【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜

もう書かないって言ったよね?

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第2部 第2章 帰って来たF級冒険者

第24話 ウィルと立て籠り事件

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 覚悟を決めてると、ガブリエルと神龍が作った空中をグルグルと回る不思議な光のトンネルに入った。

「うぐっっ‼︎」

 凄まじい激痛が襲って来た。大量のガラスが、ばら撒かれた用水路を何の抵抗もできずに、ただ凄い速さで流されていくような鋭い痛みだ。

 確かにこの痛みは日常的に無実の人間がリンチ、暴行を受け、変態と罵られないと耐え切れない痛みだ。僕じゃなかったら間獄に辿り着く前に廃人になっていただろう。

「わぁっ…⁉︎ ここは?」

 光のトンネルから放り出されると、ゴロゴロと石畳を転がりながら素早く起き上がった。周囲を警戒しながら見たものの、どう見てもそこはエジンバラ城だった。これだけ痛い思いをさせておいて、『間違えました』じゃ済みませんよ。本当に。

『何だこの変態は⁉︎ いったい何処から現れた』

『敵襲、敵襲‼︎ 変態が現れたぞ』

 変態、変態って煩いよ。こっちも別に脱ぎたくて脱いだんじゃないんだよ。服が破れて脱げたんだよ。

 ドタドタ、ガヤガヤ、ジャラジャラと剣や盾で武装した兵士達がとても煩い。ここが新世界のエジンバラ城ではない事は嫌でも分かった。見て分かるよくに、僕は光のトンネルを通った所為で着ていた服がボロボロになって丸腰だ。

 今、身に付けているのは壊れずに残った神速ブーツと神眼の指輪、あとは胸に抱き締めていた魔剣エクスカリバーと、股の間に挟んでいた無限収納袋だけだ。これを見て、何処に敵意や害意があるというんだ?

「ちょっと待ってくださいね。予備の服がこの袋の中に入って…」

『動くな‼︎ ジッとしていろ。その袋から何も出さずに手を離すんだ』

『きゃあぁぁ⁉︎ 変態‼︎』

 メイドの黄色い悲鳴が聞こえた、ような気がした。恐らくは気の所為だ。歓声なら分かるが悲鳴なら気の所為だ。

 それにしても、このままでは収納袋から着替えの服も取り出せない。今の状況を客観的に見ると、突然城内の中庭に裸にブーツと剣を装備した謎の若い男が現れて、股間に大事に挟んでいた収納袋から何かを取り出そうとしている。うん、これで間違いないな。どう見てもただのド変態だ。

 そして、流石は首都の警備に選ばれた兵士達だ。謎の変態が現れたのに銃や大砲を直ぐに撃って来ないで冷静に対応しているのが凄い。僕なら銃の鉛玉を全弾発射している。まあ、冗談はこの辺にしておいて、今は牢屋に入っている時間は無い。悪いけど強行突破させてもらうしかないみたいだね。

「悪いけど、今の僕は回復魔法が使えないから怪我したくないんだよ。死にたくない人は僕の邪魔をしない方がいいよ」

『黙れ! 今すぐに武器を捨てて、地面にうつ伏せになれ。従わなければ命の保証は出来ないぞ!』

 親切な僕の警告を無視して、整えられたブロンドの口髭がチャーミングな兵士アンディが、左手に銃を握って銃口を僕の胸の中央に向けている。僕のハートを狙い撃ちしたいらしいけど、残念。もう予約済みだよ。

「気にしない方いい」

『黙れ! 早くうつ伏せになれ』

「君達は弱くはない。僕が強過ぎるんだ」

 左手に持っている魔剣と収納袋を落とさないようにしっかりと握ると、両足に力を入れて一気に加速する。見えなければ銃を当てる事は出来ない。それに当てる事が出来たとしても、鉛玉が僕の身体にめり込む事は決してないだろう。それが僕だ。

『消えたぞ⁉︎ 何処に行った!』

「ここだ」

 僕は一瞬で一人のメイドの背後に移動した。そして、優しく抱き締めるように捕まえた。

『きゃあぁぁ‼︎』

 中庭に再びメイドの黄色い悲鳴が上がった。城の中に逃げずに、いつまでも中庭に残って僕の裸をいやらしい目で見ているからこうなるんだ。さあ、安全な場所に逃げるまで、色々な意味で僕の専属メイドになってもらいますよ。

『今すぐに人質を解放しろ‼︎ そんな事をしても逃げられんぞ』

『きゃあ‼︎ きゃあ‼︎ チャド、助けてぇ~‼︎』

 僕の腕の中で暴れている赤毛のミディアムヘアの彼女の名前はデイジー、22歳。身体158cmにバスト88のFカップだ。このエジンバラ城にメイドとして働き始めて三年になる。そして、あの城壁の見張り台から、物凄い速さで壁に取り付けられている梯子を下りて来ているのが、旦那で兵士のチャド、26歳だ。新婚夫婦に訪れた初めてのピンチだ。上手く乗り越えるんだよ。

「お前達、動くんじゃないぞ。動いたらこの女がどうなるか分かってんだろう?」

 魔剣を鞘から抜くと、ピッタリとデイジーの首筋にくっ付ける。ついでに僕の硬くなった剣もデイジーの腰にピッタリとくっ付ける。

『この卑怯者が…』

 兵士達は迂闊には動けないようだ。仲間の兵士の妻が人質になっているのだ。その気持ちは分かる。

「へっへへ、負け犬どもが何とでも言えばいい。勝てばいいんだよ、勝てばな」

 いまだに抵抗するデイジーのおっぱいを触りながら城内に連れて行く。まずは逃げる前に寒いから服を着たい。現在のエジンバラ城の気温は9度だ。裸ブーツでは変態でも風邪を引く。デイジーの温かい身体にピッタリとくっ付いて、右手に握った魔剣を振り回して城内に残っている兵士や役人、メイド達を追い出し、遠ざける。

 流石に螺旋階段を上って、二階に行くのはやめた方がいい。城主の命とメイドの命なんて比べる必要もない。だとしたら、一階だけで探すしかない。今、探しているのは誰もいない部屋で外に出られる窓が付いている部屋だ。服を着る時間と透明マントを被った瞬間を見られなければ何処でもいい。

 欲を言えば、デイジーの豊かなおっぱいを立て籠って20分近く堪能できれば文句はない。けれども、僕は馬鹿じゃない。そんな事をすれば立て籠った部屋の周囲を完全に包囲される事になる。だから収納袋に入ってもらう事にした。

「デイジー、僕の愛人になって逃げるのに協力してくれれば、この金貨100枚を差し上げるよ。どうかな?」

 近場の部屋に立て籠ると、服を着ながらデイジーの右手に金貨100枚が入った小袋を乗せた。

「巫山戯ないでよ。誰がアンタみたいな変態の愛人になるもんですか!」

 でも、デイジーは右手の手の平に乗っている金貨の袋を床に叩き付けない。叩き付けないという事は足りないという事だ。

「200、300、400、500…なるほど、君の気持ちは分かった。嫌なら仕方ない、だったら殺すしか…」

 両腕をプルプルしながらもデイジーは乗せられていく金貨の重さに耐え続けている。ここまで強欲な女だとは思わなかった。これ以上は時間の無駄なのでお金ではなく魔剣で説得するしかない。鞘から剣を抜くとちょっとだけ、本当にちょっとだけ剣先を身体に当ててみた。

「やります。死ぬ程、嫌ですけどやります」

「良かった、交渉成立だね。まずはこの袋に入ってもらうよ。袋に入れなかったら殺すからね」

 今度は左胸にほんのちょっとだけ剣先を当ててみた。

「頑張ります」

 期待以上に反応は良いようだ。デイジーは収納袋に急いで入ってくれた。彼女が入ると僕は透明マントを取り出して被った。まずは街の宿屋に泊まって、侯爵の手帳から壺の手掛かりを調べなければならない。優秀なメイドが一緒に手伝ってくれればきっと大丈夫だ。
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