えっ、えっ、神様も一緒に寝るんですか!」
(当然だ)
ドロシーをベッドに優しく押し倒すと、一枚の毛布を一緒に被って寝た。彼女の見た目は十歳の子供だが、実年齢は二十三歳だ。何の問題もない。さあ、裸の付き合いをしよう。
♢
朝八時頃にベッドから起きると、まずは風呂の準備をした。準備が終わるとベッドから裸のドロシーをお姫様抱っこして浴槽の中に入れる。ついでに僕も裸になって入る。
「本当に神様なんですよね?」
「もちろん神様だよ」
「そうですか」
ドロシーはブルーの瞳でジッと僕を見つめている。僕が本当に神様なのか疑っているようだ。残念だけど神様だって人間で男なんだ。バイコーンの精力増強焼き肉を食べた状態で、綺麗な女性を見たら、なるようになるのだ。ほら、こんな風に。
「神様、それを早く隠してください! もうぉ~」
真っ赤な顔のドロシーは目のやり場に凄く困っているようだ。チャプチャプとお湯で遊んで、僕の方を見ようとしない。ドワーフ族はドロシーのように身長が低く、全員が子供のような外見をしているらしい。つまり僕のアレがドワーフ族の男のアレより明らかに大きいのだ。
「ドロシー、朝ご飯は何がいい? 昨日の肉でいいかな?」
背後から濡れた髪を撫でながら聞いてみた。機嫌が悪いのなら機嫌を良くすればいい。一番簡単な方法はおそらく食べ物だ。美味しい物を食べれば、機嫌も直ぐに良くなるだろう。
「いいです。昨日、たくさん食べたのでお腹一杯なんです。それに本当に早く帰らないと皆んな心配するんです。神様、お願いします。早く帰らせてください!」
その言い方だと、僕が拉致して監禁したように聞こえる。まあ、朝ご飯がいらないのなら、それだけ早く出発できる。望み通りに早く家に送り届けてあげよう。
「分かった。じゃあ、風呂からあがったら行こうね」
「はい、よろしくお願いします」
本当に早く帰りたいようだ。ドロシーはザバァンと急いで風呂からあがると、乾いたタオルで身体を拭いて白のワンピースを着てしまった。彼女から預かった黒狼の毛皮とボロボロの臭い布切れは、完成した洗濯機に入れたらこの世から汚れと一緒に綺麗に消えてしまった。もう返せないのでお詫びの気持ちも込めて、僕が持っている可愛い服と下着をいくつか差し上げるつもりだ。
(とりあえず水玉パンティーと、あとはミニスカートよりもズボンの方が似合いそうだ)
収納袋には僕の子供が生まれた時の為に、子供服が大量に入っている。必要になるのはまだまだ先の予定だから、ドロシー達、ドワーフ族に使ってもらった方が服も喜ぶというものだ。
♢
「このまま進んで、あの辺で下ろしてください」
「あの辺だね」
ドロシーの案内通りに空を進んで行くと、森と森の間のちょっとした大地の裂け目に到着した。
「ここまででいいです。神様はちょっと待っていてください」
「ああ、ゆっくりでいいよ。待っているから」
ドロシーは器用に大地の裂け目を下りていく。離れた岩と岩の隙間をジャンプしたり、蔦を掴んでスルスルと下に下にと下りていく。B級クラスの強さはこの世界では弱い方だが、普通に暮らす分には驚異的な身体能力だ。この程度の断崖絶壁はものともしない。
(さて、僕は飛んで追跡するか)
収納袋から透明マントを取り出すと、それを被って姿を隠した。ドロシーには悪いけど、隠れ家の場所まで案内してもらう。
念の為にドロシーから五十メートルほど離れた位置で観察していると、断崖に突き出た岩場まで来た所で止まってしまった。周囲をキョロキョロと警戒し始めたので、トイレじゃないのなら、この辺に隠れ家の入り口があると思っていい。
しばらく待っていると、岩壁に向かってドロシーはしゃがみ込んで岩壁の隙間に両手の指を突っ込んだ。両手に力を入れて岩壁からズルズルと縦横八十センチメートル、厚さ一メートルの四角い岩のブロックを引っ張り出していく。
(あれが入り口か。知らないと絶対に分からないな)
ドロシーは岩壁に出来た穴に這って入って行くと、今度は中から四角い岩のブロックを引っ張って入り口を隠した。あんなことをしていたら、せっかくの白いワンピースも生地が傷んで汚れてしまう。なんとか人間らしい暮らしに戻さないと、服が何枚あっても意味はないだろう。
(そろそろ行くか)
一分ぐらい待ってから、ドロシーが入った穴の前まで移動した。魔力で四角い岩ブロックを素早く引っ張り出すと、暗い穴に這って入って行く。穴の奥に槍を持った男達が待ち構えていないといいんだけどな。
突っ伏した状態で手と足を動かして、前に前に匍匐前進を続けること約十秒。「早!」と思わず思ってしまった。もう這って進む必要がないようだ。立ち上がって広い洞窟の通路を見ると、どうやら炭鉱跡地のようだ。奥へと進む前に、岩のブロックを戻して入り口を隠しておこう。
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