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警察ルート☆

第四十八話★ 追われる者

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「この音は……誰か、いや、何人かが、こっちに向かってきている」

 木の枝が折れる音、岩が山を転げ落ちる音、話し声、無線機のような機械音……新しく作った畑に寄って来る虫を殺していると複数の気配が近づいて来るのに気づいた。
 大型の動物ではない。音が複数聞こえてくる。団体行動するような動物がいれば、三ヶ月近くも住んでいれば遭遇しているはずだ。明確な侵入者がやって来る。処理するか、逃げるか……まずは敵の確認しよう。逃げるのは処理できない時だ。

 洞窟の中に入ると現金と食糧をバッグに詰める。そして、テントの中に声という罠を仕掛けてきた。洞窟の中に一人が入って中を確かめるはずだ。
 武器はナイフと丈夫な太い枝に金属棒を四本、黒のビニールテープでグルグル巻きにした手製の棍棒を持った。血の出る武器と血の出ない武器の二つが必要だ。

「俺が洞窟の中に入る。杉浦は共犯者がいないか外で見張っていてくれ」
「分かった。拳銃は持っていないだろうけど、武器は持っているかもしれない。気をつけろよ」
「分かってるよ。顔面が変形するまで、ぶん殴ってやるよ」
「おい。殴るのは、相模陽平だった時だけだぞ。それ以外は殴るなよ」

 洞窟の前に一人を残して、期待通りに洞窟の中に一人が入っていった。畑の罠で一人が負傷している。各個撃破が可能な状態になった。紺色の上下の制服は作業着のように見えるけど、装備を見れば三人組が警察官なのは分かる。
 洞窟に入る前に応援を呼んでいたので、複数の警察官が私を探しているのは間違いない。早く倒さなければ、大勢の狩猟犬に怯えて逃げ回る獲物になってしまう。地面に落ちている岩を持ち上げると、10メートル程真下に見える、杉浦と呼ばれる警察官の頭上に投げ落とした。

「がぁっ!」

 狙った場所に20キロ程の岩の塊が直撃した。今日は運が良い。杉浦は頭が砕けてしまったのだろうか? 地面に倒れたまま動かない。岩がハズレた場合は下に降りて、杉浦と戦えばいい。どうせ杉浦は洞窟の中に入った警察官に声を上げて、助けを呼ぶ事は出来ない。
 洞窟の中には女性をレイプしているもう一人の男がいると思っているからだ。応援を呼ぼうとした時は、『中にいる仲間に警察が来たぞと教えるつもりか? 女が死ぬぞ?』と教えてやればいい。自分の命と洞窟の中の女の命、警察官ならば、どちらを選ぶか答えを聞く必要もない。

「まずは服を着替えるか……」

 畑の罠に引っ掛かった可愛い獲物を殺してからでもいい。けれども、応援が来た場合は服を着替えていないと厄介な事になる。
 アメリカ映画の中では、建物の中に閉じ込められた犯人が警察官や消防士を倒して、その制服を着て外に脱出するシーンがよくある。日本で通用するか分からないが、今の服よりは効果はあるだろう。

「拳銃は持っていないのか……無線機に手錠、伸縮する特殊警棒か……」

 杉浦の服を脱がすとそれを着ていく。杉浦の携帯電話は顔認証なので、とりあえず死体の顔で解除は出来るみたいだ。使う必要になるとは思えないけど、交渉する時に必要になる。
 おそらく探しているのは私ではなく、松島麻未だ。どこにいるか必ず聞き出そうとする。つまりは私を殺すのは聞き出した後にしか出来ない。これでは、どちらが追い詰められる獲物になるか分からないな。
 
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