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第2部 第1章 新世界のF級冒険者

第10話 ウィルと水着

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「くっ…急いでいるのに!」

 空中で収納袋から服を取り出して着ようとしたが、困った事に身体が海水で濡れている。けれども、このまま服を着るのは気持ち悪い。タオルでゆっくりと身体を拭いている時間は惜しいし、風呂に入るのは絶対に駄目だ。

 でも、このまま海パン一枚で二人の元に駆け付けるのはマズい。上半身裸の変態が女の子を助けても格好がつかない。それでも、急がないと駄目だ。もう、しょうがない。濡れた海パンで向かうしかないんだ。重力魔法で身体を軽くすると、町に向かって急いで飛んで行った。

 それにしても、犯人の食料品を捨てるという行為には、僕達に対してはほとんど害が無い。むしろ食料品を廃棄処分する手間暇が無くなって助かったぐらいでもある。だとしたら、嫌がらせだとは考え難い。余程の掃除好きが世界に生き残っているとしか思えない。

「あの辺か…」

 ユンの魔力の気配があるのは町の南側の居住区だった。僕と同じで他人の家から宝物を見つける喜びに目覚めたのだろうか? だとしたら、出来るだけデカい家を探すのが一番だと教えないといけない。小さな家には価値ある物はほとんど置いてなかった。

「ユン! ミランダは何処にいるんだ! 一人なのか?」

 狭い路の真ん中でユンがボッーと立っていた。まあ、ボッーとしているのは、いつもの事なので問題ない。問題なのはミランダの姿が見えない事だ。

「ミランダは……迷子になっているみたいだから、探している所」

「分かった。一緒に探そう」

 とりあえず迷子の一人は確保した。見た感じだと危険な目には遭っていないようだから、余計な事を言って無駄に怖がらせる必要はない。今は食料品を捨てた正体不明の犯人がいる事は教えなくていいはずだ。でも、ミランダを探す前にその辺の家からタオルと上着の一枚ぐらいは借りておこう。

「ウィル、さっき白い髪の女の子に会ったよ」

 白い髪の女の子? 確か神様の所で見た二人の女の子はどっちも金髪だったはずだぞ。それにムカつく男の方も紫色だったし、また精霊か。

「へぇー、可愛かったの?」

「うん、私よりも年上だったけど可愛かったよ。クレアと同じぐらいだったと思う」

 なら、七十五点ぐらいか。精霊って裸なのかな? でも、若い女の子の精霊以外もいるなら見たくはないな。さてと、ミランダはお土産を物色しているようだから、多分あっちだ。少しずつ魔力の気配が近くなっている。心石と契約させておいて助かった。

「追いかけるなら南の方角に飛んで行ったから、アポンハルの町に行ったのかも? 追いかけないの?」

 ユンが左手人差し指を南側に向けて、ブンブンと左腕を振り回している。白髪の精霊の正体は多分、白鳩か、白鳥だろう。白鳥ならば村で飼っている白馬と合体させて、ペガサスでも作りたいけど、二人乗りのペガサスを作るよりは、大型の飛行船を作った方が村の為になる。村長として趣味に走るのはまだ早い。

「ちょっと遠いからやめておこうかな。それに追いかけっこよりも、ミランダと一緒にお土産を選ぶ方が楽しいと思うよ」

 正直、マンチェスターと同じぐらいの距離にある町には行きたくはない。片道10時間以上かけて見えない精霊の女の子は追いかけたくはない。それに女の子はこれ以上は必要ない。全員が僕にベタ惚れのハーレム状態にならないのが現実なのだ。

「確かにクレアとナナリーにお土産沢山持って帰りたい。いつも洗濯物を洗ってくれるから。ウィルもキチンと選んだ方がいいよ」

「んっ~ん? でも、クレアは自分で魔物のヌイグルミを作っているから僕が作って上げられる物はないんだよな。市販の物なら、もう村の城型倉庫に建物ごと入れられているから、物を上げるのは微妙なんだよなぁ~」

 洗濯物を洗う手伝いは絶対に断られるのは分かっている。他のお手伝いを考えるべきなんだけど、衣食住が足りている生活にこれ以上は何も必要はないはずだ。あの年頃の女の子ならば、女友達と遊べる時間が一番のお土産になるはずだ。さっさとミランダを探して、村に連れて帰るか。

 ミランダを見つけたのは海岸近くよ水着ショップだった。彼女は赤と白の花柄のブラを自分の胸に押し当てていた。

 よし、僕も選ぶのを手伝おう。いやいや、それは勿体ない。建物ごと村に持って帰って、大きな溜め池を作れば、いつでも皆んなで水着を着て遊ぶ事が出来る。そっちの方が絶対にいい。

「ウィルとユン? もしかして、二人でデート中なの?」

 手を繋いでいるけど、デートではない。迷子にならないように対策しているだけだ。

「違うよ、村に帰るんだよ。その建物は村に持って帰るから、水着はクレア達と一緒に村で選びなよ。僕が村の中に大きな溜め池を作るから、そこで皆んなで遊べるよ」

「えっ~、今日はこの町の宿屋に泊まろうよぉ~! 私とユンの二人で色々サービスするから、泊まろうよぉ~」

 どうせ、水着を着た状態でお酒をコップに注ぐ程度のサービスだろ? そんなのどうでもいいんだよ。僕の求めるサービスはもっと先にあるんだから。もう女の子のほとんどに嫌われているんだから、好感度なんてどうでもいいから、無理矢理に連れて帰ってやる。

「駄目だよ。食料品を盗んだ犯人がこの町に潜んでいるかもしれないのに、泊まる事は出来ないよ。村の中の方が安全だから帰らないと駄目! 村長命令だよ」

「それなら、大丈夫。犯人なら南に逃げたから町には誰もいない。ゆっくりいっぱいサービスしてあげる」

「はいはい、サービスなら村でも出来るよ。ここは危険なんだから帰ります。こういう時は年長者の指示に従うものだよ」

 はぁ…存在しない精霊を犯人にされても困る。二人が遊びたい気持ちは分かるけど、遊ぶなら安全な場所じゃないと駄目だ。それに僕の身にもしもの事が起きたら、村に残された女の子達は、スコットランド王国の男の所に嫁ぎに行かないといけない。それはもっと駄目だ。

「ゔっ~~‼︎ 分かったよ。村に帰ってもサービスなんてしてあげないんだからね!」

 ミランダが怒った程度では僕の考えは変わりません。ミランダとアシュリーの二人掛かりで乱暴されたら直ぐに変わるかもしれないけど、この二人なら二人掛かりでもデコピンで撃退出来る。僕は弱者相手にはめっぽう強い。

「ウィル、私は内緒でしてあげるから大丈夫だよ」

「うん、帰ったら楽しみにしておくよ」

 内緒でしてくれるなら、ミランダがいない時に教えて欲しかった。それにあの乱暴な操縦をされたら僕の操縦桿がへし折れてしまう。サービスしたいのなら、しっかりと練習して欲しい。さて、暗くなる前に村に帰ろう。

 


 

 



 

 

 

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