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第十話★ 予定外の買い物

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 洞窟を中心に東西南北に道がある。東を目指せば、短時間で日本の町に到着できる。南を目指せば、東の倍はかかるが日本の町に到着できる。北と西の道は試してはいないが、地図を見た限りでは、北側は海に続いていて、西側は森が続いていた。

 目的地に向かって少し濡れた歩道を歩いて行く。一人、二人、三人……何人もの人とすれ違う。すれ違う人達の視線が全て自分に向いている気がする。

 外国人達はこういう視線を感じているのだろうか?

 いや、自分が感じているのは、それとは違うものだ。これは罪の意識だ。これは恐怖だ。悪い事をして、それが親にバレないかと、ビクビクと怯える子供だ。すれ違う人の誰かが、『こいつは悪い事をしたぞ!』と叫び出すのに怯えているのだ。

 公園が見えてきた。最初の目的地だ。公園には誰もいないようだ。
 濡れた土の地面に遊具やベンチ、トイレや水道が付いてある。その中で用があるのは、トイレになる。

 多目的用トイレに入ると濡れた泥で汚れたレインコートを脱いでいく。レインコートの中に着ていた半袖シャツが湿気で濡れて気持ちが悪い。下着も靴下も靴も全滅のようだ。左肩に下げていた俵型のバッグから、用意していた服や靴を取り出して、濡れた衣服と交換した。

 濡れた服と靴は別々のビニール袋に入れてバッグの中にしまう。泥で汚れたレインコートの上下は外にある水道で綺麗にしてから、同じようにビニール袋に入れて、バッグの中にしまった。

 服からも身体からも異臭はしない。自分の臭いは気にならないとは言うが、石鹸の匂いが微かにしている。これならば、店の中で目立つ事はないはずだ。
 買い物の準備は出来た。行く店はホームセンターだけだ。寄り道をするつもりはないが、通り道に書店がある。荷物になるのは分かっているが図書館に本を増やしたい。

 退屈は人を殺す……これが私の持論だ。

 買う予定の物はプラスチックBOX、蝶番、釘、輪ゴム小・大、紐の五種類ぐらいしかない。三千円もあれば全て買える値段だ。現金10万円もあるのなら、多少の無駄遣いは余裕で出来る。

 ホームセンターに行くと目的の物とそれ以外の物を素早く購入した。トイレットペーパーを買うか少し迷ってしまったものの、今まで通りバケツに入った水で、自分の尻穴を手を使って綺麗に洗い流すしかない。
 とりあえず予定外の買い物は、ビニールテープ、30センチの金属棒数本、鳥用の餌だけで十分だ。鳥籠の方は蝶番と釘を使って自分で作る予定だ。鳥籠を一個買っても荷物にしかならない。

 楽しみにしていた書店に入ったが、一つ問題が出来た。年齢を証明するものを持っていなかった。
 成人向けのアダルト雑誌や漫画を購入する事はできない。それなのにアイドルの写真集は問題ないらしい。

 別にそこまで欲しい物ではない。万引きしてまでも手に入れるつもりはない。適当に聞いた事もないタイトルのライトノベルの第一巻を10冊購入すると、書店を出た。あとは城に帰るだけになる。

 時刻は午後4時38分……今から帰っても暗い危険な山道を登る事になる。道に迷い、大怪我したら終わりだ。けれども、巡回の警察車両もいるのに、不良学生のように深夜の町中をブラブラ彷徨くつもりはない。
 私は捕まれば終わりだ。死んだ人間が生きているはずはない。暗い森の中で一歩も動かずに、夜を過ごした方が遥かにリスクは少なくて済むだろう。
 

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