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第3話

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「王命である! 偽聖女改め——盗賊アリシアを必ず見つけ出せ!」
「「「はっ!」」」

 騎士団長である我が、眼前の広場に整列する騎士団の精鋭部隊である第一騎士団員50名に命じた。
 どんな手段を使って国宝を城から持ち出したかは不明だが、他に犯人の心当たりがない。
 第一疑わしい罪でアリシアは有罪だ。国境の封鎖は完了した。国中に手配書も配り終えた。
 さらに念には念を入れて、冒険者ギルド、盗賊ギルド、暗殺ギルドにも極秘依頼を出しておいた。
 これで万が一にも国外に逃げられていたとしても問題ない。ギルドは世界中の町や村に点在している。
 例え地の果てに逃げたとしても必ず見つけ出してみせる。

「ピィーッ! ピィーッ!」
「来たか」

 空を見上げると早速伝令鳩が一羽降りてきた。
 千羽を軽く超える伝令鳩が有益な情報を常時運んでくる。

「騎士団長! アリシアの目撃情報です!」
「どこだ!」

 目撃情報とは幸先いいが、似た女など山程いる。
 まあ、それも問題なかろう。王子が今まで連れてきた偽聖女は美しいものが多い。
 アリシアは鈍い金髪で、後ろ髪の長さは膝下まであり、その後ろ髪を背中辺りで三つ編みにしていた。あれだけ長い髪の女はそうそういない。
 顔の方はちょっと間が抜けたアホな感じで、胸は普通だったが小さくはなかった。
 ここは是非とも我が手で捕まえて、身体の隅々まで直々に調べてやる。
 特に胸は念入りに調べてやる。女が気づかれずに城から宝を持ち出すならここしか考えられない。

「それが……城下町で見つけたそうであります! それもついさっきであります!」
「何だと! おのれ~~舐め腐りおって! ええい、早馬を用意せよ! それと煙幕弾を有りったけだ! 俺がこの手で捕まえてやる!」

 部下の報告に内心大興奮した。早くも我が願いが成就しそうだ。
 国宝盗んだかもしれない犯人が目と鼻の先の城下町にいる。

 だが、これは時間との勝負だ。
 騎士団員達は我の一声で抑えられるが、金に目が眩んだ住民やギルドは違う。
 懸賞金も胸も早い者勝ちだ。揉み遅れるわけにはいかない。
 早馬に跨ると部下を引き連れて、王宮の広場から城下町に駆け降りた。
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