【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第三十一話☆ 関連性調査

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 俺は刑事の勘を信じて、相模陽平が自殺したフリをした日から三ヶ月前までの、県内で発生した未解決事件、それも重大事件の可能性があるもの全てを集めてみた。
 こっちは睡眠時間を削って調べているんだ。それなりに納得のいく答えが欲しい。これで奴の仕事が営業のような外回りが多かったら、捜査範囲が拡大していた。そうなると、かなり面倒な事になる。

「ひき逃げ、連続放火、コンビニ強盗、行方不明か……」

 自動車によるひき逃げ事件の被害者は高齢者の婆さんで、車と接触した際に、転倒して腰骨と右肩の骨を折る重傷を負っている。現在も入院中だ。幸いな事に意識は取り戻している。

 放火の方は関連性があるのは五件。違法な路上駐車をしているバイクのみを狙った犯行で、犯行時間は全て夜だった。相模が仕事終わりの一杯感覚でやろうと思えば可能な時間帯だ。

 コンビニ強盗は一件だけだが、抵抗した男性店員の腹を包丁で二回刺して、重傷を負わせている。こっちも被害者は意識を取り戻しているが、臓器の一部を大きく傷つけられている。しばらくは入院生活を余儀なくされている。

 最後に行方不明事件だが、これは人数が多い。二十四人が行方不明中だ。相模陽平と同じように自殺している可能性が高い。相模はフリだが、行方不明者の何人かは実際に自殺している可能性がある。もちろん、友人の家に居候している場合や付き合っている異性と同棲している場合もある。それでも、関係性があるものが一つだけあった。

「帰り道と日付と時間帯を考えると、この行方不明の女子高校生と関連性がありそうなんだが……」

 行方不明と誘拐では、まったく内容が違う。大塚南おおつかみなみ、17歳。午後10時頃に近くのコンビニに行くと言って、家から出た後に行方不明になったそうだ。来年には大学受験を控えていて、家庭でも学校でも問題行動はなかったそうだ。
 そして、大塚南が行方不明になった日に、相模陽平は会社の歓送迎会で、大塚南の自宅近くのホテルに行っていたそうだ。自家用車で来ていたので、酒は飲んでいなかったという証言はあるが、証言の信頼性はいまいちだ。飲み会に来て、酒を一滴も飲まない奴はいない。逆もそうだ。酒を勧めない人間もいない。

「車を念入りに調べていれば、何か出ていた可能性もあるだがな」

 ひき逃げならば車に損失がある。飲酒運転で大塚南を車で轢いていた可能性もある。誘拐した可能性もある。
 海岸に放置されていた車は、相模の遺書に処分して欲しいと書かれていたので、家族によって、その通りに処分されたそうだ。相模が住んでいたマンションも、とっくに解約されて新しい住民が住んでいた。そっちも手掛かりは期待できない。

「自殺と事件の両方を視野に入れて調査したんだ。車に血痕なんて残っていたら鑑識が見落とすとは思えない。やはり考え過ぎか」

 相模の車が放置されたのは他県だった。あっちで一回調べられた後に、こっちの方にレッカー車で運ばれて、そこからこっちでも再調査した。絶対に見落としはないはずだ。

「ふぅ~、これ以上は調査しても相模が自殺したフリの理由は分からないな。捕まえて本人に聞くしかない」

 結局、動機は本人にしか分からない。そういつもの結論を出すと、署内の仮眠室に向かった。明日は家に帰って、自分の布団で眠りたいものだ。
 

 
 
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