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王様ルート★
第四十六話★ おもてなし
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「なんだぁ……意外とまともなんだ」
テントの中に入った麻未はホッとしている。テントの床には分厚い床マットを敷いている。寝袋は暖かく、それに洞窟内の気温は外よりも低い。掻いていた汗も引いていくはずだ。それに洞窟の奥は広いので、狭い通路のような圧迫感を感じない。身体も心も開放的な気分にさせてくれる。
「麻未ちゃんは汗で湿っている服を着替えた方がいいよ。洞窟の中は気温が外よりも低いから、身体が冷えてしまうよ。覗いたりしないから、テントの中で着替えて休んでいてよ」
「はい。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
テントの入り口は二枚の布で出来ている二重式だ。チャックも二つある。麻未は一つだけチャックを閉めると、茶色の旅行鞄から着替えを取り出しているようだ。勿体ないけど、テントの中で明かりを使わせている。これで着替えているシルエットが見えればいいのだけど、それは見えない。
「ちょっと、外に出て来るけど、すぐに戻るから」
「えっ、何をしに行くんですか? すぐに戻って来るんですよね?」
「畑に水をやりに行くだけだよ。10分もあれば終わるから」
「本当に10分で戻って来てくださいよ!」
ここに置いて行かれないか心配なんだろうけど、少し外に出るのにさえ、麻未の許可を得ないといけないのは面倒だ。まあ、今だけだと思うしかない。それに洞窟に辿り着いた時に畑を見たけど、獣に荒らされている様子はなかった。軽く水を撒くだけなら、10分もかからずに終わる。
あとは天気予報で雨の日があるか確認しないといけない。ここは圏外じゃないから、麻美のスマホに最後の仕事をしてもらおう。雨の日ならば、外で何もする事が出来ないから、洞窟の中に麻未とずっと一緒にいる事が出来る。
「ちょうど、三日後に雨か……晴れだと言っておくか」
狭い廊下を通るように、一人で素早く洞窟の外に出ると天気予報をチェックした。週間天気予報では雨の日が一日だけあった。麻未が、『明日帰る』と言い出さなければ、四泊五日は洞窟に拘束する事は可能だ。数日だけでも居たいと思わせるには今日が勝負になる。最高のおもてなしを考えないといけない。
料理は駄目。女子なら流れ星でも見せれば喜ぶかもしれないけど、町から見える星空とほとんど変わらない。野生動物との触れ合いは、見せられるのが野鳥ぐらいしかいない。あとは採れたての野菜ぐらいだけど……南がヤキモチを妬くかもしれない。
「でも、それもいいかもしれない」
畑には小さいけれども、トウモロコシが出来ている。まだ食べるには早いけど、使うには十分な大きさだ。明日、使ってみるのも面白いそうだ。麻未ならもしかすると、こういうおもてなしの方が喜ぶかもしれない。
畑に水を撒くと予定通りに洞窟に戻った。落とし穴の罠は麻未に教えないと大怪我されたら大変だ。早めに教えて、洞窟の外を変に動き回らないように釘を刺しておこう。
「麻未ちゃん、戻ったよ」
「……」
「麻……」
テントの外から名前を呼んだけど返事は返って来ない。もう一度、名前を呼ぼうと思ったけど、おそらく疲れて眠っているのかもしれない。そう思って、ソッとテントのチャックを動かして中を見た。予想通りに服を着替えた後に疲れて眠ったようだ。
「すぅ……すぅ……」
麻美は無防備に黄色の半袖シャツとデニムのホットパンツを着て寝ている。着ていた汗で濡れた服はテントの中に放置されている。脱いだ服の上にパステルグリーンのブラとパンティーが置かれている。今の時間なら外に干していれば、明日の朝には乾くはずだ。
起こさないように服を回収すると、テントのチャックをソッと閉めた。汗で湿った下着からは匂いはほとんどしない。元々、体臭が薄いのだろう。抱き締めた時も髪の匂いがほとんどしなかった。
「もしかすると、体臭が薄い女性が好みなのかもしれないな」
麻未の洗濯物を干しながら、南の事を考えた。女子高生の大塚南とは会社の歓送迎会の帰り道に出会った。あれ以来、ずっと一緒にいる。私の押し隠していた本性を引き摺り出した悪くて、愛しい女性だ。
テントの中に入った麻未はホッとしている。テントの床には分厚い床マットを敷いている。寝袋は暖かく、それに洞窟内の気温は外よりも低い。掻いていた汗も引いていくはずだ。それに洞窟の奥は広いので、狭い通路のような圧迫感を感じない。身体も心も開放的な気分にさせてくれる。
「麻未ちゃんは汗で湿っている服を着替えた方がいいよ。洞窟の中は気温が外よりも低いから、身体が冷えてしまうよ。覗いたりしないから、テントの中で着替えて休んでいてよ」
「はい。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
テントの入り口は二枚の布で出来ている二重式だ。チャックも二つある。麻未は一つだけチャックを閉めると、茶色の旅行鞄から着替えを取り出しているようだ。勿体ないけど、テントの中で明かりを使わせている。これで着替えているシルエットが見えればいいのだけど、それは見えない。
「ちょっと、外に出て来るけど、すぐに戻るから」
「えっ、何をしに行くんですか? すぐに戻って来るんですよね?」
「畑に水をやりに行くだけだよ。10分もあれば終わるから」
「本当に10分で戻って来てくださいよ!」
ここに置いて行かれないか心配なんだろうけど、少し外に出るのにさえ、麻未の許可を得ないといけないのは面倒だ。まあ、今だけだと思うしかない。それに洞窟に辿り着いた時に畑を見たけど、獣に荒らされている様子はなかった。軽く水を撒くだけなら、10分もかからずに終わる。
あとは天気予報で雨の日があるか確認しないといけない。ここは圏外じゃないから、麻美のスマホに最後の仕事をしてもらおう。雨の日ならば、外で何もする事が出来ないから、洞窟の中に麻未とずっと一緒にいる事が出来る。
「ちょうど、三日後に雨か……晴れだと言っておくか」
狭い廊下を通るように、一人で素早く洞窟の外に出ると天気予報をチェックした。週間天気予報では雨の日が一日だけあった。麻未が、『明日帰る』と言い出さなければ、四泊五日は洞窟に拘束する事は可能だ。数日だけでも居たいと思わせるには今日が勝負になる。最高のおもてなしを考えないといけない。
料理は駄目。女子なら流れ星でも見せれば喜ぶかもしれないけど、町から見える星空とほとんど変わらない。野生動物との触れ合いは、見せられるのが野鳥ぐらいしかいない。あとは採れたての野菜ぐらいだけど……南がヤキモチを妬くかもしれない。
「でも、それもいいかもしれない」
畑には小さいけれども、トウモロコシが出来ている。まだ食べるには早いけど、使うには十分な大きさだ。明日、使ってみるのも面白いそうだ。麻未ならもしかすると、こういうおもてなしの方が喜ぶかもしれない。
畑に水を撒くと予定通りに洞窟に戻った。落とし穴の罠は麻未に教えないと大怪我されたら大変だ。早めに教えて、洞窟の外を変に動き回らないように釘を刺しておこう。
「麻未ちゃん、戻ったよ」
「……」
「麻……」
テントの外から名前を呼んだけど返事は返って来ない。もう一度、名前を呼ぼうと思ったけど、おそらく疲れて眠っているのかもしれない。そう思って、ソッとテントのチャックを動かして中を見た。予想通りに服を着替えた後に疲れて眠ったようだ。
「すぅ……すぅ……」
麻美は無防備に黄色の半袖シャツとデニムのホットパンツを着て寝ている。着ていた汗で濡れた服はテントの中に放置されている。脱いだ服の上にパステルグリーンのブラとパンティーが置かれている。今の時間なら外に干していれば、明日の朝には乾くはずだ。
起こさないように服を回収すると、テントのチャックをソッと閉めた。汗で湿った下着からは匂いはほとんどしない。元々、体臭が薄いのだろう。抱き締めた時も髪の匂いがほとんどしなかった。
「もしかすると、体臭が薄い女性が好みなのかもしれないな」
麻未の洗濯物を干しながら、南の事を考えた。女子高生の大塚南とは会社の歓送迎会の帰り道に出会った。あれ以来、ずっと一緒にいる。私の押し隠していた本性を引き摺り出した悪くて、愛しい女性だ。
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