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第2部 第2章 帰って来たF級冒険者
第38話 ウィルと秘密の部屋
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「ちょっと夜這いみたいでドキドキするかも」
確か、ベルガーギルド長は孫娘のシャルロッテを新世界に連れて行こうとしていた。それを僕が心石を奪って妨害したんだけど、今は幸せになっているだろうか?
少なくとも、家族揃って死ぬまで過ごせるのだ。ギルド長の爺さんが死んだとしても、訪れたのが悲しみだけじゃないはずだ。
侯爵家の本邸と比べると、ギルド長の家は小さく見える。けれども、村の三人暮らしの一軒屋が32軒分は入りそうだ。さて、探すべき場所は孫娘の寝室でも、お母さんの寝室でも、婆さんの寝室でもない。まずはギルド長の書斎を探してみるか。一般的には本棚の中か、引き出しの中のどちらかにあるはずだ。
まあ、家族の誰かがギルド長が書いた冒険者手帳を読んでいるかもしれない。書斎に無かったら、家族全員の部屋も探さないとな。
透明マントを頭から被ると、静寂に包まれた暗闇の中を突き進む。魔法のマントが姿だけではなく、気配も足音も消してくれている。ギルド長以外の魔法使いがいないのならば、物音さえ立てなければ、気づかれる事はないはずだ。
二階の窓も全部鍵か掛かっているよ。まあ、家族の一人が殺されたんだ。警戒するのは当たり前か。
『開け』
『ギギギ、ガチャン』
行使力を窓に付いているクレセント鍵と呼ばれる鍵に掛けると、鍵がゆっくりと動いて行く。新世界で何度も空き家でやった事なので慣れているけど、あんなのは練習でしかない。だって建物の中には人がいないのだ。今回は正真正銘、建物の中に人がいる本番なのだ。
「お邪魔します」
窓を開けて、分厚いカーテンを押し退けて部屋の中に入った。透明マントの中で言ったので、外には聞こえないけど、間違いなく言った。泥棒でも、人様の家に無断で入るのならば、そのぐらいの礼儀作法は必要だ。
部屋の中は真っ暗だ。この中で普通の泥棒ならば目的の物を探すのは一苦労するだろう。けれども、僕はこの道を極めたプロだ。神眼の指輪を使えば、わざわざ一つ一つ物を手に取る事なく、部屋の全ての物を調べる事も可能なのだ。
本棚の中に並んでいる三百冊ほどの本の中には手帳はなかった。全てが市販の書籍だった。まめに手帳を書いていたのならば、侯爵のように数十冊は残っている。本棚に並べていないという事は誰かの部屋か、書いていないのか、そのどちらかだ。念の為に引き出しの鍵を開けて調べたものの、やっぱり手帳はなかった。
一番可能性が高いのは、息子のベルガーさんの所か。きっと僕とギルド長の関係を調べているはずだから、手帳が存在しているのならば、その中から藁にもすがる気持ちで僕の手掛かりを探しているはずだ。
「逃げては通れない道か…行くしかないな」
ギルド長とは個人的な付き合いなんかないし、僕が秘密組織に所属しているなんて事もない。もちろん、恨みなんてものもない。心石を持った人ならば誰でもよかったのだ。心石を持つギルド長三人の中から奪いやすかったからベルガーギルド長を殺した。それが理由だ。
『弱かったから殺した』なんて家族が聞いたら怒るどころじゃない。きっと僕の家族も僕の報復覚悟で襲うはずだ。時に感情が理性を上回って、冷静な判断が出来ない事が多々ある。そう考えると、サークス村がまだ無事なのは誰かが止めているという事だ。多分、お婆さんか、ベルガーさんのどちらかだろうな。
現在、この屋敷には使用人を含めた10人が住んでいる。ベルガーさんは奥さんと一緒の部屋に寝ているらしい。まず奥さんの方に行使力を使って騒がれないようにしよう。
『カチャン…』
行使力を使って扉の鍵を静かに開けると、夫婦の寝室に入って行く。二人は熟睡しているのか、鍵が開いた時の僅かな物音では起きなかった。手前がベルガーさんか。
手前のベッドを避けるように部屋の奥の方に進む。ベッドは二つあり、夫婦別々に寝ていた。若い頃はベッドは一つで十分だったのだろうけど、今は違うようだ。
さて、『何が起きても絶対に起きるな』と『僕の言う通りに動け』のどっちらにしようか?
部屋に手帳のような物は見当たらなかった。だとしたら、お婆さんの部屋にあるのかもしれない。もしくは、この家とは何処か別の場所に保管されているのかもしれない。まあ、そのどちらでもいいけど、必要なのは手帳ではなく、洞窟の場所と秘密の部屋への入り方だ。
『奥さん、起きて僕の言う通りに動くんだ。旦那さんを起こして、ギルド長が賢者の壺を見つけた洞窟の場所を聞くんだ』
「うぐぅ、うぅぅっ、はい、分かりました」
ホッ。最初はうなされている感じがしたけど、寝ている状態でも行使力の効果はあるようだ。
ベッドから起きると奥さんは寝惚けた感じで歩きながら、隣のベッドに入って行った。
『名前・ケイティ 職業・主婦 レベル5 年齢42歳 身長158cm 体重50Kg バスト88(F) ウエスト59 ヒップ88』
ごくり。肌色の寝巻きを着ている奥さんは年齢を感じさせない色気が漂っている。乱れたセミロングの黒髪も逆に良い。きっと若い頃は相当の美人だったのだろう。もしかすると、高級売春宿で奥さんをお持ち帰りしたのかな?
「ねぇ、あなた。起きて」
「んんっ…? どうした?」
「お義父さんが賢者の壺を見つけた洞窟の場所は何処だったかしら?」
「まったく、夜中に起こして……そんなのは明日の朝でいいだろう? はぁ、寝かせてくれよ」
まあ、こんな夜中に起こされたら、そんな反応になってしまう。こんなの『明日の朝ご飯、何が食べたい?』と聞かれているようなものだ。僕ならくだらない事で夜中に起こされたら絶対に怒る。
『教えてくれるまで寝かせないと言え』
「教えてくれるまで寝かせない」
「まったく。なぁ、ケイティ。本当は何がしたいんだ? 親父が見つけたお宝の事になんか興味ないんだろう?」
僕の存在はまだバレていないようだけど、さっさと言えばいいんだよ。そしたら、寝かせてあげるんだから。
『教えてくれたら良い事してあげるからと言え』
「教えてくれたら良い事してあげる」
「もうぉ~、ケイティ。今日はそういう気分じゃないんだ。今度でいいだろう?」
もうぉ~、何なんだよ! だったら僕が代わりに良い事をしてもらうぞ。いいんだな! 次、答えないと本当にやるからな!
『分かったわ。だったら教えてくれたらベッドに戻るわ、と言え』
「分かったわ。だったら教えてくれたらベッドに戻るわ」
「はぁ~、マーリンの洞窟だろ。親父が誕生日パーティーで酔うと必ず話していただろう。さあ、もう寝よう」
ふぅー。途中から腹話術師になったけど、マーリンの洞窟か……でも、あそこはエミリアと結構調べたから見落としているとは思えない。洞窟は一本道で脇道や洞穴も無かった。洞窟の最深部にはボロボロの細長い石の台座と、地面に大量の砂がばら撒かれていただけだ。秘密の部屋っぽい場所はなかったはずだ。
『ねぇ、あなた。秘密の部屋への入り方があったでしょう。ねぇ、教えて? と言え』
「ねぇ、あなた。秘密の部屋への入り方があったでしょう。ねぇ、教えて?」
「はぁ~、ケイティ。いい加減にしてくれ。本当にこれで終わりだからな。洞窟の一番奥の台座に壺を置いて、その中に床の砂を入れていけばいいだけだろう。ほら、答えたんだから寝かせてくれ。まったく…」
なるほど。台座に加わる重量に反応して何かが起こる仕掛けがあったのか。まあ、余程の暇人じゃないと、そこまで調べないから発見されなかったのだろうな。でも、砂か……もしかすると小数点以下の決められた重量に反応するのかもしれない。だとしたら、ちょっと厄介かもしれないな。
さて、部屋から出たいから、ケイティにもう少しだけ協力してもらうか。
『じゃあ、上手く答えられたご褒美に、今度は私の秘密の部屋への入り方を教えてあげるわね、と言って、服を全部脱いで旦那さんと朝まで楽しみなさい』
「じゃあ、上手く答えられたご褒美に、今度は私の秘密の部屋への入り方を教えてあげるわね」
そう言うと、スルスルとケイティは寝巻きを脱ぎ始めて、旦那の身体の上に跨がった。
「ケイティ! だから今日はそういう気分じゃ…むぐっ!」
「んっ、んっ、はふっ」
最初は嫌々ながらもベルガーもその気になり始めたようだ。服を脱ぐと奥さんを押し倒して身体を弄び始めた。秘密の部屋を見つけるのも時間の問題だろう。
「………」
ジッ~~~。よし、そろそろ部屋を出ても大丈夫だろう。20分近く二人の夫婦の営みを観察し続けて、もう大丈夫だと確信した。今の状態ならば家の庭に雷が落ちても気が付かないだろう。では、お幸せに。
確か、ベルガーギルド長は孫娘のシャルロッテを新世界に連れて行こうとしていた。それを僕が心石を奪って妨害したんだけど、今は幸せになっているだろうか?
少なくとも、家族揃って死ぬまで過ごせるのだ。ギルド長の爺さんが死んだとしても、訪れたのが悲しみだけじゃないはずだ。
侯爵家の本邸と比べると、ギルド長の家は小さく見える。けれども、村の三人暮らしの一軒屋が32軒分は入りそうだ。さて、探すべき場所は孫娘の寝室でも、お母さんの寝室でも、婆さんの寝室でもない。まずはギルド長の書斎を探してみるか。一般的には本棚の中か、引き出しの中のどちらかにあるはずだ。
まあ、家族の誰かがギルド長が書いた冒険者手帳を読んでいるかもしれない。書斎に無かったら、家族全員の部屋も探さないとな。
透明マントを頭から被ると、静寂に包まれた暗闇の中を突き進む。魔法のマントが姿だけではなく、気配も足音も消してくれている。ギルド長以外の魔法使いがいないのならば、物音さえ立てなければ、気づかれる事はないはずだ。
二階の窓も全部鍵か掛かっているよ。まあ、家族の一人が殺されたんだ。警戒するのは当たり前か。
『開け』
『ギギギ、ガチャン』
行使力を窓に付いているクレセント鍵と呼ばれる鍵に掛けると、鍵がゆっくりと動いて行く。新世界で何度も空き家でやった事なので慣れているけど、あんなのは練習でしかない。だって建物の中には人がいないのだ。今回は正真正銘、建物の中に人がいる本番なのだ。
「お邪魔します」
窓を開けて、分厚いカーテンを押し退けて部屋の中に入った。透明マントの中で言ったので、外には聞こえないけど、間違いなく言った。泥棒でも、人様の家に無断で入るのならば、そのぐらいの礼儀作法は必要だ。
部屋の中は真っ暗だ。この中で普通の泥棒ならば目的の物を探すのは一苦労するだろう。けれども、僕はこの道を極めたプロだ。神眼の指輪を使えば、わざわざ一つ一つ物を手に取る事なく、部屋の全ての物を調べる事も可能なのだ。
本棚の中に並んでいる三百冊ほどの本の中には手帳はなかった。全てが市販の書籍だった。まめに手帳を書いていたのならば、侯爵のように数十冊は残っている。本棚に並べていないという事は誰かの部屋か、書いていないのか、そのどちらかだ。念の為に引き出しの鍵を開けて調べたものの、やっぱり手帳はなかった。
一番可能性が高いのは、息子のベルガーさんの所か。きっと僕とギルド長の関係を調べているはずだから、手帳が存在しているのならば、その中から藁にもすがる気持ちで僕の手掛かりを探しているはずだ。
「逃げては通れない道か…行くしかないな」
ギルド長とは個人的な付き合いなんかないし、僕が秘密組織に所属しているなんて事もない。もちろん、恨みなんてものもない。心石を持った人ならば誰でもよかったのだ。心石を持つギルド長三人の中から奪いやすかったからベルガーギルド長を殺した。それが理由だ。
『弱かったから殺した』なんて家族が聞いたら怒るどころじゃない。きっと僕の家族も僕の報復覚悟で襲うはずだ。時に感情が理性を上回って、冷静な判断が出来ない事が多々ある。そう考えると、サークス村がまだ無事なのは誰かが止めているという事だ。多分、お婆さんか、ベルガーさんのどちらかだろうな。
現在、この屋敷には使用人を含めた10人が住んでいる。ベルガーさんは奥さんと一緒の部屋に寝ているらしい。まず奥さんの方に行使力を使って騒がれないようにしよう。
『カチャン…』
行使力を使って扉の鍵を静かに開けると、夫婦の寝室に入って行く。二人は熟睡しているのか、鍵が開いた時の僅かな物音では起きなかった。手前がベルガーさんか。
手前のベッドを避けるように部屋の奥の方に進む。ベッドは二つあり、夫婦別々に寝ていた。若い頃はベッドは一つで十分だったのだろうけど、今は違うようだ。
さて、『何が起きても絶対に起きるな』と『僕の言う通りに動け』のどっちらにしようか?
部屋に手帳のような物は見当たらなかった。だとしたら、お婆さんの部屋にあるのかもしれない。もしくは、この家とは何処か別の場所に保管されているのかもしれない。まあ、そのどちらでもいいけど、必要なのは手帳ではなく、洞窟の場所と秘密の部屋への入り方だ。
『奥さん、起きて僕の言う通りに動くんだ。旦那さんを起こして、ギルド長が賢者の壺を見つけた洞窟の場所を聞くんだ』
「うぐぅ、うぅぅっ、はい、分かりました」
ホッ。最初はうなされている感じがしたけど、寝ている状態でも行使力の効果はあるようだ。
ベッドから起きると奥さんは寝惚けた感じで歩きながら、隣のベッドに入って行った。
『名前・ケイティ 職業・主婦 レベル5 年齢42歳 身長158cm 体重50Kg バスト88(F) ウエスト59 ヒップ88』
ごくり。肌色の寝巻きを着ている奥さんは年齢を感じさせない色気が漂っている。乱れたセミロングの黒髪も逆に良い。きっと若い頃は相当の美人だったのだろう。もしかすると、高級売春宿で奥さんをお持ち帰りしたのかな?
「ねぇ、あなた。起きて」
「んんっ…? どうした?」
「お義父さんが賢者の壺を見つけた洞窟の場所は何処だったかしら?」
「まったく、夜中に起こして……そんなのは明日の朝でいいだろう? はぁ、寝かせてくれよ」
まあ、こんな夜中に起こされたら、そんな反応になってしまう。こんなの『明日の朝ご飯、何が食べたい?』と聞かれているようなものだ。僕ならくだらない事で夜中に起こされたら絶対に怒る。
『教えてくれるまで寝かせないと言え』
「教えてくれるまで寝かせない」
「まったく。なぁ、ケイティ。本当は何がしたいんだ? 親父が見つけたお宝の事になんか興味ないんだろう?」
僕の存在はまだバレていないようだけど、さっさと言えばいいんだよ。そしたら、寝かせてあげるんだから。
『教えてくれたら良い事してあげるからと言え』
「教えてくれたら良い事してあげる」
「もうぉ~、ケイティ。今日はそういう気分じゃないんだ。今度でいいだろう?」
もうぉ~、何なんだよ! だったら僕が代わりに良い事をしてもらうぞ。いいんだな! 次、答えないと本当にやるからな!
『分かったわ。だったら教えてくれたらベッドに戻るわ、と言え』
「分かったわ。だったら教えてくれたらベッドに戻るわ」
「はぁ~、マーリンの洞窟だろ。親父が誕生日パーティーで酔うと必ず話していただろう。さあ、もう寝よう」
ふぅー。途中から腹話術師になったけど、マーリンの洞窟か……でも、あそこはエミリアと結構調べたから見落としているとは思えない。洞窟は一本道で脇道や洞穴も無かった。洞窟の最深部にはボロボロの細長い石の台座と、地面に大量の砂がばら撒かれていただけだ。秘密の部屋っぽい場所はなかったはずだ。
『ねぇ、あなた。秘密の部屋への入り方があったでしょう。ねぇ、教えて? と言え』
「ねぇ、あなた。秘密の部屋への入り方があったでしょう。ねぇ、教えて?」
「はぁ~、ケイティ。いい加減にしてくれ。本当にこれで終わりだからな。洞窟の一番奥の台座に壺を置いて、その中に床の砂を入れていけばいいだけだろう。ほら、答えたんだから寝かせてくれ。まったく…」
なるほど。台座に加わる重量に反応して何かが起こる仕掛けがあったのか。まあ、余程の暇人じゃないと、そこまで調べないから発見されなかったのだろうな。でも、砂か……もしかすると小数点以下の決められた重量に反応するのかもしれない。だとしたら、ちょっと厄介かもしれないな。
さて、部屋から出たいから、ケイティにもう少しだけ協力してもらうか。
『じゃあ、上手く答えられたご褒美に、今度は私の秘密の部屋への入り方を教えてあげるわね、と言って、服を全部脱いで旦那さんと朝まで楽しみなさい』
「じゃあ、上手く答えられたご褒美に、今度は私の秘密の部屋への入り方を教えてあげるわね」
そう言うと、スルスルとケイティは寝巻きを脱ぎ始めて、旦那の身体の上に跨がった。
「ケイティ! だから今日はそういう気分じゃ…むぐっ!」
「んっ、んっ、はふっ」
最初は嫌々ながらもベルガーもその気になり始めたようだ。服を脱ぐと奥さんを押し倒して身体を弄び始めた。秘密の部屋を見つけるのも時間の問題だろう。
「………」
ジッ~~~。よし、そろそろ部屋を出ても大丈夫だろう。20分近く二人の夫婦の営みを観察し続けて、もう大丈夫だと確信した。今の状態ならば家の庭に雷が落ちても気が付かないだろう。では、お幸せに。
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