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第十七訳★ 夏の対策
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暑い。三文字の組み合わせで今の状況を端的に表すならこうだろう。山を降りて、海で朝から夕方まで泳いでいれば、そんな事は思わないだろう。
けれども、今日は七月十一日。海開きにはまだ早い。それに畑を拡張して、ニンジンとキャベツに挑戦している。どちらも難易度が少し高いらしい。カブとキュウリの収穫には成功したので、購入した種と適した時期を無駄にするよりはいいはずだ。
「自家用プールを持てる日が来るとは思わなかったな」
湧き水の湧く地面の周囲をスコップで掘り、地面の底には小石を撒いて敷いていく。目指すは子供用のプールだ。時期的にはホームセンターにビニールプールぐらいは売られている。山を六時間降りて購入しに行く方が作るよりは早いぐらいだ。
だが、それでは面白くはない。ここは苦労してでも作るべきだ。汗と泥に塗れて入る冷たい自家製プールは最高に気持ちいいはずだ。
ジャア、シャア。ジャア、シャア。ジャア、シャア。
ひたすらに泥水が混じった土砂をスコップをすくっては、遠くに投げる。すくっては遠くに投げるを繰り返す。単純に土木作業は楽しい。こんな土を掘るだけの作業が実際の仕事現場にないとしてもだ。
海賊船の船長は仕事がない時は、手下達に甲板の上を一日中掃除させるそうだ。そうやって手下達の反乱を防止していたらしい……理由は分からないが、人は目標を持って行動する事で、余計な事を考える必要がなくなるという事だ。そういう意味では、野菜作りや鳥を捕獲する行為は、精神を落ち着かせる良い薬になっているという訳だ。
「あとは周囲を岩で囲んで、水を溜めれるようになれば問題ないはずだ」
広く浅くか、狭く深くか……自家製プールを作るなら選べるのはこの二種類になる。けれども、深く掘るのが無理ならば、広く浅いプールを作るしかない。明日の朝にはプールか、泥の水溜りが完成しているはずだ。
「さて、次は何をするべきか……」
一つの作業が終われば、次の作業が待っている。日本という国ならば、通常はそうだ。そして、その繰り返される日々に嫌気が差して精神を病んでしまう。何事もほどほどにしないと駄目だという教訓だと思う。
けれども、必要な事はやるべきだ。時期的にはカブト虫やクワガタ虫を捕りに来る若者達がいるかもしれない。今までもキノコ狩りや山菜狩りをする人が近くまで来ていたかもしれない。夏は特に危険な季節だと思う。
「余程の馬鹿じゃなければ、夜に森を三時間以上も歩かないか……」
大人数での肝試しに危険な山道はまず登らない。起きている時間にやって来れば対応する事が出来る。けれども、対応とは何だ?
これは尖閣諸島などの領土問題と同じだ。お互いが自分の国だと主張した時、どうやって解決するかだ。そして、私の国は圧倒的に武力で劣っている。領土を主張しても蟻を踏み潰すように消されてしまう。
いや、消されない可能性はある。戦わずとも、何十年もこの洞窟周辺で暮らし続けば、僅かな領土を、慈悲で無償で貸し与えてもらえるかもしれない。
敵の敵は味方だ。そして、敵を作るかどうかを決めるのは自分だ。侵入者を敵として排除するよりは、味方に出来れば、それこそ頼もしい力になるだろう。
けれども、今日は七月十一日。海開きにはまだ早い。それに畑を拡張して、ニンジンとキャベツに挑戦している。どちらも難易度が少し高いらしい。カブとキュウリの収穫には成功したので、購入した種と適した時期を無駄にするよりはいいはずだ。
「自家用プールを持てる日が来るとは思わなかったな」
湧き水の湧く地面の周囲をスコップで掘り、地面の底には小石を撒いて敷いていく。目指すは子供用のプールだ。時期的にはホームセンターにビニールプールぐらいは売られている。山を六時間降りて購入しに行く方が作るよりは早いぐらいだ。
だが、それでは面白くはない。ここは苦労してでも作るべきだ。汗と泥に塗れて入る冷たい自家製プールは最高に気持ちいいはずだ。
ジャア、シャア。ジャア、シャア。ジャア、シャア。
ひたすらに泥水が混じった土砂をスコップをすくっては、遠くに投げる。すくっては遠くに投げるを繰り返す。単純に土木作業は楽しい。こんな土を掘るだけの作業が実際の仕事現場にないとしてもだ。
海賊船の船長は仕事がない時は、手下達に甲板の上を一日中掃除させるそうだ。そうやって手下達の反乱を防止していたらしい……理由は分からないが、人は目標を持って行動する事で、余計な事を考える必要がなくなるという事だ。そういう意味では、野菜作りや鳥を捕獲する行為は、精神を落ち着かせる良い薬になっているという訳だ。
「あとは周囲を岩で囲んで、水を溜めれるようになれば問題ないはずだ」
広く浅くか、狭く深くか……自家製プールを作るなら選べるのはこの二種類になる。けれども、深く掘るのが無理ならば、広く浅いプールを作るしかない。明日の朝にはプールか、泥の水溜りが完成しているはずだ。
「さて、次は何をするべきか……」
一つの作業が終われば、次の作業が待っている。日本という国ならば、通常はそうだ。そして、その繰り返される日々に嫌気が差して精神を病んでしまう。何事もほどほどにしないと駄目だという教訓だと思う。
けれども、必要な事はやるべきだ。時期的にはカブト虫やクワガタ虫を捕りに来る若者達がいるかもしれない。今までもキノコ狩りや山菜狩りをする人が近くまで来ていたかもしれない。夏は特に危険な季節だと思う。
「余程の馬鹿じゃなければ、夜に森を三時間以上も歩かないか……」
大人数での肝試しに危険な山道はまず登らない。起きている時間にやって来れば対応する事が出来る。けれども、対応とは何だ?
これは尖閣諸島などの領土問題と同じだ。お互いが自分の国だと主張した時、どうやって解決するかだ。そして、私の国は圧倒的に武力で劣っている。領土を主張しても蟻を踏み潰すように消されてしまう。
いや、消されない可能性はある。戦わずとも、何十年もこの洞窟周辺で暮らし続けば、僅かな領土を、慈悲で無償で貸し与えてもらえるかもしれない。
敵の敵は味方だ。そして、敵を作るかどうかを決めるのは自分だ。侵入者を敵として排除するよりは、味方に出来れば、それこそ頼もしい力になるだろう。
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