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第2部 第1章 新世界のF級冒険者
間話 エミリアとスタンプカード
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魔鳥船の後部座席にウィル様以外の人が座っているのは、ちょっと不思議な気分です。
「ほら、あの下僕なんだけど、売春宿のスタンプカードを大量に持っていたのよ。絶対にどの町にもコレがいたわよ」
アシュリー様の手にはウィル様が捨てた売春宿のスタンプカードが握られていました。この新世界には必要ないと捨てたみたいです。19歳という年齢を考えれば仕方ないとは思いつつも、ちょっと多過ぎる気もします。
スタンプが押されている日付けを確認すると、私と町を巡って、龍剣のレベルを上げている時にも利用していた事が分かります。通りで商品が売れた数と収益が合わないはずです。ウィル様がお金をちょろまかして売春宿で遊んでいたようです。
「別にいいじゃないですか。年頃の男の子ならそれぐらいは普通ですよ」
「これだから、あんたは駄目なのよ。偏った知識だけじゃ物事は分からないものよ。ほら、週三回も通っているのよ。普通に考えて尋常じゃないわよ。週三よ!」
「うっ…確かに週二回までなら理解できますが、週三回は多過ぎるかもしれないです」
「何言ってんのよ、お爺様の基準であんたは考えるから駄目なのよ。普通は週0が当たり前よ。あれは結婚しても浮気しまくる典型的な駄目男よ」
「うっ…確かに浮気も愛人も駄目ですよね」
でも、どんなに不満があったとしても、この世界にはウィル様しか男性はいません。どんな変態屑野朗でも酒を飲んだ勢いを利用して、一回ぐらいは寝ないといけません。世界の為にも我慢は必要です。これは私達に与えられた仕事なんです。
「そんな事を言っても、ウィル様しか男性がいないのなら、子供を産む為に我慢しないといけません。アシュリー様もそれは分かっているでしょう?」
「別にいいんじゃないの。女は私以外にも五人もいるんだから、誰か一人が頑張ればいいのよ。それに近親相姦を繰り返させるこの世界の仕組みは変よ。それにあいつは不死者になった。少なくとも千年ぐらいは生き続けるわ。そんな人間の相手をするのは面倒なだけよ」
そうです。ウィル様は私の所為で不死者になりました。不死者と言っても、寿命が無いという訳ではありません。神人ならば、千年、一万年という気が遠くなるような時間を生きる可能性があります。ここにいる六人の女性は誰一人、ウィル様と一緒に生きる事は出来ません。ここは責任を取って、S級冒険者でもある私が犠牲になるしかないのです。
私の自己犠牲でこの世界が存続するのなら、きっとこれが私のやった事の罪の罰なのです。私が産んだ娘がウィル様に女として抱かれる姿は吐き気がしますが、仕方ありません。
「それはそうと、エミリアはあいつの本命は誰だと思う?」
「えっ、ウィル様の本命ですか?」
そんな事を考えた事もありませんでした。
クレアとミランダはただの知り合いですし、ユンとは勘違いで婚約者になってしまっただけだと言っていました。私とアシュリー様は除外するとして、ナナリーさんはただの道具屋の店員だと言っていました。もしかすると、本当に好きな人は消された世界に残っていたのでは?
「私の予想では、あれに本命なんていないわよ。女なら誰でもいいのよ。あんたがギルド長と刺し違えて瀕死の時も、宿屋で私に子作りの練習しようとか言い出したのよ。ふっふ、引き千切るって脅したら、股間を押さえてビビっていたわね」
「へぇー、塵ですね。最低の塵ですね」
私が死にかけているのに、アシュリー様とそんな事をしようとしていたなんて、きっと心石の契約者ならどっちでも良かったんですね。そういえば、記憶を消そうと首を締めていた時も私の胸を撫で回していました。本当にド変態じゃないですか。
「きっと下半身に脳味噌が付いているのよ。これだから村育ちの農民は嫌なのよ。私はあのユンっていう子供をあいつの嫁にするつもりよ。農民同士で頑張ればいいのよ」
私もそう思います。きっと小さな脳味噌が二つ付いているんですね。
まあ、冗談はこの辺にして、確かに言われてみると二人をくっ付けるのが最善の手のように見えてきます。ユンは魔法使いで、私よりも6歳も若いです。同じサークス村の住民同士なら気心が知れた間柄のはずです。ウィル様の結婚相手としては文句の付け所がありません。
「では、私とアシュリー様でウィル様とユンをくっ付けるように頑張りましょうか?」
「ふっふ、甘いわね。あのナナリーなんだけど、ほら、一枚だけスタンプ一個だけのカードがあるでしょう。あの女は多分、高級売春宿の従業員よ。シャンプーの匂いが下僕が朝帰りした時と一緒だったのよ。道具屋の店員じゃないわね」
「へぇー」
高級売春宿の従業員を生き残らせたんですか。そんなにサービスが良かったんですね。本当に最低のド変態屑野朗じゃないですか。
「とりあえず、私はユンとナナリーの二人を下僕とくっ付けるから邪魔しないでよ。私以外の五人があいつと寝たら、私まで寝ないといけない流れになるでしょう。あんたも誘われてもキッパリと断るのよ」
「分かりました。でも、私はユンをウィル様とくっ付けます。売春宿の女はどう見ても愛人にしかなれません。母親には向いていません」
「協力してくれるなら、どっちでもいいわ。それとあいつの行使力には呉々も気を付けるのよ。かなり強力だから、油断していると支配されて、ベッドの上で裸であいつと寝ている事になるわよ。行使力があれば少しは抵抗出来るから、時間を見つけて、クレアとミランダの二人にも契約させるのよ」
「分かりました。やってみます」
クレアとミランダの二人は自力では心石と契約する力がないので、契約させるには私か、アシュリー様の協力が必要です。魔鳥船の操縦にMPを消費するので、契約させるのは村に帰った後になりそうですね。
それにしても、行使力で無理矢理ですか? でも、ウィル様はなんとなく、そんな事はしないと思います。そのつもりがあるのなら、直ぐに行使力を使ったはずです。もしかすると、その必要がないという事でしょうか? だとしたら、やっぱり婚約者のユンが本命という事ですね。
「ほら、あの下僕なんだけど、売春宿のスタンプカードを大量に持っていたのよ。絶対にどの町にもコレがいたわよ」
アシュリー様の手にはウィル様が捨てた売春宿のスタンプカードが握られていました。この新世界には必要ないと捨てたみたいです。19歳という年齢を考えれば仕方ないとは思いつつも、ちょっと多過ぎる気もします。
スタンプが押されている日付けを確認すると、私と町を巡って、龍剣のレベルを上げている時にも利用していた事が分かります。通りで商品が売れた数と収益が合わないはずです。ウィル様がお金をちょろまかして売春宿で遊んでいたようです。
「別にいいじゃないですか。年頃の男の子ならそれぐらいは普通ですよ」
「これだから、あんたは駄目なのよ。偏った知識だけじゃ物事は分からないものよ。ほら、週三回も通っているのよ。普通に考えて尋常じゃないわよ。週三よ!」
「うっ…確かに週二回までなら理解できますが、週三回は多過ぎるかもしれないです」
「何言ってんのよ、お爺様の基準であんたは考えるから駄目なのよ。普通は週0が当たり前よ。あれは結婚しても浮気しまくる典型的な駄目男よ」
「うっ…確かに浮気も愛人も駄目ですよね」
でも、どんなに不満があったとしても、この世界にはウィル様しか男性はいません。どんな変態屑野朗でも酒を飲んだ勢いを利用して、一回ぐらいは寝ないといけません。世界の為にも我慢は必要です。これは私達に与えられた仕事なんです。
「そんな事を言っても、ウィル様しか男性がいないのなら、子供を産む為に我慢しないといけません。アシュリー様もそれは分かっているでしょう?」
「別にいいんじゃないの。女は私以外にも五人もいるんだから、誰か一人が頑張ればいいのよ。それに近親相姦を繰り返させるこの世界の仕組みは変よ。それにあいつは不死者になった。少なくとも千年ぐらいは生き続けるわ。そんな人間の相手をするのは面倒なだけよ」
そうです。ウィル様は私の所為で不死者になりました。不死者と言っても、寿命が無いという訳ではありません。神人ならば、千年、一万年という気が遠くなるような時間を生きる可能性があります。ここにいる六人の女性は誰一人、ウィル様と一緒に生きる事は出来ません。ここは責任を取って、S級冒険者でもある私が犠牲になるしかないのです。
私の自己犠牲でこの世界が存続するのなら、きっとこれが私のやった事の罪の罰なのです。私が産んだ娘がウィル様に女として抱かれる姿は吐き気がしますが、仕方ありません。
「それはそうと、エミリアはあいつの本命は誰だと思う?」
「えっ、ウィル様の本命ですか?」
そんな事を考えた事もありませんでした。
クレアとミランダはただの知り合いですし、ユンとは勘違いで婚約者になってしまっただけだと言っていました。私とアシュリー様は除外するとして、ナナリーさんはただの道具屋の店員だと言っていました。もしかすると、本当に好きな人は消された世界に残っていたのでは?
「私の予想では、あれに本命なんていないわよ。女なら誰でもいいのよ。あんたがギルド長と刺し違えて瀕死の時も、宿屋で私に子作りの練習しようとか言い出したのよ。ふっふ、引き千切るって脅したら、股間を押さえてビビっていたわね」
「へぇー、塵ですね。最低の塵ですね」
私が死にかけているのに、アシュリー様とそんな事をしようとしていたなんて、きっと心石の契約者ならどっちでも良かったんですね。そういえば、記憶を消そうと首を締めていた時も私の胸を撫で回していました。本当にド変態じゃないですか。
「きっと下半身に脳味噌が付いているのよ。これだから村育ちの農民は嫌なのよ。私はあのユンっていう子供をあいつの嫁にするつもりよ。農民同士で頑張ればいいのよ」
私もそう思います。きっと小さな脳味噌が二つ付いているんですね。
まあ、冗談はこの辺にして、確かに言われてみると二人をくっ付けるのが最善の手のように見えてきます。ユンは魔法使いで、私よりも6歳も若いです。同じサークス村の住民同士なら気心が知れた間柄のはずです。ウィル様の結婚相手としては文句の付け所がありません。
「では、私とアシュリー様でウィル様とユンをくっ付けるように頑張りましょうか?」
「ふっふ、甘いわね。あのナナリーなんだけど、ほら、一枚だけスタンプ一個だけのカードがあるでしょう。あの女は多分、高級売春宿の従業員よ。シャンプーの匂いが下僕が朝帰りした時と一緒だったのよ。道具屋の店員じゃないわね」
「へぇー」
高級売春宿の従業員を生き残らせたんですか。そんなにサービスが良かったんですね。本当に最低のド変態屑野朗じゃないですか。
「とりあえず、私はユンとナナリーの二人を下僕とくっ付けるから邪魔しないでよ。私以外の五人があいつと寝たら、私まで寝ないといけない流れになるでしょう。あんたも誘われてもキッパリと断るのよ」
「分かりました。でも、私はユンをウィル様とくっ付けます。売春宿の女はどう見ても愛人にしかなれません。母親には向いていません」
「協力してくれるなら、どっちでもいいわ。それとあいつの行使力には呉々も気を付けるのよ。かなり強力だから、油断していると支配されて、ベッドの上で裸であいつと寝ている事になるわよ。行使力があれば少しは抵抗出来るから、時間を見つけて、クレアとミランダの二人にも契約させるのよ」
「分かりました。やってみます」
クレアとミランダの二人は自力では心石と契約する力がないので、契約させるには私か、アシュリー様の協力が必要です。魔鳥船の操縦にMPを消費するので、契約させるのは村に帰った後になりそうですね。
それにしても、行使力で無理矢理ですか? でも、ウィル様はなんとなく、そんな事はしないと思います。そのつもりがあるのなら、直ぐに行使力を使ったはずです。もしかすると、その必要がないという事でしょうか? だとしたら、やっぱり婚約者のユンが本命という事ですね。
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