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第二十七話★ 獲物を求めてスーパーへ

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 被害者は大人の女だ。大人女と言えば、20~60歳の間になる。60歳以上は老人女になるが、それでも範囲が広過ぎる。20代と30代、40代と50代で別々に分けた方がよかった。今度からはそうしよう。

 ターゲットは決まった。次はその人物に何をするかだ。ターゲットが女性ならば、短絡的に考えて、レイプして金を奪おうという発想しか浮かばない。
 問題はそれをやった場合の結果だ。犯罪に成功した時と失敗した時があるとは思わないが、失敗した場合は警察に未遂でも捕まってしまう。成功した場合は快楽と金を手に入れる事が出来る。そして、当然のように犯罪者として正式に追われる事になる。

「成功しても失敗しても警察に追われる事は決定事項だ。それを成功と言えるだろうか?」

 完全犯罪。おそらく誰にもバレずに犯罪を犯す事だと思う。財布の中に大量の一円玉が入っているならば、一枚ぐらい盗んでも気づかれにくい。ある種の完全犯罪とも言える。
 夜中に一人暮らしの女性の部屋に忍び込んで、熟睡している女性をレイプする。全然起きない。財布の中からお札だけを抜き取って、大量の空のビール缶を用意して、女性の部屋にばら撒いて帰る。そして、朝目覚めた女性は飲み過ぎたと思い込む……。

「そんな馬鹿な話はあり得ない。もっと真面目に考えないと……」

 そもそも、町に降りて来たのは女性をレイプする為じゃない。金が欲しいからだ。山で冬籠りするには食糧が大量に必要になる。だとしたら、スーパーの女性店員を人質にして食糧強盗をすればいい。食糧が必要なんだから、わざわざ遠回りして現金を集めなくてもいいはずだ。

「とりあえずスーパーに行こう」

 近場のスーパーに何が売っているか調べないと始まらない。冬籠りといっても、三日に一回買い物に行くとかでもいいんだ。持ち切れないほどの食糧を大量に買う必要はない。悪目立ちするのは控えたい。
 それに昼時だ。専業主婦の大人女が買い物に来ているはずだ。徒歩で来ている場合は後ろを付いて行けば家まで辿り着ける。家族構成は年齢を見れば、どのぐらいの子供がいるかは分かる。20代前半で赤ん坊を抱えている女性ならば、旦那は仕事中で家には赤ん坊を任せられる人間がいない証拠だ。

「何だ。少し考えれば簡単じゃないか。これなら簡単に出来る」

 完全犯罪は出来ないとしても、何かをやって、警察が来る前に逃げる事は出来る。万が一にも失敗しても、現金は半分程度の120万円を持って来た。山に逃げる余裕がない時は、しばらく他所で熱りが冷めるまで隠れるしかない。それこそ、遠くの場所で犯罪を起こした方が、山の洞窟に警察の注意が向かないはずだ。失敗しても成功しても、私の方がまだまだ有利な展開が待っている。

「ざるそばは売っていないのか……」

 前に住んでいた町の食料品店には、ざるそばとお寿司がセットになった弁当が売られていた。このスーパーもそこそこ大きい方だと思うけど、平家のスーパーではこの程度なんだろう。とりあえず肉と野菜は食べ飽きたから、それ以外が食べたい。とくにスーパーの肉料理なんて食べてしまったら、野鳥の焼き鳥がクソ不味く感じてしまう。絶対に肉は駄目だ。

 とりあえずお腹一杯食べたい。白身魚のフライ弁当、塩鮭の弁当、ペットボトルのお茶を持って、レジに並ぶ事にした。

「すみません。浜松警察署の者なんですけど、相模陽平さんですか?」

 知らない若い男が警察手帳を取り出して、自分の名前を言っている。私の事を探している人がいるなんて……。

 
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