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第1章 解雇されたF級冒険者
第8話 ウィルと魔物マンキー
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マンキーの絶叫と血飛沫と共に、マンキーの両腕が飛んでいく。別のマンキーが攻撃後の隙を見逃さずに、木の枝を振り下ろしながら右側から飛び掛かって来た。
剣をしっかりと水平状態のままに握ると、左足を軸にして、身体と剣を回転させてその攻撃を避ける。避けると同時に相手を攻撃する回転斬りである。マンキーは着地と同時に隙だらけになっている首筋を、剣で切り落とされた。
二匹のマンキーを素早く戦闘不能にすると、残りの一匹が恐怖で案山子のように動かなくなってしまう。容赦なくそのマンキーの顎目掛けて、剣を下から上に振り上げて粉砕した。
(あと三匹)
前方の道を塞いでいたマンキー三匹を倒すと、後方を振り返る。荷台の幌を引き剥がそうとする三匹のマンキーが目に入った。剣を右手一本でしっかりと握ると、荷台の中で必死に抵抗する二人を急いで助けに向かった。
「急いで木箱を積め! そうすれば中には入って来れない!」
荷台の中から帽子の御者の声が聞こえてきた。確かに大量にある積み荷の木箱を使えば、壁を作る事が出来る。御者達が荷台に籠城しようとした時は、馬鹿な考えだと思ったが、この方法ならば助けが来る数時間は持ち堪える事が出来る。
だが、それは相手が少人数の場合のみである。相手の縄張りに侵入しておいて、増援が来ないと思うのは、そうあって欲しいと願う、希望的観測でしかない。
こっちに気づいた二匹のマンキーが、幌を破るのを諦めて向かって来た。残念ながら、自分の四分の一程度の素早さしかないマンキーの動作は、ゆっくりとしか見えない。すれ違い様に剣を右に左に素早く振り抜いて、二匹の胴体を深く斬り裂いた。
幌にしがみ付いていた最後の一匹が地面に飛び下りて来た。仲間が全員やられた事に怒っているようだ。木の枝で地面を激しく叩いている。
「キィ~‼︎ キィ~‼︎」
マンキーは叫びながら、二本の木の枝を左右にデタラメに振り回して抵抗する。マンキーの逃げ足では逃げる事は出来ない。そして、こっちは見逃すつもりはない。剣を両手でしっかりと握り、上段に構えたまま、ゆっくりと近づいて行く。腕だろうが、木の枝だろうが、相手が弱者なら、力で叩き斬れば済む話である。
左右の木の枝が振られた直後、大きく右足で踏み込んで、剣をマンキーの脳天に叩きつける。剣は頭蓋骨を砕き、首の途中で止まってしまった。
「くっ! さっさと抜けろよ!」
マンキーの胴体を足の裏で蹴っ飛ばして、剣を引き抜いた。早く馬車を出発させないと、別のマンキーがやって来る可能性もある。そして、馬車で出発する前にやる事もある。
「もう大丈夫です。マンキーは六匹全部倒しました。急いで出発しましょう」
荷台の側面の幌を叩きながら、中の御者二人に知らせる。直ぐに返事が返ってきた。
「それは良かった。あんたが倒したのか?」
「ええっ、相手がマンキー六匹程度なら、囲まれなければ平気です。とりあえず話は後です。魔物の増援が来たら最悪です」
「すまねぇな。直ぐに箱を退かして出発するよ!」
中からガタゴトと木箱を動かす音が聞こえてきた。こっちも早くマンキーの死体を道の端に移動しないといけない。
「これで良しと」
死体を一箇所に山積みすると、魔物除けの粉を死体に振りかける。この粉を振りかける事で血の臭いをある程度軽減される効果があるそうだ。倒した魔物の死体を喰いに、別の強い魔物がやって来たら最悪である。
「お~い、出発するぞ! 早く乗ってくれ!」
「ああっ、分かってる。今行くよ」
御者の若い方が大声で呼んできた。魔物に聞こえるので、あまり大声は出さない方がいいのだが、注意はしなくていいようだ。隣の帽子の御者がもう叱っている。
「兄さん、悪いな。料金は無料にするよ」
揺れる荷台で剣に付いた血と油を綺麗にしていると、帽子の御者が謝りながら金貨1枚を返してきた。確かに乗り合い馬車の暗黙のルールに、魔物が出た場合、その魔物を倒した者の料金は無料になるというものがある。
このロウワーズ山の魔物の出現率は五回中一回ぐらい、前のシャーウッドの森でも魔物が出現して、冒険者四人に倒されたので、実質金貨五枚の赤字である。本当は払いたくはないはずだ。
それにしても、二回も魔物に遭遇するのは相当に運が悪い事だ。御者の運が悪いのか、それとも乗客に厄病神でも乗っていたのか。だが、一番運が悪いのは、冒険者の乗っている馬車を襲った魔物達だったのかもしれない。
念の為、しばらくは御者と一緒に魔物の襲撃を警戒していたが、それは無駄になってしまった。目の前の道が岩から土に変わってきている。この先はもう、魔物はおそらく出現しない。あとは野宿をして、サークス村に帰るだけである。
剣をしっかりと水平状態のままに握ると、左足を軸にして、身体と剣を回転させてその攻撃を避ける。避けると同時に相手を攻撃する回転斬りである。マンキーは着地と同時に隙だらけになっている首筋を、剣で切り落とされた。
二匹のマンキーを素早く戦闘不能にすると、残りの一匹が恐怖で案山子のように動かなくなってしまう。容赦なくそのマンキーの顎目掛けて、剣を下から上に振り上げて粉砕した。
(あと三匹)
前方の道を塞いでいたマンキー三匹を倒すと、後方を振り返る。荷台の幌を引き剥がそうとする三匹のマンキーが目に入った。剣を右手一本でしっかりと握ると、荷台の中で必死に抵抗する二人を急いで助けに向かった。
「急いで木箱を積め! そうすれば中には入って来れない!」
荷台の中から帽子の御者の声が聞こえてきた。確かに大量にある積み荷の木箱を使えば、壁を作る事が出来る。御者達が荷台に籠城しようとした時は、馬鹿な考えだと思ったが、この方法ならば助けが来る数時間は持ち堪える事が出来る。
だが、それは相手が少人数の場合のみである。相手の縄張りに侵入しておいて、増援が来ないと思うのは、そうあって欲しいと願う、希望的観測でしかない。
こっちに気づいた二匹のマンキーが、幌を破るのを諦めて向かって来た。残念ながら、自分の四分の一程度の素早さしかないマンキーの動作は、ゆっくりとしか見えない。すれ違い様に剣を右に左に素早く振り抜いて、二匹の胴体を深く斬り裂いた。
幌にしがみ付いていた最後の一匹が地面に飛び下りて来た。仲間が全員やられた事に怒っているようだ。木の枝で地面を激しく叩いている。
「キィ~‼︎ キィ~‼︎」
マンキーは叫びながら、二本の木の枝を左右にデタラメに振り回して抵抗する。マンキーの逃げ足では逃げる事は出来ない。そして、こっちは見逃すつもりはない。剣を両手でしっかりと握り、上段に構えたまま、ゆっくりと近づいて行く。腕だろうが、木の枝だろうが、相手が弱者なら、力で叩き斬れば済む話である。
左右の木の枝が振られた直後、大きく右足で踏み込んで、剣をマンキーの脳天に叩きつける。剣は頭蓋骨を砕き、首の途中で止まってしまった。
「くっ! さっさと抜けろよ!」
マンキーの胴体を足の裏で蹴っ飛ばして、剣を引き抜いた。早く馬車を出発させないと、別のマンキーがやって来る可能性もある。そして、馬車で出発する前にやる事もある。
「もう大丈夫です。マンキーは六匹全部倒しました。急いで出発しましょう」
荷台の側面の幌を叩きながら、中の御者二人に知らせる。直ぐに返事が返ってきた。
「それは良かった。あんたが倒したのか?」
「ええっ、相手がマンキー六匹程度なら、囲まれなければ平気です。とりあえず話は後です。魔物の増援が来たら最悪です」
「すまねぇな。直ぐに箱を退かして出発するよ!」
中からガタゴトと木箱を動かす音が聞こえてきた。こっちも早くマンキーの死体を道の端に移動しないといけない。
「これで良しと」
死体を一箇所に山積みすると、魔物除けの粉を死体に振りかける。この粉を振りかける事で血の臭いをある程度軽減される効果があるそうだ。倒した魔物の死体を喰いに、別の強い魔物がやって来たら最悪である。
「お~い、出発するぞ! 早く乗ってくれ!」
「ああっ、分かってる。今行くよ」
御者の若い方が大声で呼んできた。魔物に聞こえるので、あまり大声は出さない方がいいのだが、注意はしなくていいようだ。隣の帽子の御者がもう叱っている。
「兄さん、悪いな。料金は無料にするよ」
揺れる荷台で剣に付いた血と油を綺麗にしていると、帽子の御者が謝りながら金貨1枚を返してきた。確かに乗り合い馬車の暗黙のルールに、魔物が出た場合、その魔物を倒した者の料金は無料になるというものがある。
このロウワーズ山の魔物の出現率は五回中一回ぐらい、前のシャーウッドの森でも魔物が出現して、冒険者四人に倒されたので、実質金貨五枚の赤字である。本当は払いたくはないはずだ。
それにしても、二回も魔物に遭遇するのは相当に運が悪い事だ。御者の運が悪いのか、それとも乗客に厄病神でも乗っていたのか。だが、一番運が悪いのは、冒険者の乗っている馬車を襲った魔物達だったのかもしれない。
念の為、しばらくは御者と一緒に魔物の襲撃を警戒していたが、それは無駄になってしまった。目の前の道が岩から土に変わってきている。この先はもう、魔物はおそらく出現しない。あとは野宿をして、サークス村に帰るだけである。
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