【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第十一話★ 白黒猫

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 森の中よりも町の方が動物に出会いやすい。散歩中の犬、野良猫、カラス、ワシ、スズメと5分もあれば簡単に見つかる。逆に森の中なら犬、猫には簡単には出会えない。まだ会った事はないが狐や狸はいるかもしれない。栗鼠なら可愛いのでペットとして飼ってもいいかもしれない。

「ニャ~。ニャ~」

 釣り人を見ながら砂浜で休んでいると、白と黒の二色が白黒猫が近くにやって来て鳴き始めた。私に餌をねだっているのだろう。
 この町は海岸に近いので野良猫が多い。一匹ぐらいなら洞窟に連れ帰っても問題ないと思う。

「そういえば、昼を食べていないな」

 朝飯は出掛ける前に食べた。けれども、昼はまだ食べていない。森の中に入れば、朝まで動けないので、夜と明日の朝、昼と三食もご飯を食べられない。近くのコンビニで適当にお弁当でも買って食べないと身体が持たない。

 休憩は終了だ。もう夕飯時なので、コンビニ弁当が売り切れになる前に買いに行かないといけない。購入後にまたここに戻って来よう。今日の目標をまだ達成していない。

 ズボンに付いた砂粒を払うと、近くのコンビニを探した。7分程度でファミリーマートを見つけた。個人的にはセブンイレブン押しだが、そこまでのこだわりはない。わざわざ探す手間を考えれば、ここでもいいだろう。

 店に入ると、「いらっしゃいませ」と男性店員の明るい声が聞こえてきた。私よりも2歳ぐらいは上に見える。レジに並ぶお客様という存在に作り笑いを浮かべて接客している。
 作られた笑いに、作られた接客マニュアルと……作られ続ける人生に、日本での生活に満足しているようだ。私には到底理解できない感情だ。

 自分がそこの棚に並ぶ130円のおにぎりと大して違わない存在だと気づいていないのだろうか?

 日本という国は、日本人という弁当を生産、消費し続ける巨大なマシーンだ。賞味期限や消費期限が切れた人間は、社会から容赦なく排除される。賞味期限や消費期限が切れていなくても、容器の僅かな損傷や詰め込まれている料理のバランスを気にして、気持ち悪い、駄目だと廃棄する。

 この国の本質がそこにある。

 私は毎日のように捨てられ、並び直される弁当のような存在になるつもりはない。購入者の主観のみで不味い、美味いと決められる事を気にする、ちっぽけな存在になるつもりもない。

 私は原石でいたい。削られ、切られ、磨かれ、綺麗に作られた宝石になるつもりはない。店に並び、決められた値段という価値を素直に受け入れる、諦めた存在にもなりたくない。

 自分の生き方を価値を他人に決めさせない。

 弁当を二つ、ショコラケーキを一つ購入するとコンビニを出た。お祝いのケーキを食べれるかは私次第だ。

 温かい弁当をさっきの砂浜に戻って座って食べていると、さっきの白黒猫が、「ニャ~、ニャ~」と鳴いて寄って来た。弁当のオカズが欲しいのだろう。米粒の一粒もやるつもりはない。
 弁当を持ち上げて立つと、白黒猫に盗られないに移動する。人気が無い所に人の目が届かない所に移動していく。白黒猫は右手に持っている唐揚げが食べたいようだ。どこまでも付いて来る。

 まるで、小さな子供が飴玉目当てに誘拐犯に付いて来るみたい。単純な相手は素直に可愛いと思う。

 周囲に人がいないか、誰も見ていないか確認すると、私は唐揚げを自分の口の中に放り込んだ。そして、肉の味を堪能しながら白黒猫の胴体を蹴り上げた。

「ギャニャア~‼︎」

 これが断末魔の声だろうか? 

 白黒猫は醜い大声で一鳴きすると走って逃げていった。蹴り殺すつもりだったのに……意外と猫は頑丈なようだ。ショコラケーキがお預けになってしまった。

 

 

 
 
 
 
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